選択肢の問題ならそれなりに取れるのに、記述になると手が止まる。書き出しが決まらない、書いても何点もらえるのか分からない。現代文の相談でいちばん多いのがこれです。
この記事は、現代文の記述問題の書き方そのものに絞って書きます。読んでほしいのは、志望校に記述がある高2・高3生と、まだ受ける学部を決めていない人です。川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で答案を作ってきた中で見えた「直すと点になる順番」を手順にします。
まず、記述は「一種類」ではありません
「記述対策」とひとくくりにされますが、実際に出る記述は大学と学部で字数も形式も違います。大学ごとに入試対策読本を自作していて、そこで問題冊子を数えた結果です。
- 学習院の国語は、調べた9冊すべてで字数指定つきの論述がゼロ。記述は漢字・抜き出し・返り点・文法だけで、抜き出しは「Ⅰ=7字」「Ⅱ=10字」という形が毎年出ています。
- 立教の全学部日程は、11冊のうち9冊で20〜40字の説明記述が1問。字数指定の最大は2026年度2月12日の「30字以上40字以内」、最も軽かったのは2023年度2月12日の「10字以上20字以内」が2問だけの回でした。
- 明治は学部で階段状に変わります。商学部は毎年1題(26〜30字、31〜35字、35〜40字)、経営学部は40字以内(2025年度)と30字以内(2026年度)、政治経済学部は50字以内が3年連続、国際日本学部は60字以内が2024・2026年度。法学部は抜き出し(3〜28字)だけで、字数指定の自作記述はありません。
- 早稲田は法学部だけが重く、120字以上180字以内の説明記述が毎年1問。商学部は説明記述ゼロ、文学部は短答のみで論述ゼロ、教育学部A方式は記述そのものがゼロです。最も重いのは教育学部C方式(国語国文学科)で、180〜200字が毎年1問、加えて50〜70字が1〜2問。
つまり、7字の抜き出しから200字の説明まで、同じ「記述」の名前で並んでいるということです。記述対策の一歩目は、自分が受ける学部の字数を調べることです。
記述は字数帯で4つに分けて考える
字数は「どれくらい書くか」ではなく、「いくつ要素を入れるか」の指定です。だから帯が変わると書き方も変わります。
〜30字:言い換えを1つだけ
この帯は説明ではなく置き換えです。傍線部でいちばん抽象的な語を1つ選び、本文の別の箇所のことばで置き換えて文として閉じる。入れるのは傍線部の主語と述語に対応する部分だけで、理由・具体例・対比の反対側・修飾語は全部捨てます。立教の「10字以上20字以内」や明治理工の英語に出る10〜20字・7〜12字の日本語説明はこの帯で、2要素目を入れた瞬間に字数が破綻します。
30〜60字:要素2つを因果か対比でつなぐ
入試でいちばん多い帯です。立教の20〜40字、明治商学部の26〜40字、明治政治経済の50字以内、明治国際日本の60字以内。中央でも2025年度に40字から50字程度の記述式説明問題が出ています。
ここは「AだからB」か「AではなくB」のどちらか一つの骨を通します。要素は2つ、多くて3つ。具体例は入りません。30字で1要素、60字で2要素+つなぎという密度です。明治商学部は「本文の語を使ってまとめる」型が毎年出るので、この帯では訳しすぎないことも点になります。
60〜120字:要素3つと、論の向き
この帯から答案に順番が必要になります。基本形は「従来はXと考えられてきたが、筆者はYと見る。なぜならZだから」という3ブロック。これで100字前後はきれいに埋まります。早稲田教育学部C方式の50〜70字や、一橋大学の英語に出る30〜80字の内容説明がこの帯です。抽象的な主張が2つ並んで伝わらないときに限り、2〜3字の具体語を1つだけ残すという判断も出てきます。
120字以上:書く前に構成を決める
早稲田法学部の120〜180字、教育学部C方式の180〜200字がここです。構成メモを作らずに書き出すと必ず破綻します。180字なら「①問題の所在40字/②筆者が否定する見方40字/③筆者の主張60字/④理由または帰結40字」と各ブロックの字数を先に割り振り、メモが埋まってから解答用紙に書きます。読本では早稲田法学部について180字の記述に20分を残す配分を最初から固定することを勧めています。書く速度のためではなく、構成を組む時間のためです。
設問のことばで、答えの形は決まっている
