小論文の頻出テーマを学部系統別に:教育・看護医療・経済経営・国際・法の準備の仕方

この記事は、総合型選抜や学校推薦型選抜で小論文を受ける予定の高校生、とくに教育・看護医療・経済経営・国際・法のどれかの系統を考えている人に向けて書いています。系統ごとによく扱われるテーマの方向と、その分野で答案に求められる視点、テーマ別の準備の仕方をまとめました。

11月に試験を控えている高3生向けの直前の使い方と、来年以降に受ける高1・高2生がこの冬から始められる準備も、最後に書いています。

年内入試の小論文は、形が大学ごとにかなり違う

文部科学省の「令和9年度大学入学者選抜実施要項」では、総合型選抜と学校推薦型選抜で、教科・科目のテストや小論文などの評価方法を少なくとも一つ使って学力を確かめ、そのことを募集要項に書くことが求められています。小論文はその代表的な方法ですが、同じ要項には、教科の知識を問う問題を小論文の形でやるだけにならないよう留意するとも書かれています。知識の量より、資料を読み、考え、書く力を見る試験だということです。

ただ、「小論文」と一口に言っても、実際の形は大学ごとに違います。2027年度入試の公式の要項で確認できた例を並べます。

  • 埼玉大学 経済学部 総合型選抜:60分。文章を読み、著者の考えを要約または説明する設問と、それを踏まえて自分の考えを述べる設問。小論文200点・面接200点で、どちらかが4割未満なら不合格。
  • 中央大学 法学部 チャレンジ入学試験:約45分の講義を聴いたあと、75分の論述形式の筆記試験。講義内容の理解と自分の意見が問われる。
  • 埼玉県立大学 学校推薦型選抜:小論文70点、面接及び調査書等30点の合計100点。配点の大きな部分が小論文。
  • 日本大学 経済学部 総合型選抜〈資格取得型〉:試験場で書くのではなく、事前課題の小論文(1,350字以上1,500字以内)を出願時に提出。
  • 獨協大学 外国語学部 Q(課題探究)入試:日本語で3,000字程度の事前課題を提出し、2次選考でその内容をプレゼンテーションする。

試験時間、字数、課題文があるかどうか、事前に書くのか当日書くのか。志望校の形式を最初に確かめてから準備を始めるのが基本です。過去の出題を入試情報のページなどで公開している大学もあるので、まず確認してください。小論文の基本的な書き方は小論文の書き方で説明しています。

系統別:よく扱われるテーマの方向と、求められる視点

ここからは、系統ごとに出題されやすいテーマの方向を、学部で学ぶ内容から整理します。特定の大学の出題を予想するものではありません。その分野の人がふだん何を考えているかを知っておくと、初めて見る課題でも書く方向が見えてきます。

教育系

教育学部や教員養成の課程では、学校と子どもをめぐる問題がよく扱われます。たとえば、不登校や学びの多様化、ICTを使った授業、教員の働き方、家庭や地域と学校の関係、特別な支援が必要な子どもへの対応、子どもの貧困などです。

求められるのは、子ども一人ひとりの立場から考える視点と、学校や制度の側から考える視点の両方です。「子どものためにこうすべき」だけで終わると、実際に誰がどう実行するのかという問いに答えられません。自分の小中高での経験を例にするのはよいのですが、体験談だけで字数を埋めないよう注意します。教育・心理・社会・福祉系でよく出る統計資料の読み方は教育・心理・社会・福祉系の小論文と統計読解でまとめています。

看護・医療系

看護学科や医療系の学科では、少子高齢化と地域の医療、在宅での療養や介護、患者の意思の尊重、チームで行う医療、医療者の働き方、感染症への備え、命や生き方に関わる問題などがよく扱われます。

この系統で大切なのは、患者や家族の立場に立って考える姿勢と、医療者として何ができるか・何をしてはいけないかの線引きです。医学的な知識を正確に書くことを求められるのではなく、相手の気持ちを想像しながら、専門職としての責任を考える文章が求められます。埼玉県立大学のように、卒業後に地域で働く意志を出願資格に入れている大学もあるので、自分の住む地域の医療や福祉の現状を自治体の資料で調べておくと、具体的な答案になります。

経済・経営系

経済学部や経営学部では、物価や賃金、働き方の変化、地域経済と人口減少、企業の社会的な責任、デジタル化と新しいビジネス、格差、消費者の行動などがよく扱われます。グラフや表の資料を読み取らせる出題も少なくありません。

求められるのは、ある政策や行動に良い面と悪い面の両方があることを踏まえ、誰が得をして誰が負担するのかを考える視点です。「〜はよくないので禁止すべき」のような一方的な結論は、経済の考え方と相性がよくありません。埼玉大学経済学部の要項では、意見を述べる設問で論理的な整合性や社会科学の知識と思考力を評価するとしています。グラフ型の対策は小論文の資料・グラフ読み取り型にまとめています。

