こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、部活を引退して、これから受験勉強に切り替える高校生に向けて書いています。引退すると時間は確かに増えますが、増えた時間は放っておくと形になりません。引退した週にやること5つと、最初の1か月の組み立てを、順番と所要時間つきで並べます。
体力の話やコンディションの話は書きません。ここで扱うのは時間の設計と、行動の順番だけです。
引退後によくある3つのつまずき
引退後に伸びる人と、思ったほど変わらない人の差は、やる気の量ではありません。うまく回らないとき、原因はほぼ次の3つのどれかです。
- 増えた時間の使い方が決まっていない。放課後が空いたのに、何時から何をするかが決まっていないので、机に向かうまでに時間が溶けます。「今日は英語をやる」までしか決まっていない状態が、いちばん空転します。
- 何から手をつけるか分からない。全科目が気になって、毎日ちがう科目を少しずつ触る形になり、1か月後に「全部少しやった」だけが残ります。
- 模試の結果と志望校の距離を見ていない。成績表を封筒から出さないまま、感覚で「もっと頑張る」に入ってしまう。距離が数字になっていないので、優先順位も決まりません。
この3つは、精神論ではなく手順で片づきます。順番は、測る→決める→枠を作る→範囲を切る→記録の形を決めるです。引退した週の1週間で、ここまで終わらせます。
引退した週にやること5つ|順番と所要時間
合計で4時間ほどです。勉強時間ではなく設計の時間なので、引退した直後の土日にまとめて取ると進みます。順番を入れ替えないでください。位置が分からないまま計画を作ると、作り直しになります。
1. 今の位置を測る(60〜90分)
直近の模試の成績表を全部出します。やることは3つです。科目別の点数(素点)を紙に書く、志望校の合格ラインとして示されている水準との差を科目ごとに書く、差が大きい順に科目を並べる。ここで偏差値だけを見ないでください。必要なのは「何点足りないか」です。測り方の詳細は今の立ち位置の測り方にまとめています。
2. 受ける大学と科目を確定する(60分)
受験科目が決まらないと、勉強の中身が決まりません。第一志望・併願の候補を書き出し、それぞれの受験科目と配点を一覧にします。ここで科目ごとの配点差がはっきりします。配点表を見ないまま「全科目まんべんなく」に入るのが、引退後のいちばん大きな損です。
3. 1週間の型を作る(30分)
毎日ちがう予定を立てるのはやめて、曜日ごとに固定の型を作ります。平日は「帰宅後の1コマ目は英語」「2コマ目は志望校の主要科目」まで決め、休日は午前・午後・夜の3ブロックに科目を割り当てます。
4. 最初の1か月でやる範囲を決める(40分)
1か月で終わる量だけを書きます。半年分の計画は作らないでください。「英単語をテーマ2つ分」「数学は場合の数・確率を1周」のように、終わりが見える単位にします。1〜2週間で終わる大きさに割ったほうが続きやすいことは、勉強の計画が立てられないときで扱った研究でも確認されています。9,000人以上が参加した実地実験では、年単位の目標を毎週・隔週といった小さな単位に分けて示された人のほうが、活動量が7〜8%多いという結果が出ています。
5. 記録の形を決める(15分)
記録は「勉強時間の合計」ではなく、作業ごとの実測を残します。長文1題にかかった分数、数学の大問1つの丸つけまでの分数。ノートの見開き1ページに、日付・作業名・かかった分数の3列だけ作れば十分です。
「時間が増えた」を数字にする
引退後の1週間でまず崩れるのは、増えた時間を感覚のままにしておくことです。時間は「増えた気がする」ではなく、コマ数で数えます。手順は次の通りです。
- 紙に平日5日・休日2日の列を作り、起床から就寝までを30分単位のマスにします。
- 授業・移動・学校行事など、動かせない予定を先に塗ります。
- 残ったマスのうち、実際に机に向かえるものだけを数え、90分=1コマで換算します。
- 同じ紙に、部活があった週のコマ数も書きます。引退前の平日と休日を思い出して、同じ手順で数えます。
- 差を出します。これが「増えた時間」の正体です。
たとえば引退前が平日1コマ×5日+休日3コマ×2日=11コマ、引退後が平日2.5コマ×5日+休日6コマ×2日=24.5コマなら、増えたのは13.5コマです。ここまで数えると、「1か月で英語の長文を何題こなせるか」が計算できます。コマ数が出てから教材を選ぶのが正しい順番です。
