古文文法は覚えたのに解けない人へ|助動詞・敬語・識別の覚え方と使い方【川越の予備校が実測値で解説】

この記事は、古文の文法をやったのに問題では点にならない高校生・既卒生(浪人生)に向けて書いています。「助動詞の表は覚えた」「敬語も一覧を見た」のに本文の意味が取れない、という段階の人が対象です。

原因は、覚えた量よりも覚える順番本文に当てる手順が決まっていないことにあります。助動詞・敬語・識別の3つに絞って書きます。

古文文法は入試でどう問われているのか

EIMEI予備校では大学ごとに入試対策読本を自作していて、国語の問題冊子も1冊ずつ確認しています。そこで数えた実測値です。

  • 学習院大学…2024〜2026年度の国語9冊すべてで古文の大問が出ています。配点は法学部コア系が100点満点中35点、経済学部コア系が120点満点中40点、文学部コアが150点満点中40点。字数指定の論述は9冊すべてゼロ、記述は漢字・抜き出し・返り点と文法(活用形・表記)だけでした。
  • 立教大学…全学部日程の国語を確認した11冊すべてが「現代文2題+古文1題」で例外がありません。記述は毎年3〜6問、そのうち古文の現代語訳を3〜10字以内で書かせる設問が1問という型がほぼ固定。2月8日の回は古文の設問数が最多クラスで、2026年度は17の設問群がありました。
  • 早稲田大学…学部で構成が違います。法学部は大問4題・全25問のうち1題が古文、商学部は大問3題・20〜21問のうち1題、文学部は大問4題・28〜30問、教育学部A方式は大問4題・29〜33問。文化構想学部には古文の独立大問がなく、現代文・古文・漢文を同時に読ませる融合大問が毎年出ます。人間科学部の国語英語型は現代文2本だけでした。

押さえてほしいのは、3大学の読本を通して、古文文法だけを切り出した独立大問は一つも確認できていない点です。文法は必ず、古文の大問の中の小問として、あるいは現代語訳・内容説明を作る前提として問われます。「文法問題を何問か捨てる」が成り立たないのはこのためです。

読本の優先順位表には、早稲田の法学部・商学部で「古文の助動詞識別と敬語」が最優先、文学部・文化構想学部・教育学部A方式・教育学部C方式の4方式すべてで「古文の敬語と動作主体の判定」が必出、配点も厚いとあります。学習院の法学部コア系で先に固める2番目は「古文文法(助動詞の識別・敬語の種類と対象)」、立教で先に固める1番目は「助動詞の意味と活用、敬語による主語判定、和歌の掛詞・枕詞・縁語、古歌の引用」です。

正直に書くと、「識別が1回の試験で何問」という集計は読本にありません。ただ、3大学の読本がそれぞれ独立に同じ3語(助動詞・敬語・主語(動作主体))を挙げている事実のほうが、手がかりとしては強いと考えています。

8大学・古文89題(2023〜2026年度)を分析した資料からも、文法が読解と一体で問われる例が拾えます。早稲田大学2024年度『発心集』では語意・助動詞・動作主体を問う設問が二題、中央大学2026年度『栄花物語』では敬意の対象と10字以内の抜き出しが問われました。

立教大学は出題意図で「語彙問題、文法問題のいずれも、覚えている知識を単純に問うのではなく、傍線部の前後あるいは文章全体の文脈や展開をふまえて、的確な正解を選ぶことのできる読解力を必要とする問題とした」と述べています。丸暗記では選べない設計だと大学自身が書いているわけです。

覚える優先順位は3段階

  1. 助動詞の意味と接続…3大学すべてで最優先級に挙がります。助動詞が決まらないと、打消か推量か完了かが揺れ、1文の意味が反対になります。
  2. 敬語による主語の判定…早稲田の4方式すべてで「敬語と動作主体の判定」が必出、学習院でも「敬語の種類と対象」が名指しされています。古文は主語が省略されるので、敬語が唯一の手がかりになる場面が多い。
  3. 紛らわしい語の識別…上の2つが入っていないと判定基準が作れないので、順番は最後です。

識別は「接続」と「敬語による主語」を材料にして初めて機械的に処理できます。先に上の2つを固めてください。

①助動詞は「接続」から覚える

多くの人は「む=推量・意志・勧誘…」と意味から入ります。これを逆にしてください。先に接続で組を作り、意味は後から文脈で絞るのが入試で使える形です。本文で確実に分かるのは直前の語が何形かだけで、意味は文脈を読んでからしか決まりません。

接続でまとめる(覚える単位はここ)

  • 未然形…る・らる/す・さす・しむ/ず/む・むず/じ/まし/まほし
  • 連用形…き・けり/つ・ぬ/たり/たし/けむ
  • 終止形(ラ変は連体形)…らむ/めり/らし/なり(伝聞推定)/べし/まじ
  • 四段已然形・サ変未然形…り
  • 体言・連体形…なり(断定)/たり(断定)/ごとし

