「通史は一周したのに、過去問になると解けない」。世界史で多い相談です。この記事は、川越の高校生・既卒生で世界史を使う人に向けて、通史をタテ(地域ごとの流れ)とヨコ(同時代の各地域)に組み替える手順を書きます。原因は覚えた量ではなく「濃さの配分」であることが多いからです。以下の数字は、大学ごとに自作している入試対策読本の制作で集めた過去問分析データの実測値です。
「全範囲を同じ濃さで」は成立しません
- 青山学院大学 経済学部A方式:4年分(2023〜2026年度)のⅠ・Ⅱ計8大問のうち5大問がヨーロッパ。西アジア・中国は2大問のみで、アフリカが主題の大問はゼロ、アメリカが主題の大問もゼロ。
- 学習院大学:3年分10冊=50大問の集計で、中国史が約12大問と最頻出。古代地中海約9、ヨーロッパ中世・近世約5、近代欧米約3、イスラーム・西アジア・インドで約5、アフリカ約5、東南アジア・アメリカ大陸で約3です。
- 慶應義塾大学 経済学部B方式:1500年以前に関わる小問が3年計72小問中3問(4.2%)のみ。19〜20世紀に約8割が集中します。
- 慶應義塾大学 文学部:12大問の地域内訳はヨーロッパ5が最多で、ラテンアメリカ・北米2、アフリカ1、南アジア1。
- 法政大学:A方式10冊すべてで「アジア1+ヨーロッパ1+(アメリカ/現代国際/テーマ史)1」という型が共通。そのアジア枠は中国史が10冊中5冊を占めます。
「ヨーロッパ中心に深く」「50大問を広く均等に」「19世紀以降に集中」「毎回同じ3枠」。必要な設計がまったく違います。地域ごとの一般的な頻度は世界史の頻出単元の記事にありますが、そこから先は志望校の配分で決まります。なお分析した冊数や大問の数え方が大学ごとに違うので、大学をまたいだ数値の比較はできません。
タテ(地域ごとの流れ)の作り方
二本柱は端点を決めて一本の線にする
中国・東アジア史とヨーロッパ史(古代地中海を含む)は、読本で分析したどの大学の資料でも出題が確認でき、「まったく出ない」学部・年度はありませんでした。志望校に関係なく先に線をつなぎます。
中国・東アジアは殷周秦漢から隋唐宋元明清、近現代の中国までを一本に。学習院大学の約12大問はこの全期間に及びます。慶應義塾大学法学部は12大問中で主題が3、早稲田大学文学部は中国史1題が3年とも出る型、東洋大学は4日程中3日程で大問Ⅰが中国史とされています。つなぐ単位は王朝名ではなく統一と分裂/税制と土地制度/周辺勢力との関係/東アジアへの波及の4本。同じ4本を各王朝に当てると比較ができます。
ヨーロッパは古代ギリシア・ローマから現代までを一本に。学習院大学は古代地中海が約9大問で細かい人名まで問われ、中世近世・近代欧米を足すと約17大問に達します。
三本目以降は志望校のデータで決める
西アジア・イスラーム史から先は位置づけが変わります。学習院大学は「イスラーム・西アジア・インド」で約5大問、慶應義塾大学法学部は12大問中2、法政大学は10冊中2冊。明治大学は情報コミュニケーション学部・文学部で3年とも出るとされ、東洋大学はオスマン帝国やイスラーム哲学科学史が毎年度1大問程度とされています。王朝の興亡だけで足りるか、学問史・文化史まで要るかが分かれ目です。
タテは地域ごとに「どの時代から、どの時代まで」の端点を先に紙に書くと迷いません。中国は殷から現代、ヨーロッパは古代ギリシアから現代、西アジアは古代オリエントから中東の近現代、南アジアは諸王朝から独立運動まで。端点の間は年号ではなく「変化の理由」でつなぎます。用語自体が残らない人は社会の暗記が定着しないときを先に読んでください。
ヨコ(同時代の各地域)の作り方
横に並べる軸は出題テーマから借りる
ヨコは同じ年の出来事の丸暗記ではなく、軸を一つ立てて複数地域を貫く作業です。出題に使われる軸は5つに整理できます。
- 交易・物流:学習院大学のサハラ交易・スワヒリ語圏、慶應義塾大学経済学部B方式のカリブ海の奴隷貿易、中央大学経済学部2/14方式の銀の流通・大豆のグローバル史。
- 戦争と国際政治:東洋大学は近現代の国際政治外交史(講和・戦間期・冷戦)が年代整序の主戦場とされ、法政大学は2025年度に冷戦・中東・難民で2大問が現代史。
- 思想・文化:中央大学の商学部会計・経営学科は毎年Ⅰ・Ⅱのいずれかが哲学思想史・ロマン主義・科学技術史の独立大問。
- 技術と制度:慶應義塾大学商学部A方式は3年とも中国が登場し、列強の中国分割・技術革新・税制がテーマ。
