【川越の高校生へ】日本史はどの単元から固めるか|政治史と近世・近代を先に、文化史と論述は志望校で決まる

こんにちは、EIMEI予備校の二神です。

この記事は、川越・本川越の周辺の高校に通っていて、一般選抜で日本史を使う高2・高3生と、その保護者の方に向けて書いています。扱うテーマは一つだけ、「日本史のどの単元・どの時代から先に固めるか」です。

勉強のやり方そのもの(通史の回し方、一問一答の使い方、直前期の詰め方)は、別記事の日本史・世界史の勉強法にまとめています。この記事はその一歩手前、限られた時間をどの単元に配るかという「配分」の話に絞ります。

先に結論|優先順位は4段階に分かれます

EIMEI予備校では、早稲田・明治・青山学院・立教・中央・法政・慶應義塾・学習院・東洋の9大学の過去問冊子を1冊ずつ読み込み、日本史の出題を単元別・時代別に集計しています。優先順位の形に直すと、こうなります。

  1. 政治史…志望校が決まっていなくても先に固めてよい、ほぼ唯一の単元です
  2. 近世と近代(江戸〜1945年)…時代の軸。ここを落とす大学がほとんどありません
  3. 社会経済史…近世・近代とセットで効く単元。農業・流通・貨幣・産業・労働が中心です
  4. 文化史・外交史・現代(戦後)・論述志望校が決まるまで優先順位を決められません。大学・学部・日程で扱いが正反対になります

つまり1〜3は志望校が固まる前から進めてよく、4は志望校が決まった日に優先順位を引き直すということです。以下、理由を数字で説明します。

なお、大学ごとに分析した冊数も大問の数え方も違うため、大学をまたいで数字を比べることはできません。「同じ大学の中で単元同士を比べる」「同じ単元で大学ごとの出る・出ないを見る」という読み方をしてください。

第1位|政治史は、どの大学でも太い軸になります

政治史は、朝廷・幕府の政治体制、法制度、政党政治、占領期の政治改革など、権力機構そのものを扱う分野です。9大学を横断すると、分母が明記されている大学の多くで最上位に来ます。

  • 慶應義塾大学…文学部は15大問中7で分野別最多。法学部も12大問中7で分野別最多。経済学部B方式も10大問中6です
  • 学習院大学…3年×10冊=50大問の集計で、政治が約半数を占め分野別最多です
  • 早稲田大学…法学部・教育学部・文化構想学部がいずれも政治3/3
  • 明治大学…政治経済学部・法学部が政治3/3
  • 東洋大学…「政治・外交」が最頻出分野(定性的な記載のため参考程度)

青山学院・立教・中央・法政の4大学は、政治史だけを取り出した分母つきの数字が手元データにありません。ただし「政治史が薄い」と書かれた大学は1校もないというのが、9大学を並べたときの実感です。

ただし、同じ「政治史が多い」でも中身は違います。学習院大学は近代(幕末〜1945)が約12大問で最多、しかも人物一代記型(山県有朋・乃木希典・石橋湛山・牧野伸顕)が頻出と記録されており、「内閣と法令の暗記」だけでは届きません。慶應義塾大学商学部A方式は政治が9大問中1にとどまりますが、これは出ないのではなく、独立大問ではなく複合大問に溶け込んでいるためです。学部ごとの設計差は慶應義塾大学の入試対策読本の記事学習院大学の入試対策読本の記事に書いています。

第2位|時代は「近世と近代」から。原始はあと回しでかまいません

日本史は単元だけでなく、時代でも大学差が出ます。しかもその差は単元以上に大きい。9大学を時代別に並べると、はっきりした濃淡があります。

ほぼ全大学で出る=近世・近代

  • 法政大学…11冊中11冊に近世が含まれ、近代も11冊中11冊。時代配分は「古代または中世→近世→近代」という縦の通史型です
  • 学習院大学…50大問の集計で近代が約12(最多)、近世(江戸)が約11で続きます
  • 慶應義塾大学…法学部は近代が12大問中5で最多。経済学部B方式は近代が10大問すべてに登場し、近世も10大問中6です
  • 青山学院大学…全学部日程は、Ⅱが中世後期〜近世、Ⅲが近代・現代という配置が毎年続きます
  • 東洋大学…幕藩体制・鎖国・元禄文化の近世パート、明治初期の外交・自由民権運動・条約改正・戦争を扱う近代パートが、各日程で確実に大問1つ分(参考程度)

後回しにしやすい=原始

法政大学は「原始(旧石器・縄文)はほぼ出ない」と記録されています。東洋大学も、原始・縄文〜弥生の遺跡名や土器の細かい知識は複数日程で似た問題が繰り返されるため、優先度を下げてよい範囲と整理しています。教科書の1ページ目から丁寧に暗記し始めて力尽きるのが、いちばんもったいない進め方です。

