この記事は2027年度入試を受ける高校3年生・既卒生と、その一つ下の高校2年生に向けて書いています。大学ごとに入試対策読本を自作しており、そこに大学公表の2027年度の変更予告を記録しています。ここでは読本に記載のある変更点だけを種類別に並べます。
変更を見落とすと何が起きるか
- 出願できない。立教大学と成蹊大学は2027年度入試で有効なスコアを「2025年1月以降の受験」としており、2024年のスコアは使えません。法政大学と中央大学のTOEFL iBTは受験時期で基準表が分かれます。
- 過去問が使えなくなる。慶應義塾大学経済学部は2027年2月実施の入試から小論文を休止し、2026年度以前の小論文の過去問は不要になります。
- 範囲外をやってしまう、範囲内を飛ばす。法政大学A方式は日本史・世界史の範囲が狭まる一方、物理は限定がなくなって広がります。同じ大学で方向が逆です。
以下、①科目・配点、②方式、③出題範囲、④学部の新設、⑤英語資格の5つに分けます。
①科目・配点が変わる
慶應義塾大学 経済学部 ― 小論文休止、2科目400点満点へ
2024年12月6日公表の変更です。
- A方式 第2時限 数学 150点/80分 → 200点/100分
- B方式 第2時限 地理歴史 150点/80分 → 200点/100分
- 第3時限 小論文 70点/60分 → 休止
- 満点420点・3科目 → 400点・2科目
小論文は1999年度からの科目で、大学は「廃止」ではなく「休止」という語を使っています。1科目の重みが増すので、英語の足切り突破がより決定的になります。
そのほかの科目・配点
- 慶應義塾大学 SFC:外国語のドイツ語・フランス語が廃止され英語のみに。読本は、経済学部とSFC以外に科目構成・配点の変更はないとしています。
- 早稲田大学 政治経済学部:一般選抜で使う共通テストの外国語が英語必須に(ほかの科目と配点は変更なし)。
- 青山学院大学 経営学部:個別学部日程の独自問題が「英語」から「総合問題」(90分・150点)へ。共通テスト3科目(国語100・地歴公民または数学100・英語50)と合わせて400点満点。
- 中央大学:社会理工学部ビジネスデータサイエンス学科の共通テスト併用方式で数学の配点が150点→225点。
- 東京電機大学 工学部第二部:数学1科目(100点満点)。
- 埼玉大学 工学部応用化学科:前期の個別試験から数学を外し「理科(化学)」だけに。後期は総合問題から小論文へ。
- 成蹊大学 E方式 国際日本学専攻:国語が200点→300点(満点600→700)になる見込み。大学が「変更」と明記したものではないため要項で確認を。
②方式が増える・なくなる
青山学院大学 経済学部 ― 数学必須の方式ができる
経済学科はA方式(外国語150+地歴公民100+数学100=350点、募集約60)、B方式(外国語150+数学150=300点、約100)、C方式(外国語150+地歴公民100=250点、約120)。現代経済デザイン学科はA方式(約40)とB方式(約35)だけで、2026年度にあった「英語+地歴公民」の2教科型が消えます。同学科は数学を用意しないと受けられません。新A方式の数学は数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C(ベクトル)で、大学は「教科書の章末問題レベルを中心」「マークシート形式」と明記しています。
中央大学 ― 廃止と新設が同時に起きる
- 経済学部:4学科を2学科に再編(認可申請中)/一般方式Ⅱは1学科のみの出願に/英語外部試験利用方式は1日程のみに/共通テスト併用方式を廃止/外国語能力特別入学試験を新設。
- 文学部:自己推薦入学試験を大きく変更し、中国言語文化専攻と東洋史学専攻は募集停止。
- 総合政策学部は英語外部試験利用方式の試験内容を変更、国際経営・国際情報学部は同方式の出願要件を変更。
法政・立教・成蹊・埼玉
- 法政大学:GISでスコアを英語の得点に換算していた英語外部試験利用入試を廃止し、C方式を新たに実施(英語の配点は120点に引き下げ、B方式の出願資格も変更)。理工学部機械工学科 航空操縦学専修は募集停止。
- 立教大学:スポーツウエルネス学部で共通テスト利用入試の4科目型を新設(外国語200+数学2科目各100+理科200)。経営学部の自由選抜入試は方式Bの出願資格が変更。
- 成蹊大学:総合型選抜「基礎学力型」は2026年3月の新設発表後、7月に2027年度の実施取りやめが発表されました。C方式の出願締切は1/16→1/15。
