こんにちは、EIMEI予備校で英語科を担当している二神です。
この記事は、教育・心理・社会・福祉・人間科学といった「人と社会を学ぶ系統」の学部を志望する高校3年生・既卒生と、その保護者の方に向けています。この系統は「文系だから英国社でいい」と思われがちですが、読本を作るため問題冊子を突き合わせると、図表と統計の読み取り、小論文、数学Ⅲまで入る理系型の方式が当たり前に混ざっています。
扱うのは、読本のうちこの系統について記述がある9大学(早稲田・青山学院・立教・法政・学習院・中央・東洋・成蹊・埼玉)です。読本は大学ごとに作っていますが、慶應義塾・明治・東京電機の3冊にはこの系統を切り分けた記述がないので扱いません。
1. この系統に特徴的な3つの要素
① 図表・統計を読み、そこから「提案」まで書かせる
特徴的なのが青山学院です。青学は出題意図を公表しており、総合問題・論述・小論文に共通する要求として「図表を定量的に読む」「自分の問いを立てる」が挙げられています。当てはまるのが、教育人間科学部の教育学科・心理学科の小論文とコミュニティ人間科学部の論述です。心理学科の小論文は設問Ⅱが毎年データの読み取り。2025年度は総務省の情報通信白書の調査で、読み取りと問題点の指摘に続き20代・50代それぞれに「誰が何をどう伝えるか」を提案させる設問でした。読み取って終わりではなく、必ず提案まで書かせるのが型です。
② 小論文・論述が「教科の試験」の代わりになる
青学の個別学部日程では、教育人間科学部は小論文90分100点の1科目だけ、コミュニティ人間科学部は論述100点の1科目だけで、国語も地歴も解きません。大事なのは字数と型が読めることです。教育学科の小論文は2年とも構成が同じで、Ⅰが図表の読み取り(200字以内+300字以内)、Ⅱが「文章の内容を200字以内で要約」+「主張の意義に触れ、複数の具体例を挙げて600字以内」。具体例が一つだと条件を満たしません。「図表200〜300字」「要約200字」「論述600字」の3つの型で形式面はほぼ対応できます。コミュニティ人間科学部の論述も、大学が「課題文の内容と関連づけて具体的な論点を設定できていること」と明記しています(書き方は小論文の記事にまとめました)。
③ 「文学部の心理学科」なのに理系型で受ける方式がある
学習院の落とし穴です。文学部 心理学科・教育学科のプラス試験は2月7日、理学部のコア試験と同じ日。科目は数学・英語・理科で、数学の範囲は理学部と同じ(数Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C)です。文系の選択科目としての数学とは別物で、「文学部だから文系範囲だろう」と出願すると試験場で数学Ⅲに出会います。
早稲田の人間科学部も同じ構図で、数学選抜方式は120分360点・全記述。必須3題に加え数学Ⅱの微積分と数学Ⅲの積分のどちらか1問を選択します(未記入・両方記入は採点対象外)。
2. 大学ごとの違いを、読本の実測値で
早稲田大学 教育学部・人間科学部
教育学部A方式は150点満点で英語50・国語50・地歴50の完全均等。英語は90分で長文3題だけ、3年連続で記述ゼロの全マークです。設問が段落単位で来るため読みながら各段落の要旨を一言でメモする読み方が効きます。テーマは言語と認知が3年連続必出。国語A方式は漢字の書き取りまで選択式で、記述が1問もありません。
人間科学部は国語英語型150点(共テ60+英語50+国語40)、数学英語型150点(共テ60+英語50+数学40)、数学選抜500点の3方式で、共通テストが合否に直接入ります。英語は〔Ⅰ〕短文読解/〔Ⅱ〕前置詞の空所補充/〔Ⅲ〕誤文訂正で60分50点・全マーク。「入る語なし」「誤りなし」の選択肢があるため消去法が効きません。国語英語型は古文・漢文がなく現代文2本で、哲学論考と図表つきの実用的な文章の組み合わせ。棒グラフの読み取りが入り、共通テスト対策が生きます。学部独自の理科はありません。
青山学院大学 教育人間科学部・コミュニティ人間科学部・社会情報学部
全学部日程は11学部共通問題・全問マークで、この3学部はいずれも外国語150/国語100/地歴公民または数学100の350点満点、国語は古文・漢文を除く範囲です。個別学部日程の2026年度実質倍率は教育人間科学部5.5倍、コミュニティ人間科学部2.0倍と開きました。
社会情報学部だけ性格が違い、B方式(外国語200+数学150、数Ⅲなし)とC方式(外国語200+数学250、数Ⅲあり)があります。B方式は場合の数・確率、ベクトル、図形と方程式、2次関数・整式、指数対数の5分野が3年とも全部出題。C方式は「B方式+数Ⅲの微積」の積み上げで足ります。
