早稲田・慶應の日本史・世界史は学部ごとに別の科目|論述と史料の実測値で見る|川越の予備校が解説

この記事は、早稲田大学・慶應義塾大学を受ける予定で、選択科目に日本史か世界史を使う高校生・既卒生と保護者の方へ書いています。大学ごとに自作している入試対策読本のために、直近3年分の問題冊子を学部別・大問別に読み込んだデータをもとにしています。

早慶の社会は、GMARCHより「難しい」というより試験の作りそのものが違います。変わるのは論述の字数、史料・資料の量、設問形式、解答形式の4点で、準備の形まで変わります。

GMARCHと何が違うのか、実測値で

まず論述の字数です。GMARCH側は、明治大学政治経済学部の日本史が150字、立教大学が毎回1問45〜70字、法政大学は冊子207・208・216が1問(2026年度は60字に統一)で冊子209・212は3年連続ゼロ、学習院大学は文学部コアの7行指定だけ、という幅に収まります。

これに対し早稲田大学法学部の世界史は250〜300字の論述が3年とも出て、指定語句4つに下線を引く形式まで固定されています。慶應義塾大学法学部の日本史は2024年度が論述ゼロ、2025年度が200字+280字、2026年度が200字×2。同学部の世界史は2025年度が300字×2題、2026年度が200字+240字。字数の桁がひとつ上がります。

資料の量も違います。慶應義塾大学経済学部B方式の世界史は史料が毎年10点前後、地図が毎年2〜4点、グラフが毎年3〜6点。同方式の日本史は2025年度Ⅲと2026年度Ⅳがマーク問題ゼロ・資料解釈の論述だけの大問でした。設問形式も独特で、慶應義塾大学文学部の日本史Ⅰ・Ⅱには「語群に該当がない場合は0」というルールがあり、消去法が使えません。

早稲田:学部ごとに別の科目だと考える

学部独自試験として地歴を課すのは法・商・文・文化構想・教育学部A方式の5学部。試験時間は60分、配点は法40点、商60点、文50点、文化構想50点、教育A方式50点です。

日本史

  • 法学部:大問4題×各10問が3年とも不変。Ⅰが原始古代〜中世、Ⅲが近代、Ⅳが現代で固定。論述なし。文化3/3・政治3/3が軸で、史料はⅢの1題だけですが3年とも初見です。
  • 商学部:大問6題×各10問。古代・中世・近世・近代・近代・現代を1題ずつの均等配分が3年とも続き、大問5が近代経済、大問6が現代経済で固定。30字以内の論述が3年連続で1問。史料は大問1〜4の4題=67%で、近世・近代は3年とも初見です。
  • 文学部:大問6題・小問45前後で、Ⅴが近現代政治、Ⅵが美術文化史。史料はⅡで必出、論述なし。
  • 文化構想学部:全4題がテーマ通史で原始古代から現代を毎回横断。史料0/3・論述0/3が3年とも一貫。文化史の比重が5学部で最大です。
  • 教育学部A方式:大問5〜6題で古代から現代までほぼ1題ずつ。ほぼ全大問に史料があり、漢文の書き下しや候文の初見率が5学部で最高です。論述は2024年度なし→2025年度60字×1問→2026年度50字×2問と増えています。

世界史

  • 法学部:大問5題固定、Ⅴが250〜300字論述+指定語句4つに下線。史料・図版・地図は3年とも一切なし。論述テーマは3年とも「近現代の非ヨーロッパ地域と欧米による支配」。マーク部分は中国・東アジア3/3、ヨーロッパ近世〜近代3/3。
  • 商学部:Ⅰ〜Ⅲがマーク各12問、Ⅳが語句記述13個+100〜120字論述で3年とも不変。中国史1題3/3、Ⅳの舞台はアメリカ関連2/3。
  • 文学部:第1問が古代オリエント・エジプト3/3、中国史1題3/3、最終大問が美術図版3/3で完全固定。論述なし。図版は毎年5〜6点。
  • 文化構想学部:論述なし。史料と図版が3年とも出て図版は6点前後。古代3/3・文化史3/3が頻出。
  • 教育学部A方式:大問4題・約50問が全問マーク。統計表・地図の読み取り2/3。現代史3/3で、5学部で現代史がはっきり頻出なのは教育学部だけです。

慶應:社会が出る学部と出ない学部がある

地歴を使うのは文学部・法学部・商学部(A方式・B方式)・経済学部B方式です。経済学部A方式は数学で、医学部・理工学部・総合政策学部・環境情報学部・看護医療学部・薬学部には地歴がありません。法学部は地歴が150点と全学部で最大の配点で、地歴単独でも足切りがかかる設計です。

