国公立と私立、どちらを目指すか決められないときの判断のしかた|川越の予備校が科目数と準備の形から整理します

「国公立と私立、どちらを目指すか決められない」。面談でいちばん多く出る相談のひとつです。この記事は、埼玉県・川越で大学受験を考えている高2・高3(と、早めに考えておきたい高1)に向けて、どちらを選ぶかをどう判断するかだけを書きます。英語の中身や記述の書き方は別の記事にあります。ここでは「決める」という一点に絞ります。

これは「学力の高さ」の話ではなく、準備の形の話です

最初に前提を外しておきます。この選択はどちらが上か下かという話ではありません。違うのは、本番までに積む準備の「形」です。

国公立は共通テストで必要な科目が多く、そのうえで二次に記述が出ます。広く揃えて、最後に書く力を足す形です。私立は科目数が少ないぶん、1科目あたりの読む量・処理の速さ・大学ごとの形式への慣れが要ります。狭く、深く、大学ごとに作り分ける形です。どちらが自分の得意不得意に合うか。それだけが軸になります。

科目数と負担の違いを、実測値で見る

国公立:共通テストの科目が多く、二次で記述が出る

地元の国公立である埼玉大学を例にします。埼玉大学の一般選抜では共通テストが6教科(国語・地理歴史公民・数学2科目・理科・外国語・情報)です。文系の教育学部 乳幼児教育専修でも共通テストの数学は「数学Ⅰ,A」「数学Ⅱ,B,C」の2科目が必須で、配点は200点あります。工学部は理科を2科目(電気電子物理工学科は物理必須)課します。

合否は共通テストと個別試験(二次)を足した総合点で1回だけ判定されます

  • 乳幼児教育専修 前期:共通テスト950点+個別試験500点=1,450点(共通テストが65.5%)
  • 電気電子物理工学科 前期:共通テスト850点+個別試験400点=1,250点(同68.0%)
  • 情報工学科 前期:共通テスト900点+個別試験400点=1,300点(同69.2%)

つまり共通テストで崩れると、二次では取り返せません。電気電子物理工学科の前期なら、共通テストの得点率が10ポイント下がるだけで85点を失い、これは個別試験400点の2割強にあたります。

二次の記述は、英語なら出る型が4つしかありません。要約・和訳・内容説明・自由英作文です。約250本の国公立の入試英文を分析しても、この4つの配合が大学ごとに違うだけでした。分量はこうです。

  • 東京大学:日本語70〜80字の要約、自由英作文60〜80語
  • 一橋大学:字数指定の内容説明30〜80字、自由英作文100〜140語。名古屋大学はグラフを読んで80〜100語
  • 京都大学:下線部和訳と日本語の内容説明がほぼすべて。加えて和文英訳
  • 埼玉大学:意見英作文120〜150語(理由や例を2つ以上求める形)

英語以外も記述です。埼玉大学の数学(工学部・理学部数学科の冊子)は大問4題・全問記述で答案用紙4枚、経済学部の国語は字数指定の説明6問で520〜660字を書きます。教育学部の理科は全問記述で、理由の説明と作図が中心です。

私立:科目数が少ないぶん、1科目あたりの深さが要る

私立は3科目が基本です。そのぶん1科目の中身が濃くなります。慶應義塾大学文学部は辞書持込可で約2,000語の長文1題を精読して記述する形式、総合政策・環境情報は約1,000語の長文3題の読解マラソンです。法政大学のA方式は1回の試験で長文3〜4本、東洋大学は60分の5大問で長文2本(各400〜700語)を読みます。

時間あたりの語数で見ると、私立のマーク型は国公立の二次より速度が要ります。埼玉大学の英語は長文2題で約1,560〜1,810語+英作文120〜150語という分量で、長文1題(約750〜950語)を20分前後で読み切るのが目標です。私立の速読型学部は、これと同じか、これより速い処理を求めます。

国公立の準備で、実際に増えるもの

月単位で増える作業は次の3つです。

  1. 理科・社会の科目数。埼玉大学の乳幼児教育専修では、地理歴史公民で1科目を選ぶと理科が2科目(200点)、地理歴史公民を2科目にすると理科は1科目(100点)で、どちらでも共通テストは950点です。どちらの組み方にするかを高2のうちに決める必要があります
  2. 共通テスト対策の総量。国語・数学2科目・理科・社会・外国語・情報が、どれも200点前後で横並びです。配点が広く薄いので、1科目の穴がそのまま総合点に響きます。高3の秋まではこの土台を崩さないことが最優先です。
  3. 二次記述の練習と添削の時間。記述答案は自分では採点できません。週1本の英作文でも、書く時間+添削+直す時間で月に数時間の固定枠が要ります。数学の証明答案も同じで、言葉を省かずに書く練習は人に読んでもらってはじめて仕上がります。