立教大学 現代心理学部・コミュニティ福祉学部・社会学部・文学部教育学科
立教は構造が根本的に違います。一般入試に英語の試験がありません。全学部で英語資格・検定試験か共通テストの英語を利用します(例外は2月11日の文学部日程)。出願時点で英語がほぼ確定するぶん直前期の挽回はできませんが、残りを国語と選択科目に注げます。配点(国語/選択/英語)は社会学部100/100/100=300点、コミュニティ福祉学部100/100/150=350点、現代心理学部150/100/150=400点。合格者の共通テスト英語の最低点も心理155/200(78%)、社会145(73%)、映像身体129(65%)と幅があります。
国語は全学部日程の11冊すべてが現代文2題+古文1題の75分で、漢文の独立大問はゼロ。字数指定の記述は最大でも「30字以上40字以内」です。大学は現代文の範囲に「ジェンダーやナショナリズムを含む法学や社会学等」を挙げており、社会学の語彙がそのまま得点になります(現代文の勉強法の記事もどうぞ)。ただし文学部教育学科の2月11日だけは別で、立教独自の英語(75分200点)があり、国語に漢文が入り、選択科目は地理歴史のみです。
法政大学 現代福祉学部・人間環境学部・社会学部・文学部心理学科
法政は同じ試験日のグループが同じ問題冊子を解く設計で、この系統は3つに分かれます。
- 冊子209(2月9日・経済Ⅰ/社会Ⅰ/現代福祉)…英語は文法15問+長文2+インタビュー1で3年間同型。国語はすべて現代文、古文も漢文も3年連続ゼロ、記述もゼロ。日本史も論述なし。古典と論述の準備は不要です。
- 冊子207(2月7日・文Ⅰ/経営Ⅰ/人間環境/GIS)…英語は4題を90分(同じ冊子でも文学部は3題60分)。国語に古文が必要、日本史に論述が1問。
- 冊子208(2月8日・法Ⅰ/文Ⅱ英文・地理・心理/経営Ⅱ)…英語は長文4本のみ、日本史に論述あり。文学部心理学科はここです。
同じ法政の社会・福祉・心理系でも、古文の要否と論述の有無が日程で決まります。英語はどの方式も全問マークです。2026年度は人間環境が志願者+52.6%の7.5倍、現代福祉が+26.4%の6.8倍と伸びました。
学習院大学 文学部 心理学科・教育学科
募集は心理学科がコア60名・プラス5名、教育学科がコア25名・プラス5名・共通テスト利用3名で、心理学科に共通テスト利用はありません。2026年度の合格最低点は心理コア233.6/400(58.4%)、心理プラス254.9(63.7%)、教育コア232.3(58.1%)、教育プラス220.5(55.1%)で、目標は6割5分で射程です。教育学科の共通テスト利用は5教科型500点満点で最低点356.0(71.2%)と学習院で最も低く、広く浅く取れるタイプに有利な入口です。
中央大学 文学部(社会学・社会情報学・教育学・心理学の各専攻)
中央の文学部は人文社会学科の1学科で、13専攻のうち4つがこの系統です。英語は80分150点で大問4つ、1,400語の長文1題に70点という構造(心理学専攻は英語100点に換算)。中央で漢文が出るのは文学部だけで、選択科目も文学部では政治・経済を選べません。倍率は狙い目で、一般方式は3.0倍と中央で最も低い層、専攻別では社会学2.4倍・教育学2.4倍。共通テスト利用の4教科型は2.2倍で、専攻を決めずに出願できる「専攻フリー」です。
東洋大学 文学部教育学科・社会学部・福祉社会デザイン学部・総合情報学部
この系統の学科が最も多い大学です。形式は全学部統一で1科目60分・100点、全問マークシート、記述なし。しかも同じ試験日なら学部が違っても同じ問題なので、過去問は日程別に集めます。2026年度前期・3教科均等配点(300点満点)の合格最低点は社会心理176.9/社会174.5/教育(人間発達)174.4/社会福祉165.3/子ども支援162.6と、同系統でも14点の幅があります。
埼玉大学 教育学部
教育学部は2026年度に再編され、学校教育コース(教育学・臨床教育実践学・心理発達支援・乳幼児教育・特別支援教育の5専修)と教科教育コース、養護教諭養成課程になりました(定員380→320名)。問題集にある「小学校コース」は旧組織名です。乳幼児教育専修は前期が共通テスト950点+個別試験の英語500点で1,450点満点。個別試験は英語だけで、小論文も面接もありません。2026年度の合格最低点は990.20点(68.29%)。個別の英語は教養・経済・教育の共通冊子で5年とも「長文2題(5択)+自由英作文1題」、記述は自由英作文(120〜150語)だけです(埼玉大学の対策記事に詳しく書いています)。
