こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、川越とその周辺の高校に通う高校生・浪人生で、入試数学を「どの単元から手をつけるか」で止まっている人に向けて書いています。
数学の対策は、ふつう「志望校の過去問を解く」ところから始めます。それ自体は正しい進め方です。ただ、1校の過去問だけを見ていると、その単元がその大学だけの傾向なのか、多くの大学に共通する傾向なのかが判断できません。そこで、EIMEIが大学別の入試対策読本を自作する過程で集めた10大学の分析データを、単元ごとに並べ替えてみました。
先にお断り|大学をまたいだ数字の比較はできません
以下に出てくる「3/3」「63大問中18」といった数字は、各大学の分析資料に記載された分母・分子をそのまま使ったものです。分析した冊数も大問の数え方も大学ごとに違うので、読み方は2つに限ってください。同じ大学の中で単元どうしを比べるか、同じ単元で大学ごとの「出る・出ない」を個別に見るかです。
対象は早稲田・明治・青山学院・立教・中央・法政・慶應義塾・学習院・東洋・東京電機の10大学、年度はおおむね2022〜2026年度です。明治(文系4学部)・東洋・東京電機の3大学は原資料が要約にとどまるため、参考程度の扱いになります。
優先度1|場合の数・確率は、志望校が決まっていなくても先に固める
まず分かったのは、場合の数・確率だけは大学差がほとんど問題にならないということでした。「出題ゼロ」という事例が資料の中に見当たりません。
- 慶應義塾|文系4学部が12/12、理系4学部(医・理工・看護医療・薬)も各3/3。8学部12冊すべてで毎年出題です。
- 立教|理系は大問Ⅰで6/6(毎回必出)、文系も大問Ⅰで6/8。学習院|12冊中10。
- 中央|文系では独立大問としての出現が59大問中11で、文系分野別頻度の最多です。
- 青山学院|社会情報学部C方式は3/3で毎年「問題1」に固定。4ルート横断でも最頻出単元です。
- 明治|理工・総合数理・農がいずれも3/3、文系も商・情報コミュニケーションが3/3(参考情報)。
理系型でも比重が下がりにくい点も見逃せません。中央大学の理系では、場合の数・確率が20大問中3(15%)なのに対し、後述する微分積分(Ⅱ)は20大問中1(5%)にとどまります。理系志望でもこの単元を後回しにしてよい根拠は、資料のどこにも見当たりませんでした。
またマーク式でも記述式でも出方が変わらず、融合問題の芯にもなります。慶應義塾大学医学部では、単独の大問としてだけでなく確率漸化式という形で3年連続(3/3)出題されています。数列(漸化式)と組み合わせた出題なので、「確率だけ」「数列だけ」を仕上げても届きません。
優先度2|文系数学の主役は微分積分(Ⅱ)。ただし1つ大きな例外があります
文系型では、微分積分(Ⅱ)が場合の数・確率と並ぶ頻出単元で、多くの大学で特定の大問番号に固定される「定位置」として記録されています。
- 法政(文系)|45大問中13(29%)で単元別の最頻出。立教(文系)|記述大問(Ⅱ・Ⅲ)で8/8。慶應義塾(文系4学部)|12冊中11。
- 青山学院(文系・全学部日程)|大問Ⅳで3/3。しかも内容が3年連続で「放物線の接線・法線と面積」で一致しています。
- 中央(文系)|主題10+他単元との副題融合2=12(17冊中)。5学部共通選抜方式では大問Ⅳが3年とも固定です。
- 明治(文系4学部)|商・情報コミュニケーション・政治経済が3/3、経営2/2(参考情報)。政治経済は大問Ⅰがマーク小問集合、大問Ⅱが微積分の記述という構成で3年固定です。
例外は早稲田大学社会科学部です。同じ早稲田でも商学部は3/3なのに対し、社会科学部は0/3(3年間ゼロ)。同学部は大問3題すべてが全記述で「途中経過を記述すること」が明記されており、頻出単元は整数3/3、数列2/3、図形と方程式2/3と論証系に重心が置かれています。
理系型では話が変わります。中央大学理系の微分積分(Ⅱ)は20大問中1(5%)で、同大学の文系(17冊中12)とは対照的です。理系は微分積分(Ⅱ)そのものより、数Ⅲの微積分に重心を置くべきということが、この数字から読み取れます。
優先度3|数列とベクトルは「範囲外」「文理で真逆」という落とし穴がある
この2つには、頻度の高低より先に確認すべきことがあります。
