こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、川越とその周辺の高校に通う高校生・浪人生で、地理を受験科目にしている人に向けて書いています。テーマは単元の優先順位ではなく、統計表・地形図・グラフという「資料の読み方」そのものです。
地理は用語を覚えただけでは点になりにくい科目です。設問の多くが表や地図を前に置いて「この数字はどの国か」を聞いてきます。しかも資料の比重は大学ごとにまったく違います。
先にお断り|数字は分母つき、大学をまたいだ比較はできません
以下の「9/11冊」「3/3」といった数字は、EIMEIが大学ごとに自作している入試対策読本の制作過程で、問題冊子と募集要項から作った分析データの記載をそのまま使ったものです。対象年度はおおむね2022〜2026年度。分析冊数も大問の数え方も大学ごとに違うため、読み方は同じ大学の中で比べるか、同じ技能で大学ごとの「出る・出ない」を個別に見るかに限ってください。なお東洋は短い要約にとどまるため参考程度、学習院も8冊と少なく慎重な扱いが必要です。
前提|地理は使える大学がそもそも限られます
分析対象とした大学のうち、地理を入試科目として確認できたのは一部にとどまり、すべて学部・方式を限定した上での話です。早稲田は教育学部A方式のみ、明治は商・政治経済・文・農学部食料環境政策の4学部、立教は全学部共通入試ですが地理選択者は2月8日の1回のみ、法政はA方式の複数の学部群、慶應義塾は商学部A方式前期のみ、学習院は法・経済・文の各コア3方式のみ、東洋は文学部の複数方式です。
一方青山学院は全学部日程の地理歴史・公民の選択科目が「世界史探究」「日本史探究」「政治・経済」の3科目のみで、「地理総合、地理探究」が含まれません(2026年度入学者選抜要項)。中央も、確認できた選抜方式の選択科目に地理という科目名が登場しません。単元ごとの優先順位は地理の頻出単元と大学別対策にまとめています。
資料の比重は、同じ「地理」でここまで違う
- 明治(4学部共通)|統計表・グラフの読み取りが「全学部・全年度で最重量」と明記。商学部は貿易統計表、政治経済学部は都県別統計グラフ、文学部は三角グラフ・人口ピラミッド・散布図、農学部食料環境政策学科は農業・食料・土地利用の統計表が中心です。
- 学習院|8冊すべてで統計表を使用。白地図・略地図が8冊中7冊、雨温図3回、人口ピラミッド2回。経済学部コア(60分・120点)は統計表の量が突出し、2026年度は表が25箇所以上です。
- 法政|11冊のうち統計表9冊(82%)、グラフ8冊(73%)、2万5千分の1地形図・地形断面図5冊(45%)。
- 立教|2025年度の1回分だけで、雨温図・農産物分布図・生産量指数の折れ線・都市人口率グラフ・散布図・人口ピラミッド・地形図・空中写真が使われています。
- 早稲田(教育学部A方式)|大問1〜2つ分で年度差が大きく、2025年度が最重(人種構成表・GDP構成表・雇用者数表・散布図)、2026年度は円グラフ1点のみ。
- 慶應義塾(商学部A方式前期)|2024〜2026年度の全24ページで、地図・統計表・グラフ・写真・雨温図が1枚も掲載されていません。統計は文章中の数値として問われ、原資料は「統計集を読む力」ではなく「統計の順位・概数を覚えている力」が要求されると評価します。
- 東洋|表の出現頻度が最も高く、ほぼ全大問に1〜2点とされています(参考程度)。
つまり明治・学習院・法政・立教なら資料を読む演習が対策の中心、慶應義塾商学部A方式前期なら読む練習より数値・順位の記憶が優先という正反対の結論になります。
統計表・統計地図の読み方|5つの手順に固定する
- 何の数字かを確認する。表題と行・列の見出しを先に読みます。生産量か輸出額か、総量か1人あたりか。ここを取り違えると以降が全部ずれます。
- 単位と年を確認する。千トンか万トンか、%か指数か、何年の数字か。学習院は新聞記事・ニュース素材が2024〜2026年度の全年度で使われ、2026年度は2025年6〜7月配信のニュースが素材でした。東洋も統計の年次が直近化しているとされ、「年」は手がかりそのものです。
- 極端な値を先に見る。最大・最小・ゼロに近い値・急に折れている値だけ拾います。
- 項目の順位で国・地域を特定する。「上位3つの並び順」で候補を絞ります。慶應義塾商学部A方式前期の地誌が語群から国名・都市名を選ばせる形中心で、深い地誌知識より世界地図上の位置と主要産業・資源の対応づけが問われると評価されているのは、この力です。
