こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、川越・ふじみ野・鶴瀬から通える中高一貫校に通う中学生と、その保護者の方に向けて書いています。EIMEI予備校は中高一貫校の中学生から受け入れています。高校生になってから来てください、という塾ではありません。中学のうちから大学受験の話ができる相手が必要な方のための記事です。
テーマは一つです。中学のうちに何をやっておくと、大学受験の英語で効くのか。一般論ではなく、自作の入試対策読本で実際に測った数字を出しながら書きます。
1.中高一貫校の「進度が速い」は、それ自体が目的ではない
中高一貫校に入ると、多くの学校で中学のうちに高校範囲の英語に入ります。数学も同じです。保護者の方から「もう高校の内容をやっていて大丈夫なのか」と聞かれることがよくあります。
ここで押さえておきたいのは、速さは目的ではなく、手段だということです。速く進むことに意味があるのではありません。高2が終わるまでに入試の土台を作り終えて、高3の1年をまるごと過去問と演習に使える——この一点にだけ意味があります。
逆に言えば、進度が速いこと自体は得点になりません。中3で高校範囲に入っていても、入試で問われるものに向かっていなければ、ただ早く通り過ぎただけになります。だから最初にやるべきなのは、ゴールの姿を先に見ておくことです。
2.入試の英語で実際に何が問われるか(読本の実測値で)
中学生に「大学入試の英語」と言っても、像が浮かばないのが普通です。そこで、大学ごとに自作している入試対策読本から、実際に測った数字を出します。
語数——まず量が違う
- 東洋大学…英語は60分。長文2題(各600〜700語)+文法語法+会話文+整序英作文で、全問マーク。解答数は37〜45です。
- 学習院大学…90分で長文2本1,600〜1,800語+設問約30問。
- 立教大学…文学部日程で読む総語数は約3,000語。
- 成蹊大学…90分で総語数3,000語超。物語が約2,000語、記事が約700語という組み合わせです。
- 法政大学…T日程の2026年度は、長文1本あたり1,000語級を4本読ませています。
- 慶應義塾大学…文学部は辞書持込可で約2,000語1題の精読記述。総合政策・環境情報は約1,000語×3題の読解です。
並べると階段になっているのが分かります。600語から始まり、上のほうは1回の試験で4,000語前後を読みます。中学の教科書の1レッスンは、これよりずっと短いはずです。ここが「中学のうちにやっておくと効くこと」の出発点になります。
テーマの範囲——英語の問題だけど、中身は理科と社会
入試英語の教養をまとめた読本では、全国約190大学の入試英語(2007〜2026年度)からテキストを取り出し、1,005本の長文パッセージを1本ずつ分野に分けました。内訳はこうです。
- 歴史・文化・人類学 125本/脳科学・心理学 119本/医療・健康 105本/エッセイ・伝記・文学・物語 101本
- 環境・気候変動 76本/科学技術一般 74本/社会・格差・多様性 71本/言語・コミュニケーション 66本
- 生物・生態系 65本/経済・経営・消費 64本/教育・学習 55本/AI・情報技術 44本/哲学・倫理ほか 40本
つまり入試の英語は、英語の試験であると同時に「知っているかどうか」の試験です。記憶のしくみ、気候変動、動物の心、食べ物の世界史、AIと仕事。中学生が今すぐ読んでおいて損のない話ばかりです。詳しくは入試英語の教養(頻出テーマ)の記事にまとめています。
設問形式——選ぶだけではない
形式も大学と学部でかなり違います。内容一致(選択肢から2つ選ぶ形式もあります)、同義語、空所補充、整序英作文、下線部の和訳、字数指定の日本語要約、100〜150語の英語エッセー。設問文そのものが英語の大学も増えています。
中学生の段階でこれを解く必要はありません。ただ、「最後は書かされる大学もある」と知っておくだけで、中学のうちの英語の扱い方が変わります。
3.中学のうちにやっておくと効く3つ
