苦手科目は捨てていいのか|配点から判断する2つの「捨てる」と最低ラインの作り方【川越の予備校】

「英語だけで受けられる方式はありませんか」「社会が苦手なので数学で受けたい」「1科目を捨てて残りで取り返せますか」。面談でよく出る質問です。この記事は、苦手科目を捨てるべきかを配点の数字で判断したい高校生・既卒生と保護者の方に向けて書きました。捨てられる場合もありますし、制度上はじめから成立しない場合もあります。志望校の配点と採点のしくみで決まります。

「捨てる」には2つの意味があります

  • ①その科目を使わない方式で受ける。科目数の少ない方式や、英語資格で英語が免除される方式を使う。そもそも試験を受けません
  • ②受けるけれど点を取りにいかない。試験は受け、時間はかけず、他の科目で総合点を作ります

①は出願の問題です。募集要項を読み、その方式があるか、要件を満たせるかを調べれば答えが出ます。②は採点のしくみの問題です。総合点だけで判定する大学では成立しますが、科目ごとの基準点や段階採点がある大学では、はじめから成立しません。判断の仕方がまったく違います。

①使わない方式で受ける どこまで減らせるか

科目数の少ない方式は実際にあります

法政大学の一般選抜は5つの入口に分かれ、A方式が3科目、T日程が2科目、英語外部試験利用入試は1科目です。英語資格のスコアが基準を満たすと当日の英語が免除され、英語以外の1科目だけで合否が決まります。

中央大学の英語外部試験利用方式は、スコアの扱いが学部で3通りに分かれます。商学部・文学部・理工系3学部ではスコアが出願資格としてしか使われません。商学部なら国語100点+選択科目100点の200点だけで合否が決まり、理工系なら理科100点+数学100点の200点です。一方、総合政策学部は英語の個別試験を受けたうえでスコアを50点分加算する形で、法学部にはこの方式がありません

立教大学は3科目ですが、英語の配点が学部で2倍違います。文学部・法・観光などが英語200点、社会学部と環境学部(文系型)は英語100点で満点300点です。捨てることはできませんが、比重の軽い学部を選ぶ調整はできます。

ただし「科目が少ない=入りやすい」ではありません

法政大学の2026年度の方式別倍率(受験者数÷合格者数)を並べます。

  • 英語外部試験利用(1科目)募集119名、合格484名で16.2倍
  • T日程(2科目)募集559名で8.5倍/A方式(3科目)募集2,682名で6.2倍
  • 共通テスト利用C方式(6教科7科目)募集161名で2.6倍

1科目と6教科7科目で倍率が6倍以上違います。学科単位ではさらに極端で、英語外部試験利用のキャリアデザイン学部は募集5名・合格9名で55.1倍、人間環境学部は募集5名・合格24名で34.3倍でした。募集が少ないところに英語資格を持つ受験生が集まるからです。スコアの高低は合否に影響しないので、資格を持っていること自体は強みになりません。勝負は英語以外の1科目だけです。

中央大学でも同じ形です。文学部の同方式は専攻ごとの募集が1〜2名で、フランス語文学文化は募集1名・受験103名・合格6名の17.2倍でした。一方で理工系3学部の同方式は2.1〜4.6倍と、一般方式(3.5〜5.7倍)より低い水準です。逆の例もあります。中央法学部の一般方式は4教科型2.6倍、3教科型4.2倍。1科目多く受けるほうが倍率が低いのです。

科目を減らすと、取り返す先がなくなります

法政大学は「すべての学部・学科において、科目ごとの基準点(合格最低点)は設けていません。総合点で合否判定します」と公表しています。ただしA方式は3科目、T日程は2科目しかないので、1科目の失敗を残り1〜2科目で取り返すのは簡単ではありません。英語外部試験利用なら1科目しかなく、そこで崩れたら打つ手がありません。慶應義塾大学の経済学部も、2027年2月実施の入試から小論文が休止され、数学または地理歴史が200点に拡大して2科目400点満点になります。1科目の重みが増します。

②点を取りにいかない 成立する条件と、しない条件

立教大学は「科目毎の合格最低点は設けず、合計点で判定を行います」と明記しています。法政も同じく科目ごとの基準点はありません。この場合、苦手科目を最低ラインにとどめて他で稼ぐ設計は、制度上は成立します。

