「英語長文、もっと速く読めるようにしよう」。そう言われて、では何をすればいいのか分からない――面談でよく出てくる詰まりどころです。
この記事は、一般選抜の英語で長文に時間がかかりすぎている高校生・既卒生と、その保護者の方に向けて書いています。川越・ふじみ野・鶴瀬のEIMEI予備校で読む速さの相談を受けたとき、実際に組む練習の中身を書きます。
先に結論です。「速く読む」はひとつの能力ではなく、3つの別の作業に分かれます。練習の中身はまったく違います。自分がどれで詰まっているかを決めないまま演習量を増やしても、時間は減りません。
「速く読む」を3つに分ける
読み終わるまでの時間は、次の3つでできています。
- ①1語1語・1文1文の処理を速くする――知らない語や構文で止まらない
- ②戻り読みを減らす――同じ行を2回3回なぞらない
- ③読む回数を減らす――本文全体を何度も通さない
いちばん短期間で時間が減るのは③です。EIMEI予備校で自作している共通テスト英語の攻略読本では、80分・8大問で捨て問がない全問読解型という設計について、「速く読む」より「読む回数を減らす」発想が得点を決めると書いています。読む速さを2割上げるには何か月もかかりますが、2回通していた本文を1回で済ませれば、その大問の時間はほぼ半分になります。
取りかかる順番は③→②→①。①は伸びるまでに時間がかかるので、毎日少しずつ並行して進めます。
まず、志望校で必要な速さを数字にする
練習の前に、ゴールの数字を決めます。手順は3つ。
- 志望校・志望学部の過去問1年分の英文の総語数を数えます。1行の語数に行数をかける概算で構いません。
- 要項の試験時間で割ります。これが「1分あたり何語」です。
- その数字には、設問文と選択肢を読む時間、マークや記述を書く時間、見直しの時間も含まれていることを確認します。
3つめが抜けがちです。「1分60語で読めるから90分なら5,400語いける」という計算は成り立ちません。設問文と長い選択肢を読む時間、書く時間が別に必要です。
EIMEI予備校では大学ごとに入試対策読本を自作していて、問題冊子から試験時間・総語数を実測しています。そこから計算した例です。
- 慶應義塾大学 商学部:総語数は設問・選択肢込みで3年とも約5,200語(5,203/5,273/5,245語)。90分なので1分あたり約58語。かなり厳しい密度です。
- 慶應義塾大学 総合政策・環境情報(SFC):3題合計が設問・選択肢込みで3,680〜4,280語、120分なので1分あたり31〜36語。総量では商学部より余裕がありますが、1題が1,230〜1,550語の一本で、そこに30問=配点の半分が乗ります。
- 慶應義塾大学 文学部:約2,100語の評論1本(2026年度は実測2,136語)を120分で、1分あたり約18語。辞書2冊可の全問記述で、速さより訳す精度の試験です。
- 中央大学 5学部共通選抜:総語数2,300語超を80分で、1分あたり約29語。文法語彙15問と誤り指摘が別に乗るので、長文に使える時間はもっと短くなります。
- 中央大学 総合政策学部:1,100語級の長文2題+対談1題を90分。長文2題だけで2,200語級で、しかも設問文がすべて英語です。
分かるのは、「必要な速さ」は大学ではなく学部・方式ごとに違うことです。同じ慶應義塾大学の中に、約58語が要る学部と約18語で足りる学部があります。大学別にもっと広く見たい人は英語が時間内に解き終わらないときを読んでください。
①1語1語の処理を速くする
語彙が原因かどうかの見分け方
同じ長文を、辞書を引きながら時間無制限で読み直してみてください。それで内容がほぼ取れるなら、詰まりの主因は語彙です。辞書を引いても意味がつながらないなら、原因は構文か内容の予備知識です。切り分け方全体は英語長文が読めない原因の見分け方に書きました。
どの語から覚えるか
単語帳を最初から全部やり直すより、出る語から埋めるほうが速く効きます。EIMEI予備校で自作しているテーマ別の頻出英単語帳は、入試英文をテキスト化した415題・約86万語のコーパスで、テーマごとの出現頻度を集計して編んだものです。順番はこうなります。
- テーマを問わず出る、論説の骨組みの語から。researcher/study/evidence/suggest/indicate/significant/factor/tend to/likely/despite/whereas など。ここが曖昧だとどのテーマの長文も霞みます。約50語なので1週間で1周できます。