ひとつめ。東洋大学の文系(数Ⅰ・Ⅱ・A系列)は、数列とベクトルがそもそも出題範囲に入っていません。資料に「数列・ベクトルなし」と明記されており、2022年度の文系8本はいずれも範囲に含んでいません(参考情報)。これは「頻度が低い」のではなく構造上の違いです。東洋大学文系志望なら、この2単元に割く時間をそのまま他に回せます。
ふたつめ。中央大学は、ベクトルが文系と理系で真逆になります。文系(17冊)では主題3+副題2=5回で頻出単元の一角ですが、理系(5冊・20大問)では3年間で一度も出題されていません(0/5)。資料も「真逆の分布」と明記しています。
「出ない」にも種類があります。慶應義塾大学の文系4学部はベクトルが合計6/12ですが、総合政策だけが3年間ゼロ、経済学部A方式は逆に3年連続で記述問題です。法政大学(文系45大問中3、理系63大問中7)や学習院大学(4/12)は頻度こそ低いものの0ではありません。「範囲外だから出ない」単元には時間を割かなくてよく、「低頻度だが出る」単元は基礎だけ押さえるという切り分けが要ります。
出方が文理で変わる例もあります。立教大学は、文系では小問集合(大問Ⅰ)でベクトルが6/8なのに対し、理系では大問Ⅰが2/6にとどまり、代わりに記述式の大問で空間ベクトルが3/6出題されます。数列も、慶應義塾大学文系4学部が12冊中11と高い一方、学習院大学は12冊中2、青山学院大学文系は1/3と幅の大きい単元です。
日々の演習をどう組むかについては、数学の勉強法をまとめた記事も合わせて読んでみてください。
理系数学は数Ⅲが決定打|極限・微分積分(Ⅲ)は「最終大問」という定位置
理系型で最も重い単元ははっきりしています。極限・微分積分(Ⅲ)で、資料でも場合の数・確率と並んで「理系型ではほぼ必出」と位置づけられています。
- 早稲田(理系・基幹理工/教育B方式)|6/6。「必ず最終大問」「6回とも例外なし」と明記。数Ⅲの比重自体は基幹理工で20〜60%、教育B方式で25〜75%と年度差が大きいのですが、最終大問の位置は揺らぎません。
- 青山学院(理工)|6/6。「後ろの大問ほど数Ⅲ」という傾向が指摘されています。
- 法政(理系)|63大問中18(29%)。9冊すべてでⅥ・Ⅶの2大問が固定枠。
- 中央(理系)|11/20(55%)。立教(理系)|記述大問(Ⅱ・Ⅲ)で6日程すべてに出題。
- 慶應義塾|医3/3、理工3/3(実質どの大問にも絡む)、薬2/3(増加傾向)。学習院(理学部)|4/4で必出。
- 明治|理工3/3(数Ⅲ比重は2024年度の約4割から2026年度に約5割へ上昇)、総合数理3/3。
逆に、数Ⅲが試験範囲から外れている学部では、頻度以前に出題が構造的にゼロになります。明治大学農学部(数Ⅲ比重0%、0/3)と慶應義塾大学看護医療学部(0/3)がその例で、学習院大学の文系3学部もそもそも数Ⅲを課しません。この単元をどれだけ重く見るかは、志望学部が数Ⅲを課すかどうかでほぼ機械的に決まります。
ただし「マーク式だから数Ⅲは後回し」は成り立ちません。青山学院大学理工学部はマーク式の問題1・2にも数Ⅲが混入する年があるとされています。また東京電機大学は理工学部のみ数学Ⅲまたは数学Ⅱ・Bの選択制で、選ばなかった方の解答用紙を試験開始50分後に回収するという仕組みが確認されています(参考情報)。詳しくは東京電機大学の傾向と対策へ。
そして数Ⅲは融合問題になりやすい単元でもあり、確率やベクトルと組み合わされた複合問題として出やすいことが記録されています。理系で複数校を比べるときの見方はこちらの記事も参考にしてください。
大学差が最も激しい単元|複素数平面・式と曲線・整数・統計的推測
ここからは「志望校が決まるまで手をつける順番を決められない」単元です。逆に言えば、志望校が決まっていれば大きく時間を節約できます。
複素数平面は、資料でも「最も大学差の大きい単元のひとつ」とされています。慶應義塾大学理工学部は3/3で理系4学部中唯一の毎年。一方、法政大学理系は0/9(63大問を通じてゼロ)、学習院大学は理学部4冊を含めた12冊すべてでゼロです。同じ慶應でも総合政策は3年間ゼロ、環境情報学部は2年連続で独立大問でした。中間層は早稲田理系2/6、中央理系2/5、青山学院理工1/6という水準です。
