この記事は、総合型選抜・学校推薦型選抜の小論文で、グラフや表がついた「資料読み取り型」が出る(または出るかもしれない)高校生のためのものです。11月から公募推薦を受ける高3の人と、来年の総合型に向けて今から練習を始めたい高1・高2の人を想定しています。
文章を読んで意見を書く一般的な小論文の書き方は、小論文の書き方の記事にまとめました。ここでは資料型だけに絞って、読む順番、書き分け方、字数の配り方、練習用の資料の探し方、自己採点のしかたを順に説明します。
資料型の小論文はなぜ年内入試で出るのか
文部科学省の「令和9年度大学入学者選抜実施要項」では、総合型選抜と学校推薦型選抜のどちらでも、調査書や志願者の書類に加えて、小論文・プレゼンテーション・口頭試問などの評価方法や、教科・科目に係るテストなどのうち少なくとも一つを活用することが求められています。その評価方法の一つとして小論文を課す大学もあり、中には課題文の代わりに、あるいは課題文と一緒にグラフや表を読ませる形式があります。
資料型で問われるのは、知識の量より「目の前のデータを正確に読み、そこから筋の通った考えを組み立てられるか」です。
志望校の小論文が資料型かどうかは、募集要項の選考方法の欄と、大学が公開している過去の出題で確認してください。2028年度(来年度)の要項はまだ発表されていないので、高1・高2の人は2027年度の内容をもとに準備を始め、来年度の要項が出たら必ず確認し直してください。
読み取りの順番:数字を見る前に確認する4つのこと
資料型で一番多い失敗は、グラフの一番目立つ山や谷にいきなり飛びつくことです。数字の中身を見る前に、次の順番で「資料の枠」を確認します。
1. タイトルと出典
まずタイトルを一字ずつ読みます。「〜の推移」なら時間による変化、「〜の比較」なら項目同士の違い、「〜の割合」なら全体に対する内訳がテーマです。タイトルが資料の問いそのものなので、ここで「この資料は何を見せたいのか」を一行でメモします。出典(どの機関の、どの調査か)も見ておくと、調査の対象が全国なのか一部の地域なのか、誰に聞いた調査なのかが分かります。
2. 単位
次に縦軸・横軸、表の見出しの単位を確認します。「人」なのか「千人」なのか、「%」なのか「ポイント」なのか、「件数」なのか「1人あたり」なのか。単位の読み違いは、それだけで答案全体の信頼を失います。特に注意したいのは次の3つです。
- 割合(%)と実数(人・件)が混ざっている資料。割合が下がっていても実数は増えていることがあります。
- %の差を書くときは「ポイント」を使う。40%から50%への変化は「10ポイント増えた」で、「10%増えた」とは意味が違います。
- 縦軸が0から始まっていないグラフ。小さな差が大きく見えるので、目盛りの数字で差の大きさを確かめます。
3. 期間(いつのデータか)
何年から何年までか、調査の間隔は毎年か数年おきかを確認します。途中で目盛りの間隔が変わっているグラフもあります。期間の両端の値と、途中で大きく動いた時期をメモしておくと、あとで要約を書くときに迷いません。複数の資料が出たときは、それぞれの調査年が同じかどうかも確認します。年がずれた資料を並べて「同時期に起きた」と書くのは誤りです。
4. 比較軸(何と何を比べているか)
最後に、資料が何を比べる構造になっているかを見ます。年齢層別、男女別、地域別、国別、時期別などです。比較軸が分かると、書くべき「違い」が見えてきます。たとえば年齢層別のグラフなら「どの年齢層が他と違う動きをしているか」、国別の表なら「日本は他国と比べてどの位置にあるか」が中心になります。
試験本番でも、問題用紙の資料の横に「タイトル/単位/期間/比較軸」を小さく書き込む習慣をつけておくと、読み落としが減ります。
読んだあとに拾う3種類の特徴
枠を確認したら、数字の中身を見ます。拾う特徴は大きく分けて3種類です。
- 全体の傾向:増えている、減っている、横ばい、ある時期から向きが変わった。
- 目立つ違い:ある項目だけが大きい(小さい)、ある集団だけ逆の動きをしている。
- 例外や変化点:急に変わった年、他と合わない数字。
全部を書こうとする必要はありません。設問が求めている内容に関係するものを2〜3個に絞るのが基本です。資料が2つ以上あるときは、それぞれを別々に要約するだけでなく、「資料1で見えたことを資料2が説明している」「資料1と資料2で反対の結果が出ている」といった資料同士の関係を一つ見つけると、答案に深さが出ます。
事実と解釈を書き分ける
資料型の答案で採点者が最も気にするのは、資料に書いてあること(事実)と、そこから考えたこと(解釈・意見)が混ざっていないかです。ここを分けて書けるだけで、答案の印象は大きく変わります。