- パッセージ数が多いテーマの語を次に。集計では歴史・文化系が125題、心理・脳科学が104題、物語・エッセイ系が101題、医療・健康が86題。志望校の過去問のテーマと重なるところから入ります。
- 頻度がはっきり出ている語を優先。環境系は ocean が67回、plastic が65回、waste が61回、climate が50回、carbon が42回。医療系は disease が44回、drug が34回。生物系は plant が57回、animal が50回、tree が46回。brain はテーマ別集計で最頻出の内容語でした。「覚えたか」ではなく「見た瞬間に日本語が出るか」で判定します。
- 設問の英語。設問文まで英語の学部(上の中央大学 総合政策学部など)を受けるなら、according to the passage/is closest in meaning to/refer to/imply・infer/is NOT mentioned/EXCEPT の読み違いは1問まるごと落とします。
テーマごとに覚える理由と回し方はテーマ別英単語の考え方に。覚えた語の反応速度を上げる手段としては音読が使えます。やり方は英語の音読の使い方を見てください。
②戻り読みを減らす
戻り読みは癖ではありません。途中で分からなくなったから戻っているのがほとんどです。だから「戻らないように我慢する」練習は効きません。理由を3つに分けます。
理由A ― 構造が取れていない
主語と動詞がどれか、どこまでが1つのかたまりかが決まらないまま進むと、文末で意味が結ばずに戻ります。
練習は、1日3文だけ、主語と述語動詞に印をつけ、修飾のかたまりを括弧でくくる作業を紙の上でやること。関係詞・同格・挿入・長い主語のどれかを含む文を選びます。辞書2冊を持ち込める慶應義塾大学の文学部でも、構文が取れなければ辞書には救われません。速さより正確さが先です。
理由B ― 指示語を追えていない
it/this/such/the former が何を指すかを決めないまま進むと、2文あとで話が分からなくなって戻ります。
練習は、長文1題につき代名詞・指示語を10個選んで、指す先を本文に矢印で書き込む。これだけです。共通テストの文挿入問題も、挿入する文の this や such が指す先が直前にあるかを見る問題なので、そのまま設問対策になります。
理由C ― 内容が分からない
単語も構文も分かるのに、何の話なのかが掴めないパターン。戻り読みでは解決しません。前提になっている考え方を知らないからです。対処は後半の「抽象度」の項で扱います。
A・B・Cのどれで戻っているかは、戻った瞬間に本文の余白にA/B/Cと書き込むだけで1週間で見えます。
③読む回数を減らす
やることは設問を先に見て、何を探すかを決めてから本文に入ることです。攻略読本では、本文を頭から精読してから設問に向かうのを最悪の手順だと書いています。実用文型の大問は、設問が指定する情報(日付・条件・誰の意見か)だけをスキャンすれば足りる設計です。
ただしすべての設問がこの読み方に向くわけではありません。主旨やタイトルの選択のように本文全体を1回通さないと決まらない設問と、日付や数値のように該当箇所だけで決まる設問は扱いが逆です。慶應義塾大学の商学部の長文3本は、どの年も最後が主旨かタイトルの選択でした。これを「探して読む」でやると、かえって何度も通すことになります。設問タイプごとの判断は英語長文の設問タイプ別の解き方にまとめました。
手順にすると、1題ごとにこうなります。
- 設問と選択肢の骨子を先に読み、「全体を通さないと決まらない設問」と「該当箇所だけで決まる設問」に分ける(30秒〜1分)
- 本文を1回通す。該当箇所系のキーワードに印をつけながら進む
- 全体系の設問を先に決める
- 該当箇所系は、印をつけた場所だけ読み直して決める
これで、2回半から3回通していた本文が「1回+部分的な読み直し」になります。読む速さが上がらなくても時間は減ります。
測り方 ― 週1回、同じ条件で記録する
速さは感覚では分かりません。1週間に1回、同じ条件で測って記録するのが唯一の方法です。同じ条件とは、測る時間帯、英文の難度(同じ大学の別年度など)、辞書なし、解答を決めるところまで含める、の4つをそろえること。記録するのは4項目です。
- 語数。設問文と選択肢を含めるかを決め、毎回同じ数え方に。
- かかった時間。読み始めてから最後の設問を決めるまで。