- 埼玉大学:機械工学・システムデザイン学科で学校推薦型(一般枠3名)を新設。
③出題範囲が変わる
法政大学のA方式は、社会と物理で方向が逆です。
- 日本史:「歴史総合,日本史探究」→「日本史探究」(狭まる)
- 世界史:「歴史総合,世界史探究」→「世界史探究」(狭まる)
- 物理:従来あった「様々な運動」「波」「電気と磁気」といった出題範囲の限定をなくす(広がる)
歴史総合の独立大問はもともと出ていませんが、東アジア国際秩序や朝鮮半島史といった境界領域の設問はあり、これが減る可能性があります。物理は6冊すべてが4分野に固定され原子は0/6でしたが、今後は原子も出る可能性があります。
- 明治大学 政治経済学部・総合数理学部:学部別入試で数学の出題範囲に数学Bの「統計的な推測」が追加(次の章で詳しく)。
- 中央大学 法学部:一般方式の数学の出題範囲の表記を変更。
- 慶應義塾大学 医学部:整数の性質は2028年度まで範囲外ですが、2029年度以降、数学Aの「整数の性質」に関する部分が追加されると予告されています。
④学部・学科が新設される
読本に新設の記載があるのは中央大学です。どちらも仮称・設置構想中です。
- スポーツ情報学部(仮称・設置構想中):2027年4月、多摩キャンパスに開設予定。2027年度一般選抜の一般方式は理系型62名(英語+数学/数Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B〈数列〉・C)、文系型38名(英語+国語+数学/数Ⅰ・数A)です。
- 情報農学部(仮称・設置構想中):2027年4月、多摩キャンパスに開設予定。入試制度の詳細は未公表です。
- 経済学部の4学科→2学科の再編は認可申請中です。
埼玉大学は2027年度に学部・学科の新設や改組はないと読本に記されています。
⑤英語資格の扱いが変わる
「使える試験」「基準」「有効期間」「合否への使い方」が別々に動きます。
- 立教大学:「TOEFL iBTとTEAP CBTの取扱いを変更」と予告。2027年度入試のQ&Aに載る利用可能な試験は6種類で、2026年度のリストにあったTEAP CBTが含まれていません。
- 中央大学:商学部と文学部でスコアを「出願資格としてのみ」から合否判定に含める方向へ。商学部の英検はCSE2.0で2,150以上→1,980以上に引き下げ。TEAP CBTは試験終了により使えず、GTEC CBTタイプは2028年度入試から使えません。
- 法政大学:TOEFL iBTのバンドスコア方式導入に伴い、2026年1月20日以前のテストと21日以降のテストで別の出願基準が設定されます。
- 学習院大学:TEAP CBTが利用不可に。TOEFL iBTは受験時期でスコア基準が分かれ、国際社会科学部の換算表も区分されます。科目・配点・募集人員の変更は予告されていません。
- 明治大学:TOEFL iBTのスコアスケール変更への対応。
- 成蹊大学:E方式の換算表にIELTS・TOEFL iBT・TOEICが加わりTEAP CBTの列がありません。有効期間は2024年1月以降→2025年1月以降。
TEAP CBTが使えなくなる大学が複数あること、TOEFL iBTは受験時期で基準が分かれることが共通点です。試験を受ける前に要件を確認してください。
数学の「統計的な推測」「データの分析」をどう準備するか
制度として範囲に追加されるのは、読本に記載のある範囲では明治大学の政治経済学部と総合数理学部です。読本はこれを「過去問に前例のない完全な新規分野の追加」と明記しています。政治経済学部は2024〜2026年度の3年とも両分野の出題がなく、総合数理学部も統計的な推測がゼロです。過去問演習だけでは対策が成立しません。
読本が示す手順は3段階です。
- データの分析の代表値・分散・相関。標準偏差が一次変換でどう変わるかまで。
- 確率変数の期待値と分散。確率の延長として扱う。
- 二項分布・正規分布・標本平均の分布・信頼区間。
形式の見当は先行事例からつけます。明治大学農学部は2026年度の大問Ⅲで母平均の信頼度95%信頼区間を出し、問題冊子に正規分布表が添付されていました。総合数理志望者は予行演習として解く価値があります。青山学院大学経済学部B方式は2025年度から統計的な推測が独立大問Ⅲとして新規登場。慶應義塾大学は医学部・看護医療学部・薬学部で2025・2026年度に出題があり、理工学部だけは3年とも両分野ゼロです。
