この記事は、これから大学に出願する高校3年生・既卒生と、その保護者の方に向けて書いています。点数の話ではありません。手続きのミスで、受けられるはずの試験を受けられなくなる事故を防ぐための記事です。
川越・ふじみ野・鶴瀬の教室でも、秋から冬に増える相談は勉強の中身ではなく出願の実務です。実力とは関係のないところで結果が決まるので、先に手順を固めます。
出願で起きる事故は、だいたい3つに分かれます
大学ごとに自作している入試対策読本では、方式ごとの出願のしかたと締切をまとめています。そこから読み取れる事故の型は、次の3つです。
- 締切に間に合わない。同じ大学でも方式ごとに締切が違います。中央大学の読本では、5学部共通選抜の締切が他より1〜2週間早く「出し忘れがいちばん起きやすい」と書きました。その時期は、共通テストの自己採点で志望校を練り直している真っ最中です。
- 書類が足りない。慶應義塾大学は出願登録・検定料の支払い・書類の郵送の3段階すべてが必須で、ネット登録だけでは出願が完了しません。
- 必要な受験回のスコアが使えない。法政大学の英語外部試験利用入試では、4技能のスコアは同一受験回のものに限られます。持っているのに使えない、という事故です。
3つとも試験の前に、事務作業として決着がついてしまう事故です。だから勉強と同じ枠で管理してはいけません。
準備するものを「時間がかかる順」に並べる
締切から逆算すると、いちばん時間のかかるものが最後に回ります。「自分では早くできないもの」から順に着手します。
1 調査書(学校に依頼するので、いちばん時間がかかる)
調査書は自分では作れません。高校に依頼して発行してもらう書類です。しかも必要な通数が出願の本数で決まります。法政大学の読本にはこう書きました。「複数出願する場合は、出願登録も封筒も書類もそれぞれ別に必要。調査書も出願1件につき1通」。10学部に出すなら封筒も10通です。
つまり先に決めるべきは通数です。出願する大学と方式の本数が決まらないと、何通頼めばよいかが決まりません。ここが出願準備のいちばん上流で、出願校をいつ確定させるかで扱っています。
発行までの日数は学校の体制で違います。推測で見積もらず、担任または進路指導の先生に「いつ依頼すれば、いつ受け取れますか」と直接確認してください。年内入試でも使うなら、その予定も伝えます。有効な期間の条件が付くかも、自分が受ける年度の募集要項で必ず確認してください。
2 英語資格のスコア証明
これも手元で完結しません。試験を受けて、結果が出て、証明書が届くまでに時間がかかります。成蹊大学のE方式でも、スコアを使うには「所定の書類を提出すれば」という条件が付きます。出願の締切までにスコアの証明が手元にあるかを逆算して確かめてください。
3 証明写真とその他の証明書
写真は短時間で用意できますが、規格が大学ごとに違うので、撮り直しが出ると郵送の日程に響きます。サイズ、撮影時期の条件、データか紙かは、自分が受ける年度の募集要項で必ず確認してください。データ提出の大学もあるので、Web出願の画面を開く前に用意します。
既卒生の卒業証明書など、立場によって追加の書類も出てきます。「自分の場合に何が要るか」は、要項の出願書類一覧を1回だけ全部読んで確定させてください。
調査書について、制度で決まっていること
推薦入試対策読本でまとめた大学入学者選抜実施要項の条文から、事実だけを挙げます。
- 作るのは高校です。「在籍する高等学校が高等学校生徒指導要録に基づき別紙様式1により作成した調査書の提出を求める」と定められています。
- 方式を問わず、提出は求められます。一般選抜でも年内入試でも必要です。
- 見られるのは評定だけではありません。「『3.各教科の学習成績の状況』だけではなく、調査書の他の記載事項も有効に活用する」とあります。
- 使い方は大学が公表する義務があります。「どのように活用するのかについて、募集要項等に明記する」とあるので、志望校の要項に答えが書かれています。