- 選択肢と照合する。自分で答えを作ってから選択肢を見ます。表と選択肢を往復すると、もっともらしい記述に引っぱられます。
統計地図(分布図・階級区分図)も同じで、凡例を先に読み、「濃い場所」と「白い場所」だけを拾います。
地形図の読み方|出る大学と、5つの手順
- 立教(全学部共通)|大問Ⅲとして2023〜2026年度の4年連続必出、配点は約3分の1。白馬村・熊本・上富良野・徳島と毎年日本各地の図が使われ、新旧地形図の比較・空中写真・現地写真を組み合わせる形が定着しています。地理選択者は2月8日の1回勝負で、原資料は「地形図を落とした時点で挽回不能」と明記します。
- 明治|文学部は大問Ⅰに3年連続必出で、傾斜計算・離水年代計算まで問われ4学部中もっとも重量級。農学部食料環境政策学科も大問Ⅳに3年連続必出で、地図記号・距離・面積計算が定番。一方商学部は3年とも出題なし、政治経済学部は2026年度に姿を消しました。
- 法政|11冊中5冊(45%)で登場。法学部系(208・216)と文学部地理学科向けのT日程(2026年度は冊子から地理が消滅)は読図が中核、経済学部系(209・212)は読図ゼロです。
- 学習院|8冊中1冊のみ。ただしその1回(2024年度経済学部コアⅡ)は地形図と陰影起伏図の判読で24点という配点でした。
- 慶應義塾(商学部A方式前期)|読図・等高線・地形断面図が3年間出題ゼロで、後回しでよい分野と明記されています。
- 縮尺を確認する。2万5千分の1なら地図上1cmが250m。距離・面積の設問の出発点です。
- 等高線の間隔を読む。詰まっていれば急斜面、開いていれば緩斜面。傾斜の計算(標高差÷水平距離)はその上に乗ります。
- 地図記号を拾う。記号そのものは覚える対象で、ここで迷う時間はそのまま失点になります。
- 土地利用を面でとらえる。水田・畑・果樹園・林地・住宅地が、どの標高・どの地形の上に載っているかを見ます。扇状地・低地・台地と土地利用の対応が設問の核です。
- 新旧を比較する。新旧が並んでいたら「消えたもの」と「増えたもの」を先に挙げる。水田が住宅地に変わった、旧河道が残っている、といった変化そのものが問われます。
グラフ・雨温図の読み方
雨温図は、気温の最高月・最低月が年のどこに来るか(南半球かどうか)、年較差の大きさ(内陸か海洋か)、降水の季節配分(夏か冬か通年少ないか)の3点だけを先に見ます。この組み合わせで気候区は絞れます。学習院は8冊中3回使用しています。
人口ピラミッドは底辺の幅と途中の凹み・膨らみ(学習院で2回)。散布図は軸のラベルを先に読み、外れ値を1つ2つ特定する。三角グラフは3つの軸の向きを取り違えないこと(明治文学部)。折れ線・指数は基準年が100であることを確認し、傾きの変わり目を拾います。どのグラフも「読めた」とは形から地域名か現象名が1つ言えた状態と決めておくと、自己採点がぶれません。
覚えておく数字の範囲
- 覚えなくていいもの|細かい生産量の実数、小数点以下の値、年ごとの細かい増減。資料が出る大学では問題用紙に書いてあります。
- 押さえておくもの|主要品目の上位3〜5か国の順位と桁のイメージ(概数)。慶應義塾商学部A方式前期は資料が1枚も出ないかわりに統計が文章中の数値として問われ、求められるのは「統計の順位・概数を覚えている力」です。
- あわせて|世界地図上の位置と主要産業・資源の対応。
暗記そのものが続かない人は、社会の暗記が定着しないときを先に読んでください。
系統地理と地誌、どちらを先にやるか
- 学習院|43大問中、地誌が約23大問(53%)で系統地理約20大問(47%)を上回ります。地誌はアジアが約11大問と圧倒的で、以下ヨーロッパ・ロシア4、アメリカ大陸3と続きます(分母3冊のため慎重な扱いが必要)。
- 法政|33大問中、系統地理20大問(61%)、地誌13大問(39%)。地誌はヨーロッパ4、アジア4、アメリカ2、その他3と分散しています。
- 慶應義塾(商学部A方式前期)|体感比重は系統地理6:地誌4。9大問のうち純粋な系統地理は1題のみで、残り8題は系統地理を軸に複数地域の地誌を並べる融合型です。
- 立教|2023・2024年度は独立した地誌大問(北ヨーロッパ、イタリア)がありましたが、2025・2026年度はそれが消え、地域の知識が系統地理に組み込まれる形に移りました。
