こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、川越とその周辺の高校に通っていて、大学入試で数学を使う高2・高3生と、その保護者の方に向けて書いています。「演習量がすべて」と言われて問題集を回しているのに点数が動かない、という相談が毎年いちばん多い科目だからです。
結論を先に書きます。数学の準備は、志望校の答案が「マーク式か、記述式か」で半分が決まります。もう半分はどの分野から固めるかです。この2つを決めずに問題集を1冊目から順に解くと、本番で使わない力にいちばん時間を使うことになります。
以下の解答形式・分野の出題数は、EIMEI予備校が自作した大学別の「入試対策読本」で、実際の問題冊子を1冊ずつ確認して数えた内容です。
最初に確認すること|「書かせる試験」か「合わせる試験」か
- 全問記述…学習院(12冊すべてマークシートなし・4大問)、立教の文系数学、慶應の理系4学部(12冊にマークシート1冊もなし)、東京電機、埼玉大の工学部(答案用紙4枚)、早稲田の理工3学部
- 全問マーク…法政の理系数学(9冊すべて)、法政のT日程(6大問)、青山学院の全学部日程文系(4大問・数学Ⅲなし)、早稲田の人間科学部数学英語型、慶應のSFC
- 混合…中央の理工系学部別選抜(Ⅰ・Ⅱがマーク、Ⅲ・Ⅳが記述)、明治の理工学部(Ⅰがマーク、Ⅱ・Ⅲは答えのみ記入で途中経過は不要)、成蹊の理工A方式、慶應の経済A方式
大事なのは、「記述」でも中身が3段階に分かれることです。明治の理工学部のような答えだけ書けばよい記述、立教のように毎回3〜4問「途中経過も書くこと」と指定される記述、そして書かないと0点になる記述です。
- 法政A方式の冊子209・212(経済・社会・現代福祉・スポーツ健康)…「途中経過も書くこと」「その指示どおりでない場合は採点の対象としない」
- 早稲田の社会科学部…「計算の途中経過を記述すること(記述がない解答は採点対象外)」
- 青山学院の理工学部…「問題3、4、5の解答については、論述なしで結果だけ記しても、正解とは見なさない」
学習院はさらに明快で、大問ごとに「答えだけ」か「過程も書く」かが冊子に明示されます。これを知らないまま答えだけ書いて丸をつけ、「取れた」と誤解したまま本番に入る人が毎年います。最初の1手は問題集選びではなく、志望校の冊子の指示文を読むことです。
先に固める分野|文系
文系数学の上位2分野は、大学をまたいでほぼ一致しました。
- 微分積分(数学Ⅱ)…中央は文系17冊59大問のうち12題。法政は45大問中13題で29%と最頻出。学習院8/12冊、成蹊の文系Aは9冊すべて。立教は記述大問が8冊すべて微積Ⅱで、毎回必ず面積計算が入ります
- 場合の数・確率…学習院10/12冊、成蹊の文系A9/9冊、中央11題。慶應の文系4学部12冊では12冊すべてに出た唯一の分野でした
やることははっきりしています。「3次関数の接線・極値」「囲まれた面積」「面積の最大最小」を、考えずに手が動く水準まで。そして条件付き確率と期待値まで。難問は求められていません。中央大学が公表する5学部共通選抜の出題の意図には、「理解度と計算力をみています」が4つの設問すべてに出てきます。
3番目以降は志望校で入れ替わります。図形と方程式(中央9題、法政18%)、数列(中央8題、早稲田の商学部3/3)、ベクトル(立教の大問Ⅰで6/8、慶應の経済A方式は3年とも記述に1題)、指数対数・図形と計量(立教6/8、学習院6/12)。
差が大きいのが整数です。早稲田の社会科学部は3/3で最優先、法政のT日程は18大問中7題で39%と最多。一方学習院の文系は3年間ゼロ。成蹊の法学部A方式にいたっては数列もベクトルも出題範囲外で、実際に3冊に1問も出ていません。範囲外の分野に時間を使わないでください。
統計的推測は、読本の範囲ではほとんど出ていません(法政0/45大問、中央の文系0/22冊、早稲田は全方式ゼロ、学習院の文系もゼロ)。ただし例外があります。
- 青山学院の経済学部B方式…2025年度から独立した大問Ⅲとして登場。母比率の信頼区間、必要な標本サイズ、確率変数の1次変換という教科書レベルの3点セットで、難度が低いわりに配点が確保されており費用対効果が高い
- 明治…2027年度入試から政治経済学部と総合数理学部の範囲に数学Bの「統計的な推測」が追加。ところがこの2学部は3年間ゼロで、過去問に前例のない新規分野です。情報コミュニケーション学部はデータの分析が3年連続
- 慶應の看護医療学部…大問5がデータ・統計の確定枠で、ここだけで配点の5分の1です
大学別の詳細は中央大学の記事と法政大学の記事にまとめています。
先に固める分野|理系
主役は全大学で一致しました。数学Ⅲの微分積分です。
- 中央(理系)…極限・微積分(Ⅲ)が20大問中11題で55%