日本史

  • 文学部(100点・60分、5大問・約57〜60問):Ⅰ・Ⅱが語群選択、Ⅲが語句記述、Ⅳ・Ⅴが3年連続で史料+論述。論述は毎年2問で2024年度80字→2025・2026年度100字に増量。史料はⅣ・Ⅴで3年計15点です。
  • 法学部(150点・90分、4大問・42〜50問):2024年度は全問マーク・論述ゼロ、2025年度に記述式解答用紙が新設され以後2年連続で大型論述。時代配分は近代5・近世4・現代3・原始古代3・中世1(12大問、重複あり)。
  • 商学部A方式(100点・60分、3大問・約78〜80問):3大問が前近代/近世/近現代に完全固定。マーク58〜61問+記述17〜20問。史料は3年でわずか1点、図版・グラフはゼロ。論述は2025年度30字1問→2026年度25字1問。
  • 経済学部B方式(150点・80分、3〜4大問・約38〜40問):論述が毎年10問前後で字数指定が一切なし。解答欄の大きさが唯一の制限で、しかもこの解答用紙は英語の最初に採点される問題が一定点に達した受験生だけが採点されます。

世界史

  • 文学部:3年とも大問4題で全問記述式。2024年度は50問・論述ゼロ、2025・2026年度は42問+40字論述2問。史料・地図・図版は3年とも一切なしですが、地図なしで位置情報を言葉で問う設問が毎年入ります。12大問中ヨーロッパ5が最多です。
  • 法学部:マーク解答数50→40→39、論述は2024年度なし→2025年度300字×2→2026年度200字+240字。2026年度はⅠ・Ⅱから語群と空所補充が消えて全問4択の正誤判定に変わりました。
  • 商学部A方式:3年とも大問3題。論述は毎年2〜3題で15〜40字の超短文のみ。語群が60〜78項目あり、番号を探すだけで時間を使います。
  • 経済学部B方式:論述が2024・2025年度11題、2026年度13題で3年とも字数指定なし。1500年以前に関わる小問は3年計72小問中3問(4.2%)、内容の理解が必要なものに限ると72問中1問(1.4%)です。

経済学部志望なら、2027年2月実施の一般選抜から小論文が休止され、B方式の地理歴史が150点・80分から200点・100分に拡大する点も確認してください。

論述は、字数ごとに手順を分ける

  1. 25〜50字(慶應商A方式、早稲田商の日本史、早稲田教育A方式、慶應文の世界史):設問の語をそのまま主語に置き、結論を1文で言い切る。理由は1つだけ足す。早稲田教育学部A方式は「AだがBでもある」という両論併記型が出るので、その形も用意します。
  2. 100字前後(慶應文の日本史、早稲田商の世界史):2文で組む。1文目で何が起きたか、2文目でなぜ起きたか・結果どうなったか。
  3. 200字(慶應法の日本史・世界史):背景・仕組み・変化・影響の4枠に分け、各50字で埋める。慶應法の世界史では「背景・仕組み・伴う問題・唐末からの変化・対外関係への影響」のように要素が設問文で指定されることがあるので、指定に番号を振ってその順に書きます。
  4. 250〜300字(早稲田法・慶應法の世界史):書き始める前に指定語句を紙に並べ、どの語句を何文目に置くかを決める。早稲田法学部は指定語句4つに下線を引く形式なので、落とすと形式点を失います。
  5. 字数指定なし(慶應経済B方式):解答欄を実物大でコピーして練習する。欄の行数から逆算して何要素入れるかを先に決めます。

進め方は、書く15分→模範解答と要素を照らす5分→書き直す5分の25分セットを週2本。見てもらえる相手を先に決めておいてください。

史料問題:初見史料が出るのはどこか

初見史料が出るのは、早稲田大学の商学部(大問1〜4の4題=67%が史料、近世・近代は3年とも初見)・教育学部A方式(ほぼ全大問に史料、初見率が5学部で最高)・法学部(Ⅲの1題が3年とも初見)の日本史です。慶應義塾大学では法学部の日本史も史料が多く、経済学部B方式は史料・地図・グラフが4学部で最も多くなっています。

逆にほぼ使わないのは、早稲田大学文化構想学部の日本史(史料0/3)、早稲田大学法学部と慶應義塾大学文学部の世界史(いずれも3年とも一切なし)、慶應義塾大学商学部A方式の日本史。ここを受けるなら史料練習に時間を使う必要はありません。