ゴールが見えたので、逆算します。中学のうちに手をつけて効くのは、この3つだけだと考えています。
(1)語彙を「テーマ」で増やす
自作の英単語帳は、415題・約86万語の入試英文コーパスで、テーマごとの出現頻度を集計して作りました。数字を見ると、テーマで束になって出ることがはっきり分かります。
- 環境・気候変動…ocean 67回、plastic 65回、waste 61回、climate 50回、carbon 42回。
- 医療・健康…86題で集計2位。disease 44回、drug 34回。
- 心理・脳科学…104題でコーパス最大勢力。brain がテーマ別集計で最頻出の内容語です。
- 歴史・文化・人類学…125題。century、museum(35回)、traditional、ancient が上位。
中学生にまずおすすめしたいのは、この単語帳の第0章にあたる「全テーマ共通のアカデミック頻出語50」です。researcher、study、evidence、suggest、indicate、significant、factor、tend to do、increase/decrease、despite、whereas。どれも難しい構文を必要とせず、中学英語の文法のままで意味が取れる語です。それでいて、どの分野の長文にも必ず顔を出します。ここを中学のうちに固めると、高校に入ってからテーマ別の語彙に進めます。テーマごとの語彙の考え方はテーマ別英単語の記事で説明しています。
(2)英文を読む「量」
語数の階段を思い出してください。入口が600〜700語です。中学のうちの目標は、600語の英文を辞書なしで最後まで読み切れる体を作ることだと考えています。
手順は単純です。中1・中2は1日1本、200〜300語の英文を読む。中3で400〜600語に上げる。1本読んだら、「この文章は何の話だったか」を日本語で一言だけ言う。訳さなくていいので、一言で言えるかだけを見ます。これが言えないときは、語彙ではなく段落のつながりを追えていないことが多いです。
(3)文章のテーマ知識
3つめが、実は一番差になります。上の分野別の内訳を見返してください。中学生が日本語で読んでおけるものばかりです。
記憶と学びの科学、睡眠、スマートフォンと注意、幸福の研究、長寿と老化、感染症と公衆衛生、動物の心、絶滅と保全、気候変動、プラスチック、言語と思考、ことばの変化、食の世界史、文化財は誰のものか、人類の長い物語、AIと生きる。読本ではこれを18章の日本語の読み物にしてあります。
読本の第1章は、記憶が「録画」ではなく思い出すたびに作り直されるものだという話から始まり、入試英文にくり返し登場する勉強法として、日を空けて復習する「間隔反復」、手で書くこと、紙で読むことの3つを挙げています。入試で読まされる内容が、そのまま中学生の勉強のしかたの話になっているわけです。
もう一段抽象度が上がると、メリトクラシー(能力主義)、功利主義、社会構築主義といった「知らないと文意そのものが取れない概念」が出てきます。こちらは高校に入ってからで十分です。どういう種類の読みにくさなのかは英語長文の抽象概念の記事にまとめました。
4.逆に、中学のうちに焦ってやらなくていいこと
相談を受けていて多いのが、先取りの方向を間違えているケースです。中学のうちは、次のものは置いておいて構わないと考えています。
- 難関大の過去問を解くこと…1回で4,000語を読ませる試験に、600語も読めない段階で挑む意味はほとんどありません。できなかったという記憶だけが残ります。
- 抽象概念のインプット…メリトクラシー、功利主義と義務論、記述主義と規範主義。対立する2つの立場を扱う議論は、日本語の読解力が伸びてからのほうが速く入ります。
- 志望校を1つに絞ること…学部で試験がまるごと違う大学がいくつもあります。慶應は文学部が辞書持込可の精読記述で、総合政策・環境情報は約1,000語×3題の読解。同じ大学でも別の競技です。中学のうちに絞る必要はなく、むしろ絞らないほうが選択肢が残ります。
- 単語帳を何冊も並行すること…テーマ共通の50語が出てこない段階で難単語に進むと、どちらも定着しません。
