この記事は、理系を志望していて物理の固め方が決まっていない高校生と保護者の方に向けて書いています。物理は力学と電磁気の2分野で配点の大半が決まる科目です。自作読本『物理 頻出単元と大学別対策』の過去問分析をもとに、この2分野が大学ごとにどれだけを占めるか、何が出てどう解くかを書きます。川越校舎で理系の生徒に見せている数字です。
力学と電磁気で、物理の何割が決まるのか
読本のもとは、早稲田・明治・青山学院・立教・中央・法政・慶應義塾・学習院・東洋・東京電機の物理の入試問題です。大学別の対策読本をつくる過程で過去問の冊子を年度別・大問別に読み込んだ集計を、単元別に並べ替えました。
- 法政大学(A方式6冊)小問計30問中、大問Ⅰの力学が9問、大問Ⅱの電磁気が7問で30問中16問。6冊すべて同じ構成です。
- 立教大学(6日程36題)電磁気10題・力学8題で36題中18題。電磁気は4日程で2題に増えます。
- 中央大学(4冊)力学4/4が大問Ⅰ、電磁気4/4が大問Ⅱで3題中2題が固定。
- 青山学院大学(7冊)力学7/7・電磁気7/7。全学部日程・理工A方式・理工B方式のすべてです。
- 慶應義塾大学理工学部は大問1の力学3/3・大問2の電磁気3/3で3題中2題。医学部も力学3/3・電磁気3/3。
- 東洋大学(8本)大問Ⅱの力学が8本中8、大問Ⅲの電磁気が8本中8で3題中2題とされています。
- 東京電機大学(15本)力学は記述式の問3で15本中13本、電磁気は問2でほぼ全て。大問3題・配点100点のうち2題とされています(電磁気は分母つきの数値が原資料にありません)。
- 明治大学理工学部はA枠の力学3/3・B枠の電磁気3/3、早稲田大学は理工3学部共通と教育学部理学科B方式が力学・電磁気とも3/3とされています。
- 学習院大学(4冊・全10大問)力学4・電磁気3。ただし原資料自身が「n=4では判定不能」と注記しています。
大学ごとに冊数も大問の数え方も違うため、大学をまたいだ比較はできません。同じ大学の中で単元同士を比べるか、同じ分野で大学ごとの出る・出ないを個別に見ます。読本を横断すると、力学も電磁気も「出ない」年度・冊子が見当たりません。全体像は物理の頻出単元と大学別対策にあります。
力学:出るテーマは大学をまたいで重なります
力学は運動方程式・エネルギー保存則・運動量保存則・円運動・単振動・衝突などを扱う分野です。読本のテーマはこうです。
- 東洋大学は大問Ⅱで毎回、放物運動・衝突・単振動・円運動・振り子のうち複数を組み合わせた誘導問題を出しているとされています。
- 法政大学の大問Ⅰ(小問9問)は、衝突・反発係数が4冊、摩擦が3冊、円運動・単振動が3冊という内訳です。
- 中央大学も大問Ⅰで衝突・円運動・単振動が中心テーマに挙げられています。
つまり衝突・円運動・単振動が複数の大学で共通の主役です。ここに摩擦と放物運動を足した範囲を最初に仕上げます。力学は大問の位置が固定された大学が多く、過去問でどこから手をつけるか迷いません。
力学の解き方、5つの手順
- 図をかいて力をすべて書き込む。物体ごとに1枚。見るのは「接触しているもの」と「接触していないもの」。接触面には垂直抗力と摩擦、糸には張力、離れていても重力。落としやすいのは摩擦の向きと、2物体が押し合う力の組。
- 座標を決める。斜面なら斜面に沿う向き、円運動なら中心向きを正に。決めた瞬間に符号が決まります。途中で軸を変えないのが原則です。
- 運動方程式か保存則かを選ぶ。見るのは問われている量。「何秒後」「加速度」なら運動方程式、始めと終わりの状態だけなら保存則。衝突は運動量保存と反発係数を並べ、円運動は中心方向が運動方程式で速さはエネルギー保存。単振動は、加速度がマイナス(定数)×(変位)の形になるかを見ます。
- 文字で解ききる。数値代入は最後まで我慢します。東洋の大問Ⅱや法政の大問Ⅰのような誘導形式は前の答えを次で使うため、途中で数値にすると戻れません。
- 単位と極限で検算する。次元を見て、そのあと質量をゼロに、角度をゼロに、摩擦をなしに。既知の形に戻ればまず合っています。
電磁気:コンデンサーと電磁誘導が軸です
電磁気は直流回路・コンデンサー・電磁誘導・荷電粒子の運動などを扱う分野です。公式の数が力学より多く、回路図や電場・磁場の向きを追う練習量が得点に直結します。
- 東洋大学の大問Ⅲはコンデンサー(直並列・誘電体挿入・力の導出)が8本中5回で最多、電磁誘導・電流が作る磁界が3回とされています。
