過去問を1回解いてみたら、思っていたより全然できなかった。時間が足りず最後の大問が白紙だった。9月から11月の面談で、いちばん多く聞く相談のひとつです。
この記事は、過去問を解いて点が取れなかった高3生・既卒生が、そのあと何をするかを決めるために書きました。いつから何年分やるかは過去問はいつから何年分解くかにあります。ここでは、落ち込んでいる答案を前に机の上で何をするかだけを扱います。数字は、川越校舎で使う大学別の入試対策読本のために問題冊子を数えた結果です。
初回の過去問で点が取れないのは、ふつうのことです
初回の過去問で点が取れないのは、実力が足りないからだけではありません。出題の作りが、学校の教材や模試とそもそも違うからです。
明治大学の学部別入試の問題冊子を3年分(2024〜2026年度)確認したところ、政治経済学部の英語は試験時間60分に対して設問が60〜65問ありました。1問あたり1分を切ります。法政大学のT日程の英語は、2026年度は1本1,000語前後の長文を4本、90分でした。学校の教科書や模試の大問1つを解く感覚とは、1分あたりに処理する量が違います。
記述の量も違います。東京電機大学の一般選抜(前期)は、数学は3題すべてが記述、物理は問3が導出過程つきの記述、化学は4題のうち2題、生物は3題中2題が記述です。マーク式の演習ばかりでは、答案に何を書けばよいか分からないまま時間が過ぎます。解く順番の設計も要ります。明治大学の文学部の国語は現代文・古文・漢文の3大問を60分で、現代文を20〜25分で抜けないと最後の漢文が空欄のまま終わります。
1回目の過去問は、点を取るための試験ではなく、この差を測る道具です。点が低かったこと自体は情報量が少なく、大事なのはこのあとの分類です。
「解けなかった」を5つに分けます
「できなかった」のままでは、次にやることが決まりません。答案を前に、次の5つに分けます。
- 時間が足りなかった
- 知識が足りなかった
- 設問形式に慣れていなかった
- 解き順を間違えた
- 自分の受ける試験と違う年度・日程を解いていた
同じ0点でも、①なら演習の速度、②なら知識の穴、③なら形式の練習、④なら時間配分、⑤なら数え直しと、やることが全部違います。
①時間が足りなかった
時間が来たところで一度ペンを置き、答案に線を引いてから、別の色で続きを解いてください。そして点数を2つ出します。時間内の点と、時間無制限の点です。
この差が大きければ原因は①で、知識の問題ではありません。差が小さければ、延ばしても取れていないので②か③です。あわせて解き終わらなかった大問と、そこにかかった時間を書き留めます(英語が時間内に解き終わらないとき)。
②知識が足りなかった
答案と問題冊子に戻り、知らなかった語と単元に印をつけます。そのうえで3つに仕分けます。
- 単語・熟語:意味を知らなかった。覚えれば次は取れる。
- 文法・語法:知っているはずだが判断できなかった。参照先を1冊に決めて戻る。
- 単元そのもの:まだ習っていない、または手をつけていない。予定表に入れる。
3つめが混ざると復習の重さが変わります。明治大学の情報コミュニケーション学部の数学は、データの分析が3年中3回出ていました。ここが未習なら、過去問の復習ではなく単元の学習に戻るのが先です。印の数も数えます。1回分で知らなかった語が30語なら語彙水準に届いていない、3語なら原因は②ではありません。
③設問形式に慣れていなかった
いちばん見落とされる原因です。見分け方は、「知っていたのに点にならなかった」設問を数えることです。
実例があります。明治大学の商学部の英語は、問題冊子の表紙に「あいまいな綴り方は不正解とする」と明記されていて、動詞の語形変化8語は知っていても綴れなければ0点です。東京電機大学の記述科目では、有効数字の桁、指定された使用語句、字数、語形変化といった形式の指定を守れていないだけで0点になります。
採点のときは、点数と別に「形式で落とした設問の数」を数えてください。演習量ではなく、形式を1回確認するだけで減る数字です。
④解き順を間違えた
見分け方は、大問ごとにかかった時間を記録することです。ストップウォッチを大問ごとに押し直して並べます。最初の大問に25分使って最後が白紙なら原因は④です。
形式が固定されている大学では、順番は事前に決められます。明治大学の政治経済学部の国語は、評論1・評論随筆1・古文1・漢字語彙1の4大問が3年とも同じ並びでした。漢字語彙の大問を最初の3分で片づけると決めておけば、残り57分を3つの読解に配れます。法政大学のA方式の英語は、同じ冊子でも文学部だけが3題を60分、経営・人間環境は4題を90分と持ち時間が違います。1回目で崩れた順番を、2回目までに紙に書いて決めておく。これが④への対処です。