国際系

国際関係、外国語、国際教養などの学部では、多文化共生と外国人住民、異文化理解、言語と文化の関係、国際協力、グローバル化の影響、地球規模の環境問題などがよく扱われます。英語の課題文が出ることもあるので、志望校の形式を確かめてください。

この系統で求められるのは、自分の常識を相対化する視点です。「日本では当たり前のことが、別の国では違う」という比較を、具体的な例で示せるかどうかが答案の深さを分けます。獨協大学のQ入試のように、特定の言語圏と日本を比べたり、自分の経験から論じたりする課題もあります。留学経験がなくても、地域に住む外国人の方の暮らしや、学校での異文化交流などから具体例を探せます。

法学系

法学部では、ルールと自由のバランス、プライバシーと情報社会、少年法や刑罰の考え方、選挙と民主主義、表現の自由とインターネット上の言葉、契約と消費者保護などがよく扱われます。

求められるのは、対立する二つの利益を両方取り上げ、どこで線を引くかを理由とともに示す力です。たとえば「SNSの書き込みを規制すべきか」という問いなら、被害を受ける人の権利と、書く人の表現の自由の両方を考えたうえで、自分の立場を決めます。中央大学法学部チャレンジ入学試験のように、講義を聴いて論述する形式では、聴き取った内容を正確に要約できるかも評価されます。

どの系統にも共通する答案の型

系統が違っても、評価される答案には共通する流れがあります。

  1. 課題文や資料の要点を正確につかむ:要約の設問がなくても、課題文を誤解した答案は評価されません。
  2. 自分の立場を最初にはっきり書く:賛成か反対か、どの点を重視するのかを序盤で示します。
  3. 理由を具体例で支える:統計、制度、身近な事例など、読む人が確かめられる材料を使います。
  4. 反対の立場にも触れる:反論を一度取り上げ、それでも自分の立場をとる理由を書くと、論が強くなります。
  5. 結論で問いに答えて終わる:新しい話題を最後に出さず、最初の立場に戻ります。

総合型選抜で多い、志望分野と結びつけた出題への対応は総合型の小論文の書き方でも詳しく説明しています。

系統別テーマの準備の仕方

1. テーマノートを作る

志望系統のテーマを10〜15個選び、1テーマにつきA4の紙1枚かノートの見開き1ページで、現状(数字を一つ以上)、主な論点、賛否それぞれの理由、自分の意見をまとめます。数字は、文部科学省や厚生労働省、総務省などの官公庁の白書や統計、自治体の資料から取ると、出典がはっきりします。

2. 新書を系統ごとに2〜3冊読む

志望分野の入門的な新書を読むと、その分野の人が使う考え方や言葉がわかります。読んだら、各章の要点を3行で書いておくと、そのまま要約の練習にもなります。

3. 要約の練習を週に2回

新聞の社説やコラムを、200字程度に要約します。埼玉大学経済学部のように要約の設問がある大学もあり、要約は小論文全体の土台になります。

4. 時間を計って書き、添削を受ける

志望校の試験時間と字数に合わせて書き、学校や塾の先生に見てもらいます。添削で指摘されたことは、次の答案で直せたか確かめるまでが練習です。同じテーマで2回書くと、伸びがよくわかります。

5. 事前課題型は、書いたあとの面接まで考える

日本大学経済学部の資格取得型や獨協大学のQ入試のような事前課題は、時間をかけて書けるぶん、内容の深さが求められます。また、提出した文章をもとに面接やプレゼンで質問されることがあるので、参考にした資料を自分で説明できる状態にしておきます。課題レポートの進め方は事前課題・課題レポートの進め方でまとめています。

時期別の取り組み方

11月に試験がある高3生

たとえば埼玉大学の経済学部総合型選抜と教養学部学校推薦型選抜(Ⅰ型)は11月21日、埼玉県立大学の学校推薦型選抜は11月22日が試験日です。試験まで3週間ほどなら、新しいテーマを増やすより、志望校の形式で時間を計って2〜3本書き、添削で直すことを優先してください。テーマノートは前日まで見直しに使えます。

来年受ける高2生

冬休みから春休みにかけて、志望系統のテーマノートを10個つくるのが目安です。高3の夏までに、志望校の形式で一度は時間を計って書いておくと、出願の準備と並行しても慌てずに済みます。志望校が決まりきっていなくても、系統が決まっていれば準備は進められます。

高1生

まだ小論文を書く必要はありません。ニュースを見て「自分ならどう考えるか」を一言メモする、気になった分野の新書を1冊読む。この程度で十分に準備になります。

参考にした公式情報

入試の内容は変更されることがあります。出願前に必ず大学の公式発表を確認してください。

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この記事を書いた人

二神大輝