- 中央大学は大問Ⅱの4冊のうち電磁誘導が3冊です。
- 法政大学の大問Ⅱ(小問7問)はコンデンサーが3冊、電磁誘導が2冊という内訳です。
- 立教大学は電磁気が同大学の中で出現大問数の最も多い分野で、コンデンサー・電磁誘導・荷電粒子の運動を連続して扱う準備が必要です。
- 学習院大学は全10大問中3が電磁気で、うち2024年度理学部プラス試験の第1問(80点)は電磁気と原子の融合大問でした(分母4冊のため断定はできません)。
電磁気の解き方、5つの手順
- 図を自分で書き直す。電池の向き、極板の正負、電流の向きを自分で書き入れます。スイッチが切り替わる問題は前と後で図を2枚に分けるのが基本です。
- 何が固定され、何が保存されるかを決める。コンデンサーは、電池につないだままなら電圧が固定、切り離したなら電気量が固定。孤立した導体部分では電気量の和が保存します。回路はキルヒホッフの2法則。ここを決めれば、あとは連立方程式。
- 力学に翻訳する。荷電粒子の運動は、電場・磁場から受ける力を書き込んだ時点で力学の問題です。前の節の手順2と3に戻ります。電磁誘導も、導体棒に働く力と誘導起電力を別々の式にします。
- 文字で解ききる。電気容量・抵抗・磁束密度は文字のまま持ち回ります。
- 向きと極限で検算する。誘導電流の向きは式とは別にレンツの法則で確かめます。極限は、誘電体を抜く・抵抗をゼロや無限にする、が使いやすいです。
熱力学・波動・原子はどこまでやるか
ここが志望校で分かれます。読本の実測値を出方で3つに分けます。
- 毎回きっちり出る:法政大学はA方式6冊すべてで大問Ⅲが熱力学・小問7問(ピストン/シリンダー4冊・断熱変化3冊)、大問Ⅳが波動・小問7問(光4冊・音2冊)。立教大学は36題のうち熱力学6題・波動6題・原子6題で6日程すべてに毎回1題ずつ入り、原資料は「後回しにしてよい分野はない」と評価(波動はドップラー効果が6回中4回)。東洋大学は熱力学8本中7、波動8本中5とされています。
- 出題ゼロの記録がある:原子は東洋大学が8本中0とされ、青山学院大学が2023〜2025年度の7冊中0冊、中央大学が4冊中0冊、法政大学がA方式6冊で0冊、早稲田大学理工3学部共通が3年中0年。波動は学習院大学が4冊とも0、熱力学は青山学院大学が7冊中1冊(2023年度の理工A方式のみ)。
- 順番が回ってくれば出る:慶應義塾大学理工学部は大問3が熱力学・波動・原子のローテーションで各3年に1回。明治大学理工学部もC枠が波動(2024年度)・熱力学(2025年度)・原子(2026年度)と入れ替わり、原資料は原子を「後回しでよいが、2026年度に出たため完全放置は危険」と評しています。東京電機大学も問1の3小問で3分野が交代するとされています。
ゼロを「範囲外」と読み替えないでください。中央大学の原資料は0/4を「範囲外である保証はない」と明記し、学習院大学の波動0も「n=4冊では断定できない」と注記されています。また同じ大学でも学部で正反対になります。慶應義塾大学は医学部が原子3/3、理工学部は3年に1回ですが出た年は大問まるごとで配点の約3分の1。早稲田大学は理工3学部共通が3年中0年、教育学部理学科B方式が3年中2年で、原資料は「理工志望なら原子は後回し可、教育学部志望は原子が必須」と書き分けています。
つまり力学と電磁気は志望校が決まる前から始めてよく、熱力学・波動・原子は受ける学部・方式が決まってから優先順位を決めるのが順序です。配分は理系の大学別 数学・理科も参考に。
記述式か空所補充式かで解き方を変えます
- 導出過程まで書かせる:東京電機大学は問3が全15本で「導き方も付して解答する完全記述式」とされています。学習院大学は全問記述式で「結果だけでなく考えの筋道も書きなさい」が全大問の冒頭に付きます。中央大学の共通テスト併用方式は全問記述で、2025年度は「導出の過程も含めた答えを書きなさい」と明示。慶應義塾大学医学部は全問記述で論述が毎年3〜5問です。
- 記述だが答えのみ:法政大学は全問記述ですが6冊中6冊で「余白は計算に使ってよいが採点の対象とはしない」と明記され、論述は6冊中0冊。青山学院大学理工A方式は答えのみを記入する形式で、早稲田大学理工3学部共通の〔Ⅱ〕〔Ⅲ〕も答えのみとされています。
- 空所補充・マーク:東洋大学は全8本すべて100%マークシートで、記述式設問・計算過程の記入欄はないとされています。慶應義塾大学理工学部は3大問すべて空欄補充で論述・描図とも3年間ゼロ、青山学院大学全学部日程は全問マーク、明治大学は全問マークに記述欄1個とされています。
