こんにちは、EIMEI予備校で英語科を担当している二神です。
この記事は、私立大学を第一志望・併願に考えている高校2年生と3年生、そして保護者の方に向けて書いています。単語も文法もやったのに長文で点が伸びない、という人に、「志望校が好んで出す話の中身」を先に知っておくと読解が変わるということを、大学別の具体例で見てもらう記事です。
EIMEIでは大学別の入試対策読本とは別に、私大グループ別の傾向分析と予想テーマという冊子を自作しています。早慶上理・GMARCH・成成明学獨國武・日東駒専の20大学について、2020〜2026年度の入試英語から長文パッセージ約860本を抜き出し、学部ごとにテーマを分類したものです。この記事は、その分析から書いています。
なぜ「テーマ」を先に知ると得なのか
同じ英文でも、内容を知っている人と知らない人では読む速度がまるで違います。知らない話は単語を全部拾ってからようやく全体像が立ち上がる。知っている話なら、最初の段落で「この話か」と当たりがつきます。
読本の分析で分かったのは、この「当たりのつけやすさ」が大学ごとにかなり偏っていることです。素材の出どころも扱う話題も、大学・学部ごとに個性があります。読本でも、早稲田の学術評論と日大の教養記事は別の競技だ、と書きました。
つまり「私大対策」という括りでテーマを準備しても効率が悪い。志望校の顔に合わせて入れる知識を選ぶほうが、同じ時間でも効きます。
グループ総論|4つのゾーンで、読ませているものが違います
早慶上理|「大学教養課程の読書リスト」を先取りする試験
読本ではこのグループの英語を大学の教養課程の読書リストを先取りする試験と呼んでいます。素材はThe New YorkerやNYTの長編評論、学術書、経済学・人類学・科学哲学の一般向け著作が中心で、GMARCH以下で主流の「ニュース記事のリライト」より一段抽象度が高い。ピケティ、サンデル、ドーキンス、サピア=ウォーフ仮説が注なしで出てきます。
もうひとつの特徴が「論争の構図」を読ませる出題です。早稲田大学教育学部のエルギン・マーブルズ(文化財返還論争)、慶應義塾大学経済学部のフードバンク擁護と批判は、その象徴だと読本では位置づけています。
GMARCH|「時事教養」の主戦場
BBC・Guardian・AP・NYTなどの報道記事や一般向けノンフィクションを、標準的な難度にリライトしたものが主流です。読本ではこれを「質の高い新聞の日曜版」と呼んでいます。柱は3本。現代社会の時事(オーバーツーリズム、少子化、外国人労働者、AIと仕事)、心理学の面白い研究、文化史の逸話です。
頻出テーマの知識がそのまま得点に変わりやすいゾーンで、日本語で先に教養を入れておく戦略が最も効きます。
成成明学獨國武|標準長文×安定フォーマット
標準難度の長文2本前後に、語彙文法と会話文の小問群という構成が基本。素材はGMARCHと同じ英米メディア系ですが、リライトはより平易で、1文の長さも抑えめです。その分、合否は難問への対応力ではなく取りこぼしのなさで決まります。大学ごとのフォーマットが年度を超えて安定しているので、過去問演習の費用対効果も高いゾーンです。
日東駒専|速さと基礎、そして「意外な個性」
語彙・文法の独立小問が全体の3〜5割を占め、長文は平易〜標準の時事・教養記事。全問マークが基本です。合否を分けるのは難問対応力ではなく、基礎の運用速度です。
ただし「どこも同じ」ではありません。読本の分析では日大は伝記と教養百科、東洋は文化史、駒澤は図表読解、専修は心理学と個性が分かれました。素材への既視感づくりが、そのまま時間短縮になります。
大学ごとの「顔」|読本の分析から
早稲田は、学部ごとに別の雑誌を読んでいる
81本を学部別に並べると、素材の「購読誌」が学部ごとに違うのが見えます。文・文化構想は人文評論一色で、宗教復興と世俗化、徳川期の大衆文化、心霊主義の流行史。法はコードスイッチング、ハンセン病隔離政策と補償という言語・人権・社会史もの。商はフィンテック、AI音楽と著作権とビジネス×テックの時事。社会科学部は手話・昆虫と気候変動、人間科学部は健康・環境系の短い科学記事を多数、基幹理工は食料安全保障・垂直農法と、理系でありながら社会とつながる素材です。
慶應は「現代社会の診断書」
2026年度の9学部24本を通覧すると、身近な現象を社会科学の言葉で分析し直すという共通の姿勢があります。多忙感の正体(医)、スマホと読解力の新しい格差(商)、子どもの遊びの減少と民主主義(法)、サブカルチャーとアイデンティティ(総合政策)。理系学部も例外ではなく、理工は嗅覚の俗説検証、環境情報は培養肉と気候データ心理学です。
