こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
面談でよく出るのが、この質問です。「学校で受ける模試のほかに、自分で申し込んだほうがいいですか」。逆もあります。「友だちが毎月受けていると聞いて、本数が少ないのか不安になった」。
この記事は、川越とその周辺の高校に通う高校生・既卒生と保護者の方で、どの模試をいくつ受けるかを決めたい人に向けて書きます。成績表の読み方や復習のやり方ではなく、受ける前の「選び方」と「本数」に絞ります。
まず、模試を受ける目的を3つに分ける
「模試は受けたほうがいいですか」に一言で答えられないのは、目的が1つではないからです。
- 今の位置を測る。同じ試験を受けた集団の中で自分がどのあたりにいるか、どの分野が弱いかを知る。
- 本番の形式に慣れる。制限時間内に最後まで到達する練習、マークの塗り方、記述の書き方、1日走る体力。
- 志望校の判定を見る。志望校欄に書いた大学に対して、今どのくらいの位置かの目安を得る。
3つは別の目的で、それぞれに向く模試が違います。①なら受験者数が多く分野別の内訳が細かく出るもの、②なら志望校と同じ形式のもの、③なら志望校欄があって判定が返るもの。1回の模試が3つ全部を満たすことは、あまりありません。
先に決めるのは、いま自分が3つのどれを必要としているかです。高2で②を経験していない人と、高3の秋で③だけが足りない人では、申し込むものが変わります。
模試の種類を、形式で分類する
会社名や個別の模試の名前ではなく、形式で分けると、何が分かって何が分からないかがはっきりします。5つです。
マーク式の模試
受験者数が多く、範囲も広い。分かることは、どの分野が抜けているか、時間内に最後まで到達できるか、大きな集団の中での位置。分野別の得点率が細かく出るので①に向きます。分からないことは、記述の答案が書けるかどうか。たまたま当たった問題も、点数の上では同じに見えます。
記述式の模試
分かることは、答案として成立しているか、記述のどこが飛んでいるか、和訳や英作文で減点される癖はどこか。採点されて返る答案は、独学では手に入りにくい情報です。分からないことは、返却に時間がかかるので受けた直後の「今の位置」には使いづらい点です。
大学別・大学群別の模試
特定の大学や大学群に合わせて作られたものです。分かることは、その形式で時間内に解けるか、どの大問で崩れるか。②に向きます。分からないことは、広い範囲での自分の位置。受験者が志望者だけに絞られるので数字は厳しく出ます。ここでの判定を、広い集団の模試の判定と同じ物差しで読まないでください。
共通テスト形式の模試
共通テスト利用入試を使う人、国公立を受ける人には②の練習としてほぼ必須です。分かることは科目ごとの時間配分と、1日に複数科目を続けて受ける体力。分からないことは私立の個別試験への対応で、ここで得点できても私立の長文や記述で同じようにはいきません。
学校単位で受けるもの
強みは、申し込みも会場も学校が手配してくれること、同じ高校の中での位置が分かること。校内順位は志望校を仮に置く材料になります。弱みは、形式と時期が学年全体に合わせて決まっているので、志望校の形式と合わないことがある点です。
母集団が違えば、同じ数字でも意味が違う
模試の数字は、その模試を受けた集団の中での位置です。受験者層の広い模試ほど数字は高めに出て、難関大志望者が多く集まる模試ほど低めに出ます。そして違う模試の数字を比べる公式の換算表はありません。見るべきなのは同じ模試での推移だけです。
判定も同じです。A〜Eの判定は、模試によって定義そのものが違います。ある模試ではC判定を「合格可能性50%」と定義し、別の模試では「40%以上60%未満」と定義しています。B判定も「65%」と「60%以上80%未満」で違う。定義が違うものを並べて「先月はBだったのに今月はC」と読むのは、比較になっていません。
