中高一貫校に通っていると、高2のどこかで一度、こういう感覚が来ます。「学校の進度は速くて、範囲はもう終わりに近い。それなのに、模試の結果が思ったほど伸びていない」。珍しいことではありません。
この記事は、川越・ふじみ野・鶴瀬から通える中高一貫校の高1・高2の生徒と、その保護者の方に向けて書いています。中高一貫の強みが実際にはどこにあるのか、その強みが結果に結びつかないときに何が起きているのか、そして高2の1年間をどう組み立てるかを、順に見ていきます。
EIMEI予備校は中高一貫校の中学生から受け入れています。中3や高1のうちから通い始める生徒もいれば、高2で外部受験に切り替えると決めて来る生徒もいます。以下に書くのは、その面談で繰り返し出てくる論点です。
中高一貫のアドバンテージは「高2の終わりまでに入試範囲が終わること」にある
中高一貫校の利点は、授業の質やクラスの雰囲気より前に、時間の配分にあります。高2の終わりから高3の前半で主要科目の履修が終わる学校が多く、そうなると高3の1年間をまるごと入試問題に使えます。新しい単元を習いながら入試演習を並行する負荷がかかりません。
ただし、自動的に有利になるわけではありません。空いた時間に何を置くかを決めなければ、その時間は空いたままになります。実際に差がつくのは進度そのものではなく、高2のうちに「高3で何をやるか」の中身を決められたかどうかです。学年ごとの全体像は学年別ロードマップにまとめています。
「先取りは終わっているのに伸びない」が起きる理由
面談でよく聞くのは、こういう言い方です。「数学は範囲がもう終わりました。でも模試だと初見の問題で手が止まります」。これは矛盾ではありません。進度と定着は別の指標だからです。
授業で扱ったというのは「一度通った」という記録です。入試で問われるのは「初めて見る問題文から、使う道具を自分で選べるか」です。前者から後者へは自動的には移りません。中高一貫の場合は進度が速いぶん、この差が学年の早い時期から開きます。
計画の側にも理由があります。『受験期の自己管理』では、人が作業時間を実際より短く見積もる傾向(計画の誤謬)を扱っています。卒業論文に取り組む学生を対象にした研究では、完成までの日数の予測が平均33.9日、実際にかかったのは平均55.5日で、予測どおりに終えられた学生は29.7%でした。
「高2の終わりに範囲が終わるから、高3で仕上げられる」という見通しも、同じ種類の見積もりです。足りない時間は、たいてい後ろに寄ってきます。対策は単純で、「今回どうなるか」を考える前に「前回どうだったか」を思い出すことです。高2のうちに始められる手順は3つです。
- かかった時間を測る。数学の大問1つ、英語の長文1題、古文1題に実際何分かかったかをメモします。翌週の計画は、その実績値で立てます。
- 1〜2週間で終わる大きさに割る。「英語長文を伸ばす」は予定に入れられません。「今週はパラグラフの要約を10題」の大きさまで割ります。ボランティア9,000人以上を対象にした実地実験では、1年間の目標を小さい単位に分けて示されたグループの活動量が7〜8%多かったと報告されています。
- 「もし◯時になったら△△をする」の形で、1日1〜2個だけ決める。94件の研究をまとめた分析では、この形で計画を立てた人の目標達成率が中程度から大きく高まることが確認されています(着手できないことへの対策で効果量d=0.61)。
高2のうちに志望校の出題形式を見ておく
時間があるうちにやっておくと効くのは、志望校の過去問を1年分、解かずに眺めることです。理由は、大学によって求められるものが想像以上に違うからです。EIMEI予備校では大学ごとに入試対策読本を自作していて、問題冊子から試験時間・語数・大問数・記述の配点を実測しています。以下はその数字です。
まず、同じ大学の中でどれくらい違うか。慶應義塾大学の英語です。
- 文学部:120分・150点。辞書2冊まで持ち込み可で全問記述。約2,100語の人文系評論1本を和訳し、100字前後の日本語で説明し、英語で意見を書きます。
- 法学部:80分・200点。辞書不可、全問マークで約50問。英文量は5題合計で約2,500語。
- 経済学部:100分・200点。前半のマークで足切りをしたあと、後半が和文英訳と英語エッセー(本文の引用が必須)。
