理工学部・情報系・建築など、理系の学部を受ける高校生と保護者の方に向けた記事です。「理系だから数学と理科をやる」までは決まっていても、受ける大学が変わると、勉強の中身そのものが変わります。その変わり方を数字で見ていきます。
EIMEI予備校では大学別の入試対策読本を自作しています。今回は大学ごとの読本と、数学・物理・化学・生物の「頻出単元と大学別対策」4冊を横断しました。数字はすべて、過去問の冊子そのものを数えた読本の分析から引いています。制度・配点・日程は毎年変わりますので、出願前には大学が公表している最新の要項でご確認ください。
1. 理系学部の入試で、最初に決まる3つのこと
数学は「数学Ⅲがどこに置かれるか」で決まる
理系数学の分量は、大学名ではなく数学Ⅲの微分積分がどこに何題入るかで決まります。読本の実測値を並べます。
- 早稲田・理工3学部(基幹・創造・先進)… 大問5題・全問記述・120分120点。分析した6回すべてで、最終大問が数学Ⅲの微分積分でした。ただし数学Ⅲが大問に占める割合は2024年度20%、2025年度60%、2026年度20%と、年によって大きく振れます。
- 法政・理系… 9冊すべてで7大問中5問を選択、90分、全問マーク。ⅥとⅦが9冊すべて数学Ⅲの微積で、解く5問のうち2問、つまり40%が数学Ⅲという固定です。
- 中央・理工系3学部… 理系5冊・20大問のうち、極限と数学Ⅲの微積が11大問で55%。事実上の主戦場です。
- 埼玉大・工学部… 大問4題・全問記述。5年分20大問のうち10題に数学Ⅲの微積が絡みます。
- 明治・理工… 90分120点の3大問で、大問Ⅲが3年連続で数学Ⅲの関数でした。
逆に、出ない単元がはっきりしている大学もあります。法政の理系は9冊・63大問で複素数平面・楕円双曲線極座標・統計的推測・証明がすべてゼロ。中央の理系は式と曲線とベクトルが3年間ゼロ。学習院は12冊すべてで整数・データの分析・統計的推測・複素数平面・式と曲線がゼロでした。単元別の優先順位の付け方は数学の頻出単元と大学別対策にまとめています。
理科は「選べるのか、選べないのか」から確認する
理科は、単元より先に制度を確認する科目です。読本を横断すると、選び方そのものが大学ごとに違いました。
- 慶應義塾・理工… 物理と化学が両方必須で、生物を選ぶ道がありません。化学を避けて理工学部に出願することはできません。
- 青山学院・理工… 物理か化学の2択で、生物は選択できません。さらに物理科学科は物理必須です。
- 法政… 学部で選べる科目が違います。情報科学部は物理のみ、デザイン工学部と理工学部は物理か化学、生命科学部だけが物理・化学・生物の3つから選べます。
- 明治・理工… 物理3題(A・B・C)と化学3題(D・E・F)が1冊に入っていて、その6題から3題を自由に選びます。4題以上解答するとすべての解答が無効になります。80分120点なので1題およそ26分です。
- 中央… 方式で正反対です。学部別選抜は出願時に科目を登録(90分100点)、共通テスト併用方式は当日に理科9題から3題を選択(100分150点)。併用方式では、数学科・物理学科・都市環境学科の受験者が生物を解答しても無効になります。
- 早稲田・理工3学部… 物理と化学が合冊、生物だけ別冊で、物理と化学/物理と生物/化学と生物の3通りから2科目を選びます。基幹理工学部は学系によって選べる組み合わせが違います。
生物で理系に進もうとしている人は、ここで受験校が絞られます。早めに確認してください。
英語の比重は、大学によってここまで違う
「理系だから英語は軽い」は、大学によって当たりません。
- 立教… 一般入試で当日に英語の問題を解くのは2月11日の文学部だけです。理系は数学と理科を解き、英語は英語資格・検定試験のスコアか共通テストの英語を使います。
- 埼玉大・工学部… 前期の個別試験は数学300点と小論文100点で、英語・理科はありません。数学が個別試験400点の4分の3を占めます。
- 中央・理工系… 英語外部試験利用方式ではスコアが出願資格としてしか使われず、理科100点と数学100点の200点で合否が決まります。ただし4技能すべてのスコアが必要です。
- 学習院・理学部… 数学90分150点・英語90分150点・理科90分150点の450点満点。英語がちょうど3分の1です。
- 明治・理工… 外国語120点で360点満点の3分の1。しかも記述が2024年度4問→2025年度5問→2026年度6問と毎年増えています。
- 青山学院・理工… 全学部日程は英語150+数学150+理科100の400点満点で、理科だけが軽い配点です。
2. 大学ごとの違いを、読本の実測値で
大問構成・時間・記述かマークかを、確認できた範囲で並べます。同じ「理系」でも、答案に書く量がまったく違います。