一方、慶應義塾大学には条件を満たさないと答案が読まれない学部があります。要項の文言です。

  • 経済学部A方式「『外国語』の問題の一部と『数学』の問題の一部の合計点が一定の得点に達した受験生について、『外国語』の残りの問題と『数学』の残りの問題および『小論文』を採点」
  • 経済学部B方式「『外国語』の問題の一部が一定の得点に達した受験生について、『外国語』の残りの問題と『地理歴史』および『小論文』を採点」
  • 法学部「『小論文』は、『外国語』および『地理歴史』の合計点、ならびに『地理歴史』の得点、いずれもが一定の点数に達した受験生について採点します」

経済学部B方式では、地歴の論述をどれだけ書いても、英語の前半で基準に届かなければ読まれません。地歴のマーク部分の出来はこの判定に影響しないと冊子に注記されています。B方式で英語を捨てる選択は存在しません。法学部は外国語+地歴の合計点と地歴単独の得点の両方を満たす必要があります。地歴に単独の足切りがあるので、英語で稼いで地歴を捨てる戦略は通用しません。地歴は150点で慶應最大の配点です。中央大学では総合政策学部の英語について基準点76.84点(150点満点)が公表されています。大学が定義を説明していないため読み方に注意は要ります。

得点調整も効きます。中央は偏差点、法政は全科目の標準化、立教は偏差値法による調整を行います。科目ごとに調整されるため、1科目で極端に稼いでもそのぶんがまるごと総合点に乗るとは限りません

配点から計算する 3つの例

満点と合格最低点を書き出し、捨てる科目の想定点を引き、残りで必要な点を出す。これだけです。

例1 立教大学 経営学部経営学科

国語100点+選択科目100点+英語150点の350点満点。立教が公表する「英語以外2科目」の合格者最低点(得点調整前の素点)は200点満点で、2月6日141点、2月8日148点、2月13日153点でした。2月8日の148点で計算します。選択科目を3割の30点にすると、国語で118点必要です。国語は100点満点なので不可能。選択を5割50点に上げても国語98点でほぼ満点です。2科目200点という配点では1科目を捨てる余地がありません。選択を7割70点まで持っていければ、国語78点で届きます。

例2 中央大学 総合政策学部 一般方式

英語150点+国語100点の250点満点。2026年度の合格最低点は178点(71.2%、素点)です。英語が基準点76.84点どまりだと、国語で101.16点必要になり、100点満点では届きません。国語8割80点なら英語は98点(150点の65.3%)が要ります。この配点で英語を捨てるのは算数として成立しません。この方式は2026年度に7.6倍、募集60名に志願1,576名でした。

例3 慶應義塾大学 法学部

外国語200点+地理歴史150点+小論文100点の450点満点、2026年度の合格最低点は317点(70.4%)です。地歴を3割45点にすると、外国語と小論文の合計300点のうち272点(90.7%)が必要になります。しかもそれ以前に、地歴45点では単独の基準に届かず小論文が採点されない可能性があります。地歴を7割105点まで持っていければ、残りは300点で212点(70.7%)です。

3つとも同じ結論でした。科目数が3以下の入試では、1科目を捨てて他で取り返す計算がほぼ成立しません。計算するとき、合格最低点が素点か換算後かを必ず確かめてください。法政の最低点は標準化後、立教の公表値は調整前の素点、中央は*印つきが偏差点です。混ぜると意味がなくなります。用語は入試のことばの意味に整理しました。

国公立はもっと成立しにくい

国公立は共通テストの科目数が多く、配点の比率も共通テスト側に寄ります。埼玉大学の2026年度です。

  • 教育学部 乳幼児教育専修 前期:共通テスト950点+個別(英語)500点=1,450点。共通テスト65.5%
  • 工学部 電気電子物理工学科 前期:共通850点+個別400点=1,250点。68.0%/情報工学科 前期:共通900点+個別400点=1,300点。69.2%
  • 乳幼児教育専修 後期:共通テスト950点のみ。100%

共通テストの配点は国語・数学・理科・外国語が各200点前後と広く薄いので、1科目の穴がそのまま総合点に響きます。乳幼児教育前期で、2026年度の合格最低点990.20点に届くのに必要な個別試験(英語500点)の得点率は、共通テスト7割なら65.0%、7割5分なら55.5%、8割なら46.0%です。共通テストが5ポイント下がると、英語1科目で9.5ポイント多く取る必要があります。共通950点対個別500点という約1.9倍の比重差が、そのまま出ています。

