立教の国語は「英語がないぶん重い」科目です
この記事は、立教大学を受けるつもりで国語をどこまで仕上げればいいのか分からない高校生・既卒生と保護者の方に向けて書いています。EIMEI予備校では大学ごとに入試対策読本を自作していて、立教は2023〜2026年度の国語の問題冊子11冊と大学公表の出題意図を記録しました。
立教の一般入試には英語の独自試験がほとんどありません。大学の資料には「すべての学部で英語資格・検定試験または大学入学共通テストの『外国語(『英語』)』の得点を利用します」とあります。例外は2月11日の文学部だけで、この日だけ立教が作った英語(75分・200点)を受けます。つまり英語は出願の時点でほぼ確定していて、当日は解きません。会場で点が動くのは国語と選択科目だけです。
2026年度の配点では、国語は文学部・異文化コミュニケーション・法・観光が200点、経済・現代心理が150点、経営・社会・コミュニティ福祉・スポーツウエルネス・環境(文系型)が100点。試験時間はいずれも75分です。満点との比では、法学部が200点/500点で国語だけで4割、文学部が約36%、社会学部が約33%。法学部国際ビジネス法学科グローバルコースは英語が得点化されず、200点満点のうち国語が100点です。英語で挽回できないぶん、国語で落とした点はそのまま残ります。全体像は立教大学の傾向と対策、英語の換算のしくみは立教の英語のしくみにまとめました。
大問構成は4年間・5日程すべて同じでした
確認した11冊はすべて全学部日程(2月6日・8日・9日・12日・13日)で、その11冊すべてで大問一・大問二が現代文、大問三が古文でした。例外が一つもありません。「現代文2題+古文1題を75分」という一つの形だけを想定して練習すればよいわけです。大学は「同一試験日で同じ試験科目の場合は、学部を問わず同じ問題が出題される」とも明言しています。経済学部志望でも、同じ日の文学部の過去問が教材になります。
漢文は出るのか — 2月11日の文学部だけです
全学部日程の国語11冊すべてで、漢文の独立した大問はありませんでした。漢詩や訓読文の引用もほとんどありません。出題意図にも「漢文は2月11日の文学部日程のみ出題」「2月11日は現代文1題・古文1題・漢文1題」と書かれています。現代文が2題から1題に減り、そこに漢文が入る形です。ですから2月11日を受けないなら、立教のために漢文の句法を暗記する必要はありません。英語の資格スコアがない文学部志望でこの日が主戦場になる人だけ、漢文の準備が必要です。
現代文 — 大問一は柔らかめ、大問二は必ず硬い評論
大学は「いずれも2,000〜4,000字程度の文章」「論説文を中心に、試験日によっては随筆や小説も出題した」「論説文のジャンルは、文学論、文化論、哲学倫理学等の人文科学から、ジェンダーやナショナリズムを含む法学・社会学まで広範におよぶ」と説明しています。実測は1題あたり約2,200〜3,300字で、4,000字級はありません。
- 大問一(11題)…評論5(ジェンダーとマンガ論、美学、貧困論、旅論、軍隊とジェンダー)/随筆5(夏目漱石『硝子戸の中』、奥泉光、吉田健一など)/小説1
- 大問二(11題)…すべて硬質な評論。デザイン論、人権論と国際政治、社会科学方法論と身体論、政治哲学(自由論)、美術館論と震災、社会思想(時間意識)、民俗学(死生観)、進化心理学、マンガ論と映画音響論、哲学(意識論)、社会学(睡眠論)
大問二は11回すべてが硬い評論で、ここで崩れると立て直せません。小説は11冊で1回だけ(2026年度2月8日、梅崎春生「魚の餌」)ですが、擬人法・副詞・主語の省略・三人称文体といった表現の特色が問われました。心情説明と表現技法は最低限押さえてください。図版つきの設問も出ています(2023年度2月6日の風景の異化を説明する図など)。
記述は毎年3〜6問。型が固定されています
- 大問一に、20〜40字の説明記述が1問(11冊中9冊)
- 大問二の冒頭で、カタカナを漢字に改める楷書記述が2問(11冊中10冊)
- 大問三(古文)で、現代語訳を3〜10字以内で書かせるのが1問
2025年度以降は「大問一の漢字はマーク式、大問二は記述式」という分担が定着。字数指定の最大は2026年度2月12日の「30字以上40字以内」、最も軽い回は2023年度2月12日の「10字以上20字以内」が2問だけでした。40字が書ければ立教の記述は足ります。書き方は現代文の勉強法にあります。
