この記事は、高校の先生から「指定校推薦の枠がある」と聞いた高校3年生と、その保護者の方に向けて書いています。川越校舎でも、この時期に「指定校をもらえるなら取るべきですか」「一般入試で勝負したほうがいいですか」という相談が続きます。
先に立場を書きます。EIMEIはこの質問に「取るべき」「やめるべき」とは答えません。指定校の運用は高校ごとに違い、塾からは見えないからです。かわりに、文部科学省の大学入学者選抜実施要項に書かれている事実と、高校の先生に確認しないと分からないことを分けて並べます。
まず、呼び名を整理します
「指定校推薦」はふだんの言い方で、制度の上では学校推薦型選抜という区分の中にあります。令和9年度(2027年度入試)の実施要項は、これを「出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料としつつ……評価・判定する入試方法」と定義しています。
大事なのは出願する主体です。実施要項は、総合型選抜には「入学志願者自らの意志で出願できる公募制という性格」があるとし、学校推薦型選抜は「入学志願者自らの意志のみで出願できるものではなく」高等学校長が判断すると書いています。自分で決めて出す入試ではないのです。だから校内選考があり、だから塾には結果が分かりません。
この区分の中に、誰でも出願できる公募型と、大学が高校を指定してその高校の生徒だけが出願できる非公募型があります。ふだん「指定校」と呼ばれているのは、この非公募型にあたるものです。制度上の枠も1つあります。学校推薦型選抜の募集人員は、学部等の募集単位ごとの入学定員の5割を超えない範囲(附属高校長の推薦分を含む)で、総合型選抜にはこの上限がありません。
規模も書いておきます。令和7年度の集計では、私立大学の入学者の38.8%が学校推薦型選抜による入学で、そのうちおよそ6割が指定校です。全体の地図は年内入試の種類、区分そのものの説明は学校推薦型で扱っています。
「入学を確約して受ける」という性格
令和9年度から、総合型選抜・学校推薦型選抜では面接による評価が必須になりました。その例外を定めた但し書きの中に、指定校にあたる方式が描かれています。
「ただし、高等学校との緊密な連携により、意欲や適性等を含め丁寧なマッチングが図られていると考えられる非公募型の学校推薦型選抜であって合格した際には入学することを入学志願者が確約して受験するものについては、大学の実情に応じて面接の要否を判断することができる。」
ここに書かれているのは、高校と大学のあいだで対象者が絞られていて、合格したら入学すると志願者が確約して受ける方式です。面接必須の例外は制度上この1つだけです(総合型選抜には例外がありません)。この但し書きに当てはまる方式で出願することは、受かったら入学すると自分が約束して受けるということになります。
では出願後に辞退できるのか、併願できるのか。実施要項には、専願か併願かを直接定める条文がありません。だから「制度として全部専願だ」とも「制度上は併願してよい」とも、要項の文言からは言えません。決めているのは大学ごとの募集要項と、高校の中のきまりです。次の3つは高校の先生に必ず確認してください。
- その枠は、ほかの大学と併願してよい枠なのか
- 校内選考を通ったあと、出願前に辞退できるのか。できるならいつまでか
- 出願後・合格後の辞退を、高校としてどう扱っているのか
もう1つ。「指定校だから面接はない」とは限りません。但し書きは「面接の要否を判断することができる」と書いているだけです。実際、指定校推薦の合否判定方法を「口頭試問(面接)での総合的評価による合否判定」と明記している大学(成蹊大学)や、試験科目名そのものが「口頭試問」の学部(学習院大学国際社会科学部)があります。面接の中身は年内入試の制度と面接にまとめています。
校内の選考のしかたは、EIMEIには分かりません
枠がいくつあるか、誰が決めるか、何を見るかは高校ごとに違い、公表されていないこともあります。塾が推測で語ると、生徒が動く方向を間違えます。かわりに、確認すべきことをリストにします。聞くのは本人です。
