この記事は、総合型選抜や学校推薦型選抜(推薦系)を受けるつもりで、同時に一般選抜の勉強も続けている高校生と保護者の方に向けたものです。小論文・面接・志望理由書と、英語や数学の勉強を、どういう順番で並べるかという話です。
川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で面談をしていると、この時期に決まって出てくる声があります。「小論文や面接などの推薦系と、学力系の両立が難しい」「推薦系も含めると時間内に終わらない」「総合型の面談対策まで手が回っていない」。3つとも、ほとんど同じ構造から出てきます。
先に結論を書きます。両立が苦しくなるのは、やることが多いからではなく、本来は時期が分かれているものを、同時にやろうとしているからです。以下は、文部科学省の実施要項と大学が公表している募集要項を読んで整理した範囲で書きます。
まず、締切の並びを見てください
2027年度入試(令和9年度)の制度上の日付です。
- 総合型選抜:出願は2026年9月1日以降、合格発表は2026年11月1日以降
- 学校推薦型選抜:出願は2026年11月1日以降、合格発表は2026年12月1日以降、かつ一般選抜の試験期日の10日前まで
この2つは2か月ずれています。「推薦系」とひとくくりにすると、9月から12月まで全部をやり続ける計画になってしまいます。出願の締切が別なので、作業の山も別です。
なお大学が募集要項を発表する期限は「令和8年12月15日まで」で、総合型の出願開始(9月1日)より後です。形式の下調べは前年度版で始め、出願年度の要項が出たら読み直してください。
総合型選抜の「動かせない締切」は2つ
- 高3・7月まで:英語資格を取り終える。読本で21方式を調べた範囲では、13件が「出願資格」型でした。届かなければ受験そのものができません。「2024年10月1日以降に受験したスコア」のように取得時期の条件もあり、結果が出るまでの日数も見込みます
- 9月1日:出願。事前提出物は出願書類と一緒に出すのが普通なので、試験日ではなく出願締切が実質の締切です。つまり夏休みが作業期間になります
逆に言えば、英語資格の対策は7月で終わる仕事です。
学校推薦型選抜は、締切がもっと早く来ます
- 高3・1学期まで:評定を確保する。推薦要件に評定の基準があるなら、それは1学期までの成績で決まります
- 夏〜秋:校内選考。高校によって時期は違いますが、ここを通らないと出願できません
- 〜10月:推薦書の材料を先生に渡す。実施要項は、推薦書に「志願者本人の学習歴や活動歴を踏まえた学力の三要素に関する評価についての記載を求める」と定めています
- 11月1日〜:出願。そのあとは総合型と同じ(書類の棚卸し → 声に出す → 前日確認)
「推薦は評定4.0以上が必要」といった一般則は制度上ありません。実施要項が定めているのは、大学が評定を出願要件として「求めることができる」ことと、その要件を募集要項に示す義務だけです。専願か併願かも同じで、条文はありません(学校推薦型選抜の仕組みの記事)。
それぞれ、実際どれくらい時間がかかるのか
「時間内に終わらない」人は、たいていここの見積もりが甘くなっています。要項に書かれている分量を並べます(読本で規定を確認できた10件から)。
- 小論文(学部指定用紙)2,700字以上3,000字以内、図表・参考文献リストはA4両面5枚以内(日本大学 経済学部)
- レポート2,000字以上2,200字以内(中京大学 国際学部)、プロポーザルシートA4判2枚以内(立命館大学 文学部)
- スライド表紙含め5〜10枚、USB版とA4印刷1部を出願書類に同封(日本大学 工学部)
- プレゼン概要2ページ以内、100〜150語、参考文献3点以上(神田外語大学 英米語学科)
字数の書き方も見てください。「2,700字以上3,000字以内」は下限も上限も厳格で、下限割れは規定違反です。「2,000字程度」は幅があり、「A4判2枚以内」は上限だけですが、少なすぎれば内容不足と読まれます。
手書き指定もあります。横浜市立大学のプレゼンテーション概要は「同封の所定用紙(片面2枚、黒のボールペン記入)」。書き直しがきかないので、下書きを別紙で作ってから清書する時間が別に必要です。3,000字の小論文なら、テーマ決め・調査・執筆・清書の4段階に割って8月のうちに配分する。「夏休みに少しずつ」ではなく、4段階を予定に入れます(小論文の書き方の記事)。