- 英語だけに寄せること…入試英文の中身は理科と社会です。中学の理科・社会・国語で読んだことが、そのまま英語長文の背景知識になります。
5.学校の進度が速すぎて置いていかれたら、どこまで戻るか
中高一貫校でいちばん起きやすいのが、これです。学校は止まってくれないので、分からないまま次に進み、どこから分からなくなったのかが自分でも分からなくなる。
戻る場所を決めるために、3つだけ確認してください。
- 1文の主語と動詞を、指で押さえられるか。ここが崩れているなら、学年に関係なく文の骨組みまで戻ります。
- 共通の頻出語50のうち、意味が出てこない語が何語あるか。10語以上出てこないなら、語彙が先です。
- 600語の英文を、辞書なしで最後まで読めるか。途中で止まるなら、量が足りていないだけかもしれません。
大事なのは、学校の進度に合わせて戻る場所を決めないことです。戻る場所は、上の3つのどこで詰まっているかで決まります。学校が高2の内容をやっていても、骨組みが崩れているなら中学範囲まで戻ってかまいません。遠回りに見えて、これが一番速いです。
自分の学校の教科書がどのくらいの水準なのかは高校別 英語の教科書レベル一覧の記事で比べられます。中学から高3までの並べ方は学年別ロードマップの記事にまとめてあります。
6.保護者の方へ:中学の成績と、大学受験の結果の関係をどう見るか
「中学の成績が悪いと、大学受験も厳しいのでしょうか」。これも本当によく聞かれます。ここは断定を避けて、考え方だけをお伝えします。
ちょうど、入試英語の長文でくり返し問われる考え方が参考になります。「関係がある」と「原因である」は、まったく別の主張だというものです。AとBに関係が見えるとき、考えるべき可能性は少なくとも4つあります。
- AがBの原因である。
- 逆向きで、BがAの原因である。
- AともBとも別の第三の要因が、両方を引き起こしている。
- ただの偶然で、見せかけの関係にすぎない。
中学の成績と大学受験の結果についても、同じことが言えます。関係が見えることはあっても、そこから「中学の成績が原因だ」と決めることはできません。この考え方は入試の英文でも実際に論点になっていて、たとえばスマートフォンと若者の心の状態をめぐる議論では、2本のグラフが同じ時期に動いたことは原因の証拠として弱い、という批判が並べて出題されます。どちらか一方の主張だけを筆者の結論だと思い込むと、設問を外します。
ですので、私たちが面談で見ているのは順位ではありません。行動のほうです。
- 600語の英文を、最後まで読み切れるようになっているか。
- 読んだあとに、内容を一言で言えるか。
- 分からなかったところを、自分で言葉にできるか。
この3つは、順位より先に動きます。順位は後からついてくる指標なので、そこだけを見ていると手の打ちどころが分かりません。
なお、成績や学校のことでお子さんのつらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の相談窓口に相談してください。
7.まとめ
- 中高一貫校の速い進度は目的ではなく、高2までに入試の土台を作り終えるための手段です。
- 入試英語の入口は600〜700語、上のほうは1回で4,000語前後。まずゴールの語数を知ることから。
- 出題分野は歴史・文化125本、脳科学・心理学119本、医療・健康105本……と、中身は理科と社会です。
- 中学のうちにやるのは共通の頻出語50/読む量/テーマの知識の3つ。
- 抽象概念と過去問は高校からで十分。志望校を絞るのも急がなくていいです。
- 置いていかれたときは、学年ではなく詰まっている場所まで戻ります。
中高一貫校の中学生は、大学受験までの時間を一番長く持っている人たちです。その時間を「先に進むこと」に使うのか、「土台を作ること」に使うのかで、高3の1年の中身が変わります。何から手をつけるかだけでも、一度一緒に決めましょう。
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