こんにちは、EIMEI予備校で英語科を担当している二神です。
この記事は、国公立大学を志望している高校2年生・3年生と、その保護者の方に向けて書いています。「国公立の二次試験の英語で何を要求されるのかが分からない」という段階の方を想定しました。受験学年の秋に慌てて記述対策を始めるケースが毎年あるので、先に全体像を渡しておきます。
EIMEIでは大学別の入試対策読本を自作しているほか、国公立大学の傾向をまとめた別冊も作りました。国公立の入試英語(2020〜2026年度)の長文パッセージ約250本を分析したものです。この記事の内容は、すべてその分析にもとづいています。
国公立の英語は、私大と別の競技です
最初に押さえてほしいのはこれです。国公立の二次試験は「選択肢を選ぶ力」ではなく「言語の往復」を試す試験です。読んだことを日本語で説明する力、日本語を英語に写す力、意見を英語で組み立てる力が問われます。
別冊には、大学のブロックを問わず当てはまる原則を5つ挙げました。
- 記述の型は4つしかない…要約/和訳/内容説明/自由英作文。どの大学もこの4つの配合が違うだけです。
- テーマは私大より「議論もの」に寄る…賛否や、概念そのものの問い直しを含む評論が好まれます。
- 自由英作文は本文連動型が主流…白紙から自由に書くのではなく、読んだ本文を踏まえて意見を書く形です。
- グラフ・資料型の英作文が拡大中…名古屋大・九州大・佐賀大・和歌山大などで定着しています。
- 共通テストとの分業が進んでいる…二次は少数の長文をじっくり読ませる方向です。速読より精読、量より深さ。
大事なのは1つめです。やるべきことは4種類に限られていると分かれば、対策は「志望校がこの4つをどう配合しているか」を調べる作業に変わります。
4つの型で、それぞれ何が問われるのか
①要約|主張1文+根拠2つに圧縮する
代表は東京大学の1(A)で、日本語70〜80字の要約が7年間ほぼ固定で出ています。北海道大学は毎年、会話文の要約完成(語群から選んで空所を埋める形)が出ます。
要約は発想力の問題ではありません。訓練の中身は「筆者の主張1文+根拠2つ」への圧縮、これだけです。80字に収めるために何を捨てたのか、その理由を人に説明できるようにしてください。
②和訳|構文よりも「日本語の語順の再設計」
和訳の頂点は京都大学です。下線部和訳と日本語の内容説明がほぼすべてで、選択問題は例外的にしか出ません。そこに和文英訳(こなれた日本語150字前後を英語にする)と自由英作文が続きます。国内で最も「翻訳家的」な試験です。大阪大学も伝統的に和訳・英訳の運用力を重視するので、京大に次ぐ翻訳型と考えて準備してください。
和訳で伸び悩む生徒の多くは、構文が取れていないのではなく日本語が英語の語順のままです。構文把握のあとに日本語の語順を組み直す工程を必ず挟んでください。訳し終えた日本語だけを音読して、意味が通るかを確かめる習慣が有効です。
③内容説明|要素を数え上げてから圧縮する
一橋大学は、和訳と字数指定の内容説明(30〜80字)が中心の記述型です。名古屋大学のⅠ・Ⅱも、選択問題と和訳・字数指定の説明を組み合わせたハイブリッドです。
字数指定の説明で点を落とす原因は、書き始めが早すぎることです。手順を固定します。該当する要素を全部書き出して数える→字数から1要素あたりの字数を割り出す→そこで初めて書く。40字で2要素なら1要素20字です。先に計算すると、入れる要素と捨てる要素の判断が機械的になります。
④自由英作文|語数は大学ごとにまるで違う
別冊で確認できた語数を並べると、幅の広さが分かります。
- 東京大学…2(A)の自由英作文が60〜80語。ほかに2(B)の和文英訳があります。
- 一橋大学…100〜140語。ことわざの説明、絵の描写、メッセージ作成など題材が年ごとに変わるのが特徴で、抽象を具体に落とす練習が要ります。
- 筑波大学…本文を踏まえた意見英作文が80〜100語で定番化しています。
- 埼玉大学…意見英作文が120〜150語で、配点上の比重が重い出題です。
- 大阪大学(2026年度・文学部)…本文引用つきの意見英作文を40〜50語と80語で問い、読解と英作文がテーマで連動していました。
もう1つ、形式として広がっているのがデータ・グラフ英作文です。名古屋大学のⅣはグラフを読み取って80〜100語で説明・考察する問題で、5年以上この4題定型が続いています。九州大学も読解3題+自由英作文+データ英作文の5題構成が定番。九州の国立大(佐賀・長崎)でもグラフ英作文は定番形式です。
この型は練習がそのまま点になります。書き方は「増減表現+原因1つ+含意1つ」、配分は描写1に対して考察2。同じ型で10本書けば安定します。型づくりの手順は英作文(和文英訳・自由英作文)の書き方の記事にまとめました。
大学ごとの傾向|ブロックで性格が変わります