- 早稲田・理工3学部|数学120分120点(大問5題・全問記述)/理科2科目120分・各60点/外国語90分120点。英語はPart IからPart Vの5部構成が3年とも固定で全問マーク。Part Vの語彙パズル15問は、語彙を知らなければ得点にならない設計です。
- 慶應義塾・理工|数学は5題固定で、空欄に数式を書き込む方式と証明の記述欄の併用。証明の記述は2024年4問・2025年3問・2026年2問と毎年あります。整数は3年とも出題、統計的推測は3年間ゼロです。
- 明治・理工と総合数理|理工は数学90分120点・理科80分120点・外国語60分120点。総合数理は数学120分200点・外国語70分120点で、数学の配点が突出しています。理工は答えだけ書けばよく途中経過は不要、総合数理は後半2題が完全記述で証明が毎年出ます。この2学部は完全に別問題です。
- 中央・理工系3学部|学部別選抜(2月15日)は数学100分100点で4題必答、ⅠⅡがマークでⅢⅣが記述。共通テスト併用方式(2月8日)は4題中3題選択・全問記述で150点。同じ科目でも別の試験です。
- 法政・理系4学部|数学90分・全問マーク。理科は試験日ごとに1冊で、同じ日程の4学部が完全に同じ問題を75分で解きます。
- 青山学院・理工|個別学部日程の数学は問題3・4・5が記述で、冊子に「論述なしで結果だけ記しても、正解とは見なさない」と明記されています。全学部日程は全問マークで、形式が正反対です。
- 立教・理学部|数学は数学科以外が3題75分100点、数学科だけ第Ⅳ問が上乗せされて4題90分200点。Ⅰ〜Ⅲは一字一句同じ問題です。物理は大問Ⅰ〜Ⅵの6題固定で、5分野すべてが毎回出そろいます。
- 成蹊・理工|数学90分・理科80分・英語60分で、各120点の360点満点。理科は物理・化学・生物から1科目(地学なし)で、一部記述を含むマークセンス方式です。
- 東京電機|3科目300点満点、1科目100点。数学は全問記述で、問題1が小問集合5問・答えのみ40点、問題2・3は途中式も書く30点ずつ。前期は2月1日から5日の5日間から自由に選べます。詳しくは東京電機大学の傾向と対策をご覧ください。
- 東洋|数学・理科とも全問マーク(空所補充)、60分100点。記述式の設問と計算過程の記入欄は一切ありません。理系系列の数学は大問Ⅰ・Ⅱが必須で、Ⅲ(数学Ⅲの内容)かⅣ(数学Ⅰ・A・Bの内容)を学科の指定で選びます。
- 埼玉大・工学部|数学は大問4題・全問記述・答案用紙4枚。証明は直近3年続いています。
3. 物理・化学・生物のどれで受けるかを決めるときに見るもの
「得意だから」だけで決めると、志望校と噛み合わないことがあります。読本から見えた判断材料は4つです。
その1。志望校でその科目が使えるか。生物で受けられるのは、法政なら生命科学部、東京電機なら理工学部の生命科学系、ほかに成蹊の理工学部、東洋、中央や早稲田の一部というように、限られます。
その2。原子分野の扱いが、大学で正反対です。立教の物理は6日程すべてで原子が1題出ており、後回しにしてよい分野が一つもありません。慶應義塾の理工学部は原子が3年に1度ですが、出た年は大問まるごと、つまり配点の約3分の1になります。一方で法政は6冊中0冊、東洋は8本中0本、青山学院は7冊中0冊、早稲田の理工3学部も3年間ゼロでした。物理の頻出単元と大学別対策に大学別の早見表を載せています。
その3。計算過程が採点されるかどうか。法政の物理は冊子に「余白は計算に使ってよいが採点の対象とはしない」と6冊すべてで明記され、答えだけが採点されます。同じ法政でも化学は「計算問題では、必要な式や計算、説明も解答欄に記入せよ」と書かれ、途中点が期待できます。物理は当たれば速いが外すと痛い、化学は時間はかかるが部分点を拾える、という性格の違いです。
その4。書く量。生物は大学差がもっとも大きい科目です。早稲田の理工3学部は大問3題・全問記述でマークがゼロ、理由説明の論述が設問の過半を占めます。法政は6冊すべてに論述があり、1冊あたり6問から12問。中央は論述が毎回5問前後で、語句指定が多いのが特徴です。対して東洋は12本すべてマークシートで記述はありません。生物の頻出単元と大学別対策に大学別の形式差をまとめてあります。
4. 併願で対策が重なる大学と、別に時間が要る大学
ここが、併願設計でいちばん効くところです。
重なる(過去問がそのまま増える)
- 早稲田の理工3学部は、基幹・創造・先進で数学が完全に同一の共通問題です。3学部ぶんの過去問が自分の教材になります。ただし試験日が同じ2月16日なので、3学部の併願はできません。