ただし重みは大学で違います。法政大学の読本では「調査書は出願資格の確認にのみ使用し、合否判定には用いられません」と書きました。一方で学校推薦型選抜は、定義が「調査書を主な資料としつつ」評価する入試です。同じ書類でも方式で役割が変わります。用語の整理は入試のことばの意味にまとめました。
Web出願だけでは終わらない大学があります
ここがいちばん事故が多いところです。読本から実例を並べます。
- 慶應義塾大学 出願は「インターネットでの出願登録」「入学検定料の支払い」「出願書類の郵送」の3段階すべてが必須です。書類の郵送は締切日消印有効。しかも出願が共通テストより前に始まるので、直前期のいちばん大事な時期に事務作業が入ります。学習計画に組み込んでください。
- 法政大学 出願書類は郵送のみで、窓口持参は受け付けません。締切日当日の消印有効。複数出願なら、出願登録も封筒も書類もその数だけ必要です。
- 中央大学 出願書類の受付は郵送のみで、窓口では受け付けません。国内は簡易書留、締切日消印有効です。さらに受験ポータルサイトの会員登録が必須で、複数出願するなら必ず同じアカウントで行います。別アカウントだと検定料の減額が効きません。
- 成蹊大学 出願はWebのみです。
郵送が必要な大学とWebで完結する大学が混ざっています。消印有効は「その日に投函すればよい」という意味ですが、窓口の営業時間や集荷の時刻に左右されます。締切日を投函日にしない、と決めるのが安全です。
あわせて、出願の時点で確定して後から変えられないものがあります。中央大学では選択科目が出願時登録制で、試験当日に変更できません。志望学科・志望順位も出願後に変更できません。出願は「申し込み」ではなく「確定」です。
4つの締切を、1枚にする
『志望校の決め方』では、締切を4つに分けて書き出す形を取りました。出願締切・試験日・合格発表・入学手続きの締切の4つです。それぞれを「いつ・どこで・何を」の1文にします。
- 受ける大学と方式を1行ずつ並べます(同じ大学でも方式が違えば別の行です)。
- 各行に4つの締切の欄を作ります。
- 欄には日付だけでなく行動まで書きます。「◯月◯日の朝になったら、登校前に◯◯大学の出願サイトを開く」のように、いつ・どこで・何をするかを先に決めます。
- この1枚をカレンダーに転記して、週に1回見ます。
4つのうちいちばん重いのは入学手続きの締切です。合格しても手続きを逃せば無効になります。読本でもここを最重要としました。しかも手続きの締切は方式ごとに違います。成蹊大学の読本では、国公立との併願者向けの方式は手続締切がいちばん遅いので国公立の結果を待てる、と整理しました。どの方式で受かったかによって、いつまでにお金を入れるかが変わります。
もう1つ、成蹊大学の読本に書いた注意です。A方式には補欠があり、合格発表後に追加合格が出ますが、追加合格まで届くのは補欠の一部です。補欠を待つ前提で、併願先の手続きを止めないでください。日程全体の組み方は私大入試の日程の組み方、冬の動き方は12月から本番までの流れで扱っています。
英語資格のスコアを使うなら、出願前に潰しておくこと
スコアを使う方式は、出願要件が細かく分かれます。読本から実例を挙げます。
- 同一受験回か。法政大学では、4技能のスコアは同一受験回のものに限られます。別々の日程のスコアを組み合わせることはできません。成蹊大学でも使える検定は1つのみで、異なる実施回の技能別スコアの合算は不可です(一部例外あり)。
- 有効期間内か。法政大学の読本には「年度ごとに変わるので必ず確認」と書きました。成蹊大学も、有効となる受験時期が年度で動いています。
- 級とスコアの両方を満たしているか。法政大学の英検は、合格級とCSEスコアの両方の基準を同時に満たす必要があります。CSEスコアだけでは出願できません。
- 何技能必要か。中央大学の理工系は4技能すべてで基準を満たす必要があり、学科によって基準も違います。2技能だけのスコアでは出願できません。
- 見る基準表が合っているか。法政大学・中央大学とも、TOEFL iBTは受験した時期によって適用される基準表が分かれます。古い基準表を見て「足りている」と思い込むと、出願できません。