両分野の出題実績がないのは、早稲田大学(文系・理系とも全冊ゼロ)、慶應義塾大学の文系4学部と理工学部、法政大学、学習院大学、中央大学(統計的な推測)です。ただし「出題実績がない」と「範囲外」は違います。いま出ていない大学でも、範囲に入っているなら出る可能性はあります。
変更がある大学の過去問をどう扱うか
「全部使えない」と切るのも「全部使える」と思うのも損です。次の4点を科目ごとに確かめてください。
- その科目はまだ実施されるか。慶應義塾大学経済学部の小論文の過去問は不要になります。
- 配点と試験時間は同じか。同じ経済学部の数学・地理歴史は150点/80分から200点/100分に。過去問と同じ分量で解き終えても本番は同じではありません。
- 出題範囲は広がるか狭まるか。広がるなら過去問に空白があります。法政大学の物理は何年分解いても原子が出てこないので単元学習で埋めます。逆に日本史・世界史は歴史総合が外れるだけで、探究側の大問はそのまま演習になります。
- 科目名や方式名だけの変更ではないか。青山学院大学経営学部の「総合問題」の説明は2023〜2026年度の英語そのものの説明で、読本はその4年分が最良の教材だとしています。同大学経済学部のC方式も2026年度の経済学科A方式の付け替えなので、それ以前のA方式の過去問がそのまま使えます。
科目が変わっても問題が動かないこともあります。埼玉大学の応用化学科は前期から数学が外れますが、読本は工学部数学の5年分の傾向が崩れる理由はないとしています。
高校2年生・既卒生が特に注意すること
高校2年生
- 英語資格は「いつ受けるか」で価値が変わる。立教大学は2027年度入試で2025年1月以降のスコアが有効なので、高1の1月のものでも使えます。逆に成蹊大学は有効期間が動き、2024年のスコアは使えません。早く受けて何度も受け直すのが基本線です。
- 受ける試験の種類を早く決める。TEAP CBTは2025年度で試験そのものが終了し、中央・学習院・立教・成蹊のいずれでも2027年度入試の扱いから外れました。
- 自分の学年に効く予告を探す。学習院大学は2028年度に国際社会科学部の募集人員が変わり、慶應義塾大学医学部は2029年度以降、数学Aの「整数の性質」が範囲に追加されます。
既卒生
- 去年やった対策が不要になることがある。慶應義塾大学経済学部を受け直す人は、現役時代の小論文対策が使えません。読本も「小論文対策を切って数学または地歴に全振りする判断を早めに」としています。
- 卒業年数の条件が入る学部がある。法政大学の文学部哲学科・日本文学科は卒業生の出願要件が「卒業5年以内」、英文学科は「卒業5年以内」かつ「専願のみ」です。
- 入口そのものが消える。去年の要項を前提に併願表を作ると成り立たない欄が出ます(中央大学文学部の自己推薦の一部専攻、法政大学GISの英語外部試験利用入試、成蹊大学の「基礎学力型」)。
- 出願作業の時期を見込む。慶應義塾大学の出願登録・検定料支払は2026年12月24日〜2027年1月18日で、共通テストより前に作業が生じます。
必ず大学の最新の入試要項で確認してください
ここまではすべて入試対策読本に記載のある、大学の公表資料にもとづく内容です。読本はいずれも2026年9月のもので、制度の記述は2026年9月時点で公表されていた資料(各大学の要項・入試ガイド・変更点の予告ページなど)にもとづき、傾向分析の基準は多くが2026年度入試です。
この記事に書いてあることも含め、最終的な確認は必ず大学が公表する最新の入試要項で行ってください。要項が出れば、この記事の内容は上書きされます。読本の執筆時点で要項が未公表だった大学もあります。中央大学の要項は2026年11月中旬公開で、この記事の中央大学の変更はすべて予告です。立教大学は2026年11月上旬、学習院大学は例年10月中旬、成蹊大学は9月下旬の公開予定、埼玉大学の募集要項はテレメール請求です。
この記事に出てこない大学・学部について「変更なし」とは書けません。青山学院大学の2027年度の個別学部日程の変更通知は経済学部と経営学部の2件だけでしたが、これは「変更がない」ことの証明ではありません。読本の分析時点では変更の記載が見つかりませんでした、というのが正確な言い方です。中央大学の2学部は仮称・設置構想中、経済学部の学科再編は認可申請中です。
やることは2つです。①志望校の「入試の変更点」ページを、自分の受験年度で読む。②要項が出たら、この記事と読本の数字を要項の値に差し替える。
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