- 中央の理工系3学部は2月15日に同一問題。検定料の減額が3学部をまたいで効きます。ただし2月8日の共通テスト併用方式は、冊子も時間も配点も解答方式も違う別の試験です。
- 法政は、同じ日程なら4学部が同じ理科の問題を解きます。理系数学もT日程とA方式で構成・時間・形式が同一です。
- 東京電機は、同じ日なら学部が違っても同一の冊子です。同じ日に複数の学科を併願しても対策は増えません。一方、日が違えば問題は別なので、複数日を受けるならその日数分の演習が要ります。
- 埼玉大は、工学部と理学部数学科の数学が5年とも大問1〜4のすべてで同じ問題でした。数学科の過去問を買い足しても、工学部の練習は1題も増えません。
- 学習院は、文学部の心理学科・教育学科プラス試験が理学部コアと同じ問題(数学Ⅲを含む)です。
別に時間が要る
- 明治の理工と総合数理は、数学も英語も完全な別問題です。日程も2月7日と2月17日で離れています。数学は90分3題と120分4〜5題、難度も明確に違います。
- 青山学院の理工と社会情報は、どちらも理系寄りですが英語が正反対です。理工は和訳と綴りの記述併用、社会情報は全50問マークで記述ゼロ。併願するなら別々に準備が必要です。
- 慶應義塾の理工学部は物理と化学の両方が必須。物理と生物で準備してきた人は受けられません。
- 早稲田の創造理工学部建築学科は、2月16日の3科目に加えて翌2月17日に空間表現120分40点があり、2日連続になります。
大学選びそのもので迷っている段階の方は、理系の大学選びもあわせてお読みください。
5. 大学別のオリジナル予想問題を、どう作っているか
EIMEIでは、英語の予想問題を大学別に自作しています。理系の受験生が受けるところでは、東洋・青山学院・中央・東京電機・法政T日程などです。手順は決まっています。
- テーマより先に、形式を固定します。大問構成、設問文が英語か日本語か、記述の字数や語数の指定まで、その大学のものに合わせます。青山学院の理工なら、大問Ⅱの「英英定義から単語を綴る10語」は外せません。読本で確認した出題語には diameter、ecology、pressure、gravity、device、sequence といった理科系の語が毎年混ざっていました。形式が違えば、テーマが当たっても練習になりません。
- 素材を、その大学の題材傾向から選びます。読本には長文の題材も記録してあります。早稲田の理工3学部は情報セキュリティ・素数と暗号・べき乗則・分子生物学。明治の総合数理は透明な木材・絹のインプラント・発電タイル。東京電機は気候変動・マイクロプラスチック・小惑星採掘・スペースデブリ。大学の「顔」に合っていない素材は使いません。
- 語数と本数を本番に合わせます。明治の理工のように長文1題で記述が6問ある試験と、明治の総合数理のように英文5本を70分で処理する試験では、必要な訓練がまったく違います。
- 解説に「なぜこの形式か」を書きます。その設問が何を測っているのかを本人に言葉にしてもらいます。ここを飛ばすと、次の年度の過去問に応用が効きません。
予想は的中がゴールではありません。形式を体に入れておけば、当日どんな題材が来ても手順は変わらない。それがこの教材の目的です。
この記事で扱えた大学と、扱えなかった範囲
読本があり、理系学部の中身まで書けたのは、早稲田・慶應義塾・明治・青山学院・立教・中央・法政・学習院・成蹊・東洋・東京電機・埼玉大です。
そのうえで、書けなかったところをお伝えします。学習院は理学部の数学と英語の問題冊子が手元にありません。理科も物理4冊・化学3冊・生物2冊と分母が小さく、読本自身が「この冊数では判定できない」と注記しています。学習院については、配点と時間、記述式であることまでしか書いていません。
また、理数4科目の「頻出単元と大学別対策」が対象にしているのは主要大学で、成蹊と埼玉大は単元別の横断表には入っていません。この2校は大学別読本の記述だけを使いました。埼玉大は工学部の小論文と後期日程の冊子も手元になく、傾向を書いていません。読本にない大学については、この記事では触れていません。
川越で、理系の併願設計から相談したい方へ
理系の入試は、志望学部と方式が決まった瞬間に、やるべきことがかなり具体的に決まります。数学Ⅲをどこまで深追いするか、理科を何で受けるか、英語に何時間割くか。そこが決まらないまま秋を過ごすのが、いちばんもったいないと考えています。
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EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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