この記事は、慶應義塾大学法学部のFIT入試(総合型選抜)を考えている高校生と保護者に向けて書いています。A方式とB方式の違い、2027年度の募集要項で確認できた出願資格と試験の中身、そして高1・高2のうちに何をそろえておくかを順に説明します。今日(11月2日)が最終合格発表の日なので、今年受験した高3の人に向けた話も最後に少し入れました。
数字や日程は、慶應義塾大学の公式サイトに掲載されている2027年度法学部FIT入試募集要項と入試情報ページで確認したものだけを書いています。
FIT入試とは:A方式とB方式の2つがある
FIT入試は、法学部が行っている総合型選抜です。要項では、高い学力に加えて法律学・政治学を学ぶのにふさわしい素養があると教員に認められた人を選ぶ入試と説明され、評価の対象として主体性、社会性、想像力、コミュニケーション能力が挙げられています。
2027年度の募集人員は、法律学科がA方式・B方式あわせて最大80名、政治学科も同じく最大80名です。2つの方式は、出願資格も試験もはっきり違います。
| 項目 | A方式とB方式の違い |
|---|---|
| 評定の条件 | A方式はなし。B方式は指定5教科と全体がいずれも4.0以上 |
| 出願書類 | 共通:志願者調書・志望理由書。A方式は自己推薦書、B方式は高校の先生による評価書 |
| 第2次選考 | A方式:模擬講義と論述試験、口頭試問。B方式:総合考査Ⅰ・Ⅱ、面接 |
| 地域の枠 | B方式は全国7ブロックごとに合格者を出す |
どちらの方式も、第一志望で、合格したら入学することを確約できることが出願資格に入っています。つまり専願です。また、法律学科と政治学科の併願はできませんが、同じ学科でA方式とB方式の両方に出願することはできます。
A方式:実績で自分を推薦し、講義を聞いて書き、口頭試問に答える
出願資格
A方式には評定平均の条件がありません。そのかわり、学業を含む活動で優れた実績があることが求められ、その実績は公的な証明書などで示す必要があります。要項に挙がっている分野は、語学、文化・芸術・運動、リーダーシップ、ボランティア、国際交流、学業成績、その他のユニークな実績などです。
出願資格の条件には、高卒認定試験の合格者なども含まれています。B方式よりも出願できる人の範囲が広い方式です。
自己推薦書
A方式だけで出す書類で、2ページの所定様式です。中学卒業後の活動のうち当てはまる分野にチェックを入れ、最も顕著な取り組みと成果を簡潔に書きます。そのうえで、法学部での学びを通して社会にどう貢献できるかを、決められた枠の中で自由に表現します。字数で区切るのではなく所定の枠の中に書く形式で、別添資料(任意)はA4片面で5枚までです。工作物やビデオ、CDは受け付けられません。外国語能力などを示す証明書は公的機関が発行した原本が必要で、プリントアウトやコピーは原則として評価されないとされています。
「自由に表現」とあると何でもよいように感じますが、読むのは法学部の教員です。実績の説明で終わらせず、その経験から法律や政治のどんな問題に関心を持ったのかまでつなげて書くことを意識してください。別添資料も、枚数を埋めることより、本文に書いた実績を裏づける資料を選ぶことが大切です。
第2次選考
- 模擬講義(50分)のあとに論述試験(45分):理解力・考察力・表現力などを評価すると書かれています
- 口頭試問(約15分):複数の教員と受験生1人で、与えられたテーマについて質疑応答をします。学問的な理解力や知的表現力を見るとされています。2027年度から、始める前の自己紹介の時間はなくなりました
A方式の第2次選考は、「話を聞いて理解し、それをもとに考えて表現する」ことの連続です。50分の講義をメモしながら聞き、そのあと45分で論述するので、聞きながら要点と自分の疑問を分けてメモする練習が欠かせません。口頭試問は面接とは違い、自分のことを話す場ではなく、テーマについて考えたことを答える場です。自己紹介がなくなったことで、最初の一言からテーマの話に入ることになります。口頭試問の準備のしかたは口頭試問とは?面接との違いと学部別の準備で詳しく説明しています。
B方式:評定4.0と先生の評価書、全国7ブロックの枠
出願資格
B方式は、高校を卒業した人か2027年3月卒業見込みの人(高専3年修了者などを含む)が対象で、高卒認定試験の合格者などは出願できません。そして、調査書の外国語・数学・国語・地理歴史・公民の5教科と全体の学習成績の状況が、すべて4.0以上であることが条件です。1教科でも4.0を下回ると出願できません。
ここが、高1・高2にとっていちばん大事なポイントになります。全体の平均だけでなく、5教科それぞれで4.0以上が必要なので、たとえば数学だけ3.8という状態では出願できません。文系志望で数学を後回しにしがちな人は、早めに手を打ってください。評定の上げ方は評定平均の上げ方にまとめています。
もう一つ、在籍している(していた)高校の先生が書く評価書1通が必要です。厳封して提出します。お願いする先生とは早めに話をしておきましょう。
地域ブロック