読本では2026年度の受験者平均点も並べています。文学部の英語は150点満点で67.13点=44.8%、法学部(法律学科)の英語は200点満点で147.28点=73.6%。同じ大学の同じ「英語」という科目名で、30ポイント近い差があります。辞書を2冊持ち込んで120分かけても平均が半分に届かない試験がある、ということです。
読む量の要求も学部で変わります。慶應商学部は90分で約5,200語(設問・選択肢込み)を処理するので約58語/分、総合政策・環境情報は120分で3,680〜4,280語なので31〜36語/分です。「超長文で有名」と言われる総合政策・環境情報のほうが、1分あたりに読む量は少ない計算になります。
記述の重さも分かれます。中央大学の英語では、法学部は150点のうち60点が記述(全体の4割)で、中身は下線部和訳と、使う語と書き出しが指定された和文英訳です。商学部は80語以上の自由英作文が15点。それ以外の学部は全問マークで、記述は0点です。東洋大学は全学統一問題で1時限60分・全問マーク・記述なし。ここで身につけるべきは記述力ではなく、60分で解答番号40前後を処理し切る速さのほうです。
早稲田大学は学部ごとに別の試験だと考えたほうが実態に近く、法は資料分析+意見の英作文2題、文・文化構想は自分の言葉での英文要約完成、教育学部C方式は180〜250字の日本語要約+英語論述、一方で社会科学部・人間科学部・基幹理工はオールマークです。
国公立を考えている場合、記述の型は要約・和訳・内容説明・自由英作文の4つで、配合が大学ごとに違うだけです。東京大学は日本語70〜80字の要約と60〜80語の自由英作文、京都大学は和訳と日本語の内容説明が中心で150字前後の和文英訳が加わり、一橋大学は100〜140語の自由英作文と30〜80字の内容説明、名古屋大学はグラフを読んで80〜100語で説明・考察する英作文が定型です。
この一覧を見て高2のうちにやることは、志望校で「書く」作業があるのか、あるなら何語・何字書くのかを確認することだけです。書く作業があるなら、高3から始めて間に合わないことがあります。逆に全問マークなら、記述の練習に時間を使う必要はありません。大学別の数字は大学別まとめから、学部系統ごとの違いは文学部の比較のような記事から確認できます。過去問を実際に解き始める手順は過去問の使い方にまとめました。
高2のうちに決めておかないと戻れないもの
出題形式に関わる要素のうち、あとからでは修正しにくいものが2つあります。
1つめは英語の資格・検定試験です。立教大学は4技能の英語資格試験のスコアを使う設計で、読本では「高2の終わりから高3の夏までに受けておくのが基本線」としています。理由は3つあります。スコアには有効期間があり1年以上前のものでも使えること(2027年度入試なら2025年1月以降に受験したものが有効なので、高2の1月に受けたスコアも使えます)。何度でも受け直して、いちばん良いものを提出できること。そして英語が確定すると、国語と選択科目の2科目に集中できることです。
ただし、この有効期間は大学と年度で違います。成蹊大学の読本には、外部検定について「2024年に受けたスコアが2027年度には使えません。高2の間に受けたスコアを当てにしている人は要注意です」という注意書きを入れています。有効期間を要項で確認してから、受ける時期を決めるという順番になります。
2つめは理科・選択科目の組み合わせです。慶應義塾大学の理系学部を例にすると、理工学部は物理と化学が両方必須で、生物選択では受験できません。薬学部は理科が化学のみ、看護医療学部は数学・化学・生物から1科目、医学部は物理・化学・生物から2科目です。つまり高2で選んだ理科の組み合わせが、受けられる学部の範囲を決めます。読本にも書いているとおり、理科の選択ミスは取り返しがつかないので、慶應を視野に入れているなら高2の段階で決めることになります。
なお、ここに挙げた数字は執筆時点で読本に収録しているものです。今の高2が受けるのはさらに次の年度なので、最終的には各大学の募集要項で確認してください。
中高一貫でつまずきやすい場面
ここからは断定できる話ではなく、面談を通して一般的に見えてくる傾向として読んでください。