上智は「英米一流メディアの今月号」
NYT、The Economist、HBR、The Atlantic、The New Yorker、Psyche。試験前年の記事がほぼそのまま出るのが上智です。経済経営はHBR系のビジネス実務と日本経済分析(日銀利上げ、伝統工芸の後継)、外国語は移民・多様性の社会派記事に加え、映画・ドラマの脚本を長文素材にする独特の路線です。
青山学院は「その話、本当?」を検証する大学
読本の分析で最も癖が鮮明だったのが青山学院大学です。広く信じられている話の真偽を検証する素材が異常に多い。ミードの大腿骨の逸話は本当か、ハッピーバースデーの作者は誰か、大相撲の八百長を統計で検証。つまりクリティカルシンキングの素材化です。これに経営学部の消費者神経科学、経済学部の人口論・貧困統計が加わります。
法政は「英語で読む日本社会」の定点観測
法政大学の最大の特徴は、日本社会を扱う英文の多さです。空き家問題、ライドシェア解禁、外国人労働者、富士山のオーバーツーリズム(住民意識調査)。海外メディアが日本を報じる視点の英文が毎年のように登場します。1回の試験で3〜4本読ませるため、テーマの網羅性がそのまま得点力になります。
そのほかの大学の「顔」
- 東京理科…科学そのものより科学と社会の接点。AIバイアス、セルフレジの監視カメラとプライバシー、山火事消火。問われるのは科学リテラシーです。
- 学習院…科学の面白い研究紹介(カケスに手品を見せる実験、退屈の神経科学)と文化・社会もの(ピザの歴史、フィンランドの幸福)を毎回1本ずつ組み合わせるバランス型。
- 明治…46本の分析で10学部10色。政経はジェンダー賃金格差など社会派論説、法は権利と社会の硬派もの、文はことば・文化・物語、農は環境一直線。学部の看板がそのまま出題テーマになっています。
- 立教…独自問題が出るのは文学部日程だけ。素材は心理学(畏敬の念、傍観者効果、時間感覚)と文化史(ファッション概念史、検疫の歴史)の二本柱が驚くほど安定しています。
- 中央…素材は三層。制度と社会(社会保障、自動運転のAI規制)、仕事とビジネス(リーダーシップ、経営分析)、教養雑学(公平な分配の数学、チップの起源)です。
- 成蹊…私大中堅で最も文学が出ます。19本中5本が文学・物語系で、英国小説の抜粋から『博士の愛した数式』の英訳まで。物語文は説明文と別の技術なので専用の練習が要ります。
- 成城…31本中7本が暮らしと消費の社会史。残り物の価値観史、ビジネスカジュアルの成立、入浴習慣の変遷。
- 明治学院…多様性・共生・持続可能性という価値の軸が明確。消滅危機言語、「もったいない」とワンガリ・マータイ。対話文形式で論点を展開するのも特徴です。
- 獨協…分析できたのが2022年度・外国語学部の4本のみなので参考値ですが、生活・実用寄りの平易な英文と教養ものの組み合わせでした。最新の過去問で確認してください。
- 國學院…人の物語が多い大学。12本中4本がエッセイ・伝記系で、説明文でも匂いを再現するOdeuropaプロジェクトなど「人物と感覚」に寄っています。
- 武蔵…核は文化遺産×テクノロジー。ポンペイ遺跡のAI修復、焼失したブラジル国立博物館のデジタル復元。加えて実用文書(案内・旅程・Eメール)が毎年必ず出ます。
- 日本…40本を並べると百科事典の項目のよう。灯台の歴史、無声映画の弁士、鯨油から石油へ。抽象的な議論はほぼありません。
- 東洋…32本中11本が歴史・文化系で、グループ内で最も文化史寄り。塩の世界史、日本のプリン受容史、浮世絵の影響。近年は通説の見直しものも増加中です。
- 駒澤…51本中十数本に図表・データ読解が入ります。幸福度ランキング、食品ロスの国別データ、住みやすい都市の順位。GMS学部はSNSの偽情報などメディア×社会が濃い。
- 専修…偏りが数字に出ています。42本中12本が心理学。アッシュの同調実験、集合知、後悔の心理、乳児の道徳性実験。2024年にはChatGPT関連が一気に3本出ました。
読本ではこう予想しています|2027年度・横断の最重要テーマ10
以下は読本が20大学の分析から「どの大学を受けるにせよ当たり得る」順に挙げた予想です。過去の出題パターンと入試英語のトレンドからの推定で、的中を保証するものではありません。
- 生成AIと仕事・教育・倫理…2025〜26年度に全グループで急増。増加が止まる理由がない、というのが読本の見立てです。
- スマートフォン・注意・若者のメンタルヘルス…早慶から日東駒専まで全域で出題中の最普遍テーマ。
