古文が読めない原因を5つに分ける|主語・話の型・設問の見分け方と原因別の1か月メニュー【川越の高校生・既卒生へ】

「単語も文法もやったのに、古文の点数が動かない」。川越校舎でも、高3の秋と既卒生の夏以降にいちばん増える相談です。

この記事は、古文が読めない原因を5つに分け、30分で見分けるためのものです。単語の問題なのに助動詞の問題集を回しても点は動きません。作品ごとの中身は古文の頻出ジャンルにまとめてあるので、ここでは深追いしません。

「古文が読めない」を5つに分ける

「読めない」の一語に、別々の5つの状態が混ざっています。

  • ①単語の意味が思い出せない/見れば分かるのに本文では出てこない。覚えた量ではなく思い出す方向の問題です。
  • ②助動詞の識別ができない/「なむ」「なり」「に」「る」「ぬ」が本文のどこで何なのか決められない。接続から絞る手順がない状態です。
  • ③主語が誰か分からない/一語ずつは訳せるのに誰がしたのか決まらず、訳が二通りできる。ここが崩れると心情も因果も全部ずれます
  • ④話の型を知らない/一文ずつ訳せているのに話の行き先が分からない。説話集なのに教訓を追っていない、歌論書なのに和歌の評価を追っていない。語学力ではなく予備知識の不足です。
  • ⑤設問の解き方の問題/本文は分かったのに選択肢で迷う、時間が足りない。本文の勉強をこれ以上やっても伸びません。

最重要は③「主語が誰か分からない」

感覚ではなく手順でやります。

手順1 地の文と会話文を切り分ける

読む前に、鉛筆で会話文を囲みます。「〜と言ふ」「〜とて」で閉じられる部分です。切り分けないと会話文の中の「われ」を地の文の主語と取り違える事故が起きます。

敬語の向きも変わります。地の文の敬語は書き手から登場人物への敬意、会話文の敬語は話し手から聞き手・話題の人物への敬意です。同じ「たまふ」でも高めている相手が違います。歌論書の『無名草子』は年老いた尼が女房たちの会話を聞く体裁で、複数の女性が紫式部・清少納言・小野小町を次々に評します(青山学院大学2024年度、学習院大学2025年度)。今の発言が誰のもので、同意か反論かを間違えると設問が崩れます。

手順2 敬語で「誰が上か」を決める

主語は省略されますが、敬語は省略されません。逆算します。

  1. 敬語すべてに印をつける。
  2. 尊敬語(たまふ・おはす・のたまふ・御覧ず)なら、その動作をしている人が高い
  3. 謙譲語(申す・奏す・たてまつる・参る)なら、動作を受ける相手が高く、動作主は低い
  4. 二重敬語(せたまふ・させたまふ・おはします)が出たら、その場面で最も高い人。帝・上皇・中宮を疑う。
  5. 登場人物を紙に書き出し、上下の線を引く。以降は「上の人か下の人か」で主語を決める。

これは正面から問われています。中央大学2024年度『大鏡』は敬語・主語判定・内容一致が中心、中央大学2026年度『栄花物語』(藤原道長らの婿取り)は敬意の対象と10字以内の抜き出し、早稲田大学2026年度『今鏡』第九は敬語と動作主体を問いました。

歴史物語で問われやすい理由があります。『大鏡』は190歳の大宅世継と180歳の夏山繁樹が雲林院の法会で藤原氏の歴代を語り合い、若侍が合いの手を入れる対話形式です。「語り手」と「語られている人物」の二重構造なので、敬語がどちらに向くかを分けないと読めません。冒頭で「誰が誰に語っているか」を確認します。

手順3 助詞で主語の転換を見る

敬語が出ない場面では助詞を見ます。

  • 「を」「に」「が」「ば」「ど(も)」の直後は主語が変わりやすい。ここで一度止まり、人が入れ替わるか確認します。
  • 「て」「で」「つつ」の直後は主語が変わりにくい。同じ人が続けて動いていると考えて進みます。
  • 「〜ければ、〜たまふ」の形は、前後で動作主が違う可能性を先に疑う。

練習は単純です。本文10行に主語を全部書き込む。訳は書かず、答え合わせも主語だけ。

随筆では同じ問題が「評価の主語」として出ます。「をかし」「にくし」が誰の評価かを見失うと心情説明が解けません。『枕草子』(早稲田大学2026年度は「堺本」という異本から)は宮廷的な美意識、室鳩巣『駿台雑話』(明治大学2026年度)は儒教的な理が軸で、基準が違います

④話の型を知らないと、正しく訳しても迷子になる

早稲田・青山学院・中央・明治・立教・学習院・法政・東洋の古文89題(2023〜2026年度)を分析すると、2024〜2026年度だけで79題、全体の89%。直近の傾向がそのまま効きます。実際の古文出題86題のうち、出典の特定できた85題の内訳はこうです。