大学で正反対になる=原始古代・中世・現代

ここが日本史のいちばん怖いところです。

  • 慶應義塾大学経済学部B方式…出題範囲が実質1500年以降のみ。3年分・全10大問のうち原始古代と中世は0大問、マーク小問でも0/67、記述論述小問でも0/約55。約122問中、1500年以前を問うものが一問もありません
  • 学習院大学…同じ「近代重視」でも設計が違い、中世は約4大問と手薄な一方、原始古代は約9大問とむしろ厚い。中世は少ないぶん、出ると重い(北畠親房、東山文化・唐物)
  • 明治大学経営学部…原始古代・中世はほぼ出ず、近現代に完全集中。一方、農学部は原始古代を含めて3/3の均等配分です
  • 現代(戦後)…慶應義塾大学経済学部B方式は10大問中8と主役級ですが、同じ慶應でも法学部は12大問中3。学習院大学は約3大問で最少、法政大学も「薄い」と記録されています。逆に東洋大学は戦後〜1970年代の比重が高く、青山学院大学経済学部A方式は4年とも戦後に到達しています

同じ「近代が大事」という言葉でも、何を捨ててよいかは大学ごとに違います。慶應義塾大学経済学部B方式のように1500年以前をまるごと除外する設計と、学習院大学のように中世を含みつつ近代に重心を置く設計は、別の科目だと思ったほうが安全です。

第3位|社会経済史は、近世・近代とセットで伸びます

社会経済史は、農業・流通・貨幣・産業・労働・移民など、暮らしと経済の実態を扱う分野です。近世・近代を固める作業と重なるので、時代の軸と一緒に進めると効率がよくなります。

  • 慶應義塾大学経済学部B方式…経済社会が10大問すべてに登場。文学部も15大問中5です
  • 早稲田大学商学部…経済社会3/3が突出し、大問5が近代経済、大問6が現代経済で3年間固定です
  • 明治大学商学部…経済社会3/3
  • 中央大学経済学部2/14方式全編が経済史・統計読解。銀の流通、通貨・金融史、労働・農村・移民史が扱われます。同じ経済学部でも2/15方式は政治・外交・文化中心で、経済特化ではありません
  • 中央大学商学部…会計学科・経営学科とも戦後経済史(ドッジライン・石油危機・プラザ合意・バブル)が毎年大問Ⅲに固定です
  • 法政大学…先に固めるべき分野を「近世+近代」とし、近世は経済社会(農業・流通・貨幣・産業)が中心と整理しています

同じ大学・同じ学部でも日程で性格が変わるのが中央大学経済学部の例です。併願日程を決めるときは、学部名ではなく方式・日程まで見てください。

第4位|文化史と外交史は「志望校が決まるまで決められない」

「文化史は後回し」という言い方を聞きますが、この一般論は成立しません。大問まるごと1題を文化史に使う大学があるからです。

文化史が重い側

  • 立教大学…大問Ⅰが必ずテーマ史(東アジア交流と仏教、大阪の地域史、交通と旅、動物と日本史など)で、その多くが文化史寄り。大問Ⅱも半数が文化史寄りです。13冊(5試験日)を通じて骨格が変わらず、文化史を後回しにする戦略は立教では成立しません
  • 学習院大学…文化史が大問まるごと1題として出ます(2025年度法学部プラスⅣ=茶の湯・唐物、2026年度経済学部コアⅢ=風呂と入浴、2024年度法学部コアⅠ=建築物)。分野順位も政治に次ぐ2位です
  • 青山学院大学…文学部史学科は2026年度Ⅱが丸ごと文化史。経済学部A方式も2025年度Ⅰが丸ごと文化史、2024年度はⅡ・Ⅲの両方が文化史です
  • 中央大学…商学部会計学科の2024年度Ⅰが仏教史で40点、商学部経営学科の2026年度Ⅰが学問・教育史で40点の独立大問です
  • 早稲田大学文学部…Ⅵが美術文化史で固定です(参考程度)

文化史が軽い側

  • 早稲田大学商学部…単独大問なし。小問レベルで全体の1〜1.5割(参考程度)
  • 慶應義塾大学経済学部B方式…文化は10大問中3で、4分野の中で最少です

立教大学を受けるのに文化史を最後に回すと、大問Ⅰの入口でつまずきます。逆に慶應義塾大学経済学部B方式だけなら、同じ時間をかける必要はありません。「文化史をやるか」ではなく「自分の受ける大学で文化史が大問になるか」で決めてください立教大学の入試対策読本の記事)。