高1から高2前半の中だるみ。範囲が進んでいることと、やることが決まっていることは別です。高校受験がないぶん、外から締め切りが来ません。定期テストの前は動けても、その間の時期に何をするかが決まっていないと、進度だけが先に行って定着が置いていかれます。ここで効くのは気持ちを入れ替えることではなく、前の節に書いた「1〜2週間で終わる単位に割る」ほうです。
内部進学との兼ね合い。校内の評価軸(定期テスト・提出物・校内順位)と、一般選抜の評価軸(初見の問題を時間内に処理する力)は、重なる部分もありますが同じではありません。どちらを主にするかを決めないまま両方を薄くやると、どちらの基準でも足りないという状態になりやすいです。決めるために必要なのは、志望校の出題形式を先に見ておくこと、つまり前の節の作業です。
外部受験に切り替える時期。「いつまでに決めるべきか」に一律の答えはありません。ただ、上で見たとおり英語の資格試験と理科・選択科目の組み合わせは、高2のうちに動かす必要がある項目です。この2つを判断材料として先に調べておけば、切り替えの決断自体を後ろに置いても選択肢が残ります。逆にここを空けたままにすると、決めた時点で受けられる学部が減っていることがあります。
学校と塾の両方で負荷が高くなる時期でもあります。つらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の相談窓口に相談してください。勉強の設計だけで解決しようとしないほうがよい場面もあります。
高2の1年間の組み立て
ここまでを1年の並びにすると、こうなります。
- 春から夏:定着の確認に使う。終わった単元を「もう一度初見のように解く」時間を作ります。かかった時間を測って記録するのも、この時期から始めます。
- 夏から秋:志望校の出題形式を調べる。候補の大学・学部について、試験時間、記述の有無と配点、書く語数・字数を1枚に書き出します。ここで初めて「高3で何をやるか」が決まります。
- 秋から冬:英語の資格試験と科目の組み合わせを決める。有効期間を確認してから受験時期を決め、理科・選択科目を確定させます。
- 冬から高2の終わり:志望校の過去問を1年分、時間を計って解く。点数を取るためではなく、あと1年で埋める差を測るためです。
この1年を回すための工夫も、『受験期の自己管理』の行動面の章がそのまま使えます。勉強中はスマホを別室か手の届かない鞄に置くこと(合計795人が参加した2つの実験で、別室に置いた条件は机の上に置いた条件より作業記憶のテストの成績が高く、机の上に伏せて置くだけでは足りないという結果でした)。通知は「見ない」のではなく、音・バイブ・画面点灯をまとめて切ること(応答しなくても通知を受けただけでミスの割合が3倍以上に増えたという実験があります)。そして週に1回10分だけ、今週いちばん崩れた領域を1つ書き出し、来週続ける工夫と減らす工夫を1つずつ決めること。
同書は体の面(食事・睡眠)も扱っていますが、そこは体調の話なので、心配なことがあれば家族や学校の先生、医療機関に相談してください。行動と時間の設計の部分は受験期の自己管理の記事にまとめています。
この記事の要点
- 中高一貫の強みは、高2の終わりまでに入試範囲が終わり、高3を丸ごと入試問題に使えること。空いた時間に何を置くかを高2のうちに決めるかどうかで結果が変わります。
- 進度と定着は別の指標です。「一度通った」を「初見で解ける」に変える作業を、時間を測りながら高2から進めます。
- 大学・学部によって求められるものは大きく違います(慶應文学部は辞書2冊持ち込み可で全問記述、中央法学部は150点中60点が記述、東洋大学は60分全問マークで記述なし)。書く作業があるかどうかを高2で確認するのが、いちばん効く準備です。
- 英語の資格試験と理科・選択科目の組み合わせは、高2のうちに動かす項目です。有効期間と科目の必須条件を要項で確認してください。
EIMEI予備校は中高一貫校の中学生から受け入れています。「進度は速いけれど、これで足りているのか分からない」という段階で来てもらえれば、志望校の出題形式から逆算して、高2の1年でやることを一緒に決められます。
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EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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