これは本数の決め方に直結します。違う種類の模試を増やしても、比べられる数字は増えません。推移を見たいなら同じ模試を年に複数回受けるほうが情報になります。判定の扱い方は模試の偏差値が上がらないと今の立ち位置の測り方で扱っています。
受ける数の目安は「復習が終わる数」
原則は受ける模試は、復習が終わる数だけ。これが上限です。目安として、高3で年に6回から8回、うち学校で受けるものが半分なら自分で申し込むのは年に2回から4回。高2は年に2回から3回、高1は学校で受けるものだけで足ります。
多すぎると、次の2つが必ず起きます。
- 復習が終わらない。1回の復習に必要な時間は、私立3科目型でも合計2〜3時間。前の模試が終わらないまま次の問題冊子が来ると、どちらも中途半端に残ります。復習しない模試は、受けた時間と取れたはずの情報の両方を失っています。
- 演習の時間が削られる。模試は本番と同じ時間を使います。移動と受験で1日、復習で3時間なら1回で実質1日半。月2回なら月3日です。その3日は、志望校の過去問を1年分解いて採点し、落とした分野を埋める時間でした。
人は自分の作業時間を短く読みます。卒業論文の完成日数を学生に予測させた研究では、平均の予測33.9日に対し実際は55.5日かかり、予測どおりに終えられた人は29.7%でした。「受けてから復習の時間はなんとかする」は成立しません。申し込む前に復習の3時間をどこに置くか決めてください。置けないなら、その1本は受けない判断のほうが正しいです。手順は模試の復習の手順にまとめました。
学年別の受け方
高1
自分で申し込む必要はほぼありません。やるのは、学部の系統の一覧を読んで気になるものに印をつけること、オープンキャンパスに1回行くこと。合わせて年に3時間程度です。志望校の帯を仮に置く材料も、定期テストの校内順位と学校の進学実績で足ります。
高2
前半に、判定が出る模試を1回。ここが高2でいちばん重要な1本です。目的は③で、志望校欄に大学を書いてC判定が出ている大学がどの帯にあるかを確認する。半日で出発点の帯が決まります。合わせて文系・理系と受験科目を決め、学部系統を2つに絞ります。
後半は、模試を増やすより過去問を1年分。出発点の帯の大学の過去問を、解けそうな科目だけでよいので解き、「知らなかった」のか「知っていたが使えなかった」のかを区別します。模試を2本増やすより、この半日のほうが情報量が多いです。形式としては、マーク式を1回、記述式を1回を1年の中に置ければ十分です。
高3・既卒生
模試ごとにループを回す学年です。帯の過去問で受験科目の過半数が7割に届いたら一つ上の帯へ、届かなければとどまって落とした分野を埋める。本数は1年を4つに区切り、各区間に1〜2本と考えると決めやすいです。
- 春:位置の確認(①)。判定が出るマーク式を1回。出発点の帯を確定させます。
- 夏:形式の確認(②)。志望校が記述を課すなら記述式を1回。並行して、挑戦校の過去問を1年分。
- 秋:判定と形式の両方(②③)。共通テストを使うなら共通テスト形式を1回、志望校の大学別・大学群別の模試があれば1回。出願校を決める材料を集める時期です。
- 冬:増やしません。現在の帯を動かさず、過去問を古い年度から順に直近3年分。判定で志望校を動かすのは、原則ここで終わりです。
既卒生は形式の経験があるので、②に使う本数を減らし、共通テスト形式と志望校の形式に寄せた1〜2本に絞るほうが機能します。学年ごとの流れは学年別ロードマップ、志望校の決め方そのものは志望校の決め方にまとめています。
志望校の形式に近い模試を選ぶ
②の目的で受けるなら、これがいちばん大事な基準です。マーク式だけを受け続けていると、記述が出る大学には対応できません。
学部の系統によって求められる形が違います。工学系(機械・電気電子・情報・建築・化学・土木など)は記述式が多いのが標準で、数学で途中の式を書かせ、理科で導出を書かせます。マーク式だけで1年を過ごすと、本番で初めて「書き方が分からない」に当たります。文学・人文系は国語重視の方式が多い。医・歯・薬・獣医系や看護・医療技術系は面接や小論文が入ることが多いです。