3つの段階に分けて考える
次のような架空の例で考えてみます。「ある市の図書館の年間利用者数が10年間で減り続け、一方で電子書籍の貸出件数は5年前から増えている」という2つのグラフがあったとします。
| 段階 | 書き方の例 |
|---|---|
| 事実(資料にあること) | 来館による利用者数は10年間で減少している。電子書籍の貸出件数は5年前から増加している。 |
| 解釈(資料から考えられること) | 図書館の利用が、来館から電子での利用へ一部移っている可能性がある。 |
| 意見(自分の主張) | 来館者数だけで図書館の役割を評価するのではなく、電子での利用も含めた指標で見直すべきだ。 |
事実の段落では、資料にない原因を書かないこと。解釈の段落では、「〜と考えられる」「〜の可能性がある」のように言い切りすぎない表現を使います。2つのグラフが同じ時期に動いているからといって、一方が他方の原因だとは資料だけでは言えないからです。もし因果を主張したいなら、「ただし、この資料だけでは〜とまでは言えない。〜のデータがあれば確かめられる」と一文添えると、データを慎重に扱える人だと伝わります。
よくある書き分けの失敗
- 事実の文に「深刻な」「驚くほど」など評価の言葉を入れてしまう。
- 資料にない数字や、自分の知っている時事の数字を事実として混ぜる。
- 解釈が資料から飛びすぎている(データは利用者数なのに、満足度の話をしてしまう)。
- 意見が資料と関係なく、どの資料でも書ける一般論になっている。
特に最後の失敗は多いです。意見の段落にも、資料の数字や特徴を最低1回は戻して使うと、資料をふまえた意見になります。
字数配分の目安
資料型の設問は、「資料から読み取れることを述べたうえで、あなたの考えを書きなさい」という一問形式と、「問1で読み取り、問2で意見」という分かれた形式があります。分かれている場合は設問の字数に従えばよいので、ここでは一問形式の配分の目安を示します。
| 全体の字数 | 配分の目安 |
|---|---|
| 600字 | 読み取り(事実)150字/解釈150字/意見と理由300字 |
| 800字 | 読み取り200字/解釈200字/意見と理由・具体例400字 |
| 1,000字 | 読み取り250字/解釈250字/意見と理由・具体例・反対意見への応答500字 |
考え方としては、読み取りと解釈で全体の半分、意見で残りの半分です。読み取りが短すぎると「資料を読んでいない」と見られ、長すぎると数字を書き写しただけの答案になります。数字はすべて書く必要はなく、傾向を示す代表的な値(期間の始めと終わり、最大と最小など)を2〜4個使えば十分です。
設問が「読み取れることを述べよ」だけで意見を求めていないときは、意見を書かずに、読み取りと解釈に字数を使います。設問の動詞(述べよ・説明せよ・論じよ・考えを書け)に下線を引くことを、練習のときから習慣にしてください。
練習に使える公的統計の探し方
資料型は、過去問だけでは量が足りません。そこで、国や公的機関が公開している統計を使って、自分で練習問題を作ります。公的統計は出典がはっきりしていて、調査の対象や時期も確かめられるので、練習の素材として向いています。
政府統計の総合窓口(e-Stat)
政府統計の総合窓口(e-Stat)は、国の統計をまとめて探せるサイトです。分野別やキーワードで統計を探せます。ただ、統計表の形のまま出てくるものが多く、最初は少し使いにくく感じるかもしれません。慣れてきたら、志望分野のキーワードで検索して表を一つ選び、自分でグラフにしてみるのが一番力がつく練習です。
統計ダッシュボード
総務省統計局の統計ダッシュボードは、主要な統計をグラフで見られるサイトです。人口、労働・賃金、経済などの分野ごとや、都道府県・市区町村ごとにグラフを表示でき、時系列の変化も見られます。最初の練習素材を探すならここが一番手軽です。
統計でみる都道府県・市区町村のすがた
総務省統計局の統計でみる都道府県・市区町村のすがたでは、人口・世帯、教育、労働、健康・医療、福祉・社会保障などの分野で、地域を選んで統計表やグラフを表示できます。地域を比べる「比較軸」の練習に使えます。自分の住む県と別の県を並べて、違いを200字で書くだけでもよい練習になります。
内閣府の世論調査
内閣府の世論調査のページでは、内閣府が実施した世論調査の結果が公開されていて、分野や調査年度で絞り込めます。人々の意識を聞いた調査は、年齢層別・男女別の比較が多いので、社会学・教育・福祉・法・政治などを志望する人の練習に向いています。
統計の基本を学び直す