  • 物語文学 30題/説話集 21題/日記・紀行文学 16題/歌論・歌学書 8題/近世文学 6題/随筆 4題

物語と説話で51題、全体の6割。型を先に入れる価値が大きいのはこの2つです。

物語文学30題 三類型を先に分ける

物語は、筋を通す作り物語、和歌とその事情を短くまとめた章段を積む歌物語、平安の物語を規範に後世書かれた擬古物語の三つに分けます。作り物語は筋を追い、歌物語は和歌の解釈を中心に読む。読み方が逆です。擬古物語には後日談や補作という体裁のものが多く、『山路の露』は『源氏物語』の後日談的な内容とされ(東洋大学2024年度)、『手枕』は本居宣長による補作です(早稲田大学2025年度)。知らない作品名に身構えなくていいと分かるだけで入り方が変わります。

説話集21題 型を知れば筋が読める

仏教説話集は、「発心」から「往生」へという同じ型を、違う人物で何度も語り直す構造です。「この人はどんな心の動きで発心・往生に至るのか」だけを追えばよく、末尾の編者の評言に意図が集約されます。しかも身分の高さと信仰の深さは一致しません。無名の聖や盗人・遊女が信仰に目覚める話が好まれます(青山学院大学2025年度『閑居友』、早稲田大学2024年度『発心集』の盗人と灰の話)。

世俗説話集では、「今は昔」を見つけたらその話は独立した逸話と判断でき、直前の話とのつながりを探さずに済みます。『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』には同源説話が多い点も押さえておきます。

日記・紀行16題 記録ではなく「編集された作品」

平安の女流日記は、その日の記録ではなく、後年に作者が回想し、場面を選び、和歌を軸に構成し直した文学作品と考えられています。「その折は知らざりしを」のような言い回しが回想の目印です。心情は地の文では説明されず和歌に託されるので、和歌の解釈が場面理解の鍵になります(『和泉式部日記』は敦道親王との贈答歌が軸。中央大学2024年度)。

中世に入ると「宮廷生活の記録」と「旅の記録」の二系統に分かれます。宮廷なら行事名と女房どうしのやり取り、旅なら歌枕が先行作品を踏まえて描かれる。『弁内侍日記』(学習院大学2024年度)は前者、『松嶋日記』(早稲田大学2025年度、伊勢物語の八橋を踏まえた道行)は後者です。

歌論8題・近世6題・随筆4題

歌論・歌学書は和歌が引用され、それへの評価がさらに語られる入れ子構造です。和歌の意味と評者の評価基準を二層に分けて読みます(青山学院大学2026年度『無名抄』、早稲田大学2024年度『袖中抄』)。なお『無名抄』と『無名草子』は別の作品です。近世文学は擬古文と俳文の二型で、擬古文は内容が江戸時代でも文法は中古・中世の古文に準じます。俳文は諧謔や余情を込めるので、字面どおり深刻に受け取りすぎないこと(立教大学2024年度『鶉衣』の「伯母を悼む辞」)。

30分でできる自己診断

志望校の過去問か模試の古文1題を用意します。辞書は使いません。

  1. 最初の15分:ふだんどおり解く。終わらなくて構いません。ただし止まった箇所すべてに鉛筆で印をつける。「なんとなく気持ち悪かった」でも印です。
  2. 次の10分:印を①〜⑤に振り分ける。
    • 語の意味が出てこなかった→
    • 活用語の下の語が何なのか決められない→
    • 誰がしたのか決まらず訳が二通りできた→
    • 一文ずつは訳せたが話の行き先が不明→
    • 本文は分かったのに選択肢で迷った、時間切れ→
  3. 最後の5分:紙1枚に「行番号/分類/そのとき考えたこと」の3列で記録する。3列目が効きます。

いちばん多い番号が当面の課題です。同数なら③を先に。印をつけずに「全体的に読めなかった」で終わらせないこと。1か月後に別の1題で同じことをやり、内訳の動きを比べます(過去問はいつから何年分)。

