「学校の課題と予習と小テストで一日が終わってしまい、受験勉強の時間が取れません」。面談で毎年いちばん多く出る相談です。この記事は、川越・ふじみ野・鶴瀬周辺の高校に通っていて、学校の課題・予習・定期テストに追われている高校生と、その保護者の方に向けて書いています。部活で時間がない場合の時間の作り方は部活と大学受験の両立で扱っているので、ここでは学校から出される課題・予習・定期テストだけに絞ります。
まず、「課題に追われている状態」を4つに分ける
同じ「課題が終わらない」でも、原因が違えば打つ手が変わります。ほとんどの場合、次の4つのどれか(または組み合わせ)です。
- 量が多い:出される課題の量そのものが多い。
- やり方が非効率:1問・1ページにかけている時間が長い。
- 入試に関係ない部分に時間をかけている:清書、色分け、まとめノートの装飾。
- 提出を落とせない事情がある:評定を確保したい、年内入試を考えている。
見分け方は一つです。1週間、課題に使った時間だけを記録してください。教科名と開始・終了の時刻だけでいいです。学業課題を対象にした心理学の実験では、学生が「5.8日で終わる」と予測した課題に実際は10.7日かかり、予測どおりに終えられた人は37.1%でした。記録すると「英語の予習に週160分」「数学の問題集に週200分」のような数字が出て、上の①なのか③なのかを判断できます。記録のしかたは受験期の自己管理の記事で詳しく書いています。
学校の課題を3つに仕分ける
記録が取れたら、課題を次の3つに分けます。全部を同じ熱量でやろうとするから足りなくなるので、最初にやるのは「減らす」ではなく「分ける」です。
A:入試に直結するもの
判断基準は2つです。
- 志望校の入試科目に入っている教科か。入っていなければ、その教科の課題はどれだけ丁寧にやっても入試の点数には変わりません(評定のためには必要な場合があります=B)。
- 手を動かす作業の中身が、入試で問われる作業と同じか。英文を日本語に訳す作業は、和訳問題を出す大学なら直結します。出題がすべて選択式なら、直結するのは「意味が取れているか」の部分だけで、日本語として整えて書き写す部分は点になりません。
B:評定のために必要なもの
判断基準は「成績に入るかどうか」で、推測せずに確認できます。年度初めに配られる各教科の評価方法の資料に、テストと提出物の比率が書かれています。手元になければ教科担当の先生に聞けば分かります。「提出物が評価に入る」と明記されている課題は、入試と無関係でも期限を守る対象です。
評定平均が年内入試(総合型・学校推薦型)でどう効くかは評定平均と年内入試の記事にまとめました。ここでは「評定を使う可能性が少しでもあるなら、提出物は落とさない」という一点だけ押さえてください。
C:どちらでもないもの
答えを写して提出するだけの問題集、すでに自力で解ける問題の繰り返し、清書、表紙づくり、色分け、提出しないまとめノートの装飾です。
Cは「やらない」と決めるのが難しいので、時間の上限だけ決めて機械的に切ります。「まとめノートは1単元15分まで。15分たったら途中でも閉じる」。毎回判断しないのがコツです。
教科書と入試のあいだにある差を、数字で見る
「学校の課題をきちんとやれば入試は大丈夫ですか」と聞かれます。答えは通っている高校が使っている教科書によって変わります。これは感覚の話ではありません。
教科書のレベル区分
在籍生への聞き取りをまとめた高校別 英語の教科書レベル一覧では、英語コミュニケーションの教科書をこう区分しています。
- 発展レベル:ELEMENT(県立川越高校・川越女子高校・川越東高校)、CROWN(星野高校)
- 標準レベル:LANDMARK(浦和北高校)、Heartening(山村学園高校・坂戸高校)、BLUE MARBLE(山村学園高校)、New Rays(川越南高校・和光国際高校)
- 基礎レベル:Power On(松山女子高校)、CREATIVE(川越南高校)
- 特殊:American English File(和光国際高校)。海外向けの英語教材です。
入試英語の語彙は、テーマごとに散らばっている
EIMEIでは大学ごとに入試対策読本を自作しています。その作成のため、全国約190大学の入試英語(2007〜2026年度)から415題・約86万語のコーパスを作り、テーマ別に語の出現頻度を集計しました。分かったのは、入試英文が特定のテーマに束になって集まることです。
- 歴史・文化・人類学系:125題(最多)/心理・脳科学系:104題
