こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、川越とその周辺の高校に通っていて、古文と漢文にどれだけ時間を使うか決めかねている高2・高3生と、その保護者の方に向けて書いています。「漢文って、結局やるんですか」という質問に、大学名ではなく学部・方式・日程の単位で答えるための記事です。
結論を先に書きます。古文・漢文が必要かどうかは、大学では決まりません。同じ大学の中で学部によって変わり、同じ学部の中でも受ける方式によって変わります。大学名でまとめて判断するのが、いちばん危険です。
12大学の国語を、3つの層に分ける
EIMEIでは、東洋・青山学院・中央・東京電機・学習院・法政・慶應・明治・立教・埼玉・成蹊・早稲田の12大学について、過去の問題冊子を1冊ずつ通読して大学別の入試対策読本にまとめています。その国語の章だけを並べ直すと、はっきり3つの層に分かれました。
- 第1層…国語そのものがない、または古文・漢文が出題範囲外
- 第2層…現代文+古文まで。漢文は出ない
- 第3層…漢文まで出る
自分の併願先がどこに入るかを確定させてください。
第1層|国語がない、または古文・漢文が範囲外
- 慶應義塾大学…現代文・古文・漢文を課す学部が一つもありません。代わりに10学部中7学部で小論文(医学部は第2次試験)、商学部B方式で「論文テスト」が課されます
- 東京電機大学…出題範囲が「現代の国語・言語文化(近代以降の文章)」で、古文・漢文は範囲外です。分析した10冊は10冊とも評論が科学論・科学哲学系でした
- 成蹊大学…漢文の独立大問は調べた12冊すべてでゼロ。要項の範囲も「漢文を除く」です。古文の大問が出るのは文学部A方式だけで、法学部A方式・経営学部A方式・E方式は評論のみ(古文も範囲外)
- 東洋大学…60分100点・全問マークで、漢字の識別+現代文(評論)+古文(物語)の3題。漢文と小説は出ていません
第2層|古文まで。漢文は出ない
- 立教大学…全学部日程(2/6・8・9・12・13)は、確認した11冊すべてが「現代文2題+古文1題」、75分。漢文の独立大問は11冊すべてゼロです
- 青山学院大学…全学部日程は70分・全問マーク。ただし古文(大問Ⅲ)を解くのは日本文学科・史学科・比較芸術学科の3学科だけで、この3学科は現代文2題+古文で150点、それ以外の学部は現代文2題のみの100点です。公式の出題範囲には「古文・漢文を含む」とありますが、漢文の独立大問は4年間一度も出ていません
- 中央大学の大半の学部…5学部共通選抜・法・経済・商は現代文+古文30点で漢文なし。国際経営・国際情報・総合政策は現代文だけで、古典の学習自体が要りません
- 明治大学の大半の学部…法・商・政治経済・経営・国際日本は要項に「漢文の独立問題は出題しない」、情報コミュニケーションと農は「漢文を除く」とあり、実際に3年とも独立大問はゼロでした
- 法政大学…冊子209(経済Ⅰ・社会Ⅰ・現代福祉)は3年連続で現代文のみ・記述ゼロ。冊子207の経営・人間環境・GIS志望者は現代文+古文です
- 早稲田大学 人間科学部(国語英語型)…大問2題で、古文・漢文の独立大問がなく現代文2本。会話形式の設問や棒グラフの読み取りなど、共通テストに近い要素が入ります
- 埼玉大学 経済学部…前期の個別試験の冊子は現代文2題で、5年とも古文・漢文が出ていません
第3層|漢文が出る
- 早稲田大学…法・商・文・教育A方式は3年とも漢文が独立大問。文化構想学部は独立大問こそありませんが、大問三が現古漢融合(現代文の解説を軸に古文と漢文を同時に読ませる形)で、返り点と訓読の設問が必ず出るので漢文を捨てられません。教育C方式の大問三も漢文または明治の漢文訓読体です
- 明治大学 文学部…明治で唯一、漢文が独立大問として出ます。返り点・書き下し・口語訳の記述まで求められます
- 中央大学 文学部…漢文が出るのは文学部だけで、20点固定。ほかの学部では3年間で1度も出ていません
- 学習院大学 文学部コア…4大問150点90分で漢文あり(20点)。法・経済系の6冊は0問でした
- 法政大学…調べた9冊で漢文が出るのは冊子207の文学部志望者と、T日程の文学部日本文学科の2つだけ。全員が必ず解く漢文は9冊中0冊でした
- 立教大学 2月11日の文学部日程…大学の出題意図に「漢文は2月11日の文学部日程のみ出題」と明記。この日だけ現代文が2題から1題に減り、そこに漢文が入ります
- 埼玉大学 教育学部…前期の冊子は「一 現代文(評論)/二 古文/三 漢文」で5年ともこの構成。しかもすべて記述式で、選択問題がありません(乳幼児教育専修は個別試験が英語だけなので、この冊子は受けません)