外交史は「史料を読む力」とセットで出ます

外交史は、対外関係・条約・戦争・国際秩序への参加を扱う分野です。特徴は、初見史料の読解と結びついて出ることが多い点です。

  • 早稲田大学商学部…大問1〜4の4題(全体の67%)が史料問題で、近世・近代の史料は3年連続で初見(参考程度)
  • 慶應義塾大学…法学部は外交5(12大問中)、経済学部B方式は6(10大問中)、商学部A方式は3(9大問中で分野別最多)
  • 明治大学…法学部・情報コミュニケーション学部がともに外交3/3。ただし中身は正反対で、法学部は大問Ⅰが近現代の史料3点・全問記述(漢字指定)で初見率が高く、情報コミュニケーション学部の史料は毎年1〜2問ですべて教科書掲載史料の識別です(参考程度)
  • 学習院大学…外交は相対的に低頻度。そもそも10冊すべてを走査して、地図・図版・写真・グラフを使った設問が0件、史料引用も2件だけという大学です

つまり、外交史に時間を使うかどうかは「志望校が史料を読ませるか」で決まります。学習院大学しか受けないなら史料集の時間は用語の精度に回せますし、早稲田大学商学部や明治大学法学部を受けるなら、初見の文章を現代語に置き換えて「誰が・いつ・どの立場で書いたか」を推定する練習が早い段階から要ります。

論述は「やるかどうか」ではなく「志望校に課されるか」

単元よりもさらに大学差が大きいのが論述です。制度設計がそのまま出題に出ます。型は4つに分かれます。

  • 日程で決まる型(法政大学)…冊子207・208・216は6冊中6冊で論述あり(2026年度は60字に統一)、冊子209・212は5冊中5冊で3年連続ゼロ。法政大学の入試対策読本の記事のとおり、日本史は論述、世界史は語句記述という役割分担になっています
  • 学部で決まる型(慶應義塾大学)…文学部は毎年2問(80字→100字に増量)、法学部は2024年度0問から2025年度に200字・280字で新設、商学部A方式は2024年度0問→2025年度30字→2026年度25字、経済学部B方式は毎年10問前後で字数指定が一切なく、解答欄の大きさが唯一の制限です
  • 毎回1問が固定される型(立教大学)…13冊のほぼすべてで45〜70字の論述が1問(例外は2026年2/8の2問のみ)
  • 特定の学部だけにある型(学習院大学)…論述があるのは文学部コアだけで、字数ではなく7行指定。法学部コア・国際社会科学部コア・経済学部コアにはありません

他の大学も並べておきます。青山学院大学文学部史学科は2023年度350字以内、2025・2026年度は300字程度で指定語句4〜5語が必須。中央大学で論述があるのは法学部別選抜だけ(20〜70字×2問、配点12〜14点)。明治大学政治経済学部は大問Ⅰが初見史料+150字論述で3年固定。早稲田大学商学部は30字以内×1問(大問6)が3年連続、教育学部は2024年度なし→2025年度60字×1→2026年度50字×2と増加傾向です。東洋大学は全問マークシートで論述はありません。

論述は、字数で準備の中身が変わります。25〜70字なら因果を一文で言い切る練習、150〜300字なら出来事を時系列で並べて論点を立てる練習。字数指定がない慶應義塾大学経済学部B方式では、解答欄のサイズから逆算して要点を絞る練習が要ります。なお同学部では英語で足切りを通らないと日本史の論述が採点されません。慶應義塾大学法学部も地歴単独で足切りがかかる設計です。

川越の高校生に、実際どう配分してもらっているか

ここまでを、時期の話に直します。

  1. 志望校が決まっていない段階…政治史を軸に、近世・近代を先に通します。社会経済史(農業・流通・貨幣・産業・労働)はこの段階で一緒に入れて構いません。原始は深追いしません
  2. 志望校が1〜2校に見えてきた段階…その大学で文化史が独立大問になるか、史料が出るか、現代(戦後)がどこまで問われるかの3点を過去問で確認し、優先順位を引き直します
  3. 受験する方式・日程が確定した段階…論述の有無と字数を確認し、その字数に合わせた答案練習を始めます。法政大学のように日程で、慶應義塾大学のように学部で決まる大学があるので、大学名だけでは判断できません

作るものは1枚の表で十分です。志望校・併願校を縦に並べ、横に「政治史/社会経済史/文化史/外交史・史料/時代の重心/論述の字数」の6項目を置く。埋まらない欄が、まだ調べていない情報です。この表ができた時点で、やらなくていい勉強がかなり減ります。

手を動かす順番(通史を何周するか、一問一答をどう使うか、直前期に何を優先するか)は日本史・世界史の勉強法に書きました。この記事で「どこを」を決め、あちらで「どうやって」を決めるという使い分けをしてください。

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