B方式では、出身高校の所在地で全国を7つのブロックに分け、各ブロックから法律学科・政治学科それぞれ最大10名程度を合格者にするとされています。要項には、南関東以外のブロックの成績優秀者を対象にした学部独自の奨学金があることも書かれています。埼玉など南関東の高校生はこの奨学金の対象ではないので、注意してください。
第2次選考
- 総合考査Ⅰ(45分):資料から読み取れることを約400字でまとめる。社会科学に必要な論理的な思考力・考察力を見るとされています
- 総合考査Ⅱ(45分):テーマに沿って約400字の小論文を書く。創造力・独創性・発想力を見るとされています
- 面接(約10分):個人面接
総合考査Ⅰは、グラフや表などの資料を読んで、何が言えるかを短くまとめる力が問われます。400字は短いので、資料から言えることと言えないことを分け、いちばん大事な傾向から書く練習をしておくとよいでしょう。資料読み取り型の練習は小論文の資料・グラフ読み取り型が参考になります。総合考査Ⅱは発想力が見られるので、ありきたりな結論で終わらせず、自分なりの視点を一つ入れることを意識してください。
A方式とB方式、どちらを受けるか
同じ学科であればA方式とB方式の両方に出願できます(入学検定料はそれぞれにかかります)。どちらか一方に絞るか、両方出すかは、次のように考えると整理しやすくなります。
- 5教科すべての評定が4.0以上あるなら、B方式は出願できます。そのうえで、公的な証明を出せる実績があればA方式も候補になります
- 評定は足りないが、証明できる実績があるなら、A方式が中心になります
- 評定も実績も足りない場合は、高2のうちにどちらを伸ばすかを決めて動き出す必要があります
両方に出す場合、第2次選考はA方式が9月19日、B方式が9月20日と2日続きになります。A方式は講義を聞いての論述と口頭試問、B方式は資料読み取りと小論文と面接で、求められる練習が違うので、夏休みの練習計画を両方の分だけ立てておいてください。
共通の書類:志望理由書は自筆800字以内
A方式・B方式とも、志望理由書を出します。本人の自筆・横書きで800字以内、内容は「法学部で法律学または政治学を学ぼうと考えた理由と、それが将来にどのような意味を持ち得るか」です。
法律学科と政治学科は併願できないので、志望理由書はどちらの学科なのかがはっきりわかる内容にする必要があります。「社会の役に立ちたい」だけでは、法律学なのか政治学なのかが伝わりません。関心のある具体的な問題(たとえば身近なルールのあり方なのか、選挙や政策の決まり方なのか)から書き始めると、学科との結びつきが自然に出てきます。自筆なので、下書きを固めてから清書する時間を必ず取ってください。
2027年度の日程と、今日(11月2日)の時点で
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 出願登録・入学検定料の支払い | 2026年8月3日 10:00〜9月3日 17:00 |
| 出願書類の郵送 | 2026年9月1日〜9月3日(消印有効・速達簡易書留) |
| 第1次選考合格発表 | 2026年9月15日 10:00 |
| 第2次選考 | A方式 9月19日/B方式 9月20日(三田キャンパス) |
| 最終合格発表 | 2026年11月2日 10:00 |
| 入学手続期間 | 2026年11月27日〜12月11日 |
今年受験した高3の人へ。今日の10時が最終合格発表でした。合格した人は、入学手続期間が11月27日から12月11日までなので、書類をそろえておきましょう。結果が届かなかった人は、ここまで準備してきた志望理由書や小論文の力はほかの入試でも使えます。一般選抜への切り替えについては年内入試の結果が出たあとにやることを読んでみてください。
高1・高2がいまから始める準備
FIT入試は出願が高3の8月から9月初めと早く、第2次選考も9月中旬です。高3の夏休みは書類の仕上げと試験対策でほぼ終わるので、材料集めは高2までに済ませるつもりで動いてください。
高1・高2の冬(いま〜3月)
- B方式を考える人は、5教科それぞれの評定を確認し、4.0に届いていない教科を学年末テストで立て直す
- A方式を考える人は、これまでの活動のうち公的な証明が出せるものを整理する。英語の資格や大会の成績などは、証明書を必ず保管しておく
- 新聞やニュースで、法律や政治に関わる話題を一つ選んで、自分の考えを200字ほどで書いてみる
高2の春〜高3の夏
- 法学部のオープンキャンパスや公開講座に参加し、法律学科と政治学科のどちらで学びたいかを決める
- 大学の講義動画などを50分聞いてメモを取り、45分で論述する練習をする(A方式)
- 統計資料を読んで400字でまとめる練習をする(B方式)
- 高3の6〜7月に志望理由書と自己推薦書の下書きを作り、8月に清書する
- B方式の人は、評価書をお願いする先生に高3の早い時期に相談する
同じように地域ブロックの枠がある入試として、早稲田大学社会科学部の全国自己推薦入試もあわせて読むと、両方の準備をどう重ねられるかが見えてきます。
参考にした公式情報
入試の内容は変更されることがあります。出願前に必ず大学の公式発表を確認してください。
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