手順は3つです。①志望校の募集要項から、受ける科目と解答形式を書き写す(1校5分。マークだけか、記述が入るか、記述はどの科目か)。②その形式に対応する模試が1年の予定に1回以上あるか確認する。③ないものだけ、自分で申し込む。あるものを重ねて増やしません。
逆の失敗もあります。志望校がマーク式中心なのに記述式の模試を何本も受けて数字に落ち込むパターンです。形式が合っていない模試の数字で、志望校を下げる判断をしないでください。
申し込みのタイミングと、日程の重なり
模試の申し込みは試験日よりかなり前に締め切られます。「受けようと思っていたら締切が過ぎていた」は毎年起きます。おすすめは、学年が変わった時点で1回だけ、1年分の日程を紙に書き出す作業です。書き出すのは3つ。
- 学校で受ける模試の日程(年間予定表から転記)
- 自分で申し込む候補の、試験日と申込締切
- 重なりを確認する相手:定期テストの1〜2週間前、文化祭・体育祭、部活の大会、宿泊行事、高3なら出願の締切と入試本番の日程
そのうえで、締切を「いつ・どこで・何を」の1文で決めます。「もし◯月◯日の朝になったら、登校前に申し込みページを開く」という形です。この形で計画を立てると目標の達成率が上がることは、94件の研究をまとめた分析で確かめられています。頭で覚えておくのではなく、1文にしてください。
特に見てほしいのは定期テストの直前2週間と、模試の翌週。翌週に復習の3時間が入らないなら、その日程は合っていません。受ける日だけ決めて復習の日を決めないのが、いちばんもったいない組み方です。
受けたあとにやること
- 当日から3日以内に、落とした設問を「知らなかった/知っていたが使えなかった/時間切れ/ミス」の4つに仕分ける。解説を読む前にやります。
- 返却後は30分だけ。「正答率が高いのに落とした問題」を優先し、「正答率が低く自分も落とした問題」は触らない。
- 記録は、次にやることを1行。教材とページと問題数まで書きます。
中身は模試の復習の手順と模試の使い方にまとめました。この3つが入らない日程なら、その模試は申し込まない。
模試を受けない選択が成立する場合と、しない場合
成立する場合
- 高1で、学校の模試だけを受けている。追加はいりません。
- 前回の模試の復習が終わっていない。次の1本を見送るほうが得です。
- その月に、志望校の過去問をまとまった量入れる計画がある。形式の合わない模試より情報が濃いことがあります。
成立しない場合
- 共通テストを使う予定なのに、共通テスト形式を一度も受けていない。時間配分は本番で初めて経験するものではありません。
- 志望校に記述が出るのに、記述式を一度も受けていない。採点された答案を見ないまま本番に行くことになります。
- 高3で、志望校を書いた判定を一度も見ていない。出発点の帯が決まらず、過去問をどの大学から始めるかも決まりません。
- 数字を見るのがつらくて避けている。これは受けない理由になりません。人は行動の変更を迫る情報や不安を生む情報を避ける傾向があることが分かっています。対処も仕組みで足ります。数字を見る日を、受ける日と別の日にする。返却されたら分野別の得点率だけ見て、判定の欄はその日は見ない。
今日からできること
学校の年間予定表を出して、今年度に学校で受ける模試を書き出し、5つの形式のどれかを横に書く。次に志望校の募集要項から解答形式を書き写し、埋まっていない形式だけを申し込む。30分で終わります。
本数が多いこと自体は有利になりません。3つの目的のどれを埋めたいのか、その形式が足りているのか、復習の時間が置けるのか。この3つで決めれば、受ける数は自然に落ち着きます。数字を見るのがつらい時期が続くときは、学校の先生や保護者の方にも今の状況を話してみてください。
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