- いつ、枠の一覧が出るのか。掲示か、進路説明会か。時期が分かれば、それまでにやることが決まります
- 誰が決めるのか。担任か、進路指導部か、学年会議か
- 何を見て決めるのか。評定平均だけか、欠席の状況や委員会・部活の記録も見るのか
- いつ決まるのか。結果が出る日と、大学への出願締切までの日数
- 希望が重なったらどうなるのか。第2希望を出せるのか
- 書類は誰が、いつまでに用意するのか。自分で書く書類の締切はいつか
推薦書について制度の事実を1つ。実施要項は「推薦書の中に……学力の三要素に関する評価についての記載を求める」と定めています。推薦書は「よい生徒です」という証明書ではありません。書くのは先生ですが、材料はあなたの学習歴と活動歴です。
評定平均はどう関わるか
「推薦は評定4.0以上」という言い方をよく聞きますが、制度の文言から見るとそういう一律の基準は存在しません。実施要項が調査書について定めているのは2点だけです。「調査書の『3.各教科の学習成績の状況』だけではなく、調査書の他の記載事項も有効に活用する。」「大学が重要と判断する教科・科目を指定し、単位修得や一定水準以上の具体的な評定の獲得を出願要件等として求めることができる。」
「求めることができる」です。基準を置くかどうかは大学の裁量で、置くなら募集要項に書かなければなりません。実施要項は「推薦要件を可能な限り具体的に設定し、募集要項等により示さなければならない」とも定めています。あるのは、大学ごとの募集要項に書かれた数字だけです。
注意が2つ。大学が置く出願要件と、高校が校内選考で使う基準は別のものです。大学が3.5と書いていても、校内で希望が重なれば、そこから先は高校の決め方です。もう1つ、調査書は方式を問わず全員必須で、評定の数字以外の記載事項も活用するよう定められています。数え方は評定平均と年内入試に書いています。
指定校をもらっても、学力の準備は要る
価値判断ではなく、制度の設計の話です。実施要項の第6「評価方法」は5つに分かれています。1が学科試験、2が共通テストの利用、3が小論文・面接・口頭試問などの活用、4が資格・検定試験の成績の活用、5が志望理由書・活動報告書・調査書などの活用です。
そのうえで学校推薦型選抜には、「調査書・推薦書等の出願書類だけではなく、第6の1から4に掲げる評価方法のうち少なくともいずれか一つを必ず活用」という条文があります。「1から4」で、「1から5」ではありません。志望理由書や調査書(第6の5)は、この「少なくとも1つ」に数えられない。書類とは別に、学科試験・共通テスト・小論文や面接・資格検定のうち少なくとも1つが必ず課される、というのが制度の要求です。
実施要項はさらに「言語能力及び数理的思考力を含め……必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力等も適切に評価」することを求め、令和9年度の通知文では変更点の第2項に「言語能力及び数理的思考力の育成に配慮することとしたこと」が挙げられています。推薦だから学力は不要、という制度にはなっていません。
入学後のことも書いておきます。文部科学省の調査では、大学を中途退学する理由の1位は「転学・進路変更」で22.0%、学力不振は7.3%です。進路変更が学力不振の3倍です。決まってから入学までに、その学部の1年次の必修科目の一覧を1枚読み、そこで使う科目の基礎を1つ埋める。経済・経営なら数学、理工なら数学と物理・化学、国際系なら英語です。面接や口頭試問がある方式なら、教科書の用語を30秒で口に出して説明する練習も。
判断の材料を5つ
1 本当に行きたい大学か
枠があるから受ける、という順番になっていないかを確かめます。進学の実態調査では、大学進学者が興味を持った大学は平均4.67校、出願したのは2.42校です。候補の半分以上は出願しないまま外れるのが普通の経路です。候補に一度も入っていなかった大学が枠として出てきたなら、そこから調べ直す時間が要ります。
2 入学後に学びたいことと合うか
読むのは1年次のカリキュラム表です。必修科目の一覧を1枚読んで、「面白そう」ではなく「これなら4年間続けられそう」で判断します。同じ「経営学部」でも数学を多用する大学とほとんど使わない大学があり、同じ「情報」でも文系型と理系型があります。