- 資源・環境:青山学院大学経済学部A方式は第五福竜丸・パグウォッシュ会議・チョルノービリ原発事故(1986年)まで、慶應義塾大学経済学部B方式ではCOP27も問われます。
立教大学はこの軸立てがそのまま得点になります。地域配分がほぼ毎回「全地域横断」で、イスラーム・南アジア・東南アジア・アフリカ・ラテンアメリカが各大問に混じります。
ヨコが直接問われる形式
- 東洋大学:2022年度は年代整序が「ほぼ全日程・各大問に1問以上」、4〜5個の並べ替えとされています。
- 慶應義塾大学法学部:年代整序が毎年3〜5問。2024年度Ⅳは史料8点を年代順に並べる16択。
- 青山学院大学経済学部A方式:年代の前後判定(8択)が2023・2024年度に頻出。
- 立教大学:年代配列が毎回複数出て、写真の年代配列もあり。「あてはまるものがない場合はeをマークせよ」が2023年度以降ほぼ全問に付くため、4択でも実質5択です。
志望校はタテ重視かヨコ重視か
直近3年分で次の4つを数えれば分かります。
- 大問ごとに主題の地域を一つ書き出し、分母つきで数える(例:8大問中ヨーロッパ5)。
- 1大問=1地域で割り切れるならタテ寄り、毎大問に複数地域が混じるならヨコ寄り。
- 年代整序・配列・前後判定の設問数を数える。1大問に1問以上あればヨコの比重が高い。
- 論述の有無と字数、前近代と近現代の大問数を確認する。
この手順だと、青山学院大学経済学部A方式はタテ寄り、立教大学はヨコ寄り、法政大学は「タテ3本を型どおり用意する」型です。併願先どうしの違いはGMARCHの日本史・世界史の比較や早慶の社会科目もあわせて確認してください。
手薄になりやすい地域
「後回しでよい」と一般化するのが最も危険な部分です。大学ごとに真逆の事実が並びます。
アフリカ——下げてよい側:青山学院大学経済学部A方式は4年間で主題の大問がゼロ、同大学の全学部日程でも単独大問にならず「帝国主義・アフリカ分割」の枠で数問のみ。東洋大学も他地域の大問内1〜2問とされています。踏み込む側:学習院大学は50大問中約5大問で、ガーナ・マリ・ソンガイ王国、サハラ交易、パン=アフリカ会議まで。中央大学法学部別選抜は2026年度に地域重心が「アフリカ」の大問1題(河川の地図付き)。慶應義塾大学経済学部B方式はコンゴ・南アフリカ・エチオピアが挙がります。なお早稲田・明治・立教・法政の資料にはアフリカ史単独の頻度記載がなく、これは出ないのではなくデータがないという意味です。
アメリカ大陸——青山学院大学経済学部A方式は4年間で主題の大問ゼロ、全学部日程でも2024年度のⅡ一つ分(15問)のみ。一方、慶應義塾大学は文学部が12大問中ラテンアメリカ・北米2、経済学部B方式はチリのアジェンデ政権まで扱います。
東南アジア・南アジア——法政大学は10冊中で東南アジア1冊・インド2冊、東洋大学は単独大問では出にくいとされています。逆に明治大学は商学部で東南アジア/太平洋が3年とも出るとされ、中央大学は法学部別選抜2025年度の地域重心に「インド」が入ります。
内陸アジア・朝鮮・カフカス——いちばん見落とされる枠です。法政大学は10冊中で中央ユーラシア1冊・朝鮮1冊。早稲田大学教育学部は「中国・内陸アジア」が3年とも、明治大学経営学部は「内陸アジア・イスラーム」が2年分とも出るとされ、立教大学は2024年度2/8にカフカスの大問がありました。
現代史をどこまでやるか
- 毎年1大問分:慶應義塾大学文学部・法学部は現代(戦後〜2020年代)が毎年必ず1大問分。法学部は2024年度にターリバーン復権、2025年度にウクライナ侵攻・ガザ侵攻まで扱います。
- 19世紀以降がほぼ全部:慶應義塾大学経済学部B方式は19〜20世紀に約8割、1500年以前は72小問中3問のみ。21世紀(香港、シェンゲン協定関連)も毎年出ます。
- 年度で振れる:青山学院大学全学部日程は大問Ⅲが必ず19世紀以降ですが、前近代と近現代の比率は2023年度が約31:15、2024年度が約20:28、2025年度が約30:20と振れ、2025年度は20世紀がほぼ出ていません。
- 試験日で変わる:立教大学はおおむね5:5ですが、2026年度2/8は3大問中2大問が20世紀以降でした。
- 相対的に薄い:学習院大学は現代(戦間期〜冷戦後)が50大問中約3大問で、長文読解型に集中します。
目安は単純です。直近3年で戦後以降を扱う大問が1つでもあれば、冷戦の終結から現在までを一本の線として仕上げる。前近代中心の年が続いても、大問Ⅲが必ず19世紀以降のような固定枠があれば近現代は捨てられません。