⑤自分の受ける試験と違う年度・日程を解いていた
これは点数ではなく、数え直しの話です。解いた1回分が、自分の受ける試験と同じ作りだったかを確認してください。
違っていることが本当にあります。明治大学の経営学部は2026年度に形式が大きく変わり、英語から文法語法の独立大問(15問)が消えて、共通テスト型の図表・実用文の読解が2大問25問新設されました。法政大学のT日程の英語も、2024年度には知識問題の大問が2つありましたが、2026年度には長文4本だけになりました。
日程・入口の違いも同じです。法政大学は冊子の表紙の3桁番号が日程を表していて、105冊を突き合わせた結果、番号が違う冊子で内容が一致した組み合わせは一つもありませんでした。明治大学も学部別入学試験と全学部統一入学試験は別問題です。さらに明治の政治経済学部と総合数理学部は2027年度から数学に「統計的な推測」が加わりますが、この2学部は3年とも出題がありません。過去問に前例がない分野は、過去問では対策できません。
今回の点は、どう扱うか
合格最低点との距離の測り方は今の立ち位置の測り方にまとめました。ここでは今回の点の扱いだけ書きます。
知っておくべきなのは、公表されている合格最低点をそのまま素点と比べられる大学と、比べられない大学があることです。明治大学は要項にも入試結果の資料にも得点調整・成績標準化の記述がないので、公表された最低点を答案の上の目安として読めます。法政大学は逆で、入試結果データに「合格最低点は、得点調整(標準化)後の点数です」と注記があり、計算式は非公表です。つまり法政では過去問の素点と合格最低点を直接引き算しても意味がありません。
ですから今回の点は、同じ試験を解いた自分の前回と比べるものとして扱います。10月に55%だったものが1月に70%になっていれば、仕上がりは進んでいます。1回目の点そのものに、それ以上の意味を持たせないことです。
1回分の復習にかける時間と、その内訳
試験時間60分の科目1つなら、復習に90〜120分、解いた時間の1.5倍から2倍を見てください。内訳の目安です。
- 時間を計り直す:15分 時間切れのところから別の色で続け、2つの点を出す。
- 解き直し:40分 自力で解けそうな設問を、答えを見ずにもう一度。ここで解ければ②ではありません。
- 調べ直し:30分 知らなかった語・単元を、決めた1冊に戻って確認する。深入りせず切ります。
- 記録:10分 あとで示す4列を書く。飛ばすと2回目に同じ失点をします。
90分で終わらないときは、調べ直しが膨らんでいます。知らなかった語を全部覚えようとせず、印だけ残して次に回します。なお記述の答案は自分では採点できません。模範解答と見比べて「だいたい合っている」と思ったものの多くは点になりません。週に1本でよいので、学校や塾の先生に見てもらってください。
2回目・3回目で変えること
回数ごとに目的を変えます。同じ解き方を3回しても結果は同じです。
- 1回目:いちばん古い年度。目的は差を測ることなので点は気にしません。答案は本番と同じ形で書き残します。
- 2回目:2番目に古い年度を、時間を計って通しで。ここで大問ごとの持ち時間を決め切ります。③と④を消すのがこの回の仕事です。
- 3回目:いちばん新しい年度は直前期まで取っておき、本番と同じ時間割・同じ時刻で解きます。最後の予行演習です。
2回目以降は全部を解き直さない使い方もあります。記述中心の大学なら、2回目は空欄にした小問と、形式違反をした箇所だけをやり直すほうが効率が上がります。
同じ大学の別日程・別学部をどう使うか
「3年分では足りない」ときに使うのが、同じ大学の別日程・別学部です。ただし使えるかどうかは大学によって違います。数えた結果は3つに分かれました。
- そのまま自分の過去問になる。法政大学は冊子番号が同じなら学部が違っても同じ問題です。冊子216の法学部Ⅱ日程・国際文化学部・キャリアデザイン学部は、英語も国語も日本史も同じ問題を解いています。志望学部以外の学部名が書かれていても、番号が同じなら自分の過去問です(法政の日程別の違い)。
