こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、川越とその周辺の高校に通っていて、日本史または世界史で受験する高2・高3生と、その保護者の方に向けて書いています。「社会はどう勉強すればいいですか」という質問に、科目名ではなく志望校の出題形式から答えるための記事です。
結論を先に書きます。日本史・世界史に、全国共通の「正しい勉強法」はありません。同じ科目名でも、大学と学部と日程が変われば、測っている力が別物になります。だから、覚え方も変えなければいけません。
同じ科目名なのに、要求が正反対になる例
EIMEIでは、東洋・青山学院・中央・東京電機・学習院・法政・慶應・明治・立教・埼玉・成蹊・早稲田の12大学について、過去の問題冊子を1冊ずつ通読して大学別の入試対策読本にまとめています。地歴の章でいちばん分かりやすかったのが法政大学でした。
- 法政の日本史…11冊を調べて、用語を書かせる問題は3年間で0問。記述は論述1問だけです
- 法政の世界史…10冊を調べて、論述は3年間でゼロ。代わりに日程によって人名・都市名・条約名を6〜13問書かせます
同じ大学の同じ日程で、要求がきれいに裏返しになっています。日本史を選ぶなら「60字で説明する練習」、世界史を選ぶなら「漢字とカタカナを正確に書く練習」。どちらかの対策をもう一方に流用すると、時間をまるごと捨てることになります(日程ごとの違いは法政大学の入試対策読本の記事に)。
志望校の地歴は、5つの軸で分解できる
過去問を解く前に、次の5つを調べてください。これが決まれば、やるべき勉強もほぼ決まります。
- 書かせるか、選ばせるか(語句記述の有無と字種指定)
- 論述があるか。あるなら何字か
- 正誤問題の切り方(組合せ・年代整序・「該当なし」)
- 史料・図版・グラフが出るか
- 時代と地域の重心
軸1|「書ける」まで要るのか、「見て分かる」で足りるのか
- 学習院大学の日本史…10冊とも大問5題・小問50問が固定で、記述大問には毎回「漢字7文字で」といった指定が入ります。記述だけで全体の20〜40%。「読めるが書けない」受験生は確実に失点します
- 慶應義塾大学の文学部の世界史…3年とも全問記述で、マークシートがありません
- 青山学院大学の経済学部A方式…世界史の注意書きに「紛らわしい文字での記入は不正解」と明記されています
- 成蹊大学の世界史…12冊すべてが全問マークで、論述も語句記述もゼロ。日本史でも記述があるのは文学部だけ(語句14問・漢字2〜5字指定)です
- 明治大学の商学部の日本史…記述は毎年約20問、すべて漢字指定です
書かせない大学しか受けないなら、書き取り練習の優先度は下げてかまいません。その時間は正誤の判別精度に回すほうが点になります。
軸2|論述の有無と字数
論述は「ある・ない」ではなく字数で準備が変わります。短いものから並べます。
- 25〜80字…慶應の商学部A方式(25〜30字1問)、立教(13冊すべてで論述あり。全学部日程は45〜70字)、法政の日本史(冊子207・208・216のみ、60〜80字)、中央の法学部(日本史20〜70字が2問、世界史10〜80字が3〜5問。中央で論述があるのは法学部だけ)
- 100〜150字…明治の商学部の世界史(4行以内、約100〜120字)、明治の政治経済学部の日本史(大問Ⅰが初見史料+150字論述で3年とも固定)
- 200〜350字…学習院の文学部コアの世界史(200字以内が2題・30点)、明治の政治経済学部の世界史(220〜260字)、早稲田の法学部の世界史(毎年Ⅴが250〜300字)、慶應の法学部、青山学院の文学部史学科(日本史300字程度/世界史350字以内)
- 字数指定なし…慶應の経済学部B方式。論述が毎年10問前後あるのに、すべて「所定の欄の範囲内で説明しなさい」で、解答欄の大きさが唯一の制限です
一方で、論述をまったく使わないルートもあります。成蹊のA方式は日本史12冊・世界史12冊ともに論述ゼロ。青学の全学部日程も全問マーク。法政でも経済・社会系の日程(冊子209・212)は3年連続でゼロでした。
軸3|正誤問題の「切り方」
- 立教の世界史…2023年度以降、ほぼすべての設問に「あてはまるものがない場合は、eをマークせよ」が付きます。4択に見えて実質5択で、消去法が効きません。中央の商学部にも「該当するものがない場合は(e)」、慶應の文学部の日本史にも「語群に該当がない場合は0」があります
- 中央の5学部共通選抜…「すべて選べ」という設問が多く、部分点が出ません