大問二で繰り返し出る抽象概念
大問二の11題は裏テーマが二つに整理できます。「近代がつくった枠組みを疑う」(時間・自由・貧困・福祉・睡眠・軍隊・ジェンダー)と、「見ること・聞くことの理論」(まなざし、直観と知識、フキダシ、意識の境界)です。先に固める評論語彙としては「直観と理知」「円環的時間と直線的時間」「包摂と排除」「生理現象と社会的規範」の4組を挙げています。当塾の『現代文 抽象概念の予備知識』(私大の現代文評論205題から抽象度の高い20概念を抽出)と突き合わせると、重なりが見えます。
- 身体論…2023年度、内田義彦『生きること 学ぶこと』(野口体操を素材にした学問論、約3,200字)
- ジェンダー…2026年度、佐藤文香『女性兵士という難問』/2023年度、松浦優「アセクシュアル/アロマンティックな多重見当識」
- 美学…2023年度、淺沼圭司『ゼロからの美学』(35字以内の説明記述を含む)
- 民俗学と死生観…2024年度、五来重『日本人の死生観』
いずれも「知らないと読めない前提」を持つテーマです。権力を「目に見える強制力」だと思ったまま読むと、フーコー系の文章は頭に入りません。前提知識は現代文の抽象概念に整理しました。語彙・文法の設問についても、大学は「覚えている知識を単純に問う」ものではなく文脈や展開をふまえて解かせると書いています。
古文 — 平安から近世まで。日程で性格が変わります
大学は「800〜1,200字程度の文章」「上代から近世までの作品を広く対象として」としています。実測は約690〜1,150字で、下限の800字を割ったのが2回(2023年度2月13日『春雨物語』約700字、2025年度2月12日『西鶴諸国ばなし』約690字)。どちらも近世で、短いぶん設問の密度が上がります。時代別では平安5・鎌倉3・近世3・上代0。
- 平安(5)…『成尋阿闍梨母集』(2/6)/『今昔物語集』(2/8)/『源氏物語』椎本(2/9)・関屋(2/8)/『更級日記』(2/8)
- 鎌倉(3)…『十訓抄』/『古今著聞集』/『春の深山路』(いずれも2/12)
- 近世(3)…『春雨物語』(2/13)/『鶉衣』(2/8)/『西鶴諸国ばなし』(2/12)
上代の独立した出題はありませんが、2023年度2月13日の『春雨物語』は山部赤人・柿本人麻呂・『万葉集』をめぐる歌論で、上代文学の知識が実質的に必要でした。文学史の設問が大量に出るわけではありませんが、和歌史で割れる回はあります。ジャンルでは日記・紀行4、説話3、物語2、近世小説(俳文・読本・浮世草子)3。和歌が絡む回が多く、掛詞・枕詞・縁語と古歌の引用(本歌取り)が繰り返し問われます(2025年度の『源氏物語』関屋巻は掛詞・枕詞を含む和歌2首)。
2月8日系は平安の王朝文が中心で、敬語による主語判定が重い。古文は1,000字前後ですが設問数が最多クラスで、2026年度は17の設問群がありました。2月12日系は説話・近世・中世日記が中心で、敬語の網は張られにくい。古文が武器なら2月8日、苦手なら2月12日です。
初見の古文を読む手順
- ジャンルを決める。冒頭が「今は昔」なら説話。文体の目印なので、直前の話とのつながりを探す必要はありません。地の文に「をかし」「あはれ」が並べば随筆、和歌の優劣が話題なら歌論・歌学書
- ジャンルの型を当てる。説話集は人物の行動と結末を淡々と記します。『十訓抄』は教訓を十項目に分類、『古今著聞集』は神祇・釈教・政道・武勇など分野別の配列。「何を教訓としているか」を探す
- 主語を敬語で決める。王朝文では地の文の主語が省略されます。尊敬語・謙譲語の向きから「この動作は身分の高いほうか、仕えているほうか」を確定させてから訳にかかる。2月8日系はここで差がつく
- 和歌は「誰から誰へ」を確定してから掛詞を探す。「あき」に「秋」と「飽き」のように一語に情景と心情が同居します。枕詞は現代語訳を与えないのが原則、序詞は比喩や掛詞で次の語を引き出す技法。地名が出たら歌枕を疑います
- 随筆・歌論では評価の主語を見失わない。筆者が「にくし」と評しても普遍的に悪いとは限りません。身分・作法・季節感のどれを基準にしているかを拾い直します
- 近世は古典文法で押し切ってから語彙を補う。『鶉衣』「伯母を悼む辞」のように、死を悼む文章でも俳文らしい飄々とした語り口があります