成蹊大学 文学部現代社会学科
2026年度はA方式が6.0倍で合格最低点272.55/400(68%)、E方式は募集6名に対して16.1倍(92%)、C方式5.4倍(82%)、P方式1.6倍(72%)と、方式によって倍率が10倍動きます。成蹊の英語は文学・物語系が多く、教育・心理もの(手書きと脳)が第二の軸です。
3. 「文系だから数学は要らない」は成り立たない
- 数学Ⅲまで要る…学習院 文学部心理・教育のプラス、早稲田 人間科学部 数学選抜方式、青山学院 社会情報学部C方式。
- 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・Cが要る…早稲田 人間科学部 数学英語型(大問5題・全マーク・60分、部分点なし)、青山学院 社会情報学部B方式。
- 数学は不要だが資料の定量読解が要る…青山学院 教育人間科学部・コミュニティ人間科学部の小論文・論述、早稲田 人間科学部 国語英語型の図表つき実用文。
選択科目の制約も先に確認してください。青山学院の全学部日程では地理が選べず、中央と立教の文学部では政治・経済(公民)が選べません。共通テストで地理や政経を使う人は、併願先が想定より狭くなります。
4. 併願で対策が重なる大学と、別に時間が要る大学
まず重なる側から。東洋は同じ試験日なら学部が違っても同一問題なので、社会学部・文学部教育学科・福祉社会デザイン学部を同日に併願するなら過去問は1種類です。立教も同じ試験日・同じ科目なら同じ問題で、大学自身が「学部ごとの対策は不要です」と明言。青学の全学部日程は11学部共通問題、学習院の心理・教育プラスは理学部コアの過去問がそのまま使え、早稲田 教育学部C方式のPassage Aは同年度のA方式の長文と同じ英文です。
逆に、別枠の時間が要るのは次の5つです。
- 青山学院の小論文・論述。全学部日程(全問マーク)と個別学部日程(小論文90分)に共通部分はほとんどありません。青学は問題・解答例・出題意図を公表しているので、出題意図を先に読む→時間を計って解く→解答例と照合するの順で回せます。
- 早稲田 人間科学部の前置詞と誤文訂正。他大学とは別技術で、「なし」の判断基準づくりに時間が要ります。
- 学習院 心理・教育プラスの数学Ⅲ。文系数学から積み上げると数か月かかります。
- 中央 文学部の漢文と1,400語の長文1題。ほかの学部では漢文が出ません。
- 埼玉大学 乳幼児教育専修の自由英作文。添削してくれる相手を早めに確保してください。
GMARCH内の英語の違いはGMARCH比較の記事に、大学別対策記事の一覧はまとめ記事にあります。
5. 大学別のオリジナル予想問題を、どう作っているか
EIMEIでは英語の予想問題を大学別に自作しています。この系統に関わるのは東洋大学、青学の全学部日程、中央大学、法政T日程など。手順は決まっています。
- テーマより先に、形式を固定する。大問構成、記述の字数・語数指定、選択肢の作り方まで本番に合わせます。東洋なら60分・5大問・全マークで長文2本+語彙文法+会話文+整序英作文。形式が違えば練習になりません。
- 素材を、その大学が好むジャンルから選ぶ。入試英語の長文パッセージ約860本を大学・学部別に分析してあります。立教の文学部日程は心理学(傍観者効果、SNSと不安)と文化史の二本柱、法政は「英語で読む日本社会」(空き家、外国人労働者)と「信じる心の科学」、東洋は教育・学びの科学(幼児の読字習得、メンター論)、早稲田の人間科学部は健康・環境系の短い科学記事です。
- 語数と本数を本番に合わせ、解説に「なぜこの形式か」を書く。中央 文学部の1,400語1題と法政A方式の長文4本では時間配分が違います。本番の難度に届かない生徒には、形式はそのままで英文の難度だけ落とした段階レベル版を作ります。
2027年度に射程へ入れているのは、生成AIと仕事・教育・倫理/スマホと若者のメンタルヘルス/心理学の有名研究・実験もの/ジェンダー・格差・多様性/日本社会ものです。予想は的中がゴールではありません。頻出テーマを日本語で先に理解しておけば、外れた英文にも「知の隣町」から入れます。
川越で、教育・心理・社会・福祉系の併願設計から相談したい方へ
「自分の志望だと数学が要るのか」「小論文にどれだけ時間を割くのか」が気になった方は、一度お話ししましょう。この系統は大学名でも「文系」でも括れないぶん、受ける学部・日程・方式が決まれば、やるべき訓練も決まります。
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