この5グループが白紙から書ければ、識別の大半は自動化されます。「ず」は未然形接続だから連用形の下の「に」は完了の「ぬ」ではありえない、と即断できます。

意味は決め手ごと覚える

  • …主語が一人称なら意志、二人称なら勧誘・適当、三人称なら推量。まず主語を決める。
  • る・らる…下に打消があれば可能、動作主が高位なら尊敬、心情の語に付けば自発、それ以外は受身の順に当てる。
  • なり…体言・連体形の下なら断定、終止形の下なら伝聞推定。接続が決め手。

覚えたかどうかの確かめ方

  • 白紙テスト…何も見ずに接続の5グループを書き出す。1回3分、書けなかったものだけ翌日もう一度。
  • 逆引きテスト…「連用形接続で過去を表すもの」のように条件から答える。一覧を見て思い出すのと、条件から引き出すのは別の能力です。
  • 本文テスト…過去問の古文から1文選び、助動詞に印をつけて接続・活用形・意味の3点を余白に書く。3点そろって書けて初めて「覚えた」と判定します。

②敬語は「主語を決める道具」として覚える

敬語を丁寧な言い方の一覧として覚えると、入試では働きません。省略された主語を復元する道具として覚えます。

  • 尊敬語…動作をする人を高める。その動作の主語が、その場で身分の高い人だと分かる。
  • 謙譲語…動作を受ける相手を高める。つまり主語は身分の低い側
  • 丁寧語…聞き手・読み手を高める。会話文に出やすく、主語は話し手自身が多い。

地の文で敬語が一つもない動作は、主語が身分の低い人か語り手に近い人だと見当がつきます。

必要な敬語はまず30語前後で足ります。うち主語判定に直結する10語程度は、何も見ずに「種類・敬意の向き・現代語訳」を言えるようにします。優先したいのは一語で2種類になるものです。四段の「給ふ」は尊敬、下二段の「給ふ」は丁寧で会話文で自分の動作に付きます。「候ふ・侍ふ」はお仕えする意味なら謙譲、「〜でございます」なら丁寧。知らないと主語を正反対に取ります。

もう一つ、二重敬語(「せ給ふ」「させ給ふ」など)は最上位の人物に使われるので、その場面で最も身分の高い人が主語だと即断できます。

ここから先の「主語をどう補うか」という読解側の手順は古文が読めない原因の見分け方で書いているので深追いしません。文法側でやるべきことは、敬語の種類と向きを間違えないところまでです。

③識別は「手順書」にする

識別は覚えるものではなく手順を決めるものです。ノートに書いて、解くたびに使ってください。

「なむ」

  1. 直前が連用形なら、強意の「ぬ」の未然形+推量の「む」で「きっと〜だろう」。
  2. 未然形なら、他への願望の終助詞で「〜てほしい」。
  3. 「死ぬ」「去ぬ」の下なら、ナ変の活用語尾「な」+「む」を疑う。
  4. 体言などに付き、文末が連体形で結ばれていれば強意の係助詞。

「に」

  1. 連用形の下で、さらに下に「き・けり・たり」が続くなら完了の「ぬ」の連用形。
  2. 「静かに」のように状態を表すひとかたまりなら形容動詞の活用語尾、「死に」「去に」ならナ変の活用語尾。
  3. 体言の下で、下に「あり・て・や・か」が続き「〜である」と補えるなら断定の「なり」の連用形。
  4. 連体形の下なら接続助詞(〜ので/〜のに/〜と)。
  5. どれでもなく場所や時を示すなら格助詞。

「る・れ」

  1. 直前の音を見る。エ段の音(四段の已然形、サ変未然形の「せ」)なら完了・存続の「り」。
  2. ア段の音(未然形)なら受身・尊敬・可能・自発の「る」。
  3. どちらでもなく活用の一部に見えるなら下二段動詞の活用語尾。

「なり」

  1. 終止形の下なら伝聞・推定(〜そうだ)。撥音便やその表記が落ちた形の下もこちらを疑う。
  2. 体言・連体形の下なら断定(〜である)。
  3. 「〜になる」と訳せて四段活用なら動詞「成る」の連用形。
  4. 「あはれなり」のように語幹と一体なら形容動詞の活用語尾。