- 描図がある:青山学院大学理工A方式は2024・2025年度の2年連続で作図。立教大学は6日程中3日程で作図があり、1日程はx-tグラフの描図そのものを求めます。法政大学は6冊中2冊、中央大学は共通テスト併用方式の2冊です。
変えるのは3つ。マーク・空所補充の大学では答えに最短で届く練習を。途中点も期待できないので検算の手順5は必ず通します。導出を書かせる大学では、解けた問題を白紙に答案として書き直す練習を週1〜2題。描図がある大学では、軸の名前・目盛り・傾きの符号・折れ曲がる点の座標を言えるか確認します。
記述で何を書くか
読本に「書くべき3要素」という記載はありません。あるのは学習院大学の「考えの筋道も書きなさい」、中央大学共通テスト併用方式の「導出の過程も含めた答えを書きなさい」という設問側の要求までです。指導で使う型は3つです。
- 使う法則の名前と適用する対象。「物体Aについて斜面方向の運動方程式」のように、どの物体のどの向きかまで書きます。
- その法則を式にしたもの。問題文にない文字は「棒の長さをl、傾きをθとする」と宣言してから使います。
- 何を消して何を残したか。「上の2式から張力を消すと」の一行があれば、連立の過程は全部写さなくてよいです。
演習の回し方と、間違いの分類
本数の目安は週5題。力学2題・電磁気2題を固定し、志望校で必出の第3分野を1題足します。答え合わせと直しに、解くのと同じだけ時間をかけます。直すときは間違いを4つに分けます。
- 図の段階で落ちた(力や電気量の書き漏らし、向きの逆)→ 解き直さず、図だけを3題分かき直します。
- 法則の選択を間違えた(保存則で済む場面で運動方程式を立てた、電圧固定と電気量固定の取り違え)→ 同じテーマを3題並べ、手順の判断だけを声に出して言います。
- 式は正しいが計算で落ちた→ 物理の問題ではありません。計算ミスを減らす方法に移ってください。
- そもそも知らなかった→ その場で教科書に戻ります。ここだけは演習を止めて構いません。
1か月続けると、失点の偏りが数で見えます。偏った1種類を潰すのが一番早く点が動きます。
残り3か月の組み方
- 1か月目:力学と電磁気だけ。上に挙げたテーマを各3題ずつ、週5題のペースで回します。
- 2か月目:志望校の第3分野を足し、形式を合わせる。法政・立教・東洋のように熱力学や波動が毎回出るなら、この月に力学・電磁気と同じ水準へ上げます。ローテーションの大学は一通り触る程度で構いません。並行して、記述なら導出を書く、マークなら時間を計る練習を。
- 3か月目:年度通しで、大問番号の順に。大問構成が固定された大学が多いので、本番と同じ順番・時間で通します(過去問はいつから何年分やるか)。東京電機大学のように記述式の大問の位置が分かるなら、その大問だけ週2回に増やします(東京電機大学の数学・理科)。
物理が苦手な人の立て直し手順
苦手だと言う人の多くは分野を広げすぎています。立て直すときは逆に範囲を狭くします。
- 図がかけているかだけを確認する。手が止まった問題を3題、答えを見ずに図と力だけかきます。止まるなら原因は公式ではなく作図です。
- 1題を最後まで文字で解ききる。解答を見ながらでも構いません。文字で最後まで行った1題が次の型になります。
- 同じ題を3日後に白紙から解く。解けたら次のテーマ、解けなければ同じ題。新しい問題はこの往復ができてから増やします。
- 力学の3テーマ(衝突・円運動・単振動)に絞る。複数の大学で共通の主役なので、志望校が動いても無駄になりません。
間に合わないと感じているなら、理科全体の順番を組み替えるほうが早いこともあります。理科が間に合わないときの優先順位を先に読んでください。勉強がうまく進まないつらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口にも相談してください。
あわせて読みたい
- 物理の頻出単元と大学別対策|5分野の優先順位。
- 理科が間に合わないとき|残り時間が少ない人へ。
- 理系の大学別 数学・理科|数学と理科の配分。
- 計算ミスを減らす方法|式は合うのに落とす人へ。
- 東京電機大学の数学・理科|記述式の問3への備え。
- 過去問はいつから何年分やるか|量と時期。
EIMEI予備校について
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