- 形式が同じなので演習量を足せる。東京電機大学は同じ日なら学部が違っても同じ冊子、日が違えば別問題ですが、大問構成・配点・記述の量は5日程で共通なので、他の日程の冊子をそのまま足せます。ただし英語だけは2月1日・2日と2月3日〜5日で大問3・4の形式が変わり、この分かれ方が3年間同じでした。自分が受ける側の型で練習してください。
- 本番と同型にはならない。明治大学の学部別入試には、複数の学部が同じ問題を使う組み合わせが一つもありませんでした。理工学部と総合数理学部の数学は、冊子の厚さ・大問数・試験時間・解答用紙の枚数まで別物です。他学部の過去問は本番の再現になりません。
そのかわり、別学部が1題だけ効く場面はあります。明治大学の農学部は2026年度の大問Ⅲで母平均の95%信頼区間を出題し、冊子に正規分布表が添付されていました。明治の理系型で唯一の先行事例で、総合数理志望者はこの1題だけを解く価値があります。
記録の型は4列でじゅうぶんです
ノートを横に使います。
- 年度・日程(何年度のどの日程・どの方式か)
- 得点(時間内の点/時間無制限の点/目標点)
- 落とした原因の分類(①〜⑤で、設問ごとに番号を振る)
- 次にやること(1行。科目名ではなく動作で書く)
4列めは「英語をやる」ではなく「文法の大問を6分で抜ける練習を3日」と書きます。動作になっていない行は実行されません。2列めの横には数字を3つ足してください。空欄で出した設問の数、形式で落とした設問の数、時間内に最後まで到達したかどうかです。点数より先にこの3つが減っていくのが正しい順序です。
「解けるようになった」と判断する基準
手ごたえではなく、次の4つで判断します。
- 時間内に最後まで到達している。空欄がない。これが最初の関門です。
- 形式で落とした設問が0になっている。綴り、有効数字、指定語句、字数、語形変化。知識と関係なく0にできます。
- 落とした原因が①か②だけになっている。③と④が残るうちは、まだ試験に慣れていない段階です。
- 同じ試験で2年度続けて目標点に届いた。1回だけでは相性かもしれません。
目標点は合格最低点そのものではなく、1割ほど上に置いてください。年度によって問題の難しさは変わり、最低点は上下します。明治大学の学部別入試は2026年度の合格最低得点率が6割台後半から7割台前半でしたから、目標は7割台後半です。ただし全学部統一入試は7割台後半から8割台で、1割の上乗せは現実的ではなく「最低点+数点」を目標にします。東京電機大学の前期は2025年度の合格最低点が300点満点で148〜204点と学科で開きがあり、目標は6割から7割5分まで分かれます。入口によって必要な点が違います。
残り時間が少ないとき、何年分をどの順番で
「まだ1年分しか解いていない」人は、次の順で決めます。
- 同型の年度だけを特定する。法政なら冊子番号、東京電機なら日程、明治なら学部別か全学部統一か。ここを間違えると、解いた時間がそのまま無駄になります。
- いちばん新しい年度は最後に残す。最初に解くのは2番目に新しい年度です。最新年度は本番と同じ時間割で解く予行演習に使います。
- 3年分を1周できないなら、1年分を3回に切り替える。明治大学のように学部ごとの形式がほぼ固定なら、これでも本番はかなり再現できます。
- 複数の入口を受けるなら、本番が早い方を先に仕上げる。明治の全学部統一入学試験は2月5日で、学部別(2月7日〜17日)より先です。
- 1回分の復習を90〜120分から削らない。削るのは解く本数ではなく、調べ直しの深さです。
解く本数を増やすより、1回分から取り出す情報量を増やすほうが効きます。
最後に
点が取れなかった1回分も、ここまでの分類と記録を通せば、次にやることが4行くらいに減ります。そこまでやってから、その日は終わりにしてください。点数だけを見て終えると、翌日も同じ場所で止まります。秋の立て直し方は高3の秋からの過ごし方にまとめています。
なお、点が出ないことがつらくて勉強が手につかない状態が続くときは、一人で抱えずに学校の先生や保護者の方、専門の窓口に相談してください。
あわせて読みたい
EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
- 川越校舎(2026年6月開校)川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分。自習室は朝7時から使えます。
- ふじみ野校舎 ふじみ野駅東口から徒歩1分。
- 鶴瀬校舎 鶴瀬駅西口から徒歩3分。
川越校舎の詳細・無料体験のお申し込みはこちら/ふじみ野・鶴瀬校舎のことは公式LINEからお問い合わせください。
