探究テーマの決め方と、総合的な探究の時間を総合型選抜の出願書類に生かす方法

この記事は、学校の「総合的な探究の時間」でテーマを決めかねている高1・高2生と、その探究を総合型選抜や学校推薦型選抜の出願書類に生かしたいと考えている人に向けて書いています。テーマの決め方の手順と、探究を志望理由書・活動報告書・面接にどうつなげるかを、公式の要項で確認できる入試の例とあわせて説明します。

今年出願する高3生にも、面接や提出書類で探究のことを聞かれたときの整理のしかたとして読んでもらえる内容です。

総合的な探究の時間は、どういう授業か

総合的な探究の時間は、2018年(平成30年)告示の高等学校学習指導要領で「総合的な学習の時間」から名前と中身が変わった授業です。標準単位数は3〜6単位で(2単位まで減らすことができる)、すべての高校生が履修します。

学習指導要領の目標には、「実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする」とあります。さらに、指導の配慮として「課題の設定においては、生徒が自分で課題を発見する過程を重視すること」とも書かれています。

つまり、この授業で求められているのは、先生から与えられた課題をこなすことではなく、自分で問いを立てて調べ、結果をまとめて発表するまでやりきることです。これは、総合型選抜で大学が見ようとしている力とかなり重なっています。

調査書にも探究の欄がある

大学に提出する調査書には、「総合的な探究の時間」の欄があり、行った学習活動と、各学校が定めた評価の観点、評価が書かれます(文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」の調査書記入上の注意事項)。探究は、自分で書類に書かなくても、高校から大学に伝わる情報の一つです。調査書全体の見られ方は欠席日数・部活なしは不利?調査書で見られるところで詳しく書いています。

探究そのものを評価する入試もある

総合型選抜の中には、探究活動の中身を直接評価する方式があります。2027年度入試の公式の要項で確認できた例を紹介します。

日本大学 経済学部 総合型選抜〈探究学習評価型〉

出願要件に「高等学校等において『総合的な探究の時間』で探究活動に取り組んでいる者」とあります。提出書類は、志望・学習計画書(800字以上1,000字以内)、探究活動概要説明書、探究活動の成果物の写しなどです。第一次選考では成果物の制作プロセスが評価され、第二次選考では探究活動の内容や成果物についての口頭試問が行われます。2027年度は、出願が2026年9月、第二次選考が10月18日に行われ、第二次の合格発表は11月2日(この記事の公開時点の当日)とされています。

津田塾大学 学芸学部英語英文学科 総合型選抜(探究型)

探究活動報告書(概要1,200字以内)を提出します。要項では、序論(問いの提示)、本論(調査内容)、結論(問いへの答え)の構成で書くよう指定され、参考文献リストは字数に含めず2ページ目以降に書くとされています。第2次選考は、探究活動についてのプレゼンテーション(10分)と質疑応答(10分程度)です。2027年度は10月31日に第2次選考が行われ、合格発表は11月6日の予定です。

獨協大学 外国語学部 Q(課題探究)入試

ドイツ語学科とフランス語学科で行われる総合型選抜で、学科ごとに出された課題について、日本語で3,000字程度の事前課題を出願時に提出します。参照した文献やWebサイトのリストを付け、情報の出所を脚注で示すことが求められます。2次選考は提出課題のプレゼンテーションと質疑応答で、合計30分程度です。

文部科学省の実施要項でも、総合型選抜や学校推薦型選抜では「志願者本人が記載する資料に関するプレゼンテーションなどにより積極的に活用する」と書かれています。探究専用の方式を受けない人でも、探究で取り組んだことは、志望理由書、活動報告書、面接のどこかで材料になります。

探究テーマの決め方:5つの手順

「テーマが決まらない」という相談はとても多いのですが、たいていは最初から立派なテーマを探そうとしていることが原因です。次の順に進めると、無理なく決まります。

手順1 気になったことを2週間メモする

授業、ニュース、家の手伝い、アルバイト、通学の電車の中など、「なぜだろう」「おかしいな」と思ったことを、スマートフォンのメモに1日1つ書き出します。2週間で10〜15個たまれば十分です。この段階では、勉強っぽいかどうかは気にしません。

手順2 メモを「問い」の形に直す

「駅前の自転車が多い」というメモなら、「駅前の放置自転車はなぜ減らないのか」「駐輪場の料金は利用に影響しているのか」のように、疑問文にして、答えを調べられる形にします。問いの形にできないものは、まだテーマになりません。

