この記事は、高3の秋に三者面談をひかえた受験生と、その保護者の方に向けて書いています。高3の秋の面談は、多くの学校で受験校を決める場になります。ところが、何も準備せずに行くと、面談は「今の成績の報告会」で終わります。
先にお伝えします。面談の進め方は学校によって、担任の先生によって、かなり違います。回数も、保護者が同席するかどうかも、その場で何を決めるかも違います。この記事に書くのは準備のしかたなので、進め方そのものは必ず担任の先生に確認してください。
その面談は「決める場」ですか、「報告の場」ですか
準備の中身は、面談の性格で変わります。分かれ目は1つだけです。その面談で受験校を決めるのか、決まっていることを学校に伝えるのか。
報告の場なら、持っていくのは決まった内容です。受ける大学と方式、日程、出願の段取り。学校側は書類の準備に入れます。
決める場なら、持っていくのは判断の材料です。材料がないまま「どうしましょうか」と相談すると、先生は一般的な話しかできません。先生が持っている情報(評定、推薦の枠、書類の締切)と、こちらが持っている情報(過去問の点、志望の順位、家庭の確認状況)を突き合わせて初めて、その場で決まります。
どちらか分からないときは、面談の前に一度聞いてください。「今回の面談で受験校を決めるところまで進めたいのですが、それでよろしいでしょうか」。この一言で、準備するものが決まります。
面談までに用意する1枚。書く項目は6つに絞る
持っていくのは紙1枚で足ります。項目を増やすと作るのに時間がかかり、当日も見せられません。6つだけ書いてください。調べ物は全校合わせて2時間以内、1校5分の書き写しで終わる範囲です。
① 受ける大学・学部・学科
第1志望から順に、多くて3校です。実力校を1校、その上の挑戦校を1校、下の安全校を1校という形にすると、そこで構成が閉じます。大学進学者の平均出願校数は2.42校で、1校だけに出願した人が48.4%です。校数を増やすほど安心が増えるように感じますが、増えるのは過去問演習の量と手続きの手間です。
学部・学科まで書いてください。同じ学部名でも中身は大学ごとに違います。決め方の手順そのものは志望校の決め方にまとめました。
② 方式と日程
使う方式は各校2つまでに絞ります。一般選抜、共通テスト利用、学校推薦型、総合型。全部を検討すると決められなくなります。同じ大学に方式を変えて2回出願するのは、対策を増やさずに機会を増やす方法です。
日程は、試験日を並べて重なりと連続を見ます。同じ日に別の学科を出せる大学かどうかも、ここに書いておくと当日話が早くなります。併願の組み方は併願校の決め方にあります。
③ 必要な科目と配点
募集要項から書き写します。まとめサイトの表ではなく、要項です。科目が合っていなければ他の情報は意味を持ちません。1校5分で終わります。
配点まで書くと、面談で「どの科目に時間を割くか」の話ができます。同じ3科目でも、英語の配点が大きい大学と均等配点の大学では、これからやることが変わります。
④ 今の点と、合格最低点との距離
ここがこの1枚の中心です。書き方は次の章で詳しく書きます。
⑤ 出願の締切
締切は4つあります。出願締切、試験日、合格発表、入学手続きの締切。いちばん重要なのは最後です。合格しても手続きを逃せば無効になります。
書き方にコツがあります。「◯月◯日までに出願」ではなく、「もし◯月◯日の朝になったら、登校前に◯◯大学の出願サイトを開く」のように、いつ・どこで・何をするかを1文にします。この形で計画を立てると目標の達成率が上がることが、90件以上の研究をまとめた分析で確かめられています。日付だけのメモは見落とします。
⑥ 費用と通学時間の「確認状況」
ここに書くのは確認したかどうかだけです。初年度に必要な納付金と4年間の総額を公式サイトで見たか、片道の通学時間を乗換案内で1回調べたか。この2つに「済」が付いているかどうかを書きます。
金額そのものを面談の場で話す必要はありません。ただし、一度も確認していないと、合格したあとで問題になります。志望校が絞れた段階で1回だけ調べて、1回だけ家庭で共有する。それで足ります。
点と距離の見せ方
「距離」の書き方を間違えると、面談は判定の話だけで終わります。3つのルールがあります。
1つ目。素点で見る。過去問を本番と同じ試験時間で解いて採点した点数を、科目ごとに書きます。多くの私立大学の合格ラインは、換算前の素点でおよそ6割から7割の間にあります。ですから素点で7割に届いたかを粗い目安にします。受験科目の過半数で7割に届いていれば、一つ上の帯に手が届く位置です。