もう1つ大事なのは、増えたコマを全部新しいことに使わないことです。増えた分の2〜3割は、復習と丸つけ・やり直しに割り当てておきます。引退後に「進んでいるのに点が動かない」となる人は、ほぼここが空白です。
何から手をつけるか|英語と、配点の重い科目から
優先順位の原則は2つだけです。1つ目は英語。2つ目は志望校で配点の重い科目。理由は、どちらも「積み上げに時間がかかる」からです。
英語を先に置く理由は、語彙の量で決まる部分が大きいから
英語が最優先になるのは、配点が大きい方式が多いことに加えて、語彙という「量で決まる部分」を短期間で埋められないからです。EIMEIでは、全国約190大学の入試英語(2007〜2026年度)からテキスト化した415題・約86万語のコーパスを作り、テーマごとの語の出方を集計しています。
- テーマ別のパッセージ数は、歴史・文化系が125題で最多、心理・脳科学が104題、物語・エッセイが101題、医療・健康が86題と続きます。
- 環境・気候変動のテーマでは、ocean が67回、plastic が65回、waste が61回、climate が50回、carbon が42回と、同じ語が束で繰り返し現れます。
つまり、引退後の英語は「単語帳の端から順に」ではなく、共通のアカデミック語彙と、志望校に出るテーマの語彙から入るほうが早く効きます。テーマごとに集めた語のまとまりは、本番で次に来る語を予測する力になります。単語帳のどこから回すかも、志望校に出るテーマから決められます。
配点の重い科目は、単元まで絞ってから手をつける
数学が必要な人は、「数学をやる」ではなくどの単元をやるかまで落とします。大学別の対策読本を作るときに集めた過去問の分析データを単元ごとに並べ直すと、優先順位はかなりはっきりします。
- 場合の数・確率は、分析したどの大学のデータでも頻度が高い単元です。慶應義塾大学は文系4学部12セットすべてで出題(12/12)、立教大学理系は大問Ⅰで6/6、中央大学文系では独立大問として59大問中11回と最多です。志望校を問わず後回しにしにくい単元です。
- 微分積分(Ⅱ)は文系型で重く、法政大学文系では45大問中13回(29%)で単元別の最頻出です。一方、早稲田大学社会科学部は同じ3年間で0/3、つまり一度も出ていません。同じ大学でも学部でここまで変わります。
- 逆に時間を割かなくてよい単元もはっきりします。東洋大学の文系(数Ⅰ・Ⅱ・A系列)は数列・ベクトルがそもそも出題範囲に入っていません。学習院大学は分析した12セットすべてで、整数の性質・複素数平面・式と曲線の出題がありません。
引退後の限られたコマ数では、「出る単元を先に、出ない単元は後回しか対象外に」という判断ができるかどうかで、1か月の中身が変わります。志望校が決まっていれば、ここは机に向かう前に決められます。
学校の教科書レベルで、英語の入り方が変わる
同じ「引退後に英語から」でも、入口は学校で使っている教科書によって変えたほうが早く進みます。川越とその周辺の高校で使われている教科書は、高校別 英語の教科書レベル一覧に整理しています。
- 発展レベルの教科書(ELEMENT、CROWN)の学校は、県立川越高校・川越女子高校・川越東高校がELEMENT、星野高校がCROWNです。この場合、授業で扱ってきた英文の水準が入試の論説文に近いので、引退後は語彙をテーマでまとめ直すことと、時間内に読み切る練習に進みます。
- 標準レベルの教科書(LANDMARK、MY WAY、Heartening、BLUE MARBLE、New Rays)の学校は、浦和北高校がLANDMARK、山村学園高校がBLUE MARBLE・Heartening(論理・表現はMY WAY)、坂戸高校がHeartening、川越南高校がNew Raysです。ここは文法の抜けを先に埋めてから長文という順番が効きます。
- 基礎レベルの教科書(Power On、CREATIVE)の学校は、松山女子高校がPower On、川越南高校がCREATIVEを併用しています。この場合は一文の構造をとる練習から入ります。引退後の最初の1か月を、短い英文を正確に訳し切ることに使ったほうが、その後の伸び方が安定します。
- 和光国際高校はAmerican English File 2(Oxford)を使っています。これは海外向けの英語教材で、日本の入試形式とは作りが違うため、入試形式の演習は別に確保する必要があります。
川越南高校のように標準レベルと基礎レベルの教科書を併用している学校は、自分がどちらの英文で手が止まるかで判断してください。