- 年代整序…成蹊の経済・経営の日本史は6択の整序が多く、2025年度の経済では約3分の1。早稲田の教育学部A方式の世界史も主力は年代整序で、東洋大学でも得点差は一問一答の知識量より年代整序の精度で生まれます
- 学習院の世界史の誤文訂正…「誤りの語句」と「正しい語句」を両方書かせる形式が毎冊必出で、16〜24点。どこが誤りかを特定して正しい語を書くので、共通テスト型の正誤演習では届きません
立教の仕掛けと日程ごとの性格は、立教大学の入試対策読本の記事に書いています。
軸4|史料・図版が出るか、出ないか
- 出ない側…学習院の日本史は、10冊を走査して地図・図版・写真・グラフを用いた設問が0件、史料引用も2件だけ。世界史も3年10冊で地図問題が0問。慶應の文学部の世界史も史料・地図・図版が3年とも一切なしです
- 出る側…法政の日本史は11冊中10冊で史料・和歌・系図・統計表が素材。立教は写真4択が多く、銅鐸、慶長小判、地券などが出ます。成蹊も日本史12冊すべてに史料。明治の法学部は初見史料が柱で、教科書レベルでは5〜6割止まりです
- 読ませて書かせる側…立教は2026年度2月8日に、1865年横浜港の貿易グラフ2枚を根拠に理由を45字で書かせました
学習院のように史料が出ない大学だけを受けるなら、史料集を読み込む時間は用語の書き取り精度に回すほうが合理的です(学習院大学の入試対策読本の記事)。
軸5|時代と地域の重心
いちばん極端なのが慶應の経済学部B方式です。「1500年以降が中心」という範囲限定があり、3年分の全小問を数えたところ、日本史は約122問のうち1500年以前が0問(0.0%)。原始古代・中世は言及レベルでも出ていません。世界史も72小問のうち3問(4.2%)です。
逆に、捨てられない範囲もあります。中央の商学部の日本史は大問Ⅲの5冊中4冊が現代史で、会計学科はドッジライン・石油危機・プラザ合意と戦後経済一色。ここだけで30点です。成蹊の世界史は戦後史が12冊すべてに出ています。
地域も同じです。学習院の世界史は50大問中5つがアフリカ史。立教の世界史もイスラーム・南アジア・東南アジア・アフリカ・ラテンアメリカが各大問に必ず混じります。一方、成蹊の世界史は57大問中22がヨーロッパで最多。「周縁地域は後回し」が通る大学と、通らない大学があります。
通史の進め方|1周目は「形式を無視して」速く
- 1周目(高2の冬〜高3の6月)…教科書を太字と本文だけで最後まで通す。形式は気にせず、戦後まで到達することだけを目標に。近現代は学校で駆け足になりがちですが、そこが法政・中央商・成蹊で大問になります
- 2周目(7〜9月)…5つの軸に合わせて重みを変える。書かせる大学なら書き取り、論述がある大学なら因果の整理、史料が出る大学なら資料集を併走させる
- 3周目(10月以降)…「全範囲を均等に」ではなく「過去問で出たところの周辺を厚く」に切り替えます
1周目に時間をかけすぎて近現代に届かないのが、いちばん多い失敗です。細かさは2周目以降で足せますが、到達できなかった時代は足しようがありません。
一問一答の使い方と、その限界
効く場面は、語句記述が多い試験です。法政の世界史(日程により6〜13問)、学習院の日本史、早稲田の商学部の世界史(語句記述13個)、青学の経済学部A方式。使い方は口で言うのではなく、紙に書くこと。「読めるが書けない」は音読では見つかりません。
逆に効かない場面が3つあります。
- 正誤の組合せが主力の試験…早稲田の読本では、5学部に共通して問われる力の第一に「教科書本文の正誤を一語単位で判定する精度」が挙がっています。問われているのは用語そのものではなく、文の主語・時期・因果のどこがすり替えられたかです
- テーマ史で通史を横断する試験…早稲田の文化構想学部の日本史は全4題がテーマ通史。立教の世界史は13冊すべてがテーマ史(感染症、宝石、郵便切手、幻獣など)。単元ごとに区切った知識では、大問の入口で迷います
- 初見史料を読ませる試験…明治の法学部の日本史で差がつくのはその場で読む力で、暗記では届きません
目安として、一問一答に使う時間は社会の勉強時間全体の3割まで。残りは教科書の読み直し、過去問の形式演習、資料の読解に回してください。
年表の作り方|年号ではなく「因果の順序」で
読本でくり返し出てきた原則は一つ。出来事を年号で覚えるより、「何が何を引き起こしたか」の順序で覚えるほうが効きます。
- 紙を横に使い、左端に世紀を書く。年号は分かるものだけでかまいません
- 一つのテーマを決めて、原始から現代まで縦に貫く。日本史なら土地制度、貨幣、対外関係、教育、交通。世界史なら交易、技術、移民、奴隷制、文字