手順3 高校生が調べられる大きさに絞る

「日本の少子化を解決するには」のような大きすぎる問いは、本やネットの情報をまとめるだけで終わりがちです。「自分の市の子育て支援の利用者は、どんな理由で制度を選んでいるのか」のように、場所、対象、期間を絞ると、アンケートや聞き取りなど自分で集めたデータを使えるようになります。取材の進め方は高校生が取材・インタビューをする手順を参考にしてください。

手順4 志望する学部の学問とつながるか確かめる

出願書類に生かすことを考えるなら、テーマが志望分野の学問とどうつながるかを確かめます。同じ放置自転車のテーマでも、経済学部なら料金と行動の関係、法学部なら条例と撤去のルール、社会学部なら住民の意識、工学部なら駐輪場の設計という切り口になります。志望学部がまだ決まっていない人は、テーマを決めながら学部を考えても構いません。

手順5 すでにわかっていることを調べる

テーマが決まったら、そのことについてすでに何が調べられているかを、本、新書、自治体や官公庁の統計、大学の研究紹介ページなどで確認します。先行する情報を知ったうえで「まだわかっていない部分」「自分の地域ではどうか」を問いにすると、探究の意味がはっきりします。

テーマの良し悪しを判断する基準

決めたテーマが探究としてやっていけるかどうかは、次の4つで確かめられます。

確認すること 判断の目安
自分で答えを出せるか 調べる方法(アンケート、聞き取り、観察、統計)が一つ以上思い浮かぶ
答えが一つに決まっていないか 検索すれば正解がすぐに出る問いではない
期間内に終わるか 半年〜1年で、調べて、まとめと発表まで終えられる
自分が続けられるか 調べていくうちに飽きない程度の関心がある

全部に当てはまらなくても、問いを少し変えれば直せることが多いので、先生と相談しながら調整してください。探究と課外活動の選び方は探究・ボランティアの選び方でも書いています。

探究を進めながら残しておく記録

出願書類を書く段階になって困るのは、「何をしたか」は覚えていても、「なぜそうしたか」「何がうまくいかなかったか」を忘れていることです。探究ノートやファイルに、少なくとも次のことを日付つきで残しておきます。

  • 問いを立てたきっかけと、途中で問いを変えたならその理由
  • 調べた方法と、その方法を選んだ理由
  • 集めたデータや聞き取りの内容(相手の名前を出してよいかも記録)
  • 予想と違った結果と、そこから考えたこと
  • 発表や校内コンテストでもらった質問・意見

日本大学経済学部の探究学習評価型で「制作プロセス」が評価されるように、大学は結果だけでなく途中の考え方や試行錯誤を見ています。記録があれば、面接で「なぜその方法にしたのですか」と聞かれても、具体的に答えられます。

出願書類と面接への生かし方

志望理由書:探究で生まれた「次の問い」を書く

志望理由書では、探究の内容を長々と説明するより、探究で何がわかり、何がまだわからなかったか、それを大学で学びたいという流れにすると、志望理由と探究が自然につながります。書き方の基本は志望理由書の書き方にまとめています。

活動報告書:役割と工夫を具体的に

学校の探究がグループで行われている場合は、グループ全体の成果ではなく、自分が担当したこと、自分が出した工夫を書きます。数字(アンケートの回答数、聞き取りをした人数、発表の回数など)を入れると伝わりやすくなります。書き方は活動報告書の書き方を参考にしてください。

面接・プレゼン:質問される前提で準備する

探究について話すと、「なぜその問いにしたのか」「サンプルは十分か」「ほかの解釈はないか」と深掘りされることが多いはずです。弱点を自分から説明できるようにしておくと、むしろ評価されやすくなります。

学年別の進め方:今は11月、高1・高2は冬が始めどき

高1生(今〜3月)

学校の探究がまだ本格的に始まっていなくても、冬休みから気になったことのメモを始めておくと、高2でテーマを決めるときに迷いません。興味のある学部の公開講座や大学のWebサイトの研究紹介を読むのもこの時期にできることです。

高2生(今〜高3の春)

学校の探究でテーマが決まっている人は、冬から春にかけて調査を進め、高3の春までに一度まとめるのが目安です。総合型選抜の出願は、文部科学省の実施要項で9月1日以降とされており、8月から9月には書類を仕上げることになります。その前に「調べた・まとめた・発表した」という形にしておくと、書類にも面接にも使えます。テーマがしっくりこない人は、今のうちに問いを絞り直してください。

高3生

11月の今は、多くの総合型選抜の書類提出は終わっていますが、学校推薦型選抜の面接はこれからという人もいます。提出した書類に書いた探究について、問い、方法、結果、残った疑問の4つを1分で話せるように整理しておくと、面接で落ち着いて答えられます。

参考にした公式情報

入試の内容は変更されることがあります。出願前に必ず大学の公式発表を確認してください。

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二神大輝