読む手順は4つです。(1)現代語訳を先に読んでから原文に戻る。(2)いつ・誰が・どの立場で書いたかを一言でメモする。(3)固有名詞をひとつ探して年代の幅を絞る。(4)そこで初めて設問に戻る。1日1本、5〜10分で3か月なら90本前後になります。

時代と地域は、どこに寄せるか

慶應義塾大学経済学部B方式の日本史は、1500年以前の出題が3年間で0問でした。大問0/10、マーク小問0/67、記述・論述0/約55、約122問中0問です。原始古代・中世は、他学部との併願がなければ学習の必要がありません。

同方式の世界史も1500年以前が72小問中3問(4.2%)で、19〜20世紀に約8割が集中。地域はラテンアメリカとアフリカの比重が他学部より格段に高く、日本を絡めた大問が毎年入ります。一方で早稲田大学商学部の日本史は全時代を1題ずつの均等配分、文化構想学部は全4題が原始古代から現代を横断するテーマ通史です。同じ早慶でも、捨てていい時代があるかどうかが正反対だということです。

現代史・戦後史はどこまで出るか

慶應義塾大学文学部の日本史は大問Ⅱが現代史か文化史の枠で、2025年度・2026年度と2年連続で現代史でした。法学部の日本史は戦後政治の細部まで問われ、経済学部B方式の日本史は現代が10大問中8です。世界史では文学部・法学部で現代(戦後〜2020年代)が毎年必ず1大問分あり、法学部は2025年度にウクライナ侵攻・ガザ侵攻まで扱っています。早稲田大学では法学部の日本史Ⅳが現代固定、商学部の日本史は大問6が現代経済固定、教育学部A方式の世界史は現代史3/3。教科書の最終章まで到達していることが前提です。単元の全体像は日本史の頻出単元世界史の頻出単元にまとめています。

GMARCHと併願するとき、重なるところと重ならないところ

重なるのは、政治史と社会経済史という共通の太い軸、世界史の中国・東アジア史とヨーロッパ史、正誤文を一語単位で切る精度の3つです。

重ならないのは、まず論述の字数です。早稲田大学法学部の250〜300字や慶應義塾大学法学部の200〜280字と字数レンジが重なるのは、青山学院大学文学部史学科(世界史350字以内・指定語句5〜7語すべて使用)、明治大学政治経済学部(世界史220〜260字)、学習院大学文学部コア(世界史200字論述2題)くらいです。法政大学の世界史は3年間すべてで論述ゼロで、日本史は論述・世界史は語句記述という役割分担が明記されています。法政中心で組んできた人には、早慶の世界史論述はまったく新しい作業になります

史料も重なりません。学習院大学の日本史は史料引用が全10冊で2件のみです。地域も同じで、青山学院大学経済学部A方式の世界史は4年間でアフリカ・アメリカを主題とする大問がゼロ、慶應義塾大学経済学部B方式はその2地域が最重です。GMARCHの日本史・世界史比較早慶併願の組み方も読んでください。

早慶の社会で、最低限やっておくこと3つ

  1. 志望学部の解答形式を先に確定させる。マーク・記述・論述の比率、論述の字数、史料の有無。過去問は解く前に形式だけ3年分めくってください。
  2. 近現代、とくに戦後を前半に置く。現代史が大問1つ分ある学部が複数あり、他の受験生も薄いところです。
  3. 「毎日1本」の作業をひとつ持つ。史料が多い学部なら初見史料1本、論述が重い学部なら論述1問、資料が多いなら図表1点。定着で困っているなら社会の暗記が定着しないときも参考にしてください。

残り数か月の進め方

  • 9月から10月:志望学部の過去問3年分を「解かずに形式だけ読む」。大問の並び、設問数、論述の字数、史料の点数を紙に書き出し、同時に通史の穴を埋めます。
  • 10月から11月:論述を週2本。字数は志望学部に合わせ、2学部以上なら短い字数と長い字数を交互に。
  • 11月から12月:史料・資料を毎日1本に固定し、現代史を詰めます。慶應義塾大学経済学部B方式志望なら、解答欄を実物大でコピーして書き始めます。
  • 12月から本番まで:時間内に終える練習へ。慶應義塾大学商学部A方式の日本史は60分で約80問(1問45秒)、文学部の世界史は60分で50問(1問72秒)。最後は固定枠の確認に絞ります。早稲田大学文学部なら日本史Ⅵの美術文化史と世界史第1問の古代オリエント。位置が分かっている大問は直前でも取り返せます。

勉強法そのものの組み立ては日本史・世界史の勉強法にまとめています。志望学部でどこから手をつけるか迷う場合は、過去問を一緒に開いて形式を確定させるところから始めるのが早いです。

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二神大輝