原因別・1か月の練習メニュー

  • ①単語/毎日15分、古語→現代語の方向だけ。週1回、前週分を混ぜて確認。解いた本文から知らなかった語を10語だけ書き写して一覧にする。多いとやらなくなります。
  • ②助動詞/まず接続で絞る(未然・連用・終止・連体)。毎日、本文5行の活用語の下すべてに「接続→候補→意味」の3段で印をつける。訳は書かない。週末は説話集の短い本文で通しの訳。一話が短いので練習向きです。
  • ③主語/毎日、本文10行に主語を全部書き込む。敬語に印、「を・に・ば・ど」に縦線。週2回は歴史物語や歌論書のような対話の入る本文で語り手と聞き手を特定。4週目に1週目と同じ本文をやり直す。
  • ④話の型/6ジャンルの型を通しで入れたら、解いた過去問を台帳にする。「年度/大学/作品/ジャンル/展開を一行」。10題たまると志望校の偏りが見えます。新しい本文は出典名とジャンルを先に確認する。
  • ⑤設問/過去問を2周に分ける。1周目は全訳だけ、2周目は設問だけで根拠の行に線を引く。切った選択肢の横に理由を一言。「主語が違う」「前後が違う」「本文にない」で大半が片づきます。

設問形式ごとの注意

現代語訳・記述短く正確に書かせる形式が目立ちます。早稲田大学2024年度『袖中抄』は掛詞にあたる漢字一字、学習院大学2024年度『うつほ物語』は掛詞の動詞を活用形にして記述させました。字数が短いほど語彙と文法の精度が点になります。

内容一致は事実上主語判定の設問です(中央大学2024年度『大鏡』)。誤りの選択肢は「誰がしたか」をすり替えていることが多いので、動作の主体が入れ替わっていないかを先に見ます。

和歌は捨てられません。物語では贈答歌が心情のやり取りそのもの、日記では和歌が場面の山場、説話集や歌論書では解釈自体が主題です。和歌の解釈や修辞は、物語・日記・歌論のほぼすべての出題で問われています(立教大学2025年度『源氏物語』関屋巻では掛詞・枕詞を含む和歌2首)。最低限、掛詞(一音に二つの意味を重ねる)・枕詞(現代語訳を与えない決まり文句)・序詞の区別は押さえてください。

文学史は独立して出ます。学習院大学2026年度『発心集』では同じ著者の別作品(『方丈記』)を選ばせる形式、学習院大学2024年度『弁内侍日記』では『増鏡』との関係、早稲田大学2026年度『今鏡』では和歌の作者が問われました。軸は2つ、作者でまとめる(鴨長明なら『方丈記』『無名抄』『発心集』)と成立順でまとめる(八代集は古今・後撰・拾遺・後拾遺・金葉・詞花・千載・新古今)です。

共通テストと私大・国公立二次で変わるところ

断っておきます。ここまでの実測値はいずれも私大の出題を集めたもので、私立文系の傾向に寄っています。共通テストや国公立の傾向はこのデータに含まれないので、断定はしません。

  • 私大は短い記述で語彙・文法の精度を直接問う形式が多い。漢字一字、10字以内、活用形にして書く。取りこぼしが即失点になります。
  • 複数の文章を並べる出題は私大でも出ています。早稲田大学2024年度の『宇治拾遺物語』と『撰集抄』の比較、明治大学2024年度の『花のしたぶし』と『菅笠日記』の複数テクスト問題、『うつほ物語』と漢文『西京雑記』の融合問題。
  • 文学史を独立して問うのは私大で確認できています。私大を併願するなら捨てないほうがよいです。
  • 記述量が増える二次では、主語を明示して書く必要があります。主語判定が曖昧だと、選択肢では当たっても記述では点になりません(国公立二次の記述)。

古文・漢文にどこまで時間をかけるか迷っている人は、先に古文漢文は必要かを読んでください。配点と併願先で上限が変わります。

残り時間が少ないときの優先順位

  1. ③主語判定。内容一致・心情説明・記述のすべてがここに乗ります。毎日10行、主語を書き込むだけ。
  2. ④話の型。読むだけで入るので費用対効果が最も高い。物語と説話で6割なので、この2つから。
  3. ②助動詞の識別は頻度の高いものだけ。全部を完璧にするのは後回しで構いません。
  4. 和歌の最低線。掛詞・枕詞・序詞の区別。広く問われるので省かないこと。
  5. ①単語は「解いた本文に出てきたもの」に絞る。新しい単語帳を増やす時期ではありません。
  6. 文学史。作者でまとめる・成立順の2軸だけ。直前期でも点になります。

逆に、出題が確認できていないところの深追いは後回しです。『徒然草』『方丈記』は三大随筆として教養では押さえるべきですが、今回の分析では古文本文としての単独出題は確認できていません。限られた時間は、出ているところからです。やることが分かっても手が動かない時期は誰にでもあります。つらさが続くときは学校の先生や保護者、専門の窓口にも相談してください。

自己診断までは一人でできます。止まりやすいのは③の答え合わせで、自分の読みが合っているかを自分だけで判定しきれないところです。解いた過去問と印をつけた本文を持ってきてもらえれば、①〜⑤のどこに時間を使うかをその場で決められます。

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二神大輝