- 正答数。速さだけ上がって点が落ちていないかを見るためです。
- 戻った回数と、その理由のA/B/Cの内訳。
1つめを2つめで割れば1分あたりの語数が出ます。これを志望校の必要速度と並べて書いておきます。4つめがあると来週やる練習が決まります。Aが多ければ構文、Bなら指示語、Cなら内容の予備知識です。
どれくらいで縮まるのか
「何週間で1分あたり何語上がる」と言える根拠は、私たちは持っていません。出発点も原因も人によって違うので断定はしません。書けるのは距離の縮め方の設計だけです。
ただ、上の数字と並べれば見当はつきます。いまの実測が1分あたり30語で志望校が約58語を要求する型なら、読む速さだけで2倍近くにするのは現実的ではありません。この場合は③と、解く順番の見直しで埋める部分のほうが大きくなります。逆にいまが25語で志望校が31〜36語の型なら、②と①の積み上げで届く距離です。
目安は、必要速度との差が3割以内なら①②を積み上げる、それ以上離れているなら③と解く順番で埋める。差が2倍近くあるなら、同じ大学の中で分量の相性がいい学部・方式を選ぶことも含めて早めに相談してください。
速さを上げてはいけない場面
逆効果になる段階があります。構文が取れていない段階で、速さを上げる練習をしてはいけません。
目安は、時間無制限・辞書ありで読んで本文の主旨を日本語で3文にまとめられないなら、速さの練習は保留。この段階でやるのは1文を正確に取る練習と語彙で、ストップウォッチは使いません。ここを飛ばすと「速く読んで速く間違える」状態になり、模試の点数はかえって下がります。正答数が落ちながら速くなっているときも、一度速さを戻します。速さは点数のための手段で、目的ではありません。
抽象度が高い文章で遅くなるのは、普通です
同じ1,000語でも、かかる時間はテーマで変わります。実力ではなく前提知識の問題です。たとえば「能力主義(メリトクラシー)」を批判する文章は、単語がやさしくても、この語がもともと批判のために作られた言葉だと知らないまま読むと、筆者がどちら側に立っているのかすら分からなくなります。EIMEI予備校で自作している抽象概念の予備知識の読本は、こうした「知らないと文意そのものが取れない」テーマだけを24に絞ったものです。基準は出題頻度ではなく抽象度の高さです。
中央大学の英語の長文は、3年分の出典を並べると科学・環境・テクノロジーが最も多く、次に社会・言語・心理の並びでした。読本にも書いているとおり、知らない話題の1,000語と、知っている話題の1,000語では、かかる時間がまるで違います。速さが出ないテーマが決まっているなら、それは速読の問題ではなく予備知識の問題です。どのテーマを先に入れるかは英語長文の抽象概念を見てください。
1か月の練習メニュー
ここまでを1か月で1周する形にします。長文は1日1題が基準です。
- 1週目 ― 測る、分ける。志望校の必要速度を3手順で計算。長文1題を測って記録4項目。戻り読みにA/B/Cを書き込む。設問先読みを1題で試す。
- 2週目 ― ③を固める。毎日1題、上の4ステップで解く。骨組みの約50語を1週間で1周。週末に測定1回。
- 3週目 ― ②に手を入れる。Aが多い人は1日3文の構造分解、Bが多い人は1題10個の指示語の矢印。並行して志望校の頻出テーマ2つ分の語彙。週末に測定1回。
- 4週目 ― Cを埋めて通す。過去問で分からなかったテーマを日本語で調べる。本番と同じ大問数・試験時間で通しを1回。測定1回。
1か月終わったら、4回分の記録を並べます。1分あたりの語数と正答数がどう動いたか、戻り読みのA/B/Cの内訳がどう変わったか。速さが変わっていないのに戻り読みが減っているなら、伸びの手前まで来ています。どちらも変わっていないなら、原因の見立てが間違っている可能性が高いので、そこから作り直します。
読む速さは才能の話ではなく手順の話です。うまくいかない状態が長く続いてつらいときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口に相談してください。
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EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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