同じ大学・同じ学部でも、方式が変われば漢文の要不要が変わる
ここがいちばん間違えやすいところです。
- 学習院大学…文学部コアは漢文ありの4大問150点90分。一方、2026年度の文学部英語英米文化プラスは法学部コア日に付いたため、漢文のない100点満点の国語でした。同じ文学部でも、コアかプラスかで漢文の要不要が変わります
- 早稲田大学…文学部は「現代文2題+古文+漢文」の4大問、文化構想学部は「現代文2題+現古漢融合1題」の3大問。構成そのものが違うので、国語の過去問を共用できません(英語は3年とも同形式なので共用できます)
- 立教大学…全学部日程で5日受けても漢文は1問も出ませんが、2月11日を1日入れた瞬間に漢文の準備が必要になります
- 法政大学…同じ冊子207を配られても、文学部志望者は〔一〕現代文〔二〕古文〔三〕漢文、経営・人間環境・GIS志望者は〔一〕現代文〔二〕古文〔四〕現代文と、解く大問が違います
学部ごとの詳しい構成は、早稲田大学の記事、明治大学の記事、中央大学の記事、法政大学の記事でそれぞれ整理しています。
漢文を捨てられる人・捨てられない人
捨てられない人(この4つのどれかに当てはまる)
- 文学部・国文系を1つでも受ける人。上の第3層を見ていただくと分かるとおり、漢文が出る試験はほぼすべて文学部系です。中央・明治・学習院・法政・立教は「文学部だけ」と言い切れる形になっています
- 早稲田の法・商・文・文化構想・教育を受ける人。早稲田は文学部系以外でも漢文が毎年出ます。法学部と商学部は3年とも例外なく独立大問でした
- 埼玉大学の教育学部を受ける人。漢文は1題5問で、書き下し・口語訳・「なぜか」「どのような手段か」の説明が5年ともそろっています。しかも字数指定のない記述なので、選択肢を消す練習では対応できません
- 共通テストの国語を「全体」で使う方式が併願に入っている人。法政のB方式は、学科によって使う範囲が「近代以降の文章のみ」「近代以降の文章と古文」「国語全体」の3通りに分かれます。早稲田の社会科学部も、学部独自の国語はなくなりましたが共通テストの国語が40点ぶん合否に入ります
捨てられる人(3つすべてを満たすとき)
- 併願予定の試験を「大学・学部・方式・日程」の単位で全部書き出して、漢文が出る試験が1つもない。書き出す単位は、法政なら冊子番号、立教なら試験日、学習院ならコアかプラスか、早稲田なら学部と方式です
- 共通テストを使う方式で、国語の漢文部分が合否に入らない。使わない方式だけで組む、あるいは使う範囲が現代文・古文までに限定されている、のどちらかです
- 古文がまだ仕上がっていない。これが実務的にはいちばん大事な条件です。古文が不安定なまま漢文に時間を分けるのは、順番が逆です
グレーゾーン|「句法はやらない、訓読だけやる」で足りる人
独立大問はないけれど、訓読文や書き下し文が本文や小問に混ざる大学があります。ここは白文を読む本格的な対策は不要で、返り点と書き下しの初歩だけでかまいません。具体的には、こういうケースです。
- 明治の法学部・商学部…古文の小問に訓点つきの漢文や書き下し文が混じる年があります(法学部2026年度の『続本朝往生伝』の訓読、商学部2026年度の『倶舎論』の書き下し引用など)
- 青山学院の全学部日程…2023年度の古文に白居易の漢詩句と『論語』の句、2024年度の現代文に十七条憲法の訓読文が引用されました。いずれも古文・現代文に埋め込まれた形です
- 成蹊の文学部A方式…2023年度の古文の中に『法華経』の書き下し文(読み・再読文字)を問う小問がありました
目安は「書き下し文を渡されたら意味が取れる」水準です。ここまでで十分で、その先の時間はほかの科目に回してください。
学習の順番|古文は単語から、漢文は句形から
古文は、単語→文法→読解の順を崩さない
古文は順番を崩すと伸びません。単語300語前後の単語帳を1冊、文法は助動詞の意味と活用、そのあと敬語、最後に識別。ここまでが土台です。
読解に入ってからの最優先は敬語による主語判定です。中央大学の古文は3年15題のうち13題が平安から鎌倉で、日記・物語・説話が中心。敬語から主語を判定するのが定番の切り口でした。立教の2/8系も『源氏物語』『更級日記』など平安の王朝文が中心で、ここで失点すると致命傷になります。
そのうえで、志望校によって最後に足すものが変わります。