埼玉大学は総合点で1回判定します。どちらか一方で基準を超えればよいのではありません。設計の違いは国公立か私立かで扱っています。

「苦手」を4つに分けてください

  1. そもそも手をつけていない。授業以外で使った時間がほぼゼロなら、苦手ではなく未着手です。頻出単元だけ2週間やって点の動きを見ます。
  2. やっているが伸びない。やり方を変えて1回試してから判断します。
  3. 時間が足りない。着手できていないなら計画の問題です。週の時間配分を配点の比率に合わせ直します。
  4. 出題形式と合っていない。知識はあるのに論述で書けない、マークで間に合わない。形式ごとの練習で動きます。

①と③は、捨てる判断をする前の段階です。②と④まで確かめて、それでも配点上足りないときに、はじめて①を検討します。科目そのものを替える道もあります。文系で数学を使う選択は文系数学で受けるにまとめました。

捨てないと決めたときの最低ラインの作り方

  1. 必要点を計算する。上と同じ計算を自分の配点でやります。多くの場合、必要なのは満点ではなく6〜7割です。
  2. その点に要る範囲だけ切り出す。過去問3年分で大問ごとの単元を書き出し、3年連続で出た単元と1回も出ていない単元を分けます。慶應経済学部B方式の日本史は3年間で1500年以前の出題が0問でした。範囲が限定された試験では、やらない範囲を決められます。
  3. 形式を絞る。マークだけの試験に記述練習は不要です。
  4. 基準点や段階採点があるなら、「基準を超えること」が絶対条件です。
  5. 過去の自分と比べる。慶應法学部の合格最低点は2025年度から2026年度で64点・66点上がりました。最低点そのものを目標にすると、上がった年に届きません。

時期で変えられる範囲が違います

高2は科目そのものを選び直せます。英語資格を取るなら余裕のある時期です。立教大学は4技能のスコアを提出でき、2027年度入試なら2025年1月以降のものが有効なので、高2の1月に受けたスコアも使えます。何度でも受け直して一番良いものを出せます。志望校の決め方もあわせて読んでください。

高3の夏が「使わない方式で受ける」を決める最後の時期です。資格試験の受験回数をここまでに確保し、志望校の配点で計算を済ませます。

高3の秋以降は科目を変えられません。変えられるのは時間配分と出願する方式だけです。頻出単元と形式に絞って最低ラインを作り、科目数の少ない方式は倍率が厳しいことを踏まえて併願での位置づけを決めます。組み方は併願校の決め方にあります。

捨てると決めたあとに確認すること

  • 出願要件。法政大学の英語資格は2026年度入試なら2024年2月以降に受験したものが対象で、年度ごとに変わります。4技能は同一受験回のスコアに限られます。英検は合格級とCSEスコアの両方を満たす必要があり、基準は学部ごとに違います。
  • 基準が変わる年がある。中央大学の商学部・文学部は2027年度からスコアを合否判定に含める方向に変更されます。法政大学は2027年度のTOEFL iBTについて、2026年1月20日以前と1月21日以降で適用される基準表が別になります。
  • 共通テストの科目登録。法政はB方式が3教科、C方式が6教科7科目で、2026年度からC方式に情報Ⅰが加わりました。立教の共通テスト利用では、指定より多く受験すると大学が高得点の科目を抽出します。国公立を併願するなら、科目を減らすと出願できなくなります。
  • 調査書などの扱い。立教大学は調査書を合否判定に一切使用せず、現役・既卒の有利不利もないと説明しています。大学によって違います。
  • 締切。中央大学の5学部共通選抜は締切が1月23日と早く、出し忘れが起きやすい方式です。出願締切・試験日・合格発表・入学手続き締切の4つを方式ごとに書き写します。

配点・倍率・最低点は各大学が公表した2026年度の資料によります。制度は年度で変わります。自分が受ける年度の募集要項で必ず確認してください。英語資格の使い方は英検などの外部スコアにまとめています。

苦手科目があること自体は、志望校をあきらめる理由になりません。ただし「なんとなく捨てる」と、配点の上で取り返しがつかなくなります。数字で決めてください。つらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口に相談してください。

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EIMEI予備校について

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二神大輝