旧帝大クラス+一橋|形式は完全に大学別
このブロックは素材の知的水準と記述量の両方で国内最高峰です。「人新世」「監視資本主義」「自由意志」のように概念そのものを扱う文章が普通に出ます。そして、形式は大学ごとに個性が確立しています。
- 東京大学…要約・空所補充と段落整序・自由英作文・和文英訳・リスニング・誤り指摘・和訳・総合読解の分業が固定の「5大問マラソン」。5番の長文は近年はっきり社会批評と当事者の語りに寄っています。
- 京都大学…長文2題+和文英訳+英作文の記述一辺倒。素材は「当たり前に使っている概念の由来を掘り返す文章」で、時事性が薄く、古びない評論が選ばれます。
- 一橋大学…何を扱っても社会科学の視点が通る素材。2024年に長文2本化、2025年からリスニング廃止と形式が動いているので、直近2年の過去問で最新形を必ず確認してください。
- 名古屋大学…評論2題+会話文+データ英作文の4題定型。Ⅲの会話文は日常寄りの話題なので、口語イディオムの補強が要ります。
- 北海道大学…読解2+資料評論1+会話文1の4題構成。旧帝で最も社会科学寄りのテーマ分布で、選択と記述のバランス型。会話文要約は「話者の立場の対立点」を先に掴む読み方が有効です。
- 九州大学…旧帝で最も理系寄りの素材。読解3題+自由英作文+データ英作文の5題で、会話文はありません。
つまりこのブロックを目指すなら、志望校を決めてから過去問の型練習に時間を割くのが正しい順番です。汎用の記述対策だけでは間に合いません。
難関・上位国立|良質な時事評論+記述小問
筑波・神戸・千葉・広島・岡山・金沢・新潟・埼玉・信州・静岡・岐阜などのブロックは、素材の水準が私大上位クラスに相当し、そこに和訳・内容説明・本文連動の自由英作文が加わるのが共通形です。テーマは気候・健康・心理・日本社会といった「質の高い時事教養」が中心です。
ただし大学ごとの色ははっきりあります。静岡大学は物語・文学の比重が国立で最も高い級で、心情把握の演習が最優先。金沢大学は複数の資料を統合して答えさせる出題が特徴です。信州大学は「自然の辞書定義に人間を含めるか」のような概念を問い直す骨太の評論で、同一素材を複数学部で使い回します。
首都圏の単科系国立も個性が強く、東京海洋大学は和文対照の空所補充という独自形式、東京学芸大学は教育・発達に一貫した素材選びです。
地方国立|共通テストとの分業がはっきり
地方国立の二次英語は、共通テストで測れない部分(和訳・説明記述・自由英作文)に特化する方向が鮮明です。素材は難関ブロックより平易で、健康・教育・環境・地域といった生活に近い教養が中心。エッセイや物語を出す大学も多く、教育学部を持つ大学では「先生になる人に読ませたい文章」という選定基準が透けて見えます。
自由英作文は、社会問題を論じる形よりも自分の経験や身の回りから書く「自分ごと型」が頻出です。難関ブロックとは準備の中身が変わります。
公立大学|都市型の時事と「学部の顔」
公立大は設置自治体の性格が素材に表れます。都市部の公立(東京都立・横浜市立・大阪公立)は最新の社会科学や研究紹介型で、難関国立に匹敵する水準です。東京都立大学は「スマホと若者のメンタルヘルス」で対立する研究を読み比べさせる出題、大阪公立大学は研究論文の紹介型が軸で方法と結果を正確に読み取らせます。
学部別に素材を変える大学が多いので、「学部の顔」を読むことがそのまま対策になります。また公立は英作文の配点が重い大学が多いので、志望が公立なら英作文の優先順位を上げてください。
「国立だから記述中心」は思い込みです|埼玉大学の例
ここは強調しておきたい点です。地元から受験生の多い埼玉大学の前期の英語を、私は2022〜2026年度の問題冊子5冊で確認しました。結果はこうです。
- 教養学部・経済学部・教育学部が同じ1冊を解きます。
- 形式は5年とも「長文2題(5択)+自由英作文1題」。
- 和訳も要約も、5年間一度も出ていません。記述は英作文1題だけです。
- 長文は1題あたり約750〜950語、2題で約1,560〜1,810語。設問は合計26〜27問。
- 英作文は120〜150語の意見論述で、理由や例を2つ以上求められます。
設問は3種類で、空所補充(前置詞・語形・句動詞・関係詞)と下線部の言い換えで約半分を占めます。長文の中で文法語法とイディオムの知識を問う作りです。「読めているのに選べない」失点は、句動詞と語法の知識不足から来ていることが多いはずです。
先に固めるべきものは、750〜950語の説明文を1題20分前後で読み切る力、句動詞・前置詞・語形・関係詞の知識、120〜150語の意見論述の型の3つ。逆に英文和訳・和文英訳・日本語での要約は後回しでよい(5年間出題なし)という判断になります。
国公立だから全部やる、ではありません。志望校の過去問を5年分並べて、出ていない型を捨てる。これが最初の作業です。