- 物語・エッセイ系:101題/医療・健康系:86題
各テーマの中では、決まった語が繰り返し出ます。医療・健康系では disease が44回、drug が34回。生物・生態系では plant が57回、tree が46回。科学一般では glass が50回、robot が43回です。
この集計をもとに語彙を整理すると、12テーマ+共通語彙で各テーマ約30語、合計約440項目になりました。これが「テーマごとに束で必要になる語」の実測値です。
だから、課題との付き合い方が高校によって変わる
教科書は1年間で扱う英文の本数が決まっていて、12テーマすべてを頻出語ごと網羅する作りにはなっていません。約440項目のテーマ語彙は、学校の教材だけでは埋まりません。この前提のうえで、やり方が分かれます。
- 発展レベル(ELEMENT・CROWN):教科書の英文そのものが抽象度と文の長さの面で入試に近く、予習・音読・訳の作業を組み替えればそのまま入試の読解訓練に変えられます。ただし1文が長く予習に時間を取られやすいので、時間の上限を決めることが必須です。
- 標準レベル(LANDMARK・Heartening・BLUE MARBLE・New Rays):単語と文法は教科書と課題で回せます。足りないのはテーマ語彙と英文の長さなので、長文を読む枠を課題とは別に週2〜3回つくります。
- 基礎レベル(Power On・CREATIVE):教科書の英文と入試英文の距離が大きく、課題を丁寧にやっても距離は縮みません。課題は最短で終わらせ、入試用の枠を必ず別に確保するのが基本方針です。
- American English File:日本の入試の設問形式とは作りが違うので、入試形式の演習は別立てで必要です。
発展レベルの生徒は課題を変換する方向、基礎レベルの生徒は課題を圧縮して別枠を作る方向です。
1週間の時間の組み方|数字で決める
平日に自由に使える時間は、帰宅後でおおむね2〜3時間というケースが多いです。まずは自分の実測値を出してください。
平日の枠
- 課題に使う上限:合計90分。教科ごとに配ります(例:英語の予習20分、数学30分、古文15分、残り25分をその日の提出物に)。
- 受験勉強に残す最低ライン:30分。この30分は課題より先に取ります。「課題が終わったらやる」にすると、0分の日が続きます。
- 余裕がある日は受験勉強を60分まで伸ばします。伸ばすのは課題側ではなく受験勉強側です。
土日の枠と、週の合計
- どちらか半日を「課題をまとめて片づける枠」にする(上限3時間)。平日の積み残しはここで回収します。
- もう一方の日は受験勉強を2〜3時間。長文読解や過去問のように、まとまった時間が必要な作業を置きます。
- 受験勉強の週合計は、最低ラインが週6時間30分、目標が週10〜11時間になります。
最低ラインを切った週が2週続いたら、課題の仕分けか次の章の変換を見直すサインです。
枠を決めても着手できないときは、「夕食が終わったら、単語をテーマ1つ分見る」のように、時刻を引き金にした1文にしておきます。94件の研究をまとめた分析で、この形で計画を立てた人のほうが着手の失敗が少ない(d=0.61)と確認されている方法です。
崩れた週の戻し方
計画どおりに進まない週は必ず出ます。見積もりより時間がかかるのは通常の状態で、戻し方には順番があります。
- 遅れた分を翌日に上乗せしない。上乗せするとその日の枠も崩れ、遅れが広がります。
- 睡眠時間を削って埋めるのは選択肢から外す。
- 次の1日から、決めた型に戻るだけにする。先週の未消化は、Cに分類できるものから捨てます。
- 週に1回、10分ふりかえる。見るのは3つ。①課題に実際何分使ったか ②受験勉強が0分だった日は何日あったか ③来週やめる作業を1つ決める。
学校の課題を、受験勉強に変える
課題の時間と受験勉強の時間を足し算で増やすのではなく、同じ作業の中身を入れ替えます。教科ごとに1つずつ書きます。
英語の予習|訳す前に、段落の見出しを1行つける
本文を訳す前に、段落ごとに「何の話か」を日本語で一言メモします。「1段落=実験の紹介」「2段落=予想と違った結果」「3段落=筆者の解釈」のような形です。増える時間は1レッスンで3〜5分です。
これが入試の要旨把握・段落整序・内容一致の練習になります。さらに、知らなかった語をテーマごとの1ページに書き足していくと、前章の「テーマ語彙」が予習の副産物として貯まります。ノートに「環境」「医療」「心理」「歴史・文化」の見出しを作り、そこへ足すだけです。定期テスト側の詰め方は高校英語の定期テスト対策に書いています。