私立の準備で、実際に増えるもの

私立は科目数が少ないかわりに、別の3つが増えます。

  1. 大学・学部ごとに出題の作りが違う。同じ大学でも学部で試験の種目が変わります。慶應義塾大学は文が精読記述、法が語彙パズル+会話文+超長文のオールマーク。早稲田大学は教育C方式が180〜250字の日本語要約+英語論述、社会科学部はオールマーク。明治大学は法が50字要約の記述、商・国際日本が全問マーク。立教大学は独自の英語問題が文学部日程だけで、他学部は英語資格試験か共通テストのスコアを使います。受ける学部を決めないと、対策が始められません
  2. 日程が連続する。同じ大学の複数方式と複数大学の一般選抜が2月に並びます。校数を増やすと、受験料・移動・日程の重なり、過去問演習の量が校数分だけ増えます。
  3. 方式が複数ある。文部科学省の令和7年度の集計では、私立大学の入学者の61.6%が学校推薦型選抜か総合型選抜です(大学全体では53.6%)。入口が複数あるぶん、どれを使うかを自分で決める作業が発生します。

「両方を目指す」が成立する条件と、しない条件

「国公立も私立も」は、条件がそろえば成立し、そろわなければどちらも中途半端になります。

成立する条件

  • 志望する国公立の二次科目が少ない。埼玉大学の乳幼児教育専修の前期は個別試験が英語1科目だけ、工学部の電気電子物理工学科・情報工学科は数学+小論文で、英語と理科の個別試験がありません。二次で増える科目が1つなら、私立との両立は現実的です
  • 共通テストで使う科目が、私立の受験科目を含んでいる。英語・国語・社会(または数学)を両方で使う形なら、勉強が二重になりません。
  • 私立側を共通テスト利用と一般選抜の2方式までに絞れている。

成立しない条件

  • 国公立の二次で記述の重い科目が複数ある。埼玉大学でも、経済学部は国語で字数指定の説明6問(520〜660字)、教育学部はそこに古文・漢文が加わります。この記述量を抱えたまま形式の違う私立を何校も準備するのは、時間が足りません。
  • 私立側でも記述型の学部を複数抱えている。慶應義塾大学文学部の約2,000語の精読記述、明治大学法学部の50字要約、明治学院大学の100〜150語の英語エッセーと150〜180字の日本語要約。これらは全部別の訓練です。
  • 共通テストの理科・社会をまだ決めていない。科目が決まっていない状態では、国公立の準備が始まりません。

決める時期の目安

  • 高1:気になる学部系統を2つ選び、オープンキャンパスに1回行く。年に3時間程度で終わります。国公立か私立かは、まだ決めなくていい学年です。
  • 高2前半文系・理系と受験科目を決める。ここが実質的な分岐点です。国公立を残すなら、共通テストの理科・社会の科目をこの時期に置きます。模試を1回受け、合格可能性50%前後の判定が出るレベル帯を確認します。
  • 高2後半:そのレベル帯の大学の過去問を1年分、解けそうな科目だけでよいので解く。国公立なら二次に何が出るか、私立なら学部ごとの形式を自分の手で確かめます。
  • 高3春〜夏:国公立か私立かの方針を固める。夏休みに挑戦校の過去問を1年分。推薦・総合型を使うなら志望理由書に着手します。
  • 高3秋:実力校・挑戦校・安全校の3校と、各校2つまでの方式を確定。出願・試験日・合格発表・入学手続きの4つの締切を「いつ・どこで・何をする」の形で書き出します。入学手続きの締切は、合格しても逃せば無効になります

いちばん重いのは高2前半の科目決めです。国公立の可能性を残しておけば高3で私立に絞るのは簡単ですが、逆は簡単ではありません。

決められないときにやる3つの確認

1. 受けたい学部があるか

大学名より先に学部です。気になる系統を2つに絞り、その学部の1年次の必修科目の一覧表を1校分だけ読みます。基準は「面白そう」ではなく「これなら4年間続けられそう」です。文部科学省の調査では、大学を中途退学する理由の1位は「転学・進路変更」(22.0%)で、学力不振(7.3%)の3倍でした。