- 心理学の有名研究・実験もの…研究紹介型の読解は、すべての私大の共通言語。
- 気候変動の「対策と副作用」…現象の説明から対策の是非へ、論点が一段進みました。
- 食の世界史と食の未来…培養肉・食品ロスまで含め、過去と未来の両面で出る万能素材。
- ジェンダー・格差・多様性…賃金格差、選択的夫婦別姓、DEIの揺り戻し。社会科学系学部の主戦場。
- 日本社会もの…少子高齢化・空き家・観光・外国人労働者。法政・明治・上智で顕著。
- ことばの変化と規範…単数they、新語、消滅危機言語。文系学部の安定枠。
- 文化財・文化遺産もの…大英博物館論争と、遺産×テクノロジー。
- 健康の科学…睡眠・長寿・公衆衛生。医療系に限らず全学部型で出ます。
読本ではこのほかに、大学ごとの予想も5つずつ立てています。たとえば青学は「誤情報とファクトチェック」、法政は「人口減少ニッポン」、武蔵は「文化遺産×テクノロジー」、成蹊は「物語文・小説の抜粋」が本命です。いずれも、その大学がこれまで出してきた路線の延長線上にあります。
大事なのは、予想は的中がゴールではないという点です。読本の言い方を借りれば、この10テーマを日本語で理解しておけば、的中しなかった英文にも「知の隣町」から入っていける。それがテーマ準備の本当の価値です。
ここから逆算する|背景知識の入れ方、5つの手順
「テーマを知っておけ」と言われても、何をどれだけやればいいか分かりません。EIMEIで生徒に指示している手順を書きます。
手順1 志望学部を1つに絞り、過去問3年分のテーマを一覧にする
いきなり知識を入れ始めないでください。まず志望学部の過去問3年分を開き、長文1本につき1行、テーマ名だけを書き出します。「AIと著作権」「ピザの歴史」程度で十分です。3年分なら多くても20行前後、30分で終わります。
ここで同じジャンルが2回以上出ていたら、それがその学部の看板です。専修の心理学、東洋の文化史、成城の生活文化史にあたるものが、自分の志望学部にもあります。
手順2 「素材の出どころ」に合わせて入れ方を変える
グループによって必要な知識の深さが違います。ここを間違えると効きません。
- 早慶上理志望…事実より論争の構図を入れます。1テーマにつき「賛成側の根拠」「反対側の根拠」を各1文で言えることが目標。賛否が並置される形式に直結します。
- GMARCH志望…時事・心理学の有名研究・文化史の3ジャンルを広く。1テーマ100〜150字で日本語要約できれば合格ラインです。
- 成成明学獨國武志望…大学の看板ジャンルに絞ります。成蹊なら物語文、武蔵なら文化遺産、明治学院なら共生社会。広げるより、看板を外さないこと。
- 日東駒専志望…既視感づくりが目的。深い理解は不要で、「この話、聞いたことがある」という状態を広く薄く作ります。
手順3 1テーマ15分、週3テーマのペースで日本語から入れる
英語で背景知識を入れると時間がかかりすぎます。知識は日本語で、英語は演習でと分けてください。目安は1テーマ15分、週3テーマ。これで3か月で約36テーマ。横断10テーマ+志望学部の看板ジャンルなら十分です。
手順4 チェックは「100字で説明できるか」だけ
入れたつもりで入っていない状態を防ぐため、基準を1つ決めます。そのテーマを何も見ずに100字で説明できるか。できなければ、まだ入っていません。賛否のあるテーマなら両方の立場を1文ずつ言えるかも確認します。
手順5 テーマごとに英語のキーワードを10語だけ添える
日本語で分かっていても、英単語が出てこなければ本番で使えません。1テーマにつきキーワードを10語。気候変動なら排出・緩和・適応・再生可能といった語です。100語の単語帳を1冊増やすより、10語×10テーマのほうが読解には効きます。
自分の学校の教科書がどの水準かも一度確認しておくと、足りないものが具体的になります。高校別の英語教科書一覧にまとめてあります。
読本に書いていないことは、この記事にも書いていません
前提の確認です。分析できた年度と入試方式は大学によって異なります。早稲田は81本、慶應は2026年度の9学部24本、駒澤は51本ですが、獨協は2022年度の4本のみです。本数が少ない大学の傾向は、必ず最新の過去問で確かめてください。
予想テーマも推定です。山を当てることではなく、その大学が好む知のジャンルを事前に頭に入れておくことが目的だと考えてください。入試制度・日程・配点は毎年変わります。出願前には大学の最新の入学者選抜要項を必ずご確認ください。
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