ジャンル別の型は古文の頻出ジャンルにまとめました。立教向けには作り物語・説話集・平安の女流日記・近世文学の4つを優先してください。
1分あたり何字処理するのか
2月8日は4年とも6,550〜6,700字で安定して重い。2月12日は2023年度6,850字→2024年度7,050字→2025年度5,590字→2026年度5,700字と軽くなり、冊子も20ページから16ページへ。2023年度では2月6日が現代文2題で6,300字と最大級、2月9日は大問一が2,200字で最も軽い回でした。
最重量の7,050字と最軽量の5,590字を75分で割ると、最重量の回は1分あたり約94字、2月8日の水準は約89字、最軽量の回は約75字。これは読む速度ではなく、読む・解く・見直すを含めた平均処理量です。配分はこうです。
- 大問一(現代文・約3,000字)に22分。通読8分、設問12分、見直し2分。通読8分は1分あたり約375字で、傍線部のまわりだけ精読し、あとは段落の役割を追う速さ
- 大問二(現代文・約3,000字)に27分。5分多く取ります。40字記述が入る年もここが本番
- 大問三(古文・約1,000字)に24分。1分あたり約42字。現代文は設問込みで1分あたり約136字ですから、古文は1字に3倍の時間をかけていいことになります
- 予備2分。漢字と現代語訳の書き漏れを確認
2月8日の古文は2026年度に17の設問群。24分を17で割ると1問あたり約85秒です。1問に3分かけると2問分が消えるので、「85秒で決まらない設問は飛ばす」と先に決めておいてください。練習では大問ごとに時間を測り、22分・27分・24分の枠を守れたかを点数とは別に記録します。
立教を受けるなら国語で最低限やる3つ
- 平安〜鎌倉の古文。助動詞の意味と活用、敬語による主語判定、和歌の修辞、古歌の引用。11冊すべてで大問三を占め、設問数も最多
- 漢字。楷書記述が11冊中10冊で2問、同音異字のマーク選択も定着。楷書指定なので、崩し字のくせは今のうちに直す
- 20〜40字の説明記述。11冊中9冊で1問。40字を上限として、字数内に要素を収める練習を繰り返す
この次が近代批判系の評論語彙です。逆に後回しでよいのは漢文です。全学部日程では11冊すべて出題ゼロ。2月11日を受けないかぎり不要です。
残り数か月の優先順位
秋のうちは、古文の文法と敬語を参照なしで使える状態にすることが第一です。曖昧なまま過去問に入ると、落とした原因が特定できません。同時に漢字と40字記述を毎日少量ずつ回し、抽象概念は過去問で知らない話題に当たったときに1テーマずつ埋めます。
次に日程です。立教は選択科目で受けられる日が決まり、日本史・世界史なら5回、文系数学なら2回(2月6日と2月9日)、地理は2月8日の1回だけ、公共・政治・経済は2月12日の1回だけ。国語の日程差は、この制約の中でしか選べません。地歴の都合で有利な日が逆になることもあります。
過去問は、同一試験日・同一科目なら同じ問題なので、「学部別」ではなく「日程別」に集めます。全学部日程は5日程あるので、1年度で最大5セット、3年分さかのぼれば最大15セットが手に入る計算です。立教大学は公式サイトで「問題」「解答例」「出題意図」の3点を科目別・実施日別に公開しています。先に出題意図を読み、時間を計って解き、点数ではなく「大学が求めた観点を満たしているか」で解答例と照合する、という順で使ってください。
目標点は、公表される合格者最低点が得点調整前の素点であることを前提に、自分が受ける日程の素点最低点+1割を当面の目安にします。2026年度の社会学部社会学科は国語+選択の200点満点で、最低点が2月13日の133点から2月8日の173点まで動いており、違う日程の数字と比べても意味がありません。記録は国語と選択科目を分けてつけてください。
ここに挙げた数字は2023〜2026年度の問題冊子と公表資料によるもので、次年度も同じとは限りません。配点・試験時間・実施科目・英語の扱いは、自分が受ける年度の入試要項で必ず確認してください。つらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口に相談してください。
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