ノート・年表は作るか、作らないか
作らなくてよい人:1大問=1地域で割り切れ、年代整序がほとんどなく、論述もない場合。過去問のコピーの余白に「主題地域」と「間違えた理由」を書くだけで足ります。
作るべき人:年代整序・配列が毎回複数出る、地域縦断型の大問が出る、論述が毎年ある大学を受ける人。ヨコの年表を1枚だけ作り、項目は5つに絞ります。
- 西暦(特定できないものは「〇世紀前半」まで)
- 地域(中国/ヨーロッパ/西アジア/南アジア・東南アジア/アフリカ/アメリカで列を分ける)
- 出来事の名称と、その原因・結果を一行ずつ
- 同じ10年に入る他地域の出来事(ここがヨコの本体)
- 指定語句になりそうな用語に印
形式に合わせた工夫も加えます。学習院大学は誤りの語句と正しい語句を両方書かせる誤文訂正が毎冊必出なので、用語の隣に「よく混ざる別の用語」を並べる。慶應義塾大学文学部は地図なしで位置情報を言葉で問う設問が毎年入るので、地名は文章で説明できるようにする。立教大学は地図がほぼ毎回1〜2問なので白地図への書き込みが効きます。
年代整序問題の解き方
- いちばん古いものといちばん新しいものだけ先に決める。両端が決まれば候補は大きく減ります。
- 残りに「何世紀の前半・後半か」のラベルを付ける。ここで大半は絞れます。
- 同じ地域の出来事が2つ以上あれば因果でつなぐ。この戦争の結果この条約、という順序は年号なしで確定できます。
- 地域が違って迷うものは、講和会議・戦争の開始と終結・冷戦の節目で前後を挟む。東洋大学は近現代の国際政治外交史が主戦場とされるので、この3期間は年表の精度を上げます。
- 立教大学のように「該当なし」が付く形式では、1つに絞ったあとその選択肢が本当に成立するかを確認します。
外したときは答えを覚えるのではなく、両端の判定を外したのか、真ん中の因果を外したのかを区別して記録します。偏りが見えれば、直すのはタテかヨコかです。
論述でタテ・ヨコはどう問われるか
ヨコを書かせる型の代表は早稲田大学法学部です。250〜300字・指定語句4つ下線必須で、3年とも同じテーマ系統(近現代の非ヨーロッパ地域と欧米の支配)とされています。一つの地域のタテだけでは書けません。青山学院大学文学部史学科は3年とも350字以内です。
タテを書かせる型は短いものに多く、中央大学法学部別選抜は2024年度に5問(10〜80字)、2025年度に3問(10〜45字)、2026年度に3問(10〜50字)。慶應義塾大学商学部A方式は毎年2〜3題の15〜40字のみ。学習院大学は文学部コアだけが200字論述2題で、他の学部コアは論述ゼロです。
量が年度で動く大学もあります。慶應義塾大学法学部は2024年度が論述なし、2025年度が300字×2題、2026年度が200字+240字。一方で法政大学はA方式10冊すべて論述ゼロ、東洋大学は記述式が一切ないとされています。書き方は社会の論述の書き方にまとめました。
残り3か月での組み方
- 最初の2週間:志望校の直近3年分を、上の4項目で数えるだけに充てます。ここを飛ばすと、また全範囲の薄い塗り直しです。
- 10月〜11月:タテの補修が先。分母の大きい地域から順に端点を決めて線を引き直します。二本柱が薄い人は他地域に広げる前にここを埋め、年代整序が多い大学を受ける人だけヨコの年表を週1時間ずつ足します。
- 12月以降:ヨコと形式に寄せます。志望校にある形式だけを時間を計って解き、現代史の線を通しで確認します。
併願する人は、配分が食い違う地域だけリストにします。その場合はいちばん深く問う大学の水準で作るほうが速いです。科目全体の進め方から見直したい人は日本史・世界史の勉強法に戻ってください。うまく進まない状態が長く続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口にも相談してみてください。
川越校舎では、志望校の過去問を一緒に数えてタテとヨコの配分を決めるところから始めます。自習室は朝7時から使えます。
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EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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