数学の問題集|解いた問題に3段階の印をつける
丸つけのときに、問題番号の横へ印をつけます。
- 1:何も見ずに自力で合った
- 2:解説を読んだら分かった
- 3:解説を読んでも分からない
そして、翌週に解き直すのは2の問題だけ、1回だけです。1は触りません。3は印をつけたまま質問用にためます。全問をやり直す時間はないという前提に立てば、この振り分け自体が受験勉強で、提出用の1周がそのまま弱点リストに変わります。
古文の予習|全訳を書かず、2つだけ書き込む
全訳を書くと時間がかかるうえ、入試で問われる力とずれます。書き込むのは2つだけです。
- 本文に主語を書き入れる(「誰がしたのか」を人物名で)。
- 助動詞に線を引き、意味を1語だけ添える(「推量」「過去」「打消」など)。
入試の古文の設問は、主語の取り違えと助動詞の意味を突いてくるものが中心です。この2つに絞ると、予習時間は短くなり、入試で問われる部分だけが残ります。
提出物が間に合わないときの優先順位
その場の気分で切ると、いちばん切ってはいけないものを切ってしまうので、順番を先に決めておきます。
- 成績に「提出物」が明記されているもの。内容が入試と無関係でも最優先で出します。
- 期限を過ぎても受け取ってもらえるもの。落とすのではなく順番を後ろに回します。
- 入試に直結する内容のもの。締切が緩いなら自分のペースで残します。
- AでもBでもないもの(C)。ここを削ります。
先生に相談するときの伝え方
自分の判断だけで課題を切ると、評価で不利になることがあります。切る前に一度、教科担当の先生に伝えてください。伝え方は3つをセットにします。
- 事実:「英語の予習に週160分かかっていて、この課題に手が回っていません。今はここまで終わっています」。時間の記録があると具体的に言えます。
- 意図:「志望校の入試で◯◯が必要なので、そこに時間を使いたいです」。
- 提案:「提出を◯日まで延ばしていただけますか」「問題を◯番までに絞って提出してもよいですか」。
大事なのは、やらない理由を並べるのではなく、代案を出すことです。そして、やっていないものを「やりました」と言わないこと。この相談は、保護者の方が代わりにするよりも本人が言葉にしたほうが通りやすいので、何をどう言えばよいか分からないときは、面談で一緒に文面を作ります。課題や学校のことで気持ちのつらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の相談窓口に話してください。
高1・高2と高3で、違うところ
高1・高2|課題は基本的にやる。削るのはCだけ
この時期は、課題を大きく削る判断はしません。評定は高1の成績からすでに数に入っていて、年内入試を使う可能性を残すなら落とす理由がないからです。課題の中身も基礎の反復で、入試の土台と重なることが多いです。
削るのはCだけ。そして受験勉強の枠は「英単語」と「英文法」に限定して、毎日15〜30分。範囲を広げず、この2つだけを続けます。テーマ別の単語ノートを作り始めるのは、この学年がいちばん効きます。
高3|判断の軸が「志望校の入試科目かどうか」に変わる
- 入試科目に入っていない教科の課題:提出物として成立する最短の形で終わらせます。ここに時間をかける段階ではありません。
- 入試科目に入っている教科の課題:前章の変換をかけて、入試演習として使います。
- 評定は高3の1学期で締まります。一般選抜に絞ると決めた場合、それ以降は評定を目的とした課題の扱いを見直す余地が出ます。逆に、それまでは落とさないほうが選択肢が残ります。
秋以降は平日の課題の上限を60分に下げ、その分を過去問に回します。
まとめ
- 1週間、課題にかかった時間を記録する。
- 課題をA・B・Cに分け、Cに時間の上限をつける。
- 平日の課題の上限を90分、受験勉強の最低ラインを30分と決め、受験勉強を先に取る。
- 英語の予習・数学の問題集・古文の予習に、この記事の変換をかける。
「課題が多いから受験勉強ができない」という状態は、気合ではなく仕分けと上限で動かせます。自分の高校の教科書と志望校の出題を突き合わせるところは一人でやると迷うので、そこは一緒にやりましょう。
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