3 一般入試で受けるとしたら何が必要か
比べるには一般入試側の数字が要ります。やることは1つ。その大学の直近1年分の過去問を、受験科目すべて、本番と同じ時間で解く。科目ごとに、得点率、時間内に到達したか、落とした分野、落とし方(知らなかった/使えなかった/時間切れ/ミス)を書き出します。素点でおよそ7割が「この帯は届く」の目安です。
4 家庭で合意できているか
費用は一度だけ数字にします。初年度納付金、4年間の総額、通学時間の片道。国公立か私立か、自宅から通うか下宿かで金額は大きく変わります。一度も話さないと、合格したあとで問題になります。確約して受ける性格の方式なので、確認は出願前に終わっている必要があります。
5 取らなかった場合の代替案があるか
代替案がないまま「取らない」を選ぶのはお勧めしません。形は決まっています。今の実力で届く帯の実力校を1校、その上の挑戦校を1校、下の安全校を1校。方式は各校2つまで。同じ大学に方式を変えて2回出願するのも、対策を増やさずに機会を増やす方法です。
もらえなかったとき、その日から切り替える
校内選考で通らないことも、出願して不合格になることもあります。学校推薦型選抜の合格発表は、令和9年度入試では2026年12月1日以降で、かつ一般選抜の試験期日の10日前まで(共通テストを使う場合は前日までのなるべく早い期日)と定められています。結果のあとに一般入試までの時間が残る設計です。
- 結果が出たその日のうちに、一般で受ける3校と方式を紙に書く。考え直すのは翌日以降でよいので、まず空欄を埋めます
- 出願・試験日・発表・入学手続きの4つの締切をカレンダーに転記する
- 実力校の直近1年分の過去問を、本番と同じ時間で1科目でも解く。落とし方を4分類で書き出す
- 多い順に翌週やることを決める。「知らなかった」なら覚える、「使えなかった」なら演習、「時間切れ」なら配分、「ミス」なら見直しの手順
結果が出たあとの動き方は年内入試のあとに書いています。
一般入試と並行して準備するときの形
両方やるなら、増やさない設計にします。使う方式は2つまで。材料は3つで、評定平均と指定校の枠があるか、書類や面接に取り組む時間があるか、共通テストを受けるか。上の確認リストの4番(いつ決まるのか)が埋まっていれば、勉強を止める期間を最小にできます。校内選考の結果が出る日までは、一般入試の勉強を通常どおり続けるのが基本です。週の組み方は推薦と一般の両立にまとめています。
保護者の方へ
お願いしたいのは、確認の分担です。
- 高校に聞くことは、本人が聞く。枠の一覧、決め方、時期、併願と辞退の扱い。上のリストをそのまま持たせてください
- 費用と通学は、保護者の方が調べる。初年度納付金、4年間の総額、通学時間の片道を1回だけ調べて、1回共有する
- 4つの締切は、家のカレンダーに入れる。とくに入学手続きの締切。合格しても手続きを逃せば無効になります
残りは、高校のきまりと志望校の募集要項にしか書いてありません。校内の運用は必ず高校の先生に確認してください。そのうえで判断の材料5つを1枚に書き出せば、どちらを選んでも理由のある選択になります。EIMEI予備校では、この1枚を一緒に埋めるところから始めています。
あわせて読みたい
- 年内入試の種類(総合型・学校推薦型・公募と指定校の全体地図)
- 学校推薦型(制度の定義と出願までの流れ)
- 評定平均と年内入試(評定の数え方と、足りないときの考え方)
- 年内入試の制度と面接(面接・口頭試問の中身と準備の順序)
- 推薦と一般の両立(並行して進めるときの週の組み方)
- 年内入試のあと(結果が出てからの切り替え方)
EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
- 川越校舎(2026年6月開校)川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分。自習室は朝7時から使えます。
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