この記事は、理科の演習が間に合いそうにない、学校の授業がまだ入試範囲の終わりまで届いていない、という理系志望の高3生・既卒生に向けて書いています。川越校舎の面談でも、9月以降は必ず出る相談です。単元の中身には踏み込まず、残り時間をどこに寄せるかの決め方に絞ります。
まず「間に合わない」を4つに分ける
「間に合わない」の中身は人によって違います。手の打ち方を誤らないために、自分がどれなのかを先に切り分けてください。
- ①学校の進度が入試に追いついていない/物理の原子、化学の高分子、生物の生態・進化系統のように、教科書の後半にある単元が入試に出る。
- ②既習範囲の演習量が足りない/習ってはいるが解いた回数が少なく、初見の問題で手が止まる。
- ③計算に時間がかかる/解き方は分かるのに、時間内に終わらない。
- ④知識問題の取りこぼし/用語・反応・名称のレベルで落とす。
①は範囲を埋める、②は型を増やす、③は速度を上げる、④は抜けを拾う作業で、必要な時間の単位が違います。④は1日単位で動きますが、②は週単位、③と①は月単位でしか動きません。残り時間が短いほど、④→③→②→①の順に効果が出やすいと考えてください。
残り時間を寄せる先は、科目ごとに違う
大学ごとに入試対策読本を自作していて、過去問を年度別・大問別に読み込んだ集計があります。以下はその内訳です。数え方が大学ごとに違うので、同じ大学の中で単元同士を比べる読み方をしてください。
物理:力学と電磁気は例外なし、差が出るのは波動・熱力学・原子
力学と電磁気は、頻度が数字で残っている大学のどこでも出ています。青山学院大学は物理7冊で力学7/7・電磁気7/7、法政大学のA方式は6冊で力学6/6・電磁気6/6、東洋大学は8本で力学8/8・電磁気8/8、中央大学は4冊で力学4/4・電磁気4/4。東京電機大学は完全記述式の問3に力学が置かれる回が15本中13本です。この2単元を後回しにする選択は、志望校を問わずありません。
残り3単元は分かれます。法政大学のA方式は6冊すべてで熱力学6/6・波動6/6が同じ大問番号に置かれる一方、原子は6冊中0冊。青山学院大学は波動が7/7なのに熱力学は7冊中1冊、原子は7冊中0冊。立教大学は6日程36題の内訳が電磁気10・力学8・熱力学6・波動6・原子6で、5分野すべてが毎年そろいます。
学部・方式でも変わります。慶應義塾大学は医学部で原子が3/3ですが小問1〜2問で計算は軽く、理工学部は3年に1回しか回ってこない代わりに、出た年は大問まるごとで配点の約3分の1を占めます。早稲田大学は理工3学部共通で原子が3年間ゼロ、教育学部理学科B方式では3年中2回。明治大学理工学部のC枠は2024年度が波動、2025年度が熱力学、2026年度が原子と入れ替わります。
寄せ先/直近3年分の大問構成を単元名で書き出し、「毎年同じ番号の固定枠」「年ごとに入れ替わるローテーション枠」「数年分ゼロの枠」に分けます。時間は固定枠に寄せ、ローテーション枠は当たれば大問まるごとなので捨てずに典型だけ通します。頻度は物理の頻出単元の記事にあります。
化学:理論と有機が軸、無機と高分子は学部で正反対になる
理論化学と有機化学は、青山学院大学が化学9冊で理論9/9・有機9/9、立教大学は理論6/6で毎回2題以上・有機6/6で毎回必ず最終大問、中央大学は理論5冊中5冊です。中央大学の有機は大問としては5冊中3冊ですが、小問集合を含めると5冊中5冊。「大問として出るか」と「小問で出るか」を分けて数えないと、必要な量を見誤ります。
理論の中の比重も偏ります。法政大学のA方式は理論6冊中6冊で、内訳の上位が電気化学4冊・結晶格子3冊・化学平衡3冊。東京電機大学は電気化学が15本中7〜8本で先に固めるべき分野の2位、慶應義塾大学も4学部すべてで優先度が高いとされています。
差が大きいのは無機化学と高分子化合物です。青山学院大学は高分子が9冊中3冊ですが、全学部日程は4年中3年出る一方で理工A・B方式は5冊すべてゼロ、合成高分子(樹脂・ゴム・繊維)は9冊すべてゼロです。慶應義塾大学は看護医療学部で無機の独立大問が3年間ゼロ、薬学部の高分子も生体高分子中心で合成高分子の本格出題は3年間ありません。逆に早稲田大学の理工3学部共通は高分子が3/3で、「後回しにできると誤解されがちだが実は頻出」と読本が念押ししています。
寄せ先/理論と有機を土台に、電気化学・結晶格子・化学平衡・中和滴定の計算から固めます。無機は系統分離と工業的製法の2本柱から。熱化学は中央大学・明治大学農学部・法政大学が2026年度からエンタルピー表記に移っているので、直近の過去問で表記を確認してください。内訳は化学の頻出単元の記事へ。
