成蹊大学を受ける高校3年生・既卒生と保護者の方に向けた記事です。テーマは「どの方式で出願するか」の一点にしぼります。科目ごとの傾向は成蹊大学 一般選抜 全科目の傾向と対策にまとめているので、ここではA方式とE方式が受け方としてどう違うのか、どちらで出すかをどう決めるのかだけを扱います。
成蹊は方式を選んだ時点で、試験の中身も合格ラインも別物になります。同じ法学部でも、A方式とE方式では必要な得点率が15ポイント以上違います。
5方式あるが、独自問題はA方式とE方式の2つだけ
成蹊の一般選抜は2026年度からA・E・C・S・Pの5方式です。2025年度まであったG方式は2026年度に廃止されました。
- A方式:3教科型学部個別入試。学部ごとの試験日に、学部ごとの問題で3教科。全6学部。検定料35,000円(1学部・1専攻につき)
- E方式:2教科型全学部統一入試。2月3日に全学部共通の問題で2教科。全6学部。35,000円(1学部につき)
- C方式:共通テスト利用3教科型。全6学部。15,000円
- S方式:共通テスト利用4教科6科目型奨学金付。理工学部のみ
- P方式:共通テスト5科目+独自試験1科目の国公立併願アシスト。理工学部以外の5学部。25,000円
出願はWebのみ、2出願目以降は検定料が一律10,000円引きです。成蹊が自前の問題を出すのはA方式とE方式の2つだけ。P方式の独自試験はE方式と同じ日・同じ問題なので、対策の種類は2つしかありません。
枠の大きさも違います。一般選抜の募集人員1,232名のうちA方式が729名で約6割。E方式は1学科あたり4名から20名と小さく、法律学科でもA方式110名に対しE方式は19名です。
A方式は「志望学部の試験」、E方式は「全学部共通の1回」
A方式は学部ごとに別の問題
入試対策読本では、2023〜2026年度の問題冊子91冊を同じ年度の別学部の冊子と総当たりで照合し、本文の文字列の一致率を計算しています。結果は試験日の違う学部どうしで共通の問題は1組もなし。英語・国語・日本史・世界史・政治経済・数学の6科目すべてで同じ結論でした。一致率は英語が最大0.011、数学が最大0.030、日本史が最大0.056で、同一問題なら跳ね上がるはずの水準に届きません。
例外は1組だけ。試験日が同じ2月13日の経済学部と国際共創学部で、2026年度の英語が同じ冊子でした。正確には「試験日が違えば別問題、同じ日の学部は同じ冊子になりうる」です。
形式が似ていても中身は別です。経済学部と経営学部の日本史はどちらも「4大問・5択・42問」ですが、一致率は0.048〜0.056で別問題でした。他学部の過去問は同じ形式の演習素材にはなっても、本番の予想問題にはなりません。
そのかわり学部ごとの型はほとんど動きません。法学部A方式の英語は2023〜2026年度の4年とも「発音・英英定義・熟語・整序 各5問/物語約2000語/記事約700語」で、小問40問すべてマークです。志望学部の3年分を解けば本番の型はほぼ見えます。
E方式は全学部共通の1問題
E方式は正反対で、2月3日の1回の試験で全学部共通の問題を解き、学部ごとに違うのは配点だけです。2026年度の英語は6学部のE方式をまとめた1冊で、学部ごとに問題が分かれている形跡はありません。A方式とE方式の間にも共通の問題は1つもありません。
1回の試験で複数の学部・学科に出願できますが、「国語」を課す学科と「数学」を課す学科の併願はできません。国語型は現代経済・総合経営・法律・政治・文学部4学科・国際日本学専攻、数学型は経済数理・環境サステナビリティ学専攻・理工学部5専攻です。
会場も違います。全学部が吉祥寺キャンパスにあり、学外会場が設けられるのはE方式とP方式だけ(仙台・さいたま・横浜・静岡・福岡、2027年度から千葉の案内あり)。A方式は学外会場がないので、川越からだと2月10日から14日の学部別日程に合わせて吉祥寺まで出ることになります。併願する学部の数は移動込みで考えてください。
科目・配点・時間は方式と学部でここまで違う
A方式の配点は2026・2027年度で同じです。国語・選択・英語の順に書きます。
- 法・法律/政治:100/100/120=320点
- 経営・総合経営:100/100/150=350点