答案がずれる人の多くは、設問文の動詞を読んでいません。同じ傍線部でも、聞かれ方が変われば答えの形は変わります。
- 「どういうことか」=傍線部の言い換え。述語は傍線部の述語に対応させ、文末は「〜ということ。」で閉じます。理由を書くとずれます。
- 「なぜか」=理由。文末は「〜から。」「〜ため。」。答案の末尾に傍線部をつないで「〜から、傍線部になる」と読み、つながらなければ理由になっていません。
- 「説明せよ」=本文を読んでいない人に分かるように、という要求。指示語と比喩を全部ほどきます。
- 「まとめよ」「要約せよ」=範囲全体の主張の圧縮。この設問だけは具体例を原則すべて捨てます。
- 「本文の語を用いて」とあれば言い換えを抑える。条件がなければ抽象語は自分のことばで具体化したほうが伝わります。
- 字数・字種の指定も設問のことばです。学習院が公表している講評には、問題文の指示を無視した解答(字数指定や漢字・ひらがな・カタカナの指定を守らないもの)が失点の例として挙げられています。指定を外した答案は内容が合っていても点になりません。
答案の作り方:5つの手順と、かける時間
手順を固定します。かっこ内は50字を5分/180字を20分で仕上げる場合の目安です。
- 設問の要求を1文に言い換える(30秒/1分)。「◯◯が△△する理由を、□□との違いを入れて書く」のように自分のことばで言い直し、余白に書きます。ここを飛ばすと残り4手順が全部ずれます。
- 根拠になる箇所に線を引く(1分30秒/4分)。傍線部の前後だけでなく本文全体から。同じ内容が言い方を変えて繰り返されている箇所と、「つまり」「むしろ」の直後が候補です。線は3〜5本まで。
- 要素を並べる(1分/4分)。文は書きません。線に①②③と番号を振り、余白に「①近代の前提/②筆者の否定/③代わりの見方」と単語で並べるだけです。
- 字数に合わせて削る(1分/3分)。要素が多すぎるのが普通なので、次の節の優先順位で落とします。足りないときは線を引いた箇所に戻って探し直す。その場で思いついたことを足すのではありません。
- 主語と述語をつないで清書する(1分/8分)。ここで初めて文にします。主語を明示し、述語を設問のことばに合わせ、文末を確認します。書きながら考えると必ず時間が足りません。
点数がいちばん変わるのは③です。単語で並べる段階を飛ばして文から書き始めるのが、手の止まる原因です。
削るときの優先順位
字数が収まらないのは、削る順番を知らないからです。上から順に落とします。
- 具体例と固有名詞。「たとえば」以下を最初に消します。
- 二度目の言い換え。言い直している部分は片方だけ残します。
- 程度の修飾。「非常に」「さまざまな」は点になりません。
- 前置き。「本文では」「筆者によれば」は字数を食うのに内容がありません。
- 譲歩。「〜ではあるが」は、それが設問の芯でなければ落とします。
逆に、最後まで残すものを決めておきます。
- 対比の両側。「AではなくB」のAを消すと、何を否定した答案なのか分かりません。評論は対立する2つの立場という構図が多く、片側だけの答案は要素の半分を落としています。
- 因果のつなぎ。消すと要素が並ぶだけの答案になります。
- 否定。「〜ではない」の「ない」を落とすと意味が反転します。
- 限定条件。「〜においてのみ」「近代以降の」が設問の焦点であることはよくあります。
- 主語。最も落としやすく、最も痛いものです。
抜き出し問題は、別の競技だと考える
抜き出しは自分で考えてはいけない問題です。学習院の国語は9冊すべてで字数指定の論述がゼロで、かわりに本文全体の主旨を踏まえて正しい箇所を字数どおりに抜き出す精度が問われます。明治の情報コミュニケーション学部は20〜31字の「最初と最後の5字」型が中心、法学部は3〜28字の抜き出しだけ。早稲田商学部と人間科学部も抜き出しのみです。
- 字数から候補を絞る。指定が7字なら候補箇所を指で7字ずつ区切って数えます。字数が合わない候補は内容が合っていても正解ではありません。これがいちばん速い解き方です。
- 探す範囲を決める。傍線部の直前直後ではなく、その話題が最初に提示された段落と結論の段落を先に見ます。答えは導入部と結びに集まります。
- 句読点を確認する。立教の英語では「30字以内で和訳せよ。ただし、句読点は合計字数に含まれる」という条件が2年とも付いていました。国語でも、含むかどうかで答えが変わります。