生物:代謝と遺伝情報の発現は共通、他は大学で正反対になる
法政大学のA方式は生物6冊で遺伝情報6冊中6冊が最頻出、進化系統5冊・代謝4冊と続く一方、細胞分子は6冊中1冊で「単独テーマとしては希薄」とされています。中央大学は5冊で遺伝情報4冊・生態4冊・進化系統4冊が上位、植物の反応は5冊中0冊。逆に明治大学農学部は植物の反応が3/3で最優先、進化系統は3年間ゼロです。慶應義塾大学医学部は代謝3/3・遺伝情報3/3・進化系統3/3が最頻出な一方、古典遺伝は3年とも未出、恒常性も大半が未出で免疫だけが2025年度に出ています。東京電機大学は遺伝計算が15本中13本前後です。
数え方で印象が変わる例もあります。立教大学は大問Ⅱ〜Ⅳでは遺伝情報6/18が最頻出で生態は0/18ですが、小問集合の大問Ⅰでは細胞分子・代謝・遺伝情報が各6/6、生態も6日程中3日程で出ています。大問では出ないが小問では毎回出る単元を「出ない」と扱うと取りこぼします。
配点が薄い枠/東洋大学と東京電機大学は、進化・系統をどちらも高頻度としながら、「1大問あたりの設問数が4〜5問と少なめ」「大問3で深く問われることは少なく配点も小さい」と付記しています。頻度が高くても配点が薄い単元は、深追いせず典型問題の反復で止めます。詳しくは生物の頻出単元の記事へ。
学校で未習の範囲を、自分で先に進めるかどうか
- 志望校でその単元が出るか/数年分ゼロが続く単元は優先度を下げられます。ただし中央大学の原子について読本が「範囲外である保証はない」と注記しているとおり、ゼロは「今のところ確認できていない」という意味です。典型1〜2パターンで止めます。
- 他の単元と繋がっているか/物理の力学は電磁気や原子の土台、化学の理論は無機・有機・高分子の計算の土台、生物の遺伝情報の発現は代謝でも進化系統でも実験考察の材料になります。繋がりが強い単元は未習でも進める価値があります。
- 独習しやすいか/典型パターンが限られている単元(原子、電気化学の計算など)は授業を待たずに進めやすい部類です。逆に有機の構造決定や生物の実験考察は、初見データを読む練習量そのものが必要で時間がかかります。
1番が○で2番か3番のどちらかが○なら、学校を待たずに進めます。1番が数年分ゼロで2番も薄いなら典型だけで止めます。「習っていないから」だけを理由に判断しないでください。
残り3か月・2か月・1か月で、優先順位はこう変わる
残り3か月
- 志望校・学部・方式を確定させ、直近3年分の大問構成を単元名で書き出して3つの枠に分ける。
- 固定枠の単元を1日1題ペースで一巡させる。物理なら力学・電磁気、化学なら理論・有機、生物なら遺伝情報・代謝です。
- 未習範囲を上の3基準で振り分け、進めるものは週の予定に先に入れる。
- 記述式なら答案を書く練習に入る。導出過程まで書かせる大学(慶應義塾大学医学部、中央大学の共通テスト併用方式など)と答えのみの大学(法政大学、早稲田大学理工3学部共通など)で練習の中身が違います。
残り2か月
- 新しい単元を増やすのをやめる。ここからは「解ける問題を落とさない」に振ります。
- 固定枠の単元を大問単位で時間を計って解く。正解率ではなく、1題を何分で終えられるかを見ます。
- 共通テストを使うなら、全範囲の薄い一巡に切り替える。
- 未習範囲は典型のみ。出たら大問まるごとになる枠(物理の原子、化学の高分子)は1〜2パターンで止めます。
残り1か月
- 新規は入れない。過去問と、自分のミス記録の見直しだけ。
- 大問を解く順番と、1問の上限時間を決めて固定する。
- 知識の抜け(④)を最後に拾う。ここは1日でも動きます。
- 大問選択がある方式は、当日どれを何題解くか事前に決める。明治大学理工学部は物理3題+化学3題の計6題から3題、中央大学の共通テスト併用方式は理科9題から3題で、4題以上解答すると解答全体が無効になります。
「1問にかける時間」の基準と、当日の捨て問
持ち時間は試験のつくりから逆算します。慶應義塾大学医学部の生物は小問数が年間25〜30問で1問あたり約2.1分、看護医療学部は年間40〜48問で1問あたり約1.8分、明治大学理工学部の理科は1題あたり約26分。慶應義塾大学の理科は200点120分で、物理を選ぶと実質60分です。
試験時間÷小問数で1問あたりの持ち時間を出し、その1.5倍を上限にします。上限で手を止める練習を過去問の段階でしておかないと、当日だけ切り替えられません。捨て問は次の順で判断します。