共通テストと二次の配分は、比率を計算してから決める
「共通テストと二次のどちらに時間を使うべきか」は、精神論では決まりません。満点に対する比率を自分で計算すれば答えが出ます。
埼玉大学の読本で、塾生の志望学科について私が計算した比率を例にします。教育学部 学校教育コース 乳幼児教育専修の前期は、共通テスト950点+個別試験の英語500点で総合1,450点満点。個別試験は英語1科目だけで、小論文も面接もありません。共通テストが総合の65.5%を占めます。工学部の電気電子物理工学科の前期は共通テスト850点+個別400点で68.0%、情報工学科は900点+400点で69.2%です。確認した6つの日程のうち5つで、共通テストが満点の6割から7割を占めていました。
ここから出てくる結論は2つです。
- 共通テストで大きく崩れると、二次では取り返せません。共通テストの得点率が10ポイント落ちた分を個別試験で埋めるのは、配点の構造上かなり厳しくなります。
- したがって受験学年の秋までは共通テストの土台を崩さないことが最優先で、そのうえで個別試験で使う科目に時間を積み増していく順番になります。
ただし、二次の1科目は共通テストの1科目よりはるかに重いことも事実です。乳幼児教育専修の英語は個別500点で、共通テストのどの1科目(200点)よりも2.5倍重く、共通テストの英語と合わせると総合1,450点の48%を英語が占めます。二次の英語500点に対する目標は6割5分〜7割5分と設定しました。
だから配分の考え方は、「共通テストを優先」と「二次の重い科目を切らさない」の両立になります。進め方はこうです。
- 今すぐ〜10月…共通テストの読解を安定させながら語法の1冊を通す。並行して二次の記述を週1本書いて添削を受ける。毎日書く必要はありません。書く・返ってくる・書き直すで1週間です。
- 11〜12月…過去問の長文を1題20分で解き、誤答を語法ノートにまとめる。
- 共通テスト後…5年分を本番の形で通して解き、時間配分を固める。記述だけを単独で練習していると、長文で消耗したあとに書く感覚が分かりません。
英作文のテーマは、教育・技術・環境・異文化・公共支出の5分野で「賛成の理由2つ」「反対の理由2つ」を英語で言える状態にしておくと、どちらの立場を選ぶ年でも対応できます。埼玉大学は2022年度と2024年度がほぼ同じ文で再出題され、2025年度には3問から1問を選ぶ形も出ました。過去のテーマがもう一度出ることがある以上、5年分のテーマは全部書く価値があります。
国公立志望が高2までにやっておくと効くこと
別冊の総括に書いたとおり、国公立の記述は「知らないテーマでも書ける型」と「書き出しを速くする知識」の掛け算です。高2のうちは型より知識の側、つまり読む量と背景教養に時間を使ってください。
横断的に狙われやすいテーマとして私が上位に挙げたのは、生成AIと学ぶ力、注意とスマホとメンタルヘルス、ケアと当事者性と多様性、気候の不公正、概念の問い直し、言語の多様性と権力などです。いずれも「賛否を整理して自分の考えを書かせる」形にしやすい題材で、日本語の新書で読んでおくのは遠回りに見えて最短です。
英語そのものは、学校の教科書の本文を音読して英語の語順で文を作る感覚を入れることから始めてください。教科書によって進度も語彙も違うので、高校別の英語教科書一覧の記事も参考にしてください。
川越で国公立の記述対策をするなら
記述式の答案は、自分では採点できません。要約で削った理由が妥当か、内容説明の要素が足りているか、英作文の型が崩れていないか。他人の目が入らないと分かりません。国公立志望で対策が遅れる原因は、たいてい「書いたものを見てもらう相手がいないまま秋を迎える」ことです。
EIMEI予備校 川越校舎(2026年6月開校)は川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分です。1対1の個別指導なので、志望校の形式に合わせて「この型は捨てる、この型を週1本書く」という判断まで一緒に決められます。自習室は朝7時から使えるので、学校がある日でも登校前に1題読めます。
志望校が固まっていない段階でも構いません。志望候補の過去問を並べて、4つの型のどれが出るかを一緒に確認するところから始めましょう。無料体験・個別説明会は川越校舎の案内ページから申し込めます。
最後に1点。この記事の傾向は、私が確認できた年度の過去問の範囲のものです。実際に一橋大学は2024年に長文が2本化し、2025年からリスニングがなくなりました。形式・配点・日程は変わります。出願前には必ず大学が公表する最新の入学者選抜要項をご確認ください。
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