「最初と最後の5字」型は、終わりを決めてから始まりを探すと精度が上がります。結びのほうが目印がはっきりしているからです。
要約問題の手順
要約は傍線部がないので、本文全体から骨を取り出します。字数の実測値には幅があります。早稲田教育学部C方式(英語英文学科)は日本語180〜250字の論述が3年とも固定。同C方式(国語国文学科)は180〜200字が毎年1問。東京大学の英語は1(A)が日本語70〜80字の要約で、7年間ほぼ固定です。
- 読みながら各段落の要旨を5〜10字でメモする。これが材料になります。
- 「筆者の主張1文+根拠2つ」に圧縮する。70〜80字の要約はこの形でちょうど収まります。主張が見つからないときは最終段落と「しかし」「むしろ」の直後を見ます。
- 要素を数えてから割り算する。200字で4要素なら1要素50字。先に割ってから書き始めると途中で字数が尽きません。
- 具体例は全部落とす。
- 対立する2つの立場があれば両方入れる。読みながら二欄の表を作り、論点ごとにA・Bを書き分ける練習が効きます。
自分の答案を採点する4項目
記述が伸びない最大の理由は、書いたあとに「なんとなく合っている」で終わらせていることです。模範解答と見比べるときは、この4つだけを見ます。
- 要素の数。模範解答をスラッシュで区切って要素数を数え、自分の答案に何個あるかを数えます。記録するのは点数ではなく「3要素のうち2」という形。10問続けると、何番目の要素を落としやすいかが見えます。
- 文末の形。設問のことばと文末が一致しているかを機械的に確認します。
- 主語と述語の対応。音読して1本つながっているか。主語が入れ替わっていたら書き直しです。
- 本文の語を使えているか。評論の鍵語は日常語と同じ形でも専門的な意味を背負うので、平たく置き換えると要素が消えます。
そのうえで必ず書き直して2枚目を作るところまでやってください。週2問で十分です。現代文の勉強法は読み方側の練習ですが、記述は書き直しの回数で決まります。評論そのものが読めない段階でつまずいているなら、現代文の抽象概念の土台が先です。
よくある失敗5つ
- 本文を写すだけ。傍線部の周辺を50字ぶん抜いて並べた答案です。求められているのはどこをどう組み替えるかの判断で、写した答案にはそれが入っていません。手順③を必ず通します。
- 設問に答えていない。「なぜか」に言い換えを、「どういうことか」に理由を書く。内容が合っていても形が違えば大きく落ちます。清書の前に設問文をもう一度読むだけで防げます。
- 字数が余る、足りない。字数指定は上限の8割以上が目安。50字以内なら40〜50字です。30字しか書けていないなら要素が足りていません。ただし抜き出しは指定字数ちょうどが原則です。
- 主語がない。「近代において自明とされ、疑われなかった」は、何が自明とされたのかが書かれていません。日本語は主語を省けるので本人には自然に見えます。清書後に各述語へ「何が」を確認してください。
- 指示語を残す。「それ」「このこと」を残すと、採点者は本文を見に行かないと内容を確認できません。明治理工学部の英語では、和訳に「theyの指示内容を明示して訳せ」という条件が3年のうち2回付いていました。明示は採点対象です。
記述が出ない大学を受ける人が、やっておくと得なこと
早稲田教育学部A方式は記述ゼロ、学習院の国語は字数指定の論述ゼロ、明治法学部に自作記述はありません。それでも練習はゼロにしないほうが得です。
- 選択肢問題の精度が上がる。選択肢を見る前に自分で20字の答えを作ってから選ぶ。選択肢に引きずられなくなるので、紛らわしい2択で迷う回数が減ります。現代文の点数のブレが大きい人には、これがいちばん効きます。
- 併願先が広がる。明治なら商・政治経済・国際日本には字数指定の記述があり、法・情報コミュニケーション・農にはありません。書けるようになると、出願先を字数で切らずに決められます。
- 進路が変わっても効く。国公立二次の記述に進む可能性が少しでもあるなら必須です。小論文や志望理由書でも、要素を並べて字数に収める作業は同じです。
週1問、40字の説明を書いて模範解答と要素の数を比べるだけで、選択肢問題の読み方が変わります。学部ごとの実際の字数は早稲田の国語と立教の国語で細かく見ています。
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