「学校の授業がまだ明治に入っていません」。秋になると、日本史選択の高3生・既卒生からいちばん多く届く相談です。この記事は、近現代がまだ手つかず、あるいは一度通しただけで止まっている高校生・既卒生と、その保護者の方に向けて書いています。
近現代は、多くの大学で出題がもっとも集まっている時代です。それが学校では最後に回るため、入試の比重と学習の順番がいちばんずれます。以下の数字は、EIMEI予備校が大学ごとに自作している入試対策読本のために、過去問冊子を年度別・大問別に読み込んだ集計から出たものです。
まず数字を見る:近現代に出題が集まっている
分析した冊数や大問の数え方は大学ごとに違うので、大学をまたいだ比較はできません。同じ大学の中で時代同士を比べる読み方をしてください。
- 慶應義塾大学経済学部B方式:3年分・全10大問のうち近代は10大問すべて、現代も10大問中8に登場します。
- 慶應義塾大学法学部:12大問中近代が5で時代別の最多。現代は3、中世は1です。
- 学習院大学:3年×10冊=50大問の集計で近代(幕末〜1945)が約12大問で最多、読本は「全冊に最低1題」と記録しています。近世(江戸)約11、原始古代約9、中世約4、現代(戦後)約3大問です。
- 法政大学:分析した11冊のうち11冊すべてに近代が含まれます。近世も11冊中11冊です。
- 青山学院大学全学部日程:4年とも大問Ⅲが近代・現代です。
逆に、原始古代・中世がほとんど出ない設計もあります。慶應義塾大学経済学部B方式は原始古代・中世が3年間・全10大問で0(0/10)、マーク小問0/67、記述論述小問0/約55で、約122問のうち1500年以前を問うものが一問もありません。読本は募集要項の「1500年以降が中心」という表現を検証し、実態は「1500年以降のみ」と明記しています。法政大学は「原始はほぼ出ない」、明治大学経営学部は「原始古代・中世はほぼ出ない」とされています。
ただし全大学が近現代偏重ではありません。立教大学は13冊すべて大問Ⅰ・Ⅱの2題で時代配分がほぼ50:50です。全体像は日本史の頻出単元も合わせて読んでください。
「近代」はどこから始まるか
読本の時代区分は原始・古代/中世/近世/近代/現代の5つで、学習院大学のデータは近代を「幕末〜1945」、現代を「戦後」として集計しています。受験勉強の線引きもここに合わせます。
注意したいのは、その一歩手前が重いことです。慶應義塾大学経済学部B方式は近世が10大問中6で、読本は「1500年以降の『前近代』として出題される唯一の領域」と位置づけています。法政大学は優先分野の筆頭に「日本史=近世+近代」を挙げています。江戸後期の経済と対外関係から地続きで入ると開国以後がつながるので、幕末から始める必要はありません。
近現代を5本の線で組み立てる
近現代は情報量が多く、教科書を頭から読むだけでは順序が残りません。政治・外交・経済・社会・文化の5本の線に分け、線ごとに通します。出題データから見た優先順位は次の順です。
1本目:政治史(最優先)
慶應義塾大学は文学部が政治7(15大問中で分野別最多)、法学部が政治7(12大問中で最多)、経済学部B方式が政治6(10大問中)。学習院大学は政治が50大問の約半数を占めると評価され、早稲田大学・明治大学も複数学部で政治3/3とされています。押さえるのは内閣・議会・政党の関係、法令と制度の名前と中身、占領期の政治改革です。
2本目:外交史
慶應義塾大学は経済学部B方式が外交6(10大問中)、法学部が5(12大問中)、商学部A方式が3(9大問中で分野別最多)で、明治大学も複数学部で外交3/3とされています。条約・戦争を年代・当事国・結果の3点でそろえるのが基本です。
3本目:経済
近現代でもっとも差が出る線なので、次章でまとめます。
4本目:社会
社会は社会経済史の内訳として現れます。読本に出てくる切り口は労働・農村・移民(中央大学経済学部2/14方式)、村・民衆運動(早稲田大学教育学部)、社会史・地域史(アイヌ・沖縄など)(中央大学経済学部2/15方式)です。政治史の年表に「そのとき人々の生活と労働がどうなったか」を一行ずつ足して補います。
5本目:文化史
文化史は「後回しでよい」と一般化できません。学習院大学は文化史が「大問まるごと1題」として出ることが多く、立教大学は大問Ⅰが必ずテーマ史で、読本は「文化史を後回しにする戦略は立教では成立しない」と明記しています。近現代の文化史として立教大学の大問Ⅱで確認されているのは新聞・メディア史、洋学・科学技術、思想・学問史、宗教統制です。進め方は日本史の文化史にまとめています。
