こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、中高一貫校に通う中学生とその保護者の方——とくに川越・ふじみ野・鶴瀬から通っている方に向けて書いています。扱うのは数学だけ。答えたいのは一つ、中学のうちに数学でどこまでやっておくと、大学受験が楽になるのかです。
中高一貫校は一般に数学の進度が速く、中学のうちに高校範囲へ入る学校が多いです。速いこと自体は不利ではありません。ただ、数学には他の科目より積み上げの性質が強いという特徴があります。前の単元の上に次が乗るので、途中の一段が抜けると上に積んだものが全部ぐらつきます。しかも学校は止まらないので、分からないまま次へ進み、やがて「どこから分からなくなったのか」が本人にも分からなくなる。逆に言えば、抜けのない状態で中学を終えられれば、高校の3年間は上に積むだけの時間になります。
中高一貫の中学生全体の話は中高一貫校の中学生へ向けた記事、高1・高2の組み立ては高1・高2向けの記事、英語版は中高一貫校の中学生の英語にあります。数字は自作の入試対策読本で実際に測ったものだけを使います。
1.大学入試の数学は、どの単元をどれだけ出すのか
中学生に「大学入試の数学」と言っても像は浮かびません。そこで、大学ごとに自作している入試対策読本の分析データを、単元ごとに組み替えた数字を出します。分母つきで並べると、出る単元はかなり偏っています。ただし大学ごとに数え方が違うので、単純な比較はできません。
いちばん出るのは「場合の数・確率」
- 慶應義塾大学…文系4学部は12冊すべてで出題(12/12)。理系4学部も各3/3。8学部12冊すべてで毎年という計算です。
- 立教大学…理系は大問Ⅰでの出題が6/6で毎回必出。
- 中央大学…文系では独立した大問としての出現が59大問中11で最多。商学部は大問Ⅳが3年とも場合の数・確率で4冊中4冊です。
- 法政大学…文系45大問中7(16%)、理系63大問中8(13%)。
- 学習院大学…12冊中10。出題がなかったのは2冊だけ。青山学院大学社会情報学部C方式は3/3で、毎年問題1に固定されています。
分析したどの大学のデータでも、この単元だけは出題ゼロという例がありません。理系でも比重は下がりにくく、中央大学理系では20大問中3(15%)。同じ大学の微分積分(Ⅱ)が20大問中1(5%)にとどまるのと対照的です。
関数とグラフの単元(微分積分)
- 法政大学…文系は微分積分(Ⅱ)が45大問中13(29%)で単元別の最頻出。
- 青山学院大学…文系は大問Ⅳが3/3。しかも中身が3年連続で「放物線の接線・法線と面積」で一致しています。
- 立教大学文系は記述の大問で8冊すべて(8/8)。慶應義塾大学文系は12冊中11、中央大学文系は17冊中12、学習院大学は12冊中8。
- 理系では数学Ⅲの極限・微分積分が主役です。早稲田大学理系は6/6、しかも6回とも必ず最終大問。青山学院大学理工も6/6、中央大学理系は11/20(55%)、法政大学理系は63大問中18(29%)。
図形の単元と、数列
- 図形と計量…東洋大学の文系では8セットすべてに出る最頻出クラス。中央大学文系は5学部共通選抜の大問Ⅰが3年連続でこの分野に固定されています。
- ベクトル…立教大学文系は大問Ⅰで6/8、早稲田大学商学部は3/3。中央大学は文系で主題3回+融合2回(17冊中)と頻出な一方、理系は0/5で3年間ゼロという真逆の分布です。
- 数列…慶應義塾大学文系は12冊中11。慶應義塾大学医学部では確率漸化式という形で3年連続、確率と数列を組み合わせた形で出ています。
逆に、2次関数は独立した大問になりにくい単元です。中央大学文系は59大問中0、慶應義塾大学文系は12冊中0。三角関数も小問集合止まりの大学が多く、中央大学文系59大問中1、法政大学理系63大問中5。ただし「出ない」のではなく、他の単元の道具として出ていると読むところです。詳しくは数学の頻出単元の記事に。
2.中学の内容は、高校数学のどこにつながるか
上の数字を、中学の教科書の目次と並べてみます。出る単元の入口は、ほとんど中学にあります。
- 中学の「確率」→ 高校の「場合の数・確率」。樹形図と表を使った数え上げが、そのまま順列・組合せに続きます。どの大学でも例外なく出る単元の入口が、ここです。
