模試の偏差値が上がらないとき、何が起きているのか|川越の予備校が教える成績表の読み方と、偏差値より先に見る3つの数字

点数は上がっているのに偏差値が変わらない。あるいは前より下がっている。この記事は、そういう模試の成績表を前に手が止まっている高校生・既卒生と、その保護者の方に向けて書いています。

結論から書きます。偏差値は「自分の学力そのものを表す数字」ではなく、「その模試を受けた人の中での自分の位置」です。だから、学力が上がっていても数字が動かないこと、むしろ下がることが起こります。数字の意味を押さえ、「偏差値より先に見る数字」に切り替えるまでを書きます。

面談でよく出る声

川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で面談をしていると、この時期は同じ相談が集まります。

  • 「模試の点数は上がっているのに、偏差値がなかなか上がらない」
  • 「既卒生が入る模試になってから、急に偏差値が下がった」
  • 「模試の偏差値が、志望校に圧倒的に足りない」
  • 「勉強しているのに、模試に繋がりにくい」

どれも努力が足りないという話ではありません。4つとも、偏差値という数字の作り方から説明がつきます。

偏差値は「点数」ではなく「その回の受験者の中での位置」

偏差値は、その模試を受けた人の中で自分がどのあたりにいるかを表す数字です。受けている集団が違えば、同じ学力でも数字は変わります。

ここから、最初の声の答えが出ます。点数が10点上がっても、同じ模試を受けた他の人たちも同じくらい上がっていれば、集団の中での位置は変わりません。つまり偏差値は動きません。これは学習が止まっているのではなく、全体が一緒に前に進んでいる状態です。受験学年の春から秋は誰もが勉強量を増やす時期なので、位置が動きにくくなるのは自然なことです。

逆に、点数が下がったのに偏差値が変わらない回は、その回が難しかっただけということがあります。点数と偏差値がずれて動いたときは、まず「その回の難易度と受験者層」を疑ってください。

もう一つの原則。一般に、受験者層の広い模試ほど偏差値は高く出て、難関大志望者の多い模試ほど低く出ます。したがって違う模試の偏差値を比べても意味がなく、公式の換算表もありません。A社の模試で55、B社で48という数字を並べて落ち込む必要はありません。別の集団の中の、別の位置を見ているだけです。模試そのものの使い方は模試の使い方の記事にまとめています。

母集団が変わると、同じ学力でも数字が変わる

2つめの声も、同じ原則で説明できます。偏差値は集団の中の位置なので、集団の構成が変われば、自分の学力が1ミリも落ちていなくても数字は動きます。

学年が進むほど、模試を受ける人の層は変わります。高1・高2のうちは学校単位で受けるため志望校が定まっていない人も多く含まれますが、受験学年に進み、さらに既卒生が加わる回になると、集団は「この試験を受ける必要がある人」に絞られていきます。難関大志望者の割合が高い集団では偏差値は低く出る、という原則がそのまま効きます。

回をまたいだ偏差値の上下を「学力の上下」として読むと、読み間違えます。読み方は2つ。

  1. 同じ模試の系列の中だけで推移を見る。同じ会社の同じ模試シリーズを春・夏・秋と並べる。ここでの上下だけが、自分の位置の変化です。
  2. 母集団が変わった回は、偏差値ではなく中身を見る。どの大問で落としたか、時間内に終わったか。数字の比較から答案の比較へ切り替えます。

判定(A〜E)が意味していること

3つめの声「偏差値が圧倒的に足りない」に入る前に、判定の定義を確認します。判定の意味は、模試を出している会社ごとに違います。代表的な2つの定義を並べます。

  • A判定:A社の模試は合格可能性80%以上、B社の模試も80%以上。安全圏ですが、油断で落ちる人が2割います
  • B判定:A社は65%、B社は60%以上80%未満。合格が見えています。
  • C判定:A社は50%、B社は40%以上60%未満。五分五分であって、「だめ」ではありません。
  • D判定:A社は35%、B社は20%以上40%未満。3人に1人は受かる位置です。
  • E判定:A社は20%以下、B社は20%未満。0%ではありません。ただし、出発点には向きません。