- その検定がまだ使えるか。中央大学の読本では、利用が終了する検定・終了予定の検定を整理しました。受けてから「使えなかった」となるのが最悪です。
扱い自体も大学で違います。中央大学では学部によって「出願資格としてのみ」「得点に換算」「加点」の3通りに分かれ、成蹊大学のE方式は当日の英語と高い方を採用する換算点方式でした。いずれも、自分が受ける年度の募集要項で必ず確認してください。
受験票は、自分で印刷する大学があります
法政大学の読本には「受験票は自分で印刷する(通常、試験日の5日前から)」と書きました。郵便で届くのを待っていると、受験票なしで試験日を迎えることになります。
合格発表も同じです。中央大学は受験ポータルサイトでの発表で、電話や郵送での通知はありません。法政大学の追加合格は、大学のマイページで通知されます。「どこを見に行けば分かるのか」を、出願のときに書き留めておいてください。印刷できる期間や、ログインに使うIDとパスワードも同じ1枚にまとめます。
年内入試の書類は、準備の順序が違います
年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)は、出願そのものが選考の一部です。実施要項では総合型選抜の出願が9月以降、学校推薦型選抜が11月以降に始まります。一般選抜より数か月早いので、書類の準備を夏のうちに始めることになります。
必要な書類も違います。推薦書が必須なのは学校推薦型選抜だけで、そこには学力の三要素に関する評価の記載が求められます。書くのは高校の先生ですが、材料はあなたの学習歴と活動歴です。志望理由書などの本人が書く資料を「必ず評価に活用する」と定めているのは総合型選抜です。
そして、書類を出したら提出した書類のコピーを手元に残してください。推薦入試対策読本に書いたとおり、これがないと面接の準備が始まりません。面接の質問の半分は、書類を書いた時点で決まっています。書き方は志望理由書の直し方にまとめました。
なお、総合型の発表が学校推薦型の出願締切より後になる組み合わせも起こります。総合型の結果を見てから学校推薦型に出願できるかは、志望校の組み合わせで要項を確認してください。
保護者の方へ
分担を決めるだけで事故が減ります。おすすめは本人が「書く・登録する」、保護者が「締切を見る・お金の期限を管理する」です。本人は勉強の途中で事務作業に入るので、締切の全体像を持ちにくくなります。
とくに入学手続きの締切は、期限までに納入がなければ合格が無効になるものです。『志望校の決め方』では、費用を一度だけ数字にして保護者と1回だけ共有することを勧めました。出願の本数が決まった時点で、1回だけ話してください。関わり方の全体像は保護者ができることにまとめています。
出願したあとに確認すること
出願のたびに、次の5つを確認します。
- 受付が完了しているか。出願サイトのマイページで完了の表示を確認します。郵送が必要な大学は、書類が届いて初めて完了します。
- 登録した内容が合っているか。学部・学科・方式・試験日・選択科目・志望順位。変更できない項目があるので、控えを印刷して見直します。
- 送った書類の控えを残したか。郵送の記録と、提出書類のコピーです。
- 受験票の入手方法と期間を書いたか。
- 4つの締切の表を更新したか。出願が1本増えれば、試験日・発表・手続きも増えます。
この記事の締切や要件は、読本を作った時点の年度のものです。入試制度は毎年変わります。自分が受ける年度の募集要項で必ず確認してください。
不安なときは1人で抱えず、学校の先生や保護者に相談してください。EIMEI予備校でも、面談でこの1枚を一緒に作ります。
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EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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