内閣ごとに整理する方法と、その限界
近現代の政治史を内閣を単位に並べるのは有効です。交代順は動かないので順序を固定する背骨になります。ただし内閣名だけでは解けません。読本のデータでは、主に4つの形で問われています。
- 人物一代記型:学習院大学は近代で「人物一代記型(山県有朋・乃木希典・石橋湛山・牧野伸顕)が頻出」と記録しています。内閣一覧ではなく一人の生涯を縦に追う形です。
- 初見史料の読解:明治大学法学部は大問Ⅰが近現代の史料3点で3年固定、初見率が高いとされています。
- 経済政策の名前と中身:中央大学商学部会計学科・経営学科は戦後経済史が毎年大問Ⅲに固定されています。
- 統計表・グラフの読み取り:慶應義塾大学経済学部B方式は毎年3〜9点のグラフ・地図・図版が入ります。
内閣名はこのどれにも直接答えてくれません。その枠に何を一緒に入れるかが要点です。1内閣=1行のカードにして、次の6列を埋めてください。
- 内閣名
- 在任の西暦(東洋大学は史料文を年代整序させる出題があるとされています)
- 政治:成立した法令・制度の名前と中身を一行で
- 外交:同時期の条約・戦争・対外関係
- 経済:同時期の景気の局面(好況・不況・恐慌・統制・復興・成長)と政策名
- 人物・文化:関わった人物の役職と、同時期の文化の出来事
近現代の内閣は40〜50行で一覧になります。1日5行なら10日で1周です。覚えられない場合は社会の暗記が定着しないときを先に読んでください。
経済史:近現代でいちばん差が出るところ
- 慶應義塾大学経済学部B方式:経済社会が10大問すべてに登場します。読本は「現代(占領期〜高度成長〜平成)の経済政策」を先に固めるべき分野のひとつに挙げています。
- 中央大学経済学部2/14方式:読本が「全編が経済史・統計読解」と明記する方式で、銀の流通、通貨・金融史、労働・農村・移民史を扱います。同じ経済学部でも2/15方式は政治・外交・文化中心で、受ける日程で配分を変える必要があります。
- 早稲田大学商学部:大問5が近代経済・大問6が現代経済で3年間固定、経済社会3/3が突出しているとされています。大問番号が分かるので時間配分の練習も組めます。
近代経済は①貨幣・金融②産業(紡績・製糸・鉄鋼・財閥)③貿易④労働・農村の4本を、それぞれ「いつ・何が原因で・何が起きたか」の一行で並べます。現代経済は①占領期の改革(傾斜生産・ドッジライン)②高度成長(経済白書)③石油危機④プラザ合意以降という並びが骨格です。統計表は数値を覚えず、どの年で折れ曲がるかと理由を言えるかだけ確認します。早慶の社会科目全体は早慶の社会でも扱っています。
現代史(戦後)はどこまでやるか
戦後の扱いは大学差がもっとも大きいところです。到達点の実測値はこうなっています。
- 青山学院大学全学部日程:2023・2024年度は近代止まり、2025年度は『経済白書』(1956年)、2026年度は日本国憲法制定(1947年施行)と戦後に踏み込むようになりました。
- 青山学院大学経済学部A方式:4年とも戦後に到達。2024年度は科学技術史で戦後まで、2026年度は感染症史でCOVID-19まで到達しました。
- 中央大学商学部会計学科・経営学科:戦後経済史(ドッジライン・石油危機・プラザ合意・バブル)が毎年大問Ⅲに固定です。
- 東洋大学:「現代史(戦後〜1970年代)の比重が高い」とされ、GHQの労働改革、経済白書、高度経済成長、石油危機まで踏み込むとされています。
- 一方学習院大学は現代が約3大問で時代別最少、慶應義塾大学法学部は12大問中3、法政大学は「現代が主題になるのは2024年度の冊子41の〔Ⅳ〕程度で薄い」と明記されています。
志望校の過去問3年分でいちばん新しい年代を扱った設問を探し、そこを自分の下限にします。
近現代でよく問われる史料・図表
早稲田大学商学部は大問1〜4の4題(全体の67%)が史料とされ、慶應義塾大学法学部は3年で史料が計31点、法政大学は11冊中10冊で史料・統計表などが素材化されています。立教大学は写真4択が非常に多く「教科書の図版ページを見ていない受験生は確実に落とす」と記録されています。逆に学習院大学は全10冊で史料引用2件のみ、図版や統計表を使った設問は0件です。
読む手順は日本史の史料問題にまとめているので深追いしません。近現代に限れば、候文や漢文書き下しより公文書・報告書・新聞・統計が素材になりやすい点だけ押さえてください。