「ぬ・ね」

  1. 未然形の下なら打消の「ず」の連体形「ぬ」・已然形「ね」。
  2. 連用形の下なら完了の「ぬ」の終止形「ぬ」・命令形「ね」。

この4〜5パターンで、問われるものの大半はカバーできます。網羅より、この手順を本文で使い切るほうが点になります。

文法問題の解き方の手順

見る順番を固定します。選択肢を先に読まないのがコツです。

  1. 傍線部を単語に切る…自立語と付属語の境目で切る。
  2. 直前の語の活用形を確定する…接続で候補を絞る。ここで1つに減ることも多い。
  3. 直後を見る…体言が来るか、「き・けり・たり」が来るか、句点で終わるか。ここで活用形が決まります。
  4. 主語を確定する…敬語の種類と向き、「は・が」「を・に」、「て」で主語が続くか「ば・を・に」で変わるかを見る。
  5. 意味を1つに決める…打消・反語・願望・意志など、文脈に合うものだけを残す。
  6. 最後に選択肢を見る…合うものがなければ2〜4のどこかを間違えているので、そこに戻ります。

答え合わせでも同じ順で見直し、原因が「単語」「接続」「主語」「文脈」のどこかを記録すると、2週間で穴が見えます。

文法を訳につなげる練習

文法問題は解けるのに本文が読めない人に必要なのは、1文ずつ品詞分解して訳す作業です。学習院大学は学習法として、その日に予定されている範囲の古文は前もってノートに書き出し、現代語訳を作成することを勧めています。大学の公表した勧めがそのまま入試対策になっている例で、学校の予習をこの形でやれば別に時間を取る必要もありません。

分量と期間の目安

  • 1日5〜8文(本文にして150〜200字程度)。1文3〜4分、全部で20〜30分に収めます。
  • 週1題は通しで解く。志望校の古文が700〜1,200字ならその分量の1題を時間を計って解き、意味が取れなかった5〜8文だけを品詞分解します。全文分解は時間が持ちません。
  • 4週間で1ジャンルを目安に回す。物語・説話・日記・随筆で性格が違うので、同じジャンルを4週続けると型に慣れます。読み方の型は古文の頻出ジャンルで整理しています。
  • 8〜12週で、初見の本文の主語が自力で追えるかを確認します。

1文の処理手順

  1. 単語に切り、活用語には活用形を書く。
  2. 助動詞を囲み、接続と意味を書く。意味は1つに決める。
  3. 敬語に印をつけ、主語を( )で補って書き込む。
  4. 直訳する。省略された語は( )で補って訳す。
  5. 模範解答と照合し、ズレた原因を単語・助動詞・敬語(主語)・文脈の4つに分類して記録する。

5番目が肝です。どれが多いかで、次の1週間にやることが決まります。

文法が要る大学・要らない大学の見分け方

過去問2〜3年分を手元に置き、次の順に見てください。

  1. 古文の独立大問があるか…立教は11冊すべて、学習院も9冊すべてに古文1題があります。一方で早稲田の人間科学部の国語英語型は現代文2本だけ。同じ大学でも学部・方式で違います。
  2. 配点比を出す…学習院は100点中35点・120点中40点・150点中40点。国語の3分の1前後を占めるなら、文法を削る選択肢はありません。
  3. 記述で訳や活用形を書かせるか…立教は3〜10字の現代語訳が1問、早稲田の教育学部C方式は現代語訳や掛詞の漢字記述が並びます。選択肢に頼る勉強では足りません。
  4. 文学史が出るか…学習院は9冊すべてで最後に必出、早稲田の教育学部A方式も毎年出ます。文法とは別枠なので、出る大学だけ時間を取ります。
  5. 小問を分類して数える…「単語・文法・敬語(主語)・和歌・文学史・内容一致」の6つに分けて数える。これが最も確実です。

古文漢文が必要か迷っている人は古文漢文は必要かを先に読んでください。古文の比重が大きい大学の実際の形は立教の国語早稲田の国語、方式ごとに構成が変わる大学は学習院の方式別の違いにまとめています。

残り数か月の優先順位

  • 10月…助動詞の接続5グループを白紙から書けるようにし、並行して敬語30語。1日20〜30分、これだけに集中します。
  • 11月…識別の手順書を自分の言葉で作る(「なむ」「に」「る・れ」「なり」「ぬ・ね」)。週1題の過去問と、1日5〜8文の品詞分解を回す。
  • 12月以降…過去問中心に切り替え、品詞分解は訳がズレた文だけに絞る。文法の新規インプットはやめます。

直前期に捨ててよいのは文法の網羅です。めったに出ない助詞、細かい用例の例外、まだ触っていない範囲の新規暗記は、1月以降に手を出しても得点に変わりません。志望校に出ない分野も捨てます。古文の独立大問がない方式しか受けないなら深追いは不要、漢文が出ない日程しか受けないなら漢文は要りません。

捨ててはいけないのは4つだけ。助動詞の接続、敬語の種類と向き、識別の頻出4〜5パターン、主語の補い方です。川越校舎でも、古文が必要な人には最初に小問を数える作業を一緒にやっています。

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EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。

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二神大輝