引退が夏以降・秋以降になる場合|削る順番
引退が遅い部活の場合、「全部やる」は最初から成立しません。足すものを探すより、削る順番を先に決めます。次の順で切ります。
- 受けない大学・受けない方式の対策。出願候補を絞ると、対策の量はここで最も大きく減ります。
- 志望校の出題範囲に入っていない単元。前述の東洋大学文系の数列・ベクトルのように、範囲外なら対策そのものが不要です。
- 志望校で出題実績がない単元。学習院大学の整数の性質・複素数平面・式と曲線のように、分析した全冊で出題がない単元は、優先度を下げられます。なお「頻度が低い」単元は、基礎だけ押さえるという中間の判断も取れます。
- 配点の軽い科目で、新しく始める教材。今持っている教材を回すだけにします。
- まとめノートを作る作業。作る時間と覚える時間は別物です。
逆に、最後まで削らないものは2つです。毎日の英語(語彙と、短くても英文を読む時間)と、志望校で毎年出ている単元の演習。この2つを残せば、引退が秋でも組み立てはできます。秋からの進め方は高3の秋から受験勉強を始める場合にまとめています。
最初の1か月で崩れたときの戻し方
計画は崩れます。これは特別なことではありません。卒業論文に取り組む学生に完成までの日数を予測させた研究では、平均予測33.9日に対して実際は平均55.5日かかり、予測どおりに終えられたのは29.7%でした。見積もりより時間がかかるのは通常の状態だと考えて設計してください。
そのうえで、崩れたときの戻し方は3つです。
- 遅れを追いかけない。前日の未消化分を翌日に上乗せすると、その日の予定も崩れて遅れが広がります。遅れた分は捨てて、次の型に戻ります。
- 予定をif-thenの形に書き換える。「21時になったら英語の長文を1題解く」のように、時刻や直前の行動を引き金にして1文で決めます。94件の研究をまとめた分析では、この形で計画を立てた人の達成率は明確に高く、着手できないという失敗への効果量はd=0.61、目標から逸れることへの対策ではd=0.77と報告されています。
- 次の計画は実績値で立てる。「今回は何時間で終わりそうか」ではなく、「前回、同じ作業に実際何分かかったか」から逆算します。引退した週に決めた記録が、ここで効いてきます。
そして、週に1回10分だけ、型を見直す時間を固定します。見るのは、決めた時刻に始められた日数、実測を記録できた回数、いちばん崩れた領域の3つだけです。自己管理の仕組み全体は受験期の自己管理で扱っています。なお、つらさが続くときは、ひとりで抱えずに学校の先生や保護者、専門の窓口に相談してください。
高1・高2で部活をやっている人が、今からできること
引退の週に4時間で設計を終えられる人は、その前に材料をそろえています。高1・高2のうちにできるのは、次の4つです。
- 模試の成績表を1か所にためる。封筒から出して、科目別の点数だけでも1冊に書き写しておきます。引退した週の「測る」が一気に短くなります。
- 1週間のコマ数を、今の状態で一度数えておく。引退後との差を出すための基準になります。
- 英語の語彙を、毎日切らさない枠だけ作る。量は少なくてかまいません。引退後に積み上げのゼロから始めないためです。
- 受けたい大学の受験科目と配点を、一度だけ調べる。決める必要はありません。何が分かっていないかを知っておくだけで、引退後の動きが速くなります。
部活を続けながらの進め方は部活と大学受験の両立に書いています。引退の前と後で、やることは別物です。前は「切らさない」、後は「積み上げる」と考えてください。
川越で、引退後の切り替えを一緒に組み立てる
5つの手順は、ひとりでも進められます。ただ、受ける大学と科目の確定と最初の1か月の範囲決めは、志望校の出題を知っている人と一緒に決めたほうが、やり直しが減ります。川越校舎は自習室が朝7時から使えるので、引退後に増えたコマを朝に置く形も取れます。
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EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
- 川越校舎(2026年6月開校)川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分。自習室は朝7時から使えます。
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