論述で近現代はどう問われるか
- 慶應義塾大学経済学部B方式:毎年10問前後で字数指定が一切なく、解答欄の物理的サイズが実質の字数を決めます。2025・2026年度は「マーク問題ゼロ・資料解釈論述のみ」の探究型大問が定着しています。
- 慶應義塾大学法学部:2024年度0問→2025年度に2問(200字/280字)が新設→2026年度は200字×2。文学部は毎年2問で80字→100字(2025・2026年度)。
- 明治大学政治経済学部:大問Ⅰが初見史料+150字論述+記述で3年固定とされています。
- 立教大学は毎回1問(45〜70字)、学習院大学は文学部コアだけ7行指定です。
- 法政大学:論述は日程で決まります。冊子207・208・216は6冊中6冊で論述あり(2026年度は60字に統一)、冊子209・212は5冊中5冊で3年連続ゼロです。
- 早稲田大学商学部:現代経済の大問6で30字以内×1問が3年連続、教育学部は2024年度なし→2026年度50字×2と増加傾向にあるとされています。
字数の幅が30字から280字まであるので、練習は字数別に分けます。30〜60字は「原因→結果」を一本つなぐだけ、100字前後は「前提→変化→結果」の三段、200字以上は指定語句や資料の要素を配置する作業です。型は社会の論述の書き方にまとめています。
学校の授業が追いつかないときの自習手順
- 志望校の過去問3年分で、近現代の大問数と到達年代を数える(30分)。範囲の下限が決まります。
- 教科書の近現代の章の見出しだけを書き写す(30分)。本文は読まず、見出しで地図を作ります。
- 通史を1周。細かい用語は飛ばす。内閣カードを埋めながら進み、分からない列は空欄のまま先へ行きます。
- 5本の線で横に読み直す。志望校の分野配分の順で通します。
- 過去問は年度縦ではなく大問横で解く。近現代の大問だけを抜き出して連続で解きます。
- 学校の授業は復習として使う。先に自習で通せば授業が2周目になります。
EIMEI予備校の川越校舎は自習室が朝7時から使えるので、登校前の1時間を通史に充てている生徒もいます。
1か月で近現代を仕上げる練習メニュー
1日90分×週5日、残り2日を復習と予備に充てる前提です。
- 第1週:近代(幕末〜1945)を1周。内閣カードを1日5行。週末にカードを見ずに内閣名を古い順で書けるか確認します。
- 第2週:現代(戦後)を1周。決めた下限まで、占領期の改革→高度成長→石油危機→プラザ合意以降の並びで通し、局面ごとに一行の説明を作ります。
- 第3週:5本の線で横に読み直す。1日1本で通し、残り2日で穴を埋めます。文化史が重い志望校なら文化に2日使います。
- 第4週:過去問演習。志望校の近現代の大問だけを10〜15題連続で解きます。論述がある大学は志望校の字数で5本書きます。
1か月で完成はしませんが、近現代がまるごと空白という状態は消えます。抜けは第4週で見つかります。
残り3か月での優先順位
- 政治史の骨:内閣カードの西暦と法令。多くの大学で分野別最多の位置にあり、空いていると失点が広く及びます。
- 下限までの経済史:近代の貨幣・産業・貿易と戦後の政策の並び。固定枠がある大学なら最優先です。
- 外交史:条約・戦争を年代・当事国・結果でそろえます。
- 論述:志望校の字数に合わせて。論述がない志望校なら飛ばして2と3に時間を回します。
- 近現代の文化史:新聞・メディア、洋学・科学技術、思想・学問、宗教統制。独立大問で出る大学では後回しにできません。
削る判断ができる場合もあります。慶應義塾大学経済学部B方式のように原始古代・中世が3年間0/10で、読本が「完全に捨ててよい」と明記している方式なら、その時間を近現代に回せます。ただし法政大学のように近世が11冊中11冊に入る大学では削れません。削る判断は志望校の過去問で時代配分を確認してからにしてください。進まない状態が続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口に相談することも合わせて考えてください。
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EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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