グラフの種類や平均・割合の意味があいまいなら、総務省統計局と統計研究研修所が運営するなるほど統計学園で、データの探し方やグラフの作り方、特徴のとらえ方を確認できます。
志望分野に合わせて素材を選ぶ
練習素材は、志望する学部の分野に近いものを選びます。看護・医療系なら健康や医療の統計、経済・経営系なら労働や賃金、教育系なら学校や子どもに関する統計、という具合です。志望理由書の準備と並行させたい人は、志望理由書のための大学研究の記事もあわせて読んでください。
練習の手順:1回40〜60分のメニュー
素材が決まったら、次の手順で練習します。1回40〜60分を目安にしてください。
- 資料を1〜2枚選ぶ(5分):グラフ1枚から始め、慣れたら関連する2枚を組み合わせます。
- 設問を自分で作る(5分):「資料から読み取れることを説明し、あなたの考えを600字で述べなさい」のように、字数と動詞をはっきり決めます。
- 4つの確認をメモする(3分):タイトル・単位・期間・比較軸を書き出します。
- 特徴を2〜3個拾い、事実・解釈・意見を一行ずつメモする(7分)
- 時間を計って書く(20〜30分):本番の試験時間に合わせて、少し短めに設定します。
- 自己採点する(10分):次の節の基準で、赤ペンでチェックします。
頻度は、11月の公募推薦を控えた高3なら試験日まで週3回以上、高1・高2ならまず週1回から始めるのが現実的です。高2の冬以降の準備全体の流れは、高2の冬から始める推薦準備の記事にまとめています。
自己採点の基準
書いた答案は、次の項目で一つずつ確認します。「はい」と言えない項目が一つでもあれば、その部分だけ書き直すのが効率のよい直し方です。
読み取りの正確さ
- 資料のタイトルが示すテーマに沿った読み取りになっているか。
- 単位を正しく書いているか(%とポイント、実数と割合を混同していないか)。
- 期間の両端や変化点など、使った数字が資料の数字と一致しているか。
- 比較軸(何と何を比べているか)がはっきり書かれているか。
書き分け
- 事実の文に、評価の言葉や資料にない原因が混ざっていないか。
- 解釈は資料から無理なく導けるか。言い切りすぎていないか。
- 資料だけでは言えないことを、言えないと認めているか。
意見の質
- 意見の段落で、資料の内容に少なくとも1回戻っているか。
- 意見に理由がついているか。理由は具体的か。
- 反対の立場や別の見方に一言でも触れているか(800字以上の場合)。
形式
- 設問の動詞と字数の条件を守っているか(指定字数の9割以上が目安)。
- 段落が事実・解釈・意見の順に分かれていて、読む人が迷わないか。
時期別:今からやること
11月から公募推薦を受ける高3
令和9年度の実施要項では、学校推薦型選抜の願書受付は2026年11月1日以降、合否の発表は12月1日以降とされています。試験まで残りの時間は多くありません。新しいことを広げるより、志望校の過去の出題形式に合わせて同じ形の練習を繰り返すことを優先してください。自己採点で毎回引っかかる項目を一つ決めて、それだけを直す意識で書くと短期間でも変わります。
来年に向けて準備する高1・高2
まずは統計ダッシュボードなどでグラフを1枚選び、「タイトル・単位・期間・比較軸」をメモして、200字で要約することから始めます。これに慣れたら、解釈と意見を足して600字にします。高2の3月までに、志望分野の資料で600〜800字を時間内に書ける状態を目標にすると、高3の夏に事前課題や志望理由書の準備と重なっても慌てずに済みます。学年ごとの準備の全体像は総合型の準備は高1から何をするかの記事にまとめています。
資料を読む力は、小論文だけでなく、事前課題のレポートや面接で「データを見て考えたこと」を話す場面でも使えます。総合型の事前課題・課題レポートの進め方とあわせて準備すると、一つの練習が複数の選考に生きます。
参考にした公式情報
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」
- 文部科学省「令和9年度入学者選抜について」
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)
- 総務省統計局「統計ダッシュボード」
- 総務省統計局「統計でみる都道府県・市区町村のすがた」
- 内閣府「世論調査」
- 総務省統計局・統計研究研修所「なるほど統計学園」
入試の内容は変更されることがあります。出願前に必ず大学の公式発表を確認してください。
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