【川越の高校生へ】英語長文が読めない原因は単語ではなく「概念」|入試頻出の24テーマを先に入れる

こんにちは、EIMEI予備校の二神大輝です。英語科を担当しています。

この記事は、川越とその周辺の高校に通う高校生・浪人生で、「単語帳は1冊終えた。構文も一通りやった。それなのに長文になると、何の話をしているのか分からなくなる」という人に向けて書いています。

結論から書きます。英語長文で読み負ける原因は、単語でも構文でもないことがあります。本文が前提にしている「考え方」を知らない、という場合です。

たとえば「能力主義(メリトクラシー)」を批判する文章は、使われている単語自体はやさしくても、「能力主義とは本来どういう主張で、何を批判されているのか」を知らないまま読むと、筆者がどちら側に立っているのかすら分からなくなります。「資本主義における休息の意味」を問う文章も同じで、休息やレジャーの何が問題視されているのかという前提を共有していないと、導入部(setup)の時点で迷子になります。

EIMEIでは、この穴を埋めるために『英語長文 抽象概念の予備知識』という読本を自作しました。この記事では、その読本の分類に沿って入試英文にくり返し出てくる抽象概念を紹介し、それを知っていると設問がどう解けるようになるのかを具体例で示します。

まず「単語の問題なのか、概念の問題なのか」を切り分ける

概念の話に入る前に、一つ確認してほしいことがあります。読めない原因は人によって違います。

  • 単語が原因|1文の中に知らない語が3つ以上ある。語彙で解決します。
  • 構文が原因|1文単位で主語と述語が取れない。精読で解決します。
  • 概念が原因1文ずつは訳せるのに、段落と段落のつながりだけが分からない。筆者が賛成なのか反対なのかが最後まで確定しない。ここが今回のテーマです。

3つめに当てはまる人が、単語帳をもう1冊増やしても点数は動きません。見分け方は別記事にまとめてあります(英語長文が読めない原因の見分け方)。

読本は「頻出だから」ではなく「知らないと読めないから」選んでいる

EIMEIには英語の読本が2冊あり、役割が違います。

  • 『入試英語の教養 ― 頻出テーマ読本』出題頻度の高いテーマを、出るものから順に埋めていく本です(頻出テーマ読本の記事はこちら)。
  • 『英語長文 抽象概念の予備知識』|今回の本です。出題頻度に関係なく、抽象度が高く、前提知識がないと文意を取り違えやすいテーマだけを選びました。年に数題しか出なくても、出た瞬間に得点を左右するテーマです。

選定の根拠も書いておきます。全国約190大学・共通テスト(センター試験を含む)の英語長文1,005パッセージ(2007〜2026年度)の主題を分析し、そこから重複を除いた約100パッセージを24のテーマに整理したものが本書です。なお分析対象は2020年度以降に偏っており、2025・2026年度だけで724パッセージ(全体の72%)を占めます。それ以前の傾向は薄くしか反映されていない、という限界も明記してあります。

「わかりにくさ」は4種類しかない

読本が選んだ24テーマには、共通する「わかりにくさ」があります。ここを先に知っておくと、初見の抽象論でも身構え方が決まります。

  • 造語・専門用語|メリトクラシー、カーニズム、データイズムなど、訳語だけ覚えても中身が伝わらない語
  • 通説と実際の食い違い|サピア=ウォーフ仮説の「強い版」はすでに退けられている、など。常識の側で読むと筆者と逆の結論を選びます。
  • 対立する2つの立場|功利主義と義務論、記述主義と規範主義など、片方だけ知っていると誤読する構図。
  • 具体例なしの抽象論|「概念は歴史的に構築される」のような主張は、具体例とセットでないと実感できません。

この4種類のうち、設問の失点に直結しやすいのは2つめと3つめです。

24の抽象概念を、読本の5部構成で見る

読本は24章を、経済・論理・ことば・人間の外側・社会設計という5つの部に分けています。

  • 第Ⅰ部 経済と分配のことば|メリトクラシー/資本主義と労働/消費主義と幸福のパラドックス/格差と健康・信頼/ジェンダーとケア労働
  • 第Ⅱ部 論理と科学のことば|功利主義とトロッコ問題/科学哲学(説明・理解・オッカムの剃刀)/論証と懐疑/因果と相関/リスクと予防原則
  • 第Ⅲ部 ことばと自己|社会構築主義/言語相対論とメタファー/アイデンティティ/知覚は脳の構築/近代・啓蒙・理性
  • 第Ⅳ部 人間の外側|人間中心主義と動物の地位/環境正義と気候の不平等/AI倫理とデータイズム/偶然性と運/疎外・怠惰・遊び
  • 第Ⅴ部 社会の設計|民主主義と義務投票/コモンズと人口論/長期主義と世代間倫理/美学と趣味判断