- 中学の「関数」→ 高校の「2次関数」「微分積分」。中学でyがxの2乗に比例する関数とその放物線を習います。青山学院大学文系が3年連続で出している「放物線の接線・法線と面積」は、その放物線に直線を引いて面積を考える問題です。中学で放物線と直線の交点を求めた作業の、続きにあたります。
- 中学の「図形」→ 高校の「図形と計量」「ベクトル」。相似、三平方の定理、円の性質は、高校で三角比・正弦定理・余弦定理に接続し、さらに座標やベクトルという「式で図形を扱う」道具に発展します。中央大学文系の大問Ⅰが3年連続で図形と計量に固定されている、というのがその行き先です。
- 中学の「式の計算」→ 高校の全分野。文字式の展開、因数分解、方程式、平方根。これは単元ではなく全単元で使う道具です。学習院大学文系では「数と式」が6/12という形でも直接出ます。
3.中学のうちにやっておくと効く4つ
ゴールから逆算します。どれもやり方を変える話です。
(1)計算を、正確に速く
到達目標。教科書レベルの計算を、途中式を書いたうえでやり直しなしで9割合わせられる。
確かめ方。計算問題20問を時間を計って解き、間違いの原因を1問ずつ分類します。「符号」「分数の処理」「移項」「読み間違い」。同じ原因が3回以上出たら、そこが弱点です。点数ではなく、原因の偏りを見ます。
なぜ効くのか。計算は全単元で使う道具だからです。加えてマーク式の大学では計算量の多い単元が好まれます。法政大学理系は9冊すべて全問マークで、証明問題は63大問中0。答えだけを合わせる試験では、計算の正確さがそのまま得点です。
(2)図をかいて考える習慣
到達目標。図形の問題で、何も言われなくても自分で図をかく。関数の問題でも座標とグラフの概形をかく。
確かめ方。ノートを1ページ見てください。図がほとんどないなら、ここです。かいてあっても、長さや角度が書き込まれていなければ、まだ道具になっていません。
なぜ効くのか。高校で出る図形は、図形と計量、ベクトル、図形と方程式、微分積分のグラフまで広がります。中央大学文系が大問Ⅰを3年連続で図形と計量に当てているように、「定位置」を持つ大学もあります。図をかかず式だけで押し切る癖は、高校で急に通らなくなります。
(3)問題文を式にする練習
到達目標。文章で書かれた問題を、自分で文字を置いて式にできる。何をxとするかを自分で決められる。
確かめ方。文章題を解かずに、「何をxとおくか」と「立つ式」だけ書いて止めます。書けないなら、計算力の問題ではありません。
なぜ効くのか。数え上げは、公式の前に「何が何通りあるのか」を言葉から取り出す作業が必要です。確率と漸化式が組み合わさる出題では、状況を式に翻訳できるかが最初の関門になります。
(4)分からなくなった単元まで戻る習慣
到達目標。解けなかったときに、「どの単元のどこが分かっていないか」を自分の言葉で言える。
確かめ方。間違えた問題について「なぜ解けなかったか」を聞いてみてください。「分からなかった」で終わるか、「相似の比の取り方が分からなかった」まで言えるか。後者なら、自分で戻れます。
なぜ効くのか。学校は止まらないので、戻る判断は自分で下すしかありません。戻る場所は、学年ではなく詰まっている場所で決めます。学校が高校範囲をやっていても、平方根の扱いが崩れているなら中学範囲まで戻ってかまいません。遠回りに見えて、これがいちばん速いです。
4.学校の進度についていけているかの確かめ方
数学は、点数が出ているうちは気づきにくい科目です。確かめ方を3つ挙げます。保護者の方が見られるものも入れました。
- 2〜3週間おいてから、同じ問題をもう一度解く。テスト直後は解けても3週間後に手が止まるなら、覚えて出しただけの可能性があります。
- ノートの途中式を見る。答えだけが並んでいる、式が1行しかない、図がない。このいずれかなら、理解の手順が省略されています。中身を判定する必要はなく、書かれている量を見るだけで分かります。
- 説明させてみる。「この問題、どう考えたの」と聞いて手順を言葉で言えるか。言えないのに正解している状態が、いちばん危ないところです。
もう一つ見ていただきたいのが質問の言い方の変化です。「数学が分からない」から「二次方程式の文章題で式が立たない」に変わったら、伸びている証拠です。
5.定期テストは取れるのに、入試につながらないとき
原因はだいたい3つです。
一つめ。範囲が決まっているので、出る問題が予想できてしまう。定期テストは似た問題を練習してから受けます。入試は全部が初見で、覚えて出した経験は使えません。