- 法政(理系)…大問ⅥとⅦが9冊すべて数Ⅲ微積。解く5問のうち2問=40%です
- 早稲田(理工3学部)…6回とも例外なく最終大問が数Ⅲの微分積分(面積・回転体・極限)
- 立教(理系)…記述の大問Ⅱ・Ⅲが6日程すべて数Ⅲの微積
- 埼玉大(工学部)…5年分20大問のうち10題が数Ⅲの微積分・極限に絡む。青山学院の理工も6冊すべてで出題
しかも型が似ています。法政は「導関数・第2次導関数 → 増減・凹凸の判定 → 部分積分または置換積分」が3年間ほぼ変わりません。東京電機の問題3も「接線→面積→回転体」または「増減表→グラフ→最大最小」の誘導型です。この流れを手が止まらずに書き切れるようにすることが理系の最優先です。
2番目は大学で正反対になります。
- 複素数平面…慶應の理工学部は3/3、立教の理学部数学科は第Ⅳ問に6回中3回。一方法政は9冊63大問で0回、青学の理工は6冊中1冊です
- 式と曲線…早稲田の理工は6回中5回。ところが中央は3年間0%、法政も楕円・双曲線・極座標は0(媒介変数表示の曲線だけは数Ⅲ積分の道具として4/9冊に出ます)
- 空間ベクトル…早稲田5/6、法政7/9冊、埼玉大3/5年。一方中央の理系は3年間ゼロです(文系では頻出なので、問題集の見出しに引きずられないこと)
- 整数…慶應の理工学部は3/3、早稲田5/6。ところが慶應の医学部は3年ともゼロで、同じ大学でも正反対です
- 確率漸化式…慶應の医学部は毎年大問Ⅱが丸ごとこれ。早稲田4/6、埼玉大・東京電機でも出る定番です
統計的推測は理系の独自試験ではほぼ出ていません(早稲田理工0/6、法政0/63、埼玉大0/5年)。ただし慶應の薬学部は2025・2026年とも独立大問です。また明治の農学部は数学Ⅲが3年とも一切出ていません。理系でも数Ⅲが不要な学部はあります(東京電機大学の記事、立教大学の記事)。
典型問題の習得手順|「解いた」と「できる」は違います
1|例題を、解答を見ながら写す
手が出ない問題を30分にらむのは時間の無駄です。5分考えて方針が浮かばなければ解答を見てください。ただし読むだけでは入りません。解答を見ながら、ノートに最後まで書き写します。
このとき、余白に「なぜその一手を選んだのか」を日本語で1行足してください。「最大最小だから微分して増減表」程度で構いません。この1行が、初見問題で手を動かすときの引き金になります。
2|解き直す
翌日か翌々日に、解答を見ずに同じ問題を最初から書きます。止まった箇所が本当の弱点です。印をつけ、1週間後にもう一度。目安は「同じ問題を3回連続、解答を見ずに完答できたら卒業」です。2回では足りません。3回目で初めて、手順ではなく判断が身につきます。例題150題の問題集なら1日5題で30日、解き直しを含めて2〜3か月で1冊という計算です。
3|初見問題を、時間を計って解く
ここで初めて「知っている型に翻訳する力」が測れます。大事なのは、解けなかった初見問題を1の段階に戻すことです。「あの例題の型だった」と分かれば、その例題をまた3回やります。新しい問題集を買う必要はありません。順番を飛ばすと、解けない問題が積み上がるだけです。
計算ミスを減らす具体策
マーク式|空欄の形から逆算する
マーク式には部分点がありません。成蹊の法学部A方式は答えを数字と負号だけでマークするので、途中の計算ミスが1つあればその設問は0点です。だからこそ空欄の形そのものが情報になります。
- 空欄の個数を先に見る…答えの桁数が決まります。2桁の空欄に3桁の答えが出たら、その場で計算ミスが確定します
- 符号欄の有無を見る…早稲田の人間科学部はマイナス59から59までを十の位と一の位に分けてマークします。法政のT日程は選択肢にマイナス符号がありません。負の答えが出たら、どこかが違うということです
- 細則を先に読む…中央の共通選抜も法政のT日程も「分数は既約」「根号内は最小」といった細則があります。約分し忘れは、正解していても0点です
- 分母の形から検算する…分母に空欄が2つあれば答えは整数ではありません。整数が出たら立式を疑います
マーク式の大学を受けるなら、普段の演習から答えをマークの形で書いてください。ノートに書いて丸をつけるだけでは、この逆算の癖がつきません。
記述式|途中式は「読み手のために」残す
点をくれるのはあなたではなく採点者です。次の3つを省かないでください。
- 式を立てた根拠…使った公式名か、成り立つ条件を一言添える
- 場合分けの明示…番号を振り、場合分けの基準そのものを1行書く
- 積分・微分の計算過程…置換したなら置換の式を、部分積分ならどちらをどちらに選んだかを残す
青山学院の経済学部B方式は、記述の採点観点を公表しています。「どのような論理展開を行っているか」「時間的制約の中で適切な解法を選択できたか」「採点者へ自分の考えが正確に伝わるためにどのように解答の記述方法を工夫したか」の3点です。書き方そのものを評価すると公言しているわけです。