24章はどこから読んでも構いません。志望校の過去問で分からなかった話題を、目次から探して読むという使い方を想定しています。

知っていると、設問がこう解ける

ここが本題です。概念を先に入れておくと設問の何が変わるのか、6つ挙げます。

1. メリトクラシー|「よい社会」と思って読むと、筆者の立場を取り違える

meritocracy という語を広めたのはイギリスの社会学者マイケル・ヤングで、1958年の『The Rise of the Meritocracy』という本です。これはユートピア小説ではなく、反ユートピア(ディストピア)を描く風刺小説でした。人を能力だけで選び抜いた社会が、最終的に反乱によって崩壊していく物語です。当初この語を使った書き手は4人とも否定的な意味で用いていました。meritocracy は、生まれたときから批判のための言葉だったのです。ヤング自身、2001年に新聞へ論説を寄せ、自分が警告として書いた言葉が正反対の意味で政治の語彙を支配してしまったことを嘆いています。

設問でどう効くか。「能力に応じて公正に評価される望ましい社会」という肯定的な語だと思い込んで読み始めると、その後に続く批判的な議論が頭に入ってきません。筆者の主張を選ぶ問題で、肯定側の選択肢を選んでしまいます。英文でこの語に出会ったら「これは批判の文脈かもしれない」と身構える。それだけで一問変わります。

2. 社会構築主義|「作り話だ」と読むと、論旨がまるごと逆になる

「その概念は社会的に構築されたものだ(socially constructed)」という主張を、多くの受験生は「その概念は作り話で、本物ではない」と読み違えます。しかしこの言葉は存在を否定していません。ある区分が、生まれつき決まっていたのではなく、歴史的・社会的な過程を経て作られ、今では当たり前(taken for granted)のものとして受け取られている、という主張です。

代表例が「子ども期(childhood)」です。中世ヨーロッパには子どもを大人と区別された段階として扱う観念が存在せず、近代になって初めて「子ども期」が発明された、という議論があります。しばしば「中世の親は子を愛していなかったと言った」と単純化されますが、論じられたのは愛情の有無ではなく、子ども期という区分の有無でした。

設問でどう効くか。内容一致問題で「筆者は〜という概念が実在しないと考えている」という選択肢が出たとき、区別がついていなければ選んでしまいます。ついていれば即座に切れます。

3. 言語相対論|「言語が思考を決める」を結論だと思うと、たいてい誤り

“Sapir-Whorf hypothesis” という呼び名を、サピアもウォーフ自身も使っていません。1954年の学会で別の研究者が名づけたものです。この主張には強い版と弱い版があります。強い版(linguistic determinism、言語決定論)は「言語が思考を決定する」、弱い版(linguistic relativity、言語相対性)は「言語が思考に影響を与える」という立場です。強い版は現在の言語学・心理学ではもはや支持されていません。「イヌイットには雪を表す語が何十個もある」という有名な話も、ウォーフの主張の核心である文法の働きを外した俗説です。

設問でどう効くか。入試英文でこのテーマが出たとき、「言語が思考を決める」という強い主張を筆者の結論だと思い込むと、たいてい誤りです。筆者は強い版を紹介したうえで退け、弱い版に落ち着かせることが多い。この形を知っていれば、主旨要約で正解の型が先に見えます。

4. リスクと不確実性|「大した危険ではない」と読むと、正反対

経済学者フランク・ナイトは1921年の著作で、risk(リスク)を「測定可能な不確実性」、uncertainty(真の不確実性)を「測定不可能な不確実性」として区別しました。リスクは確率分布が既知か頻度から推定できるので、保険をかけられます。これに対し真の不確実性は、確率を割り当てる根拠となる過去の事例そのものが存在しない、一回限りの状況です。

設問でどう効くか。気候変動・パンデミック・AIを論じる英文では「これはリスクではなく不確実性だ、つまり期待値の計算が使えない」という論法がくり返し出ます。これを「大した危険ではない」と読むと、筆者の論旨を正反対に取り違えます。筆者が言いたいのはむしろ「確率さえ計算できないほど深刻な事態だ」ということが多いのです。

5. 因果と相関|「有意差があった」を「影響が大きい」と読まない

スマートフォンの普及と若者の不安・抑うつの増加が同時期に起きたことから、「スマホ中心の子ども時代」が心の不調の原因だとする主張があります。これに対し、2本のトレンド線が同時に動いたことは因果の証拠として弱く、むしろすでに心の不調を抱えた若者ほどSNSをよく使うという逆因果の可能性がある、という批判も出ています。

さらに押さえたいのが、統計的有意性(statistical significance)と効果量(effect size)は別物だという点です。有意性は「観察された関連が偶然だけでは説明しにくい」ことを示すにすぎず、その関連がどれほど大きいかは教えてくれません。

設問でどう効くか。この対立を紹介する英文で、どちらか一方の主張だけを筆者の結論だと思い込むと、設問を大きく外します。また「有意差があった」という一文をそのまま「大きな影響がある」と読み替えるのは、この分野でとても起こりやすい誤読です。内容一致の選択肢は、まさにここを突いてきます。

