社会の論述はこう書く|日本史・世界史・地理・政治経済の答案の作り方【川越の塾が字数帯別に解説】

「用語は覚えているのに、論述になると手が止まる」。日本史・世界史・地理・政治経済を選んだ受験生から毎年もっとも多く届く相談です。この記事は社会の論述が出る大学・学部を受ける高校生・既卒生と保護者の方に向けて、答案を何からどう書くかを手順にして説明します。

先に結論です。書けない原因は知識不足よりも、設問の要求を答案の形に変換する手順がないことのほうが多い。以下の数字は、EIMEI予備校が大学ごとに自作する入試対策読本のために、過去問冊子を年度別・大問別に読み込んで記録した実測値です。

まず「自分の受ける方式で論述が出るか」を確かめる

社会の論述は、出るか出ないかが制度としてはっきり分かれます。同じ大学でも学部で、同じ学部でも日程で分かれます。

毎年出る学部の実測値

  • 慶應義塾大学文学部(日本史)毎年2問、2024年度80字→2025・2026年度100字。法学部は2024年度0問→2025年度200字と280字→2026年度200字×2問。
  • 立教大学(日本史)13冊(5試験日)のほぼすべてで毎回1問、45〜70字。
  • 青山学院大学文学部史学科日本史は2025・2026年度に300字程度で指定語句4〜5語必須、世界史は3年とも350字以内で指定語句5〜7語すべて使用・初出に下線
  • 学習院大学文学部コア日本史は字数ではなく7行指定が3年連続、世界史は200字論述2題で30点・キーワードすべて使用と下線指定。
  • 中央大学法学部別選抜日本史は20〜70字×2問で配点12〜14点。世界史は10〜80字が5問(2024年度)→10〜50字が3問(2026年度)。
  • 明治大学政治経済学部(地理)4学部で最多の字数指定型。2024年度60字+80字→2026年度60字×4+40字×1へ増加。
  • 学習院大学(地理)全問記述で、「枠内で説明」型が各冊10問前後+字数指定論述50〜200字が毎年(分析8冊のため慎重に)。法政大学は字数指定5/11冊、「枠内で字数不問」型が8/11冊で最多。
  • 早稲田大学法学部(政治経済)毎年必出。2024年度200字+30字、2025年度100字×2、2026年度200字。
  • 早稲田大学法学部(世界史)250〜300字で指定語句4つに下線必須明治大学政治経済学部(日本史)は150字が3年固定とされています(参考程度)。

出ない方式もはっきりあります

  • 法政大学の日本史は日程で決まります。冊子207・208・216は6冊中6冊で論述あり(1問、2026年度は60字に統一)、冊子209・212は5冊中5冊で3年連続ゼロ。世界史は10冊すべてで論述ゼロで、原資料は「日本史は論述、世界史は語句記述という役割分担」と明記。政治経済もA方式8冊すべてが全問マークシートです。
  • 学習院大学で日本史・世界史の論述があるのは文学部コアだけ。他の3コアにはなく、政治経済は10冊すべてゼロ。立教大学の政治経済も4年間1問もありません。
  • 青山学院大学は全学部日程・経済A方式とも日本史・世界史の論述がなく、政治経済も文章記述が4年間ゼロ。東洋大学は4科目とも全問マークシートで論述は存在しないとされています(参考程度)。
  • 立教大学の地理は2023〜2025年度に論述3〜4問がありましたが、2026年度は0問になりました。

線引きは明確です。志望方式に論述がないなら、論述の答案練習は要りません。その時間は語句記述の精度や統計の読み取りに回すほうが得点に直結します。ただし条件が二つ。併願先に論述があるなら必要ですし、有無は年度で動きます。慶應義塾大学法学部の日本史は2025年度に論述が新設され、同大学文学部の世界史は2025年度から40字以内×2題が導入されました。3年分を見てください。

論述は字数帯で3つに分ける

字数帯によって入れるものと捨てるものが変わります。同じ書き方で全部に対応しようとするから、60字で書ききれず300字で埋まらない、という両方が起きます。

〜60字:一文で言い切る

明治大学文学部の日本史20字以内、慶應義塾大学商学部A方式の世界史15〜40字、学習院大学の地理50字などです。

入れるのは主語・動作・結果の3つだけ。骨格は「AがBしたため、Cになった」で足ります。20字なら用語の言い換えに一言、40字で因果を一つ、60字で因果+限定条件一つ。捨てるのは背景・経緯・具体例・年号・評価。この帯では余計なことを書かない技術がそのまま得点です。