そして記述式には部分点があります。東京電機の問題3は誘導型なので、途中の1段でつまずいても、前問の結果を仮定して先に進む答案を書けば点が来ます。早稲田の理工3学部の「示せ」も、方針が立たなくても定義を書いて途中まで進めれば部分点になります。空欄で出さないこと。
なお記述は自分では採点できません。模範解答と見比べて「だいたい合っている」と思ったものの多くは、点になりません。週に1本でいいので先生に見てもらってください。
選択問題と時間配分は、演習の前に確定させる
- 法政の理系数学…7大問のうち5問を解きます。どの5問かは学科ごとに指定され、指定外を解答しても採点されません
- 中央の共通テスト併用方式…4題中3題を選び、選択欄に○×を書きます。4題すべてに○をつけると全無効。逆に苦手分野を1つ捨てられる方式でもあります
- 慶應の経済学部A方式…[1]〜[3]が最初に採点され、英語との合計が一定点に達した受験生のみ[4]〜[6]が採点されます。マーク部で届かないと記述は読まれません
「何を捨てるか」は本番ではなく演習のうちに決めてください。迷う時間が失点になります。
時間配分も先に計算します。法政はA方式が1題20分、T日程が1題10分。早稲田の人間科学部(数学英語型)は60分で5題=1題12分。慶應のSFCは120分で解答欄130前後=1個あたり約55秒です。
東京電機なら読本で90分を「問題1に25分、問題2に25分、問題3に30分、見直しに10分」と配分し、目標7割(問題1で9割、問題2で7割、問題3で5割)としました。早稲田の理工3学部のように完答が難しい試験では、最初の10分で全大問に目を通し、完答できそうな2題を決めてから書き始める取り方まで先に決めます。
過去問に入る時期|9月から2月までの流れ
- 高3の4〜7月…典型問題の習得(手順の1・2)。志望校の頻出分野から。理系なら数Ⅲの微積、文系なら微積Ⅱと確率を最優先に
- 高3の8月…頻出分野の初見演習。ここまでに「先に固める分野」を一周し終えるのが目標です。同時に志望校の解答形式(マークか記述か、どこが途中経過必須か)を確認
- 9〜10月…いちばん古い年度を1回、時間を計らずに解きます。点数を出すためではなく、どんな問題が出るのかを知るのが目的。大学が公表する出題の意図もここで読みます
- 11〜12月…過去問にはいったん手を出さず、分野別の弱点をつぶします。焦って過去問を消費すると、本番形式の練習材料がなくなります
- 1月…2年目の年度を本番と同じ時間で解き、素点を記録
- 1月下旬…弱点の補強。新しい分野に手を出さないこと
- 2月上旬…最新年度を本番と同じ時間で。最後の予行演習です
記録するのは3つだけで足ります。①素点と得点率、②分野ごとの失点、③時間が足りたか(足りなければどの大問で詰まったか)。年度ごとに並べると、仕上がりが一目で分かります。
もう1つ。「その大学の過去問」ではなく「自分が受ける日程の過去問」を解いてください。法政はA方式とT日程で完全に別問題です。埼玉大の工学部と理学部数学科は5年とも全問共通なので、理学部数学科の過去問を買い足しても練習量は1題も増えません。青山学院大学の記事のように、1つの大学に数学の方式が6つある例もあります。
まとめ
- 志望校の冊子が「マークか記述か」「どこが途中経過必須か」をまず調べる
- 文系は微分積分Ⅱと場合の数・確率から。次に図形と方程式・数列・ベクトル。整数と統計的推測は志望校の実績で判断
- 理系は数学Ⅲの微分積分から。2番目の分野は大学で正反対になるので、必ず志望校で決める
- 典型問題は「写す→解き直す→初見」。3回連続で完答できたら卒業
- マーク式は空欄の形から逆算。記述式は根拠・場合分け・計算過程を省かない
- 過去問は9〜10月に1年分、11〜12月は弱点補強、1月と2月上旬に本番と同じ時間で
数学は、やり方を変えると点数の動き方が変わる科目です。志望校が求めていない力に2時間使えば0点のままですが、頻出分野を答案の形で書く練習に使えば、その日のうちに得点に変わります。
EIMEI予備校の川越校舎は、川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分です。自習室は朝7時から使えますので、学校に行く前の1時間を計算演習にあてられます。指導は1対1の個別指導なので、志望校の解答形式に合わせて「何をどの順番で固めるか」を一人ずつ決め、記述の答案もその場で見ます。
「志望校は記述かマークか」「今の問題集をこのまま続けていいのか」。そういう段階のご相談でかまいません。川越校舎の無料体験・個別説明会はこちらからお申し込みいただけます。大学別の入試対策読本をお見せしながら、今やるべきことを一緒に整理します。