大事なのは2点です。第一に、A社のC判定「50%」とB社のC判定「40〜60%」を同じものとして扱わないこと。第二に、C判定は否定ではないということ。志望校の決め方の記事でも書いたとおり、私たちはC判定が出るレベル帯を「出発点」に置きます。今の実力で半分は届く場所なので、過去問を解くと「解ける問題と解けない問題が混ざる」状態になり、これが学習にいちばん向いた状態です。

逆に、E判定の帯を出発点にすると、解けなかったという事実が実力の情報ではなく絶望の材料になります。目標設定の研究では、手の届かない高い目標がうまく働くのは直近の成績がよく余裕がある人だけで、実際に高い目標へ飛びつくのは余裕のない人のほうが多いと指摘されています(ストレッチ目標の逆説)。判定が厳しいときほど「一発逆転で難関校」と考えたくなり、その考え方がいちばん危ないということです。

「偏差値が足りないから無理」と決める前に、入口の話も一つ。文部科学省の令和7年度の集計では、大学入学者全体の53.6%が学校推薦型選抜か総合型選抜で入学しており、私立大学に限ると61.6%です。一般選抜だけを前提に判断すると、入口の半分を見落とします。

偏差値より先に見る、3つの数字

では何を見ればいいのか。面談で最初に開くのは、偏差値欄ではありません。次の3つです。

  1. 科目ごとの得点率(素点で7割に届いたか)。多くの私立大学の合格ラインは換算前の素点で6割から7割の間にあり、年による変動を吸収するため、私たちは素点でおよそ7割を「この帯は届く」の目安にしています。7割に届いた科目が受験科目の過半数なら、次の模試を待たずに一つ上の帯へ進んでかまいません。
  2. 時間内に最後まで到達できたか。同じ6割でも、「最後まで解いて6割」と「大問1つ残して6割」では次にやることが違います。前者は精度の問題、後者は配分の問題です。
  3. 落とし方の内訳。落とした問題を「知らなかった」「知っていたが使えなかった」「時間切れ」「ミス」に分け、それぞれ何問かを数えます。知らないなら覚える、使えないなら演習、時間切れなら配分の練習、ミスなら見直しの手順。どれも能力の話ではなく、次にやることの話です。

この3つは、偏差値と違って母集団に左右されません。偏差値が動かない時期に進捗を判断できるのは、こちらの数字です。

なお合格最低点は、換算後の数字を公表している大学があり(小数点のついた最低点は、たいてい換算後です)、設問ごとの配点も非公表の大学が多くあります。「だいたい6割か7割か」の粗い目安として使うのが正しい読み方です。

模試が良くても、志望校の問題が解けないことがある理由

4つめの声「勉強しても模試に繋がりにくい」と、その裏返しの「模試は悪くないのに過去問が解けない」。模試と過去問の役割が違うから起きる現象です。

模試は、共通の問題を大勢で受けて集団の中の位置を測る道具です。だから問題は「多くの受験生に共通して意味のある形」に作られます。一方で入試の実物は、大学ごと・学部ごと・方式ごとに顔が違います。私たちは英語の入試問題を長文パッセージ約860本(2020〜2026年度)まで分解して分析していますが、グループ単位でも素材の性質が分かれます。

  • 早慶上理は学術評論寄りで、長編評論や学術書からの抜粋が中心。「論争の構図」を読ませる出題が目立ちます。
  • GMARCHは報道記事や一般向けノンフィクションを標準的な難度にリライトした素材が主流。「質の高い新聞の日曜版」です。
  • 成成明学獨國武は標準難度の長文2本前後+語彙文法・会話文の小問群が基本で、フォーマットが年度を超えて安定。合否は「取りこぼしのなさ」で決まります。
  • 日東駒専は語彙・文法の独立小問が3〜5割を占め、分けるのは難問対応力ではなく基礎の運用速度です。

形式の差はもっと極端です。同じ大学でも、マーク一色の学部と記述の重い学部が並びます。早稲田なら、法学部は資料分析+意見の英作文2題、教育学部C方式は180〜250字の日本語要約+英語論述、人間科学部は前置詞補充や誤文判定といった独特の形式です。明治学院の英語エッセー(100〜150語)のように、知らずに受けると事故になる形式もあります。

つまり、模試の偏差値は「その集団の中での位置」を教えてくれますが、「志望校の出題に対する適合度」は教えてくれません。後者を測る道具は過去問だけです。だから私たちは、過去問を仕上げではなく診断として最初に解かせます。1年分を本番と同じ試験時間で解き、上の3つの数字を取る。これで志望校選びと勉強の計画が同時に進みます。手順は過去問の使い方の記事にあります。