面接の準備は5段階
- 要項を読んで形式を確定する。個人か集団か、時間、持参物、配点、使用言語。科目名が「面接」でも中身が集団討論のことがあります
- 評価の観点を探す。評価項目表、「評価の視点」、講評、出題例
- 提出書類を棚卸しする。一文ずつに「なぜそう言えるのか」と問いを立て、説明できない箇所を潰す
- 3点セットをつなぐ。活動経験 → そこで見つけた問い → 大学での学習計画 → 将来構想を1本の線にする
- 声に出す。原稿は作ってから捨てる。人に聞いてもらい、答えられなかった質問を記録する
1と2は机に向かう勉強ではなく、要項を読んで抜き書きするだけの仕事です。それでも、ここが埋まらないうちに練習を始めると的が定まりません。4の鍵は「問い」です。活動経験と学習計画がつながらないのは、あいだの問いが言語化されていないからです。中央大学経済学部が公表しているプレゼン審査の10項目ルーブリックでは、10項目のうち3項目が「整合性」でした。採点されているのは要素の立派さではなく、要素どうしのつながりです(志望理由書の記事)。
5は出願後の作業です。配分を1つ提案します。資料作成4割/発表練習2割/質疑対策4割。中京大学の文学部言語表現学科は発表約10分に対して質疑約30分、日本大学工学部はプレゼン100点に対し口頭試問50点+面接50点で、発表とその後が半々です。練習は「1分版」と「3分版」の両方を作り、骨格を同じにしておく。そして練習の目的は、すらすら話せるようになることではなく答えられない箇所を見つけることです。答えられなかった質問が10個出た練習は成功で、本番までに10個潰せばよい。
一般の勉強と重なる部分、重ならない部分
「両立」を「2倍の量」だと思うと苦しくなります。実際には切り分けられます。
重なる部分
- 資料を読んで使う力。集団討論のテーマには課題文や新聞記事、資料3点などが添えられることが多く、知識量よりその場で読んで使う力が問われます。ただし下敷きの知識がないと資料が読めません
- 書いて説明する力。二松学舎大学が公表している「学力の3要素と選抜方法」の対応表では、小論文に「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」の印がついています
- 志望分野の時事の教養。討論のテーマは予想できません。準備するのは答えではなく、志望分野の主要な争点を賛否両論で説明できる状態です。同じ分野の新聞記事を週に1本、賛成側と反対側の理屈を書き出す。費用対効果がいちばん高い準備です
- 英語。英語資格の対策は、そのまま一般選抜の英語の土台になります
そもそも制度が、推薦系に学力の評価を求めています。実施要項は「調査書等の出願書類だけではなく、第6の1から4に掲げる評価方法のうち少なくともいずれか一つを必ず活用し」と定めています。1から5ではなく1から4。志望理由書・活動報告書・調査書(第6の5)はこの数に入りません。学科試験・共通テスト・小論文や面接・資格検定のうち少なくとも1つが必ず課される構造です。
重ならない部分
- 要項を読んで形式・時間・持参物・配点・使用言語を確定する作業
- 活動経験・問い・学習計画・将来構想を1本の線にする作業
- 書類の棚卸し(自分が書いた一文に問いを立てる)
- 声に出して答える練習、持参物と形式の最終確認
この4つは一般の勉強では出てきません。そして合計すると、そこまで長い時間ではありません。長く感じるのは、締切のない状態で毎日少しずつ触っているからです。重ならない部分を、締切のある短期の仕事として先に片づける。これが両立の設計です(制度と面接の全体像は年内入試の記事、集団討論・プレゼン・英語面接はこちらの記事)。
年内で決まらなかったときに、一般へ戻れる条件
学校推薦型選抜の合格発表は「2026年12月1日以降、かつ一般選抜の試験期日の10日前まで」。制度が定めているのは最も早い日付だけなので、結果が出るのが一般の直前期に食い込む組み合わせは、ふつうに起こります。読本も、併願について「一般選抜の準備をいつ止めるかは、別の判断です」と書いています。日程からは自動的に決まりません。戻れる状態を保つ条件を3つに整理します。