式と曲線(2次曲線・媒介変数・極座標)は、早稲田大学理系の5/6だけが突出しています。中央大学理系は0/5、学習院大学は12冊すべてゼロ、慶應義塾大学文系4学部は0/12。法政大学理系は媒介変数表示のみ4/9で、楕円・双曲線・極座標は0です。
整数の性質は、同じ大学の学部間で正反対になります。慶應義塾大学は理工学部3/3に対し、医学部0/3・看護医療学部0/3、薬学部1/3。医学部には「2029年度から追加予定」という告知が記録されており、現在の0/3と矛盾しません。学習院は理学部を含む12冊すべてでゼロです。
統計的推測とデータの分析は新課程移行の途中にあり、すでに出している大学とまだ一度も出していない大学が分かれます。先行しているのは慶應義塾大学の医(統計的推測2/3、大問Ⅰ冒頭)・看護医療(大問5を毎年この分野に充当)・薬(2/3)、青山学院大学経済学部B方式(2025年度から独立大問Ⅲとして新規登場)、明治大学農学部(2026年度に信頼区間)です。一方、早稲田・法政は文理とも全冊ゼロ、学習院は12冊すべてゼロ、慶應義塾大学理工学部は理系4学部で唯一「両分野ともゼロ」。ただし明治大学政治経済学部は2027年度から範囲追加が予告されており、「今ゼロ」と「今後もゼロ」は別です。
マーク式か記述式かで、同じ単元でも勉強の中身が変わります
ここは優先順位と同じくらい大事です。全問マークシート方式の大学・方式では、証明問題は構造的に出題されません。法政大学理系は63大問中0、東洋大学も「全問マーク式のため記述式問題はゼロ」と明記されています(東洋は参考情報)。
- 全問記述|早稲田(商・社会科学、理系はマーク一切なし)、学習院(12冊すべて)、東京電機(全16本、参考情報)。
- 全問マーク|法政理系(9冊すべて)、東洋、青山学院の文系、慶應義塾の総合政策・環境情報、早稲田の人間科学部文系方式。
- 併用|青山学院理工、中央の理工学部別選抜(Ⅰ・Ⅱマーク+Ⅲ・Ⅳ記述、3年不変)、慶應義塾の経済A方式(前半マークで足切り対象、後半記述)、法政文系(A方式は3大問記述、T日程は6大問全問マークという二重構造)。
記述の負荷が特に重いのは、慶應義塾大学理工学部(証明記述が毎年2〜4問)、中央大学理系の共通テスト併用方式(ほぼ全題に複数の「示せ・証明せよ」)、明治大学総合数理学部(4〜5大問のうち2題が完全記述)です。
整理するとこうなります。マーク式では、場合の数・確率、指数対数、微分積分Ⅱの計算処理のように、計算量が多く答えを一意に定めやすい単元が優先されます。記述式では、微分積分の増減表を用いた証明、数学的帰納法による数列の証明、複素数平面の軌跡証明のように、過程そのものを評価する設問が定着します。つまり、マーク中心なら計算の速さと正確さ、記述中心なら論証の書き方までと、練習の重点そのものが変わります。
着手の優先順位|この順で決めてください
- 志望学部が数Ⅲを課すかを確認する。理系数学の設計の半分がここで決まります。課さないなら(明治農、慶應看護医療など)極限・微分積分(Ⅲ)の優先度は大きく下がります。
- マーク式か記述式かを確認する。記述式なら、微分積分・数列・整数・複素数平面の証明問題を重点的に練習します。
- 場合の数・確率を最優先で仕上げる。志望校が未定でも損をしません。
- 文系なら微分積分(Ⅱ)、理系なら数Ⅲの微積分を次に。早稲田社会科学部志望だけは、整数や図形と方程式などの論証系に時間を割く判断が頻度からも支持されます。
- 数列・ベクトルを志望校ごとに判定する。東洋大学文系は範囲外、中央大学理系はベクトル3年間ゼロ。ここで時間配分が大きく動きます。
- 複素数平面・式と曲線・整数・統計的推測は、学部単位で確認してから。慶應義塾大学のように0/3と3/3が同じ大学の中に同居します。
- 図形と計量・指数対数・三角関数・数と式・2次関数は、小問集合の得点源として並行で。三角関数と2次関数は多くの大学で独立大問になりにくい単元です(中央文系は2次関数が59大問中0、慶應文系は12冊中0)。ただし青山学院大学理工学部だけは三角関数が5/6と高頻度です。
大学ごとの急所を確認したい場合は、大学別の傾向と対策まとめから該当する記事を開いてみてください。
川越校舎では、この判定を一緒にやります
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