- 経済・現代経済:100/100/100=300点/経済・経済数理:100/数学必須200/100=400点
- 文・英語英米文:150/100/200=450点、日本文:150/100/100=350点、国際文化・現代社会:150/100/150=400点
- 国際共創:100/150/200=450点
- 理工(5専攻):数学120/理科120/英語120=360点
合否は3教科の合計で判定し、科目ごとの基準点はありません。法学部はほぼ均等配点で1科目の大崩れを取り返しにくく、英語英米文学科と国際共創学部は英語200、経営学部は英語150で英語の比重が大きい設計です。時間割は文系5学部が全教科60分、理工は数学90分・理科80分・英語60分。法学部の日本史と政治・経済は約50問あり、1問あたり約72秒の処理速度が要ります。
選択科目の制約も方式選びに効きます。A方式で地理を選べるのは現代経済学科と国際共創学部だけ(同じ2月13日)、経営学部では政治・経済を選べず、文学部は日本史と世界史のみ。数学の範囲も学部で違い、法学部は数学Bを含まずデータの分析も範囲外、理工学部は数学Ⅲ・Cまで入ります。歴史総合が範囲に入るのは法学部と文学部だけです。
E方式の配点は、英語300・国語200=500点が法・現代経済・文の3学科、英語400・国語200=600点が経営、国語300・英語200=500点が日本文です。時間割は外国語90分(12:30〜14:00)、国語または数学75分(14:55〜16:10)。A方式より英語が30分長いぶん総語数は3000語超で、文法15問/会話/(2025年度から)実用文の短問/長文3題、全問マークです。国語は評論2題+随筆で全問マーク。古文の大問が出るのは文学部A方式だけで、E方式の国語には古文も漢文も入りません。
同じ答案でも満点が違うのがE方式の特徴です。英語が得意なら英語400点の経営学部、国語が得意なら国語300点の日本文学科と、得意科目の比重が大きい学科を併願先に加えるのが基本の使い方です。
高得点勝負になるのはどちらか
2026年度の合格最低点の得点率です。
- A方式(文系):57〜74%。法律73%(234.5/320)、政治74%、総合経営73%、現代経済71%、日本文69%、現代社会68%、英語英米文66%、国際文化66%、国際日本学62%、経済数理60%、環境サステナビリティ57%
- A方式(理工):45〜58%。機械システム専攻は360点満点の161点が合格ライン
- E方式(国語型):87〜92%。法律88%(439/500)、政治87%、総合経営91%、現代経済90%、国際日本学92%、現代社会92%
- E方式(数学型):65〜74%。C方式(文系)71〜83%、P方式68〜77%
同じ法学部でA方式は7割台前半、E方式は9割近く。別の水準です。E方式の国語型は2025年度の67〜74%から2026年度に87〜92%へ跳ね上がりました。同じ年に英語外部検定の換算点方式が始まっており、因果は大学が説明していませんが、「外部検定の高スコア層と9割を取り切る層の競争」と見て準備するのが安全です。
倍率も偏ります。E方式は国語型9学科のうち6学科が10倍超で、現代社会学科の16.1倍が最高でした。ただしE方式の倍率は「本命にする人の競争」より「併願の答案が何枚集まったか」に近い数字で、倍率より9割前後という合格ラインのほうが重い情報です。方針はこうなります。第一志望の学部はA方式で取りにいく。E方式は「取れたら大きい1回」として足す。
外部検定を持っているなら話は変わります。換算点方式は、スコアを基礎換算点(100点満点)に置き換えて学部ごとの英語配点に換算し、当日の英語と高いほうで判定する仕組みです。法学部E方式は英語300点なので、基礎換算点90(英検CSE2300〜2599)なら3倍の270点、つまり9割。最低点439/500から逆算すると国語200点のうち169点(84.5%)で届きます。基礎換算点70だと英語210点にとどまり、国語で229点が必要になって満点を超えます。武器になるのは基礎換算点90以上からで、使えるのはE方式だけ。P方式の独自英語では利用できません。