60〜150字:要素2〜3個を因果でつなぐ

慶應義塾大学文学部の日本史80字・100字、明治大学商学部の地理100字以内などです。

入れるのは原因1つ・結果1つ・限定1つ(時期か地域か主体)。2〜3文、1文40字前後が目安です。捨てるのは原因の並列。原因を3つ書くとどれも説明不足になります。設問にもっとも近い原因を1つ選び、残りは書かない。これがこの帯の判断です。

150字以上:段落を設計してから書く

慶應義塾大学法学部の日本史200字・280字、青山学院大学文学部史学科の300〜350字、学習院大学の地理200字などです。

この帯は書き始める前に配分を決めます。前提・展開・帰結の3ブロックで、200字なら60字/80字/60字、300字なら80字/140字/80字。入れるのは時期の区切り・動いた主体の名前・結果としての具体的な変化。捨てるのは設問が聞いていない時代や地域と、教科書の丸写しです。

学習院大学文学部コアのような行数指定は、解答欄から1行の文字数を数え、字数に換算してから設計します。7行なら1行25字として175字前後。慶應義塾大学経済学部B方式の日本史は毎年10問前後で字数指定が一切なく、解答欄の物理的サイズが実質の字数を決めます。

設問のことばで答えの骨格が決まる

  • 説明せよ…中身を、知らない人に伝わる形で。定義→具体の順。評価は不要です。
  • 論じよ…結論を最初の一文に置き、あとに根拠。結論を最後に回すと字数が尽きて消えます。
  • 比較せよ…軸を先に決め、「AはX、BはY」を軸ごとに対応させる。軸1つで60字、2つで120字が目安。
  • 背景を述べよ…時間をさかのぼる方向。設問の出来事よりだけを書く。結果を書くと字数を失います。
  • 影響を述べよ…時間を進める方向。設問の出来事よりの変化だけ。主語を立てて書きます。
  • 意義・役割…「それ以前は〜だったが」の一句を入れると、評価語に答えた形になります。

設問を読んだ直後に、動詞だけに丸をつける習慣をつけてください。

答案の作り方を5手順に固定する

  1. 設問の要求を1文に言い換える(30秒〜1分)何を・どの方向で・いくつ書くのかを紙に。
  2. 時代・地域・分野の範囲を確定する(30秒〜1分)いつからいつまで、どこ、政治か経済か文化か。範囲外は書かないと決めます。
  3. 入れる要素を箇条書きにする(60字級1分、150字級2〜3分、300字級4〜5分)文章ではなく単語で、多めに出します。
  4. 順番を決める(30秒〜1分)箇条書きに番号を振る。時期順か因果順か軸順か。
  5. 字数に合わせて削り、書く(60字級2〜3分、150字級5分、300字級8〜10分)入らない要素に×をつけてから書きます。

合計の目安は60字級5分、150字級10分、300字級15分。演習では①〜⑤を必ず紙に残してください。答案だけでは、どこでずれたかが分かりません。

指定語句があるときの使い方

指定語句は制約ではなく骨組みの提供です。実測では、青山学院大学文学部史学科の世界史が350字以内で5〜7語すべて使用・初出に下線、学習院大学文学部コアの世界史が200字×2でキーワードすべて使用・下線指定です。

  1. 指定語句を余白に横一列に書き出す。
  2. 時期順(または因果の順)に並べ替える。この並びがそのまま骨組みです。
  3. 隣り合う2語の間を「だから」「その結果」「一方で」のどれでつなぐか決める。
  4. つながらない語が出たら、範囲の取り方が違うサイン。手順②に戻ります。
  5. 書き終えたら語句を1つずつ指で押さえ、使用漏れと下線漏れを確認。

大事なのは、指定語句を使っただけでは点にならないことです。採点されるのは語句と語句の「間」の説明です。4語ならつなぎ目は3か所。300字なら1か所に80〜100字を配分する計算になります。

科目別の注意点

日本史:論述の設計を決めているのが学部か日程か

「学部で決まる」のが慶應義塾大学(商学部A方式は2024年度0問→30字×1→25字×1)、「日程で決まる」のが法政大学、「毎回1問固定」が立教大学、「文学部だけ」が学習院大学です。大学名ではなく冊子コード・方式名まで一致させて確認してください。史料とセットにもなりやすく、早稲田大学商学部は大問1〜4の4題(67%)が史料で、近世・近代の外交史料が3年連続で初見だとされています。

世界史:指定語句型と地域横断型が多い

長文論述は指定語句を伴う形が目立ちます。加えて一つの地域の中だけで因果をつなぐ練習では足りません。早稲田大学法学部の論述は3年とも「近現代の非ヨーロッパ地域と欧米支配」というテーマ系統とされ、立教大学は地域配分がほぼ毎回全地域横断で、イスラーム・アフリカ・ラテンアメリカが各大問に混じります。