2つ目。合格最低点は粗く使う。大学が公表する最低点には落とし穴があります。換算後の点数を公表している大学があり、小数点の付いた最低点はたいてい換算後です。設問ごとの配点を公表していない大学も多く、過去問を解いても正確な得点は出ません。共通テストと個別試験の両方に最低点がある場合、それぞれをクリアすればよいとは限りません。「だいたい6割か7割か」までで止めるのが正しい使い方です。細かい点差の議論に面談の時間を使わないでください。
3つ目。推移は同じ模試だけで見る。模試は受けている集団が違えば、同じ学力でも数字が変わります。違う模試の数字を比べる公式の換算表はありません。見るのは同じ模試での自分の推移だけです。判定の定義も会社ごとに違います。
そしてもう1つ、面談でいちばん効く欄があります。落とし方の内訳です。落とした問題を「知らなかった」「知っていたが使えなかった」「時間切れ」「ミス」の4つに分けて数を書く。これがあると、話が「足りない/届かない」から「次に何をするか」に移ります。知らないなら覚える、使えないなら演習、時間切れなら配分の練習、ミスなら見直しの手順。どれも能力の話ではありません。
判定の読み方や、今の位置の測り方そのものは今の立ち位置の測り方に書いたので、面談ではそこを深追いしないでください。
面談で先生に聞くとよいこと、5つ
聞くことを先に決めておきます。学校で分かる範囲の情報に絞ると、面談の時間がいちばん活きます。
- 評定平均。今の時点でいくつか、いつの成績まで入って確定するのか。
- 推薦の枠。学校として出せる推薦の種類、指定校の一覧がいつ出るのか、校内選考の時期と決め方。私立大学の学校推薦型で入学した人の約6割は指定校です。
- 出願書類。学校が作成や押印をする書類は何か、依頼はいつまでに出すのか、作成に何日かかるのか。
- 調査書。何通必要になりそうか、発行の申込方法と日数、長期休みの期間に受け取れるか。
- 過去の傾向のうち、学校が把握していること。同じ学部系統に進んだ先輩がいるか、同じ方式で出願した例があるか、共通テスト利用について学校として案内していることがあるか。
ここで前提を1つ。学校が答えられないこともあります。個々の大学の換算方式、今年の難易度の予想、他の生徒の出願先。これは先生の知識が足りないという話ではなく、学校が持っている情報の種類が違うからです。答えが返ってこなかった項目は、大学の募集要項と公式サイトで自分で確認する。それが一次情報です。
高校の先生と塾で言うことが違うとき
「学校ではこう言われたが、塾では違うことを言われた」。秋によくある状況です。
ここでどちらが正しいかを決めようとしないでください。確認するのは1つだけです。その話は何を根拠にしているか。
学校の話の根拠は、たいてい評定・校内の順位・過去にその学校から進学した人の記録・書類の実務です。塾の話の根拠は、たいていその大学の出題と、本人が解いた過去問の点です。根拠が違えば結論も違います。どちらも間違っていません。
ですから、聞き方をこう変えます。「それは評定から見た話ですか、それとも過去問の手応えから見た話ですか」。根拠が分かれば、2つの話は矛盾ではなく、2つの別の情報になります。あとは、どちらの情報が今回の判断に効くかを選ぶだけです。方式を決める場面なら評定と枠の情報が効き、科目の配分を決める場面なら過去問の点が効きます。
保護者が面談で話すこと、話さないほうがいいこと
ここは行動の話だけを書きます。気持ちの持ち方や声のかけ方は、面談の場の話ではありません(そちらは保護者ができることにまとめました)。
話すとよいこと
- 費用と通学時間を確認済みかどうか。金額の中身ではなく、確認したという事実。
- 出願の手続きを誰がやるか。サイトの入力、払込、書類の郵送。
- 受験当日の移動と付き添いの可否。遠方の日程があるかどうか。
- 家庭の側で動かせない日があるかどうか(家族の予定、きょうだいの行事)。
- 手続きとして何校分まで家庭で回せるか。校数の上限を、気持ちではなく手数の話として。
話さないほうがいいこと
- 本人の家での勉強時間や生活の様子の報告。決めるための時間が減ります。家で話す内容です。
- 他の生徒との比較。判断の材料になりません。
- これまでの成績の経緯を長く説明すること。1枚に書いた数字で足ります。