順番の結論はこうです。資料の読み方を身につける段階では系統地理を先に回す。表・グラフ・地形図の読み方は、気候・地形・農業・貿易・人口といった系統地理のテーマとセットで身につくためです。そのうえで地誌は「系統地理で学んだ見方を地域に当てはめる復習」として後から重ねる。学習院のように地誌が過半を占める大学だけ、アジアを軸に地誌の時間を厚くしてください。
白地図の使い方
白地図は塗って満足する道具ではなく、位置と資料を結びつける道具です。学習院は白地図・略地図が8冊中7冊で使われ、2026年度文学部コアでは白地図への図示も出題されました。
- 同じ白地図を複数枚コピーし、1枚1テーマに限定します(小麦の主要生産国、原油の産出地、主要な工業地域など)。
- 書き込むのは上位3〜5か国と順位の数字だけ。全部埋めようとすると作業になって残りません。
- 書き終えたら統計表を隣に置き、表の上位と地図上の位置が一致するかを目で往復させます。統計問題での特定作業の予習になります。
- 解いた地形図の場所を日本地図に点で落とすと、どの地形がどの地方に出やすいかが残ります。
論述で資料を使うときの書き方
資料つきの論述がもっとも重いのは学習院です。全問記述でマークシートは配付されず、「枠内で説明しなさい」型が各冊10問前後、字数指定つき論述(50〜200字)が毎年出ます(2025年度経済学部コアは200字)。明治政治経済学部は字数指定型が4学部で最多で、2024年度の60字+80字から2026年度は60字が4問に増えるなど増加傾向です。法政は全問記述式で、説明記述が11冊中9冊、うち字数指定ありが5冊です。
骨組みは「資料から読める事実」→「その原因・条件」→「結果」をこの順に並べるのが基本です。注意は3つ。資料の数値を1つは必ず引く(「増加している」ではなく「2倍以上に増えている」)、資料にない原因を勝手に足さない、指定字数の8割以上を使う。逆に早稲田教育学部A方式は論述が3年間ゼロ、明治農学部食料環境政策学科も3年とも一切なし、東洋は全問マークシートで記述・論述が一切ゼロとされています。立教も2026年度は論述・作図がどちらも0問です。書き方の手順は社会の論述の書き方にまとめています。
共通テストで地理を使う人へ
もとにした分析データに、共通テストの地理についての集計は含まれていません。推測で進めず、自分が受ける方式の科目を志望校の要項で必ず確認してください。共通テスト利用や国公立との併願では、地理が指定科目に入っているかどうかが最初の分岐です。
1か月・3か月での進め方
- 1か月|週1回、志望校の過去問から資料問題だけを抜いて解きます。上の5手順を紙に書いて手元に置き、その順番どおりに処理する。間違いは「知識不足」「手順の飛ばし」「読み違い」に分類し、手順の飛ばしが半分以上なら、知識を増やす前に手順の練習を続けるほうが伸びます。
- 3か月|1か月目は系統地理のテーマ順(気候・地形→農業→工業・貿易→人口・都市→資源エネルギー→環境問題)に資料問題を並べる。2か月目は地誌をアジアから重ね、白地図を1枚1テーマで埋める。3か月目は志望校の年度を通しで解き、地形図が必出の大学ならその大問だけ週2回に増やします。
演習の量とタイミングは過去問はいつから何年分やるかを参考にしてください。
地理を選ぶかどうか迷っている人へ
地理は使える大学・学部・方式が限られ、求められる技能も大学ごとに大きく違う科目です。地形図が配点の約3分の1を占める大学もあれば3年間ゼロの大学もあり、資料が1枚も出ない大学もあります。
判断の順番は、「地理が好きか」より先に「自分が受ける大学・学部・方式で地理が使えるか」、次に「その大学が求める技能に時間を割けるか」です。学習院は3コアのみで演習素材が年3冊にとどまるなど、練習に使える過去問そのものが少なくなりやすい点も見てください。科目の選び方は社会の科目選びで整理しています。なお、勉強がうまく進まないつらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口にも相談してください。
あわせて読みたい
- 地理の頻出単元と大学別対策|単元の優先順位。
- 社会の科目選び|地理か日本史か世界史か。
- 社会の暗記が定着しないとき|数字が残らない人へ。
- 社会の論述の書き方|説明記述の型。
- 過去問はいつから何年分やるか|演習の量と時期。
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