なおA方式の合格最低点には213.33点のような小数が出ており、選択科目の得点調整後の値とみられます。最低点ちょうどではなく少し上に目標を置いてください。
過去問をどう集めるか
A方式が学部ごとに別問題で型が固定されている以上、集め方は1つに決まります。受ける学部の問題を、学部名で揃えて3〜4年分です。秋に最も古い年度を時間を気にせず解き、12月に2年目を制限時間どおりに解いて配分を決め、1月に3年目を3科目続けて通し、2月上旬に最新年度を最後の通しに使います。E方式も受けるなら1月に1年分入れてください。
点数は必ず得点率で記録します。同じ法学部でもA方式320点、E方式500点、C方式1000点、P方式900点と満点がバラバラで、素点のままでは比べられません。
集め方で得をする情報が2つあります。1つは、大学が2026年度A方式法学部の6科目について、問題・解答・出題意図をPDFで公開していること。S-NETの過去問題ページにあり、公式の解答で採点できる唯一の年度です。もう1つは、2023〜2025年度のE方式の英語・国語はE・P・G方式の共通冊子だったので、G方式廃止後もそのままE方式の過去問として使えること。P方式志望者の対策も同じ冊子です。年度の回し方そのものは過去問の使い方にまとめています。
併願をどう組むか
成蹊の独自試験は2月3日から14日の約2週間に散らばります。2027年度も並びは同じです。
- 2月3日:E方式・P方式の独自試験(全学部共通問題、1回で複数学部に出願可)
- 2月9日:E・C・P方式の合格発表
- 2月10日 理工/11日 経営/12日 文/13日 経済・国際共創(どちらか一方)/14日 法(A方式)
効くのはE方式の結果が2月9日に出る=A方式より先に分かる点です。E方式で受かっていれば2月10日以降のA方式は第一志望だけに集中でき、受からなくても本番の実戦練習を1回済ませた状態で臨めます。
標準の型は「E方式(2/3)+第一志望のA方式」。判定回数を増やしたい人はA方式をもう1学部足します。共通テスト5科目を受ける人はC方式+P方式+A方式で、P方式は手続締切が3月11日と遅く国公立の結果を待てます。増やすときの制約は3つ。政治・経済を選んでいる人は経営A・文Aを受けられないこと。A方式は学部ごとに別対策が要るので併願は2学部までが現実的なこと。検定料はA+Eで60,000円、A方式を1学部増やすとさらに25,000円かかることです。
補欠にも触れます。2026年度A方式の追加合格は、法律学科が補欠180名に対し24名、政治学科が190名に対し25名、総合経営学科は244名に対し0名。追加合格まで届くのは補欠の一部です。補欠を待つ前提で併願先の手続きを止めないでください。同じグループの大学の並べ方は成成明学獨國武の傾向と対策で扱っています。
結局どちらで出すか:5つの質問
- 学部が決まっているか。決まっているならA方式が本命です。募集人員の約6割がA方式で、合格ラインも文系で6〜7割台。
- 外部検定で基礎換算点90以上が見込めるか。見込めるならE方式の価値が上がります。見込めないなら、英語・国語とも9割前後が要る試験だと理解したうえで出します。
- 国語型か数学型か。E方式はこの2つを併願できません。数学型は合格ラインが65〜74%で、国語型より13ポイント以上低くなっています。
- 選択科目は何か。政治・経済なら経営A・文Aは出せません。地理ならA方式は現代経済と国際共創だけ、しかも同日です。
- 共通テストを5科目受けるか。受けるならP方式が入ります。2026年度の法学部P方式は競争率1.6倍・得点率68%。私立専願には選びにくい方式です。
なお2027年度の入学試験要項は9月下旬公開予定です。ここに挙げた数字は2026年度の大学公表値なので、募集人員・時間割・出題範囲・併願のルールは最新の要項でご確認ください。大学別の傾向をまとめて見たい方は大学別 傾向と対策まとめもどうぞ。
方式の設計は、早く決めるほど得をします
出願設計を秋のうちに決めておくと、その後の過去問演習が一本化できます。「A方式で志望学部を1つ」と決まれば解く冊子が決まります。2月まで決めきれないと、どの学部の過去問を回すかが最後まで定まりません。
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