秋以降は、この「現在の帯」を基準に実力校・挑戦校・安全校を組みます。出願校を増やせば受験料(私立の一般選抜は1校あたり3万5千円前後)も過去問演習の量も校数分だけ増えるので、併願校の決め方の記事も参考にしてください。

偏差値が動かない時期に、勉強のほうで確認すること

数字の読み方を整えたら、勉強の設計も点検します。効くのは気合ではなく仕組みです。

1. 見積もりのズレを、前提として扱う。人は作業時間を実際より短く見積もります(計画の誤謬)。学業課題を対象にした実験では、予測5.8日に対して実際は10.7日かかり、予測内に終わったのは37.1%でした。「前回、似た作業に実際どれくらいかかったか」を先に思い出す。過去問1年分の演習と丸つけにかかった時間をメモするだけで、翌週の計画の精度が上がります。

2. タスクを1〜2週間で終わる大きさに割る。「英語の長文読解を伸ばす」は予定に置ける大きさではなく、「今週はパラグラフの要約を10題」まで割ります。ボランティア9,000人以上の実地実験では、1年間の目標を小さな単位に分けて提示されたグループのほうが活動量が7〜8%多いという結果が出ています。

3. 予定を「もし〜なら、〜する」の形で書く。「21時になったら、英語の長文を1題解く」のように、時刻や直前の行動を引き金にして1文で決めておく方法です(実行意図)。94件の研究をまとめた分析では、この形で計画を立てた人の目標達成率が中程度から大きく高まることが確認されています。

4. 通知は「見ない」のではなく「切る」。課題の最中に通知を受けた場合、応答しなくてもミスの割合が3倍以上に増えたという実験があります。スマホの置き場所を操作した実験(合計795人)では、机の上・かばんの中・別室の順に思考力テストの成績が段階的に向上しました。机の上に伏せて置くだけでは足りないということです。

5. 週1回10分、ふりかえる。実績時間をメモできた回数、いちばん崩れた領域、来週続ける工夫1つ、減らす工夫1つを書くだけ。全部を一度に直そうとせず、崩れている1つから直します。

そして、目標の書き方を変えてください。「E判定を脱したい」「落ちたくない」という避ける型ではなく、「次の帯の英語で7割」「数学の大問2を時間内に」という近づく型で書く。避ける型の目標は試験不安を高め、成績を下げる方向に結びつくことが研究で分かっています。同じ量の教材を「毎回6ページずつ」と示した群と「全部で42ページ」と示した群を比べた実験でも、自信と正答率が上がったのは近い目標の群だけでした。刻み方だけの違いです。

計画通りに進まない日は出てきます。遅れは追いかけず、次の型に戻ることを優先してください。模試ごとのループも、1回飛ばしたら終わりという設計にはしていません。つらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の相談窓口に相談してください。気持ちの立て直し方は受験が苦しくなったときの立て直し方の記事も参考になります。

まとめ:成績表を開く順番を変える

返ってきた成績表は、この順番で開いてください。

  1. 偏差値欄は、いったん飛ばす。
  2. 科目ごとの得点率を書き写し、素点で7割に届いた科目の数を数える。
  3. 時間内に最後まで到達できたかを、科目ごとに○×で書く。
  4. 落とし方を「知らない/使えない/時間切れ/ミス」に分けて数える。
  5. 最後に偏差値を、同じ模試の前回・前々回と並べてだけ見る。

偏差値が動かない期間は、たいてい「位置が動いていない」だけで、「何も進んでいない」わけではありません。進んでいることを確認できる数字を手元に持っているかどうかが、この時期の分かれ目です。

EIMEI予備校の川越校舎では、面談のたびにこの手順で成績表と過去問の答案を開き、次の1〜2週間でやることを決めます。模試の数字の読み方から相談したい方は、一度話に来てください。

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EIMEI予備校について

EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。

  • 川越校舎(2026年6月開校)川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分。自習室は朝7時から使えます。
  • ふじみ野校舎 ふじみ野駅東口から徒歩1分。
  • 鶴瀬校舎 鶴瀬駅西口から徒歩3分。

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二神大輝