二つめ。単元をまたいだ問題が出ない。中央大学文系のベクトルは微分積分(Ⅱ)と融合した形でも出題され、慶應義塾大学医学部の確率漸化式は確率と数列の組み合わせです。単元別に区切られた定期テストでは、この「混ざり」が測れません。
三つめ。答えを出す過程を書く練習がない。記述で出す大学はかなりあります。学習院大学は12冊すべて全問記述(マークシート不使用)。慶應義塾大学理工学部は証明記述が毎年2〜4問。中央大学理系の共通テスト併用方式は、ほぼ全題に「示せ・証明せよ」が複数入ります。
おすすめは「定期テストの勉強は範囲で、月に1回だけ範囲外を混ぜて解く日をつくる」という分け方です。過去の単元から10問、順番をばらばらにして解くだけで、定期テストでは測れない部分が測れます。
6.学年別にやること
中1。やることは2つだけです。計算の正確さと、途中式を書く癖。これ以外は学校の授業で足ります。文字式に慣れる時期で、ここで符号や分数の処理をあいまいにすると高校の全単元に残ります。
中2。やるのは図をかく習慣の固定と、2〜3週間おいての解き直し。連立方程式・一次関数・図形の証明という、高校の道具に直結する単元が並ぶ時期でもあります。証明を「書かされるもの」ではなく「順番に説明するもの」として扱えるようになると、高校の記述がずっと楽になります。
中3。2乗に比例する関数、相似、円、三平方の定理、そして確率。高校の最頻出単元の入口がそろって並ぶ学年です。ここを「テストが終わったら忘れる単元」にしないでください。そして崩れているところがあるなら、ここが戻る最後の楽なタイミングです。高校に入ると負荷が上がり、戻る時間が減ります。
7.今から巻き返す手順
進度についていけていない人向けです。この順でやってください。
- 学年を忘れる。学校が高校範囲をやっていることは、戻る場所を決める材料になりません。
- 計算だけを20問やる。符号、分数、移項、平方根。ここが崩れていれば他の何より先にここです。1週間で終わります。
- 詰まっている単元を1つに特定する。教科書の目次を見ながら「ここは大丈夫」「ここは怪しい」と印をつけていくのが早いです。
- その単元の基本問題だけを、解答を見ずに解く。応用には進みません。基本が8割合うまでです。
- 戻り終わってから、学校の範囲に合流する。順番を飛ばすと、また同じところで止まります。
いちばんやりにくいのが3番です。自分で「どこから分からなくなったか」を特定する作業は、一人だと難しいのが普通です。なお、勉強のことでつらさが続くときは、勉強の設計だけで解決しようとせず、学校の先生や保護者の方、専門の相談窓口に相談してください。
8.高校数学に入ってから差がつくところ
数学Ⅰ・Aの最初は、中学までとの落差がはっきり出ます。一般的に手が止まりやすいのは次のあたりです。
- 平方根と絶対値の扱い。場合分けという考え方が初めて本格的に出てきます。「どういうときに分けるのか」がつかめるまで時間がかかる人が多いところです。
- 2次関数の最大・最小。平方完成は計算ですが、範囲が指定されたときの最大・最小はグラフをかかないと決まりません。図をかく習慣の有無が、ここで初めて点差になります。
- 三角比。直角三角形で考える段階から、鈍角まで含めた形に広がり、正弦定理・余弦定理が入ります。ここでつまずくと、図形と計量がまるごと苦手になります。
- 場合の数。順列と組合せの区別です。公式は2つしかないのに、どちらを使うかの判断が難しい。中学の確率で樹形図を丁寧にかいてきた人が強いところです。
並べると分かりますが、つまずきやすいところは、上で挙げた4つ(計算・図・式にする・戻る)の延長線上にあります。高校で急に必要になる新しい能力があるわけではありません。勉強法の組み立ては数学の勉強法の記事に、保護者の方の関わり方は中高一貫校の中学生の保護者へ向けた記事にまとめています。
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、中高一貫校の中学生から1対1で見ています。数学はどこで抜けているかが人によって違うので、同じ学年でも始める場所が変わります。「これで足りているのか分からない」という段階で来ていただければ、上の到達目標のどこまで来ているかを一緒に確認できます。川越校舎は自習室が朝7時から使えるので、学校の前の30分を計算に充てている生徒もいます。
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