- 本人が答える場面で、代わりに答えること。志望校を言うのは本人です。
本人が自分の言葉で言えるようにしておく3点
紙を読み上げるのではなく、口で言えるようにしておくものが3つあります。面談の前日に、声に出して1回練習すれば十分です。
- 受ける大学・学部と、その理由。理由は「1年次に何を学ぶか」から1つ挙げると具体的になります。必修科目の一覧を1枚読んでおけば言えます。
- 今の点と、合格最低点との距離。「英語は素点で6割台、あと1割。落としているのは長文の後半で、時間切れが多い」という粒度です。
- これから本番までに何をやるか。「今週」「今月」の単位で1つずつ。「合格する」ではなく「この大問で7割取る」のように、近づける形の言葉で言います。
面談のあと1週間でやること
面談で決まったことは、1週間で形にしないと元に戻ります。やることは4つです。
- 決まったことを、締切とセットで書き出す。大学・学部・方式ごとに、出願締切/試験日/発表/手続き締切の4つを、先ほどの「いつ・どこで・何を」の1文の形で書きます。
- 日付を募集要項で裏を取る。面談で出た日付も、要項で確認します。制度と日程は毎年変わります。
- 学校に依頼する書類を申し込む。調査書や学校作成の書類は、依頼の受付期間と作成日数があります。ここが遅れると出願そのものが動きません。
- 決まらなかったことを1つに絞る。全部を持ち越さず、「次に決めるのはこれ」と1つだけ残します。
作業時間の見積もりについて、1つ知っておくと楽になります。人は自分の作業時間を短く読み間違えます。ある研究では、学生が予測した日数の平均が33.9日に対して、実際にかかったのは平均55.5日でした。予測どおりに終えられた人は29.7%です。ですから出願作業は見積もりの倍で枠を取る。前回似た作業に何分かかったかを思い出してから予定に入れると、精度が上がります。
いつ出願を確定させるかの考え方は出願校をいつ確定させるかにまとめています。
高1・高2の面談で聞いておくとよいこと
高3の秋に慌てないために、下の学年の面談で聞けることがあります。ここも学校によって時期が違うので、担任の先生に確認してください。
- 文理と受験科目の選択がいつ確定するのか、あとから変えられるのか。
- 評定がどの時期の成績から使われるのか。推薦を考える可能性があるなら、早い段階で知っておく価値があります。
- 受験に必要な科目が、時間割の上で取れるのか。選択科目の組み合わせで取れなくなることがあります。
- 校内順位の見方と、学校として案内している進路行事の年間予定。
この時期にやっておくと効くのは、志望校を確定させることではありません。気になる学部系統を2つまでに絞り、そのうち1つのカリキュラム表を1校分読むことです。大学を中途退学する理由の1位は「転学・進路変更」で22.0%、学力不振(7.3%)の3倍です。入る前の確認は、4年間を守る作業です。
二者面談・個別相談のときは
保護者が同席しない二者面談の場合、決まったことは本人が持ち帰る形になります。やることは2つです。前日に聞くことを書いたメモを本人に渡す(先ほどの5項目のうち、家庭で必要なもの)。帰ってきたら「決まったこと」「次の締切」「学校に頼む書類」の3つだけ確認する。会話の中身を全部聞き出す必要はありません。
大学が開く個別相談や進学相談会は、役割が違います。ここで聞けるのは、学校では答えられない大学側の情報です。方式ごとの併願ができるか、配点や換算の扱い、同じ日に複数学科を出願できるか。聞く相手によって答えられる範囲が違うと分かっていれば、面談で聞くべきことと、大学に聞くべきことを分けられます。
塾の面談も同じです。私たちが持っているのは、その大学の出題と、本人が解いた答案の情報です。評定や書類の実務は学校が持っています。両方をそろえて初めて受験校が決まります。
最後に一つ。秋は決めることが多く、疲れが出やすい時期です。つらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口に相談してください。
あわせて読みたい
- 保護者向け 受験の流れ(日程と制度の全体像)
- 保護者ができること(家庭で引き受けられる作業)
- 志望校の決め方(本人が使う手順)
- 併願校の決め方
- 出願校をいつ確定させるか
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