- 推薦系の勉強の主戦場を、重なる部分に置く。資料の読解、記述、志望分野の争点。ここを推薦系の準備として進めれば、結果がどうであれ残ります
- 重ならない部分には締切を置いて、そこで終わらせる。英語資格は7月、事前提出物は出願締切、形式の確認は要項が出た週。期限のない作業にしておくと、一般の時間を毎日少しずつ削り続けます
- 一般の勉強を週の中でゼロにしない枠を、先に固定する。「推薦が終わったら戻る」ではなく、出願準備の期間も週に何コマかは動かさない。戻るのではなく、細くしておいたものを太くするだけにしておく
なお総合型の結果を見てから学校推薦型に出願できるかは、志望校の組み合わせ次第です。必ず要項で日付を確認してください。
週のスケジュールをどう組むか
「時間内に終わらない」については、見積もりのほうを疑ってください。卒業論文の完成までの日数を学生に予測させた研究(Buehler, Griffin, & Ross, 1994)では、平均の予測33.9日に対し、実際は平均55.5日。予測どおりに終えられたのは29.7%でした。「計画の誤謬」と呼ばれる認知のクセで、意志の強さの問題ではありません。予定が押すのは通常の状態です。
- 「何時間で終わりそうか」の前に、「前回どれくらいかかったか」を思い出す。志望理由書の下書き1本、過去問1年分と丸つけ。記録がなければ、今週から時間をメモし始めるだけで翌週の精度が上がります
- 「もし◯◯になったら、△△する」の形で1〜2個だけ決める。94件の研究をまとめた分析(Gollwitzer & Sheeran, 2006)では、この形で計画を立てた人の達成率が中程度から大きく高まることが確認されています(着手できない失敗への対策で効果量d=0.61)。「21時になったら志望理由書の第2段落を書く」のように引き金を決めます
- 1〜2週間で終わる大きさまで割ってから予定に入れる。9,000人以上を対象にした実地実験(Rai et al., 2024)では、1年間の目標を小さな単位に分けて提示されたグループの活動量が7〜8%多いという結果でした。「小論文を書く」ではなく「今週は資料を3点集めて論点を2つ書き出す」まで割ります
- 推薦系と一般を同じコマに混ぜない。作業の切り替えごとに時間のロスが生じることは実験(Rubinstein, Meyer, & Evans, 2001)で確認されています。1作業に区切る時間をつくってください
週1回、10分のふりかえり
毎週決まった曜日に10分だけ、今週の型が機能したかを見直してください。見る項目はこれで足ります。
- 推薦系の「重ならない作業」に手をつけた日/7日
- 一般の勉強の固定枠を守れた日/7日
- かかった時間をメモできた回数
- 今週いちばん崩れたのはどこか(タスクの割り方・誘惑・時間の配置)
- 来週、続ける工夫を1つ/減らす工夫を1つ
数字が悪い週があっても構いません。全部を一度に整える必要はなく、いちばん崩れている1つから直すだけで、他も連動して整います。そして、進まなかった日の遅れは追いかけないでください。前日の分を翌日に上乗せすると、その日の予定も崩れて遅れが広がります。遅れた分は追わず、次の型に戻るのが優先です。3週続けてほとんど回らないときは、学校の先生や保護者の方に今の状況を話して、一緒に組み直してください。つらさが続くときは、専門の相談窓口に相談することも考えてください。
面談では、この順番で決めています
①動かせない日付だけを先に書き出す(英語資格の期限、出願締切、事前提出物の締切、校内選考の時期)。②重ならない作業が何分の仕事かを見積もり、締切のある予定に変える。③一般の固定枠を先に置き、そのあとに推薦系を入れる。この順番を逆にすると、一般の枠が毎週削られます。
川越校舎は自習室を朝7時から使えます。出願書類の清書や要項の読み込みのように「まとまった静かな時間」が要る作業を学校の前に置くと、放課後の勉強時間を削らずに済みます。志望理由書の1文ごとに「なぜそう言えるのか」を詰める作業も、1対1の授業でできます。
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EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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