地理:論述は図表・統計の読み取りとセットになる

地理の論述は、知識を思い出して書くのではなく資料から読み取った事実に理由をつける形になりやすいです。明治大学は地理を選べる4学部・全年度で統計表・グラフの読み取りが最重量と分析され、学習院大学は8冊すべてで統計表を使用、白地図・略地図が8冊中7冊です(分析8冊のため慎重に)。つまり骨格は「資料からこう読める」+「理由は自然条件/立地/政策」の2段構えです。立教大学は地形図読図が大問Ⅲとして4年連続必出で配点約3分の1。逆に慶應義塾大学商学部A方式前期は3年間で地図・統計表・グラフが1枚も掲載されません。

政治経済:出るときは「制度の説明」になりやすい

論述は少数派で、出るのは早稲田大学法学部(毎年必出)、明治大学情報コミュニケーション学部(唯一の常設、30〜90字)、中央大学法学部別選抜(2024年度30字、2025年度0問、2026年度20字+60字)です。そして内容は制度の説明に寄ります。中央大学は「憲法・統治機構と判例」が6方式15冊すべてで必出と分析され、商学部経営型の2024年度Ⅰでは判例に関する設問だけで13問。制度は「誰の権限か」「いつ、どこがどう変わったか」を短く言える形にしておけば、そのまま論述に転用できます。なお計算問題と論述は独立した軸です。早稲田大学は法学部が論述毎年必出で計算の言及がなく、商学部は需給式などの計算が毎年ある一方で論述は3年ともありません。時事も素材になり、法政大学は「試験直前まで」、学習院大学は「試験の8〜9か月前まで」と明記されています。

覚え方を論述向きに変える

書けない人の暗記は「用語→意味」の1対1になっています。これを用語1つに4項目へ組み替えてください。①原因(その前に何があったか)②結果(何がどう変わったか)③時期(いつ・どこで)④関係(対になるものとの違い)。この4項目を用語カードの裏や余白に1行ずつ書き、用語を見て40字で言い切れるかを試します。言い切れないなら、どれかが空欄です。年表も出来事の列ではなく、原因から結果へ矢印を引いた形に書き直します。暗記自体が定着しない段階の方は、社会の暗記が定着しないときを先に読んでください。

自分の答案を採点する4項目

  1. 設問のことばに答えているか。「背景」で影響を書いていないか、「比較」で片方しか書いていないか。
  2. 範囲がずれていないか。時代・地域・分野・主体。1つずれると内容が正しくても減点されます。
  3. 用語の羅列で終わっていないか。用語と用語の間に、つなぎの言葉と説明の一句があるか。
  4. 条件を満たしているか。字数の8割以上か、指定語句の使用漏れ・下線漏れがないか、行数指定なら行内に収まっているか。

もう一つ。「自分の答案にない要素」と「模範解答にない要素」の両方に印をつけます。前者は知識か手順③の不足、後者は字数を食っただけの部分です。

よくある失敗5つ

  1. 時代・地域がずれる。手順②を省かないこと。
  2. 用語の羅列で終わる。正しい用語が5つ並ぶだけの答案は「関係が書かれていない」答案です。
  3. 設問に答えていない。知っていることを全部書く形。手順①で防げます。
  4. 字数が余る/足りない。8割未満は要素不足のサイン。超えるときは要素を1つ捨ててから書き直します。
  5. 指定語句を使っただけ。つなぎ目に配分する字数を先に計算します。

練習の回し方

  • 週2本から。1本は新しい設問、1本は前の答案の書き直し。書き直しは翌日以降にすると、自分の答案を他人の目で見られます。
  • 字数帯で本数を変える。60字級は週3〜4本、300字級は週2本が上限です。
  • 年度は古い順に。直近3年分は仕上げ期まで残します。過去問が足りないときは、字数帯と動詞が近い他大学の設問で代用できます。
  • 最初の4〜6本は時間を測らない。手順①〜⑤を紙に残すことだけを目標にします。
  • 3か月で20本前後。本数を増やすより、同じ20本を2回書くほうが伸びます。
  • 添削してもらう相手を先に決める。論述は1人で完結させにくい形式です。学校の先生でも塾でも、決めてから始めてください。

あわせて読みたい

EIMEI予備校について

EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。

  • 川越校舎(2026年6月開校)川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分。自習室は朝7時から使えます。
  • ふじみ野校舎 ふじみ野駅東口から徒歩1分。
  • 鶴瀬校舎 鶴瀬駅西口から徒歩3分。

川越校舎の詳細・無料体験のお申し込みはこちら/ふじみ野・鶴瀬校舎のことは公式LINEからお問い合わせください。

📩 二神大輝 の更新をメールで受け取る
新しい記事が公開されたらお知らせします(いつでも解除OK) ・ 読者 2
この記事が役に立ったら、いいね!

この記事を書いた人

二神大輝