6. 動物倫理・AI倫理|「立場の数」を数えられるかどうか

「動物にも苦しむ能力がある」という論点が出てきたとき、多くの受験生は反射的に「だから肉食は否定されるべきだ」と読みます。しかし苦しむ能力を道徳的配慮の根拠として認める立場と、肉食を否定する立場は、必ずしも一致しません。苦しむ能力(sentience)を基準に据えた哲学者自身が、同じ脚注で苦痛を与えずに殺して食べることは容認しています。

AI倫理も同じ構造です。2016年、再犯リスク予測プログラムをめぐり、「再犯しなかった被告を高リスクと誤判定する割合が人種間で違う」という批判と、「同じスコアなら実際の再犯率も同じになるよう作っている」という反論が対立しました。核心は、どちらかが誤ったデータを使ったという話ではありません。両者は「公平さ」の定義が違ったのです。しかも基礎比率が集団間で異なる場合、この二つの基準を同時に満たすことは数学的に不可能だと後に示されています。

設問でどう効くか。「筆者はどちらの立場か」ではなく「本文にはいくつの立場が出てきたか」を数える読み方に変わります。紛らわしい選択肢が「立場の取り違え」で作られていることが見えてきます。

ほかにも、ここは毎年誰かが落とします

  • 快楽の踏み車|1978年の有名な調査で、順応がきれいに支持されたのは宝くじ当選者の側だけです。事故被害者の幸福度は統制群より有意に低いままでした。「人は何にでも慣れる」と覚えていると、要約問題で通俗版を選びます。
  • valid と sound|「妥当」は論証の形式の性質で、前提の内容が真かどうかとは無関係です。valid を「正しい」と訳すと、前提も結論も現実には誤っている文章が「妥当だ」と評価される場面で混乱します。
  • the paradox of voting|同じ訳語でまったく別の2つの議論を指します。前後の文脈でどちらか必ず確認を。
  • アイデンティティ|「生まれつき決まった自分らしさ」と思って読むと、「絶えず作られていくもの」という多くの論者の主張を正反対に受け取ります。
  • 啓蒙|「理性で迷信を打ち破った輝かしい時代」とだけ理解していると、「啓蒙そのものが新しい神話に転じる」と論じる文章で、筆者が何を批判しているのか分からなくなります。

ただし副作用もあります。逸話や通説を「実際に起きた出来事」として丸暗記すると、英文が概念だけを紹介して逸話に触れていない場合に、勝手に補った知識で設問を誤読します。EIMEIのルールは一つです。「解答の根拠は、文章に書かれている範囲だけ」。

EIMEIでの指導の流れ

私(二神)は英語科で、この読本をもとに頻出テーマを先にインプットさせてから長文演習に入るという順序を取っています。

  1. 原因の切り分け|読めない原因が単語なのか構文なのか概念なのかを1対1の授業で判定します。概念が原因でない生徒に、この読本は渡しません。
  2. 先にインプット|概念が原因の生徒には、長文演習に入る前に志望校の傾向に合う部から読ませます。理系志望なら第Ⅱ部と第Ⅳ部、文系志望なら第Ⅰ部と第Ⅴ部、というように入口を分けます。
  3. 過去問とひもづける|各章末には、そのテーマがどの大学のどの年度に出たかを記録した「入試との接点」を付けてあります。過去問で詰まった話題は、その場で該当章に戻ります。
  4. 誤読の型で復習する|間違えた設問は「単語を知らなかった」ではなく「4分類のどの誤読の型にはまったか」で記録させます。
  5. 共通テストと使い分ける|共通テストは抽象論より情報処理の比重が高いので、組み立ては別です(共通テスト英語の攻略はこちら)。

この発想は英語だけのものではありません。現代文でも同じ構造の読本を自作しています(現代文 抽象概念の予備知識)。英語と現代文で同じ概念を二度通ると、定着の速さが変わります。

川越校舎について

EIMEI予備校 川越校舎は2026年6月に開校しました。川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分です。自習室は朝7時から使えます。指導は1対1の個別指導なので、「単語が原因か、概念が原因か」の切り分けを生徒ごとに行えます。グループ校舎はふじみ野・鶴瀬にあります。

長文が読めない原因が本当に単語なのかどうかは、一度答案を見せてもらえれば分かります。無料体験・個別説明会を受け付けています。

EIMEI予備校 川越校舎の無料体験・個別説明会はこちら

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EIMEI予備校について

EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。

  • 川越校舎(2026年6月開校)川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分。自習室は朝7時から使えます。
  • ふじみ野校舎 ふじみ野駅東口から徒歩1分。
  • 鶴瀬校舎 鶴瀬駅西口から徒歩3分。

川越校舎の詳細・無料体験のお申し込みはこちら/ふじみ野・鶴瀬校舎のことは公式LINEからお問い合わせください。

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この記事を書いた人

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