なお「やりたいことが分からない」のは、決める前の状態として正常です。進路の研究では、興味は「できそうだ」という感覚のあとに生まれることが分かっています。順番が逆なので、先に問い詰めても出ません。

2. 科目の得意不得意が、科目数に耐えるか

国公立を選ぶなら6教科を並べます。苦手科目が1つあると総合点にどれだけ響くかを、配点で計算してみてください。埼玉大学の乳幼児教育専修なら、国語200・地歴公民と理科で計300・数学200・外国語200・情報50という内訳です。これを見て「数学は共通テストまでなら耐えられる」と言えるかどうかが判断材料です。得意科目が2〜3科目に集中していて残りは手がつかないなら、私立の3科目に寄せたほうが総合点は伸びます。

3. 併願の形が作れるか

国公立を第一志望にするなら、私立の併願先を実力校・挑戦校・安全校の3校で組めるかを見ます。共通テスト利用は個別試験なしで複数校に出願できますが、合格ラインは一般選抜より高めに出ます。ここで費用の面は、家庭で必ず一度確認してください。一度も話さないと、合格したあとで問題になります。

埼玉大学で考えると、国公立の準備がはっきりします

教養・経済・教育・理・工の5学部があり、入試の作りは学部ごとに違います。特徴的なのは、問題冊子が学部名どおりに分かれていない点です。2022〜2026年度の前期の冊子を並べると、英語は教養学部・経済学部・教育学部の3学部共通で1冊でした(工学部の前期に英語の個別試験はありません)。数学は、工学部の冊子と理学部数学科の冊子が5年とも大問1〜4のすべてで同じ問題でした。過去問は学部名ではなく、冊子の表紙で揃えるものだということです

英語の3学部共通冊子は、5年とも長文2題(5択、設問26〜27問)+自由英作文1題(120〜150語)という同じ構成で、和訳も要約も5年間出ていません。長文の5択は共通テストのリーディングと地続きなので、共通テストの英語の勉強がそのまま二次の準備になる学部があるということです。

必要な準備は学部で変わります。乳幼児教育専修の前期は個別試験が英語だけ(500点)で、共通テストの外国語200点と合わせると英語だけで満点1,450点の48%を占めます。工学部の電気電子物理工学科・情報工学科は数学300点+小論文100点で、個別の数学は数Ⅲの微積分が5年間の20題中10題に絡んでいました。学部ごとの違いは埼玉大学の学部別の記事にまとめています。日程と配点は年度で変わるので、出願の前に必ず大学の最新の募集要項で確認してください。

途中で変える場合、取り返しがつく範囲とつきにくい範囲

取り返しがつく範囲

  • 志望校名の変更。むしろ普通のことです。ある調査では、大学進学者が興味を持った大学は平均4.67校で、最終的に出願したのは2.42校でした。興味を持った学校の半分以上は出願しないまま候補から外れます。
  • レベル帯の上下と、同じ帯での大学の入れ替え。帯が同じなら出題の質も近く、積んだものはそのまま使えます。過去問で7割に届いたら一段上げ、届かなければ戻す。戻すのは後退ではなく、目標を機能する位置に置き直すことです。
  • 国公立志望から私立に絞ること。科目を減らす方向なので、高3の夏でも動けます。同じ大学に方式を変えて出願するのも、対策を増やしません。

取り返しがつきにくい範囲

  • 共通テストの理科・社会の科目選択。高2で決めたものを高3の秋に変えるのは、実質的に1科目を新規で仕上げる作業です。
  • 私立専願で科目を切ったあと、国公立に戻ること。3科目から6教科に戻すのは残り時間との勝負です。国公立を少しでも考えているなら、高2の科目決めの段階で残しておくのが安全です。
  • 二次記述の練習の蓄積。添削は往復に時間がかかります。英作文なら週1本のペースを秋から積むかどうかで、本番までの本数が変わります。
  • 出願と入学手続きの締切。これは変更ではなく取り返しがつきません。4つの締切をカレンダーに転記しておいてください。

まとめると、変えやすいのは「どこを受けるか」、変えにくいのは「何で受けるか」です。高2のうちに決めるべきなのは大学名ではなく科目で、大学名は高3の秋まで仮置きでかまいません。

それでも決まらない場合は、3つの確認のうち「1年次の必修科目を1校分読む」だけをやってみてください。手を動かして得た情報だけが判断材料になります。迷いや不安が続いてつらいときは、学校の先生や保護者、専門の相談窓口にも相談してみてください。

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EIMEI予備校について

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二神大輝