- 出来事の間を矢印でつなぎ、上に「なぜ」を5〜10字で書く。この矢印が年代整序の答えになります
- 1テーマをA4用紙1枚に収める。収まらないなら、テーマが大きすぎます
テーマに迷うなら、志望校の過去問の大問タイトルをそのまま使ってください。青学の経済学部A方式の日本史は、教育制度史と女性史、科学技術史、災害外交、沖縄史、感染症史。立教の日本史の大問Ⅰも、交通と旅、文字と教育、土地制度、馬、人口と、すべてテーマ史でした。大学が出したテーマは、そのまま良質な年表の題材です。作る時期は9月から11月、10枚前後で十分です。
論述がある大学の準備|「短い型」から作る
論述は、いきなり300字から始めないでください。
- ステップ1(7〜8月)|60字で言い切る。教科書の太字の語を1つ選び、60字で説明する。法政で実際に出たのは、版籍奉還、『令義解』、建武の新政の地方統治、金閣と銀閣の建築的特色。突飛な知識ではなく、教科書の1語を自分の言葉で言い直せるかが問われています
- ステップ2(9〜10月)|150字で因果をつなぐ。明治の政治経済学部は大問Ⅰが初見史料+150字論述で3年とも固定。女性史・法制史・教育史のような通史テーマを、原因と結果でつないで150字にする練習を秋までに始めてください
- ステップ3(11月以降)|200〜350字と指定語句。指定語句のルールを本番どおりに守ります。学習院の文学部コアは「キーワードには下線を付しなさい」、早稲田の法学部は指定語句4つに下線、青学の史学科も世界史で初出に下線。下線を忘れるだけで減点される可能性があります
書く中身にも共通点があります。慶應の法学部の論述は、ブレトンウッズ体制、北宋の中央集権体制、オスマンの兵制。いずれも「制度の中身を自分の言葉で説明する」型で、出来事の羅列では点になりません。青学の史学科も「ひとつのテーマに沿って、体系立てて説明できるかどうか」と説明しています。
実務的な注意も一つ。慶應の経済学部B方式は字数指定がないので、実物大の解答欄を再現して練習してください。しかもこの解答用紙Bは、英語が一定点に達した受験生のみ採点されます。学部ごとの違いは早稲田大学の入試対策読本の記事もあわせて読んでください。
直前期の詰め方|「速度」と「教科書の最後の章」
1つめは、時間内に最後まで到達する訓練です。地歴は60分の試験が大半ですが、設問数は大学でまるで違います。
- 慶應の商学部A方式の日本史…約78〜80問(1問45秒)
- 学習院の経済学部系の世界史…マークだけで60問超(1問45秒以下)
- 学習院の日本史、慶應の文学部の世界史…50問(1問72秒)
- 法政…3大問でもマーク数は50前後で、1問1分強
この数字を知らずに過去問を解くと、「知識不足で点が伸びない」と誤診します。点数より先に、最後まで到達したか、飛ばした問題は何問か、マークミスはなかったかを記録してください。この3つが改善してから、分野の穴を埋めるのが正しい順序です。
2つめは、教科書の最後の章です。成蹊の日本史で確認できた「最も新しい出題」は、経済学部が2011年の福島第一原発事故時の内閣、法学部が1990年代の携帯電話普及。中央の商学部の経営学科では2010年代まで射程が伸びました。どこまで新しい出来事が出たかは、志望校ごとに確認してください。
3つめは、形式のリハーサルです。1月に伸びるのは知識量ではなく、処理の速さと取りこぼしの少なさです。
最後にもう一つ。地歴は科目間の有利不利を大学が調整しています。早稲田の法学部で公表された受験者平均点は、同じ40点満点で世界史26.664点(67%)、日本史22.019点(55%)と12ポイント開いています。これをならすのが成績標準化で、中央大学も学部により要項に「全科目偏差点を使用」とあります。意味があるのは、その科目の受験者の中で自分がどこにいるかです。
まず、1枚の表を作ってください
志望校・併願校を縦に並べ、横に5つの軸を置いた表を作る。それだけでやらなくていい勉強が見つかります。史料集を買うべきか、一問一答を何周するか、論述の添削を頼むべきか。すべて、志望校が決まってはじめて答えが出る質問です。
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※この記事の出題情報は、EIMEI予備校が自作している大学別入試対策読本(過去の問題冊子を通読して集計したもの)にもとづきます。分析対象の年度・冊数は大学ごとに異なります。出願にあたっては、必ず各大学の最新の募集要項でご確認ください。