- 手が止まって30秒たっても立式の形が見えない問題は飛ばす。粘っても思い出せるかは変わりません。
- 大問の後半が前の設問の答えを使う構造なら、前が合っていない時点で深追いしない。
- 計算過程が採点対象外の大学では、途中まで書いても点になりません。法政大学の物理は6冊すべてで「余白は計算に使ってよいが採点の対象とはしない」と明記。逆に導出過程を書かせる大学なら、答えが出なくても筋道を書く価値があります。
- マーク式でも部分点が期待できない形式があります。東洋大学は該当選択肢を全てマークしないと0点になる完全解答指定の設問が各大問にあり、学習院大学は2025年度に誤答が減点になる設問が複数出ています。
共通テストと、私大・国公立二次で優先が変わるところ
ここは方向が逆です。共通テストは全範囲から薄く広く出るので、志望校の過去問で数年分ゼロだった単元も出ます。単元を削る作戦は使えず、必要なのは処理速度と知識の抜けを埋める作業です。組み立ては共通テスト直前の過ごし方の記事へ。
私大の個別試験と国公立二次は逆で、志望校の固定枠に寄せられます。同じ単元でも、答えのみか導出過程まで書かせるのかで練習が変わります。仕上げ方は国公立二次の記述対策の記事へ。両方を受けるなら、共通テスト前は全範囲、共通テスト後は固定枠に一気に寄せるという切り替えを日付で決めておくのが無理のない形です。
演習の記録は「知識/立式/計算/時間」の4つに分ける
間に合わない人の多くは、演習量はあるのに記録がありません。丸つけのときに、間違いを4つに分類して問題番号の横に一文字書くだけです。
- 知識/用語・反応・名称・公式そのものを知らなかった。
- 立式/知ってはいたが、条件からその式にたどり着けなかった。
- 計算/式は合っていたが、数値処理でずれた。
- 時間/解けたはずだが、時間内に終わらなかった。
1週間分を数えて、多い方に翌週の時間を寄せます。知識なら一問一答と資料の読み直し、立式なら同じ単元の類題を続けて解く、計算なら計算だけを切り出す、時間なら大問単位で計る。打ち手が違うので、混ぜて「演習不足」とまとめると、いちばん効く手が見えません。
科目を変えるという選択が現実的な時期と、そうでない時期
物理から生物へ、という相談も秋には出ます。判断の前に必ず確認してほしいのは、志望校でその科目が選べるかです。青山学院大学の理工学部は物理科学科が物理必須、数理サイエンス学科以降は物理・化学から1科目選択で、生物は選べません。明治大学理工学部も物理3題+化学3題から3題を選ぶ構成で、生物という選択肢がありません。慶應義塾大学は理工学部が物理と化学の両方必須、薬学部は化学のみ。法政大学で生物を選べるのは生命科学部だけです。
つまり科目を変えると、受けられる学部がその場で減ることがあります。線を引くとこうなります。
- 検討の余地がある/志望校・学部が変更後の科目でも受けられ、共通テストで届け出る科目がまだ確定しておらず、その科目を学校の授業で並行して習っている。この3つがそろうときです。
- 現実的ではない/志望校がその科目を選べない、共通テストの受験科目を届け出た後、一から独学で始める。この時期の理科は、一巡させるだけで月単位の時間がかかります。
実際に多いのは、科目を変えるより同じ科目の中で時間の寄せ先を変えるほうです。科目の決め方は理科の科目選びの記事へ。
間に合わせ方は、削る順番で決まる
残り時間が足りないときにやることは、量を増やすことではなく順番を決め直すことです。大問構成を単元名で書き出し、固定枠に時間を寄せ、ローテーション枠は典型だけ、ゼロの枠は後回し。1問の上限時間を決め、間違いを4つに分けて記録する。この5つで中身が変わります。
線引きは、志望する大学・学部・方式が決まっていないと引けません。まだ固まっていないなら、そこを決めるところから一緒にやりましょう。勉強のことで気持ちが晴れない状態が続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口にも相談してください。
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EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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