- 和歌の修辞(掛詞・序詞・縁語・本歌取り)…立教は和歌が絡む回が多く、掛詞・枕詞・縁語と古歌の引用が繰り返し問われます。早稲田商学部も和歌の修辞が直接問われます。青学も擬古物語や歌論で和歌が地の文に組み込まれるので、和歌を飛ばす癖があると崩れます
- 文学史(作品名・時代・ジャンル・成立順)…学習院は9冊すべてで最後に必出。早稲田の教育A方式や明治の商・政治経済も毎年出ます。埼玉の教育学部は八代集の順序や勅撰集の撰者まで問われます。表を1枚作れば毎年1問が確実に取れる分野です
- 口語訳を書く力…埼玉大学の教育学部と明治の文学部は、40字級の説明ではなく「訳す力」を求めています。長い説明記述の練習より、訳の精度です
なお、小説の読解は優先度が低い大学が多数派です。中央は24冊すべてが評論と随筆、学習院も9冊すべて評論、明治の法・商・政経も3年とも小説ゼロ、成蹊も12冊で独立の出題なし。早稲田で小説が必要なのは教育C方式だけでした。
漢文は、句形から入る。読解から入らない
漢文は古文と違って、やることが少なく、短期間で仕上がる科目です。だからこそ順番がはっきりしています。
- 返り点と送り仮名の読み方…レ点・一二点・上下点で語順を復元できるようにする。ここだけで、明治の法・商や青学のグレーゾーンは足ります
- 再読文字…数が限られているので先に潰します
- 句形…否定・疑問・反語・使役・受身・比較・限定・累加。1冊を2〜3週間で1周し、そのあと週に1回まわす
- 書き下し・返り点を「書く」練習…法政のT日程は返り点を付けさせる設問が3年とも出ています。学習院の文学部コアも記述に返り点が入り、早稲田の法学部では白文に返り点と送り仮名を付ける記述も出ました。「読める」と「書ける」は別の訓練です
- 短文の訳から読解へ…ここでようやく志望校の過去問に入ります
漢詩の詩型・押韻の知識は、出ても1問です。後回しで結構です。
教材は、古文単語なら『読んで見て覚える重要古文単語315』(桐原書店)、古典文法なら『ステップアップノート30 古典文法基礎ドリル』(河合出版)、漢文の句形なら『漢文早覚え速答法』(学研)や『漢文ヤマのヤマ』(学研)といった定番で十分です。冊数を増やすより、1冊を3周するほうが速く仕上がります。
いつまでに仕上げるか
「仕上げる」の定義を先に決めます。古文は「初見の文章で主語を追えて、助動詞の意味を根拠つきで答えられる」。漢文は「句形を見て即座に意味と書き下しが出る」。ここまで来れば、あとは過去問で形式に合わせるだけです。
- 高2の1月〜高3の4月…古文単語1冊の1周目と、助動詞の活用・意味。ここは学校の授業と並走できます
- 高3の6月まで…古典文法を一通り終える(敬語と識別まで)。漢文が必要な人は、この時期に返り点・再読文字に着手
- 高3の7〜8月…漢文の句形を1冊終える。ここが山場で、夏に片づければ秋以降は維持だけで済みます。古文は読解演習へ
- 9〜10月…志望校の形式で過去問へ。「自分がどの大問を解く冊子なのか」をここで必ず確認します(法政の冊子番号、立教の試験日、学習院のコア/プラス、早稲田の学部と方式)
- 11〜12月…共通テストと私大の形式を並行。記述が要る人(早稲田法の120〜180字、教育C方式の180〜200字、埼玉大の字数指定なしの説明、明治文の口語訳)は、毎週書いて添削を受ける段階です
- 1月以降…古文単語と漢文句形は1日15分でいいので毎日触る。止めると最初に落ちるのがこの2つです
逆算すると、漢文を「やる/やらない」の判断は、遅くとも高3の6月までに終わらせてください。夏に句形を1冊やる時間を取れるかが分かれ目で、9月に決めるとほかの科目を削ることになります。
迷ったときの決め方
書き出した併願リストの、漢文が出る試験に印を付けて本数を数えてください。
- 印が2本以上なら、迷わずやる。漢文は仕上がるまでの時間が短く、いったん仕上がれば得点が安定する分野です
- 印が1本だけなら、配点と志望順位で決める。中央の文学部なら100点中20点、学習院の文学部コアなら150点中20点です。第一志望ならやる。押さえの1本のためなら、その大学の別方式や別日程に振り替えられないかを先に調べてください
この判断は一度きりではありません。志望が動けばやり直しです。だからこそ、1学期のうちに一度、紙に書き出す価値があります。
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※この記事の出題情報は、EIMEI予備校が自作している大学別入試対策読本(過去の問題冊子を通読して集計したもの)にもとづきます。分析対象の年度・冊数は大学ごとに異なります。出願にあたっては、必ず各大学の最新の募集要項でご確認ください。
