こんにちは、EIMEI予備校の二神です。
この記事は、川越とその周辺の高校に通っていて、総合型選抜・学校推薦型選抜で集団討論・プレゼンテーション・英語での面接を課される高3生と、その保護者の方に向けて書いています。討論で何をすればいいか、スライドをどう作るか、英語はどこまで使うのかが分からない、という段階の人が対象です。
内容は、EIMEI予備校が自作した推薦入試対策読本のうち大学が公表した募集要項・試験課題・講評だけを集計した部分に沿います。形式・配点は年度で変わるので、出願する年の要項で必ず確認してください。
前提:討論もプレゼンも、制度上は「面接」です
文部科学省の大学入学者選抜実施要項には「面接(ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問等を含む。)」とあります。特殊な試験ではなく面接の中身で、問われるものも同じ志望分野への意欲と適性です。個人面接の準備は別記事に(面接対策)。制度の違いが曖昧な人はこちらから(指定校推薦・公募推薦・総合型選抜の違い)。
集団討論① 通説を、要項で数え直しました
「協調性を見せろ」「リーダーシップを取れ」とよく言われます。読本では集団討論を課す14方式(9大学)の要項に出てくる評価の語を数えました。結果は通説とかなり違います。
- 「協調性」…14件中2件。しかも同じ1大学の2方式だけ
- 「リーダーシップ」…14件中2件。同じくその1大学だけ
- 「傾聴」…14件中0件。どの要項にも出てきませんでした
- 最多は「表現力」…5件、次いで「主体性」「協働性」「思考力・判断力」「コミュニケーション能力」が各4件
- 観点を1語も書かず「総合的に評価」とだけ書く方式が4件
多い4語は学力の三要素の語彙そのものです。だから一般論を信じるのではなく、自分が受ける方式の要項に書かれた語を書き出してください。1語でも書いてあればそれを中心に据え、書いていなければ三要素の語彙で考える。
集団討論② テーマは予想できません
14件のうちテーマを事前公表していたのは1件だけで、残りはすべて当日提示。課題文や新聞記事を読ませる方式が4件、テーマのみ提示が3件です。実際に公表されたテーマは、生成AIの規制の是非、企業と人権、民主主義と多数決、地域の担い手不足、看護師不足、臨床検査とAI。どれも正解のない社会的争点で、志望学部の学問領域とつながっています。
つまり答えを用意する対策は成立しません。準備するのは下敷きです。志望分野の争点を1つ選び、賛成側と反対側の理屈を両方書き出す。同じ分野の新聞記事を週に1本読めば足ります。
形式も要項に載っていません。人数の記載は7/14件、時間は6/14件、配点は8/14件、司会の扱いは2/14件で、細部が分からないまま受けるのが普通です。記載があった範囲では人数は3〜7名、時間は30〜90分が中心。ただし80分、120分、4時間という方式も実在し、最初の10分で言い切ると残りが空になります。
集団討論③ 役割は「取りにいく」のではなく「前に進める」
いちばん聞かれるのが「司会をやるべきか」です。司会について書いてある要項は14件中2件しかなく、その2件は正反対。片方は「審査員は議論の進行に関与しません」、もう片方は「司会進行は教員が行いました」でした。司会をやったかどうかで加点する仕組みは、確認できませんでした。
一方、議論が止まったまま時間が過ぎれば全員の評価材料が減ります。だから役職ではなく発言で貢献すると考えてください。次の4つは司会でなくても出せます。
- 議論が散っているとき…「いまは〜と〜の2つの論点が出ていると思います。どちらから詰めますか」
- 誰も話さないとき…「まず私から。課題文の〜という部分が引っかかりました」
- 時間が足りないとき…「残り〇分なので、そろそろまとめに入りませんか」
- 発言していない人がいるとき…「〇〇さんはこの点どう思われますか」
最後の型は自分の評価のためではなく議論のために。形だけ人に振る発言は、聞いている側に伝わります。そのうえで当日の作法は7つです。
- 指示文を最後まで読む。結論を1つにまとめるのか否かを確認する
- 検討項目が指定されていれば、それを議論の骨格にする
- 司会は取りにいかない。ただし議論が止まったら動く
- 持ち時間を計算してから話す。5人30分なら1人6分
- 長時間の討論では前半で言い切らない
- 他人の発言に乗る。「〇〇さんの言った〜という点について」から始める
- 反対するときは根拠を出す。人ではなく論に反対する
1は本当に方式ごとに違います。ある大学の試験課題には「全員が同じ結論に到達する必要はありません」、別の大学のテーマは「最終的にひとつにまとめてください」と真逆。「1つの結論を出さなければ」という思い込みは、方式によっては設計の誤解になります。
なお、複数人で同時に個人面接を受ける集団面接での最多の事故は「前の方と同じです」。結論が同じでも、そこに至った経験は必ず違います。「同じく〜と考えます。私の場合は、〇〇という経験から〜」と根拠を差し替えてください。
プレゼン① 中身を作る前に、要項から10項目を抜き出す
プレゼンは形式の幅がいちばん広い試験です。読本で並べた14方式では、機材の扱いが両極端でした。大学がPCを全部用意する方式、受験生が持参する方式、PCを使わせない方式、資料の持込みそのものが禁止の方式、当日その場でB3用紙に資料を作って3分で発表する方式が併存します。
「プレゼン=スライド」が通用しない方式が14件中5件。作り込んでから要項を読んで愕然とする事故が起こりえます。当日その場で作る方式では資料作成300点・発表と質疑200点という配点で、話す練習だけでは重いほうを落とします。持ち物もUSBの規格、ファイル名、要約シート1枚×4部まで指定する大学があり、同じ大学でも学科ごとに要項が別です。
だから中身を作る前に、①発表時間(下限の指定があるか)②質疑の時間 ③テーマは事前か当日か ④資料の形式 ⑤枚数の上限 ⑥機材は用意か持参か ⑦データ形式とファイル名 ⑧紙資料の部数 ⑨事前提出物と締切 ⑩配点の10項目を埋めてください。
プレゼン② 独創性は、ほとんど書かれていません
評価の観点の文言を取得できた9件で数えたところ、「独創性・独自性」は9件中1件だけ。代わりに多いのは「表現力・伝達力」4/9件と「構成・論理性」4/9件です。珍しいテーマを探すより、選んだテーマを分かりやすく構成して伝えるほうが、要項の実態に合っています。
見落とされやすいのが2点。1つは時間厳守が評価項目で、「時間が6分以上8分以内であるか」と下限まで採点対象にしている大学があること。「早く終わるほうが安全」は通りません。もう1つは出典を書くこと自体が評価項目で、「使用した資料の出典を明記しているか」「参考文献3点以上」といった規定がありました。
ある大学の経済学部はプレゼンの評価の視点を10項目で公表していますが、「見せ方」に関わるのは最後の1項目だけ。残り9項目は問題意識、主体性、その学部である理由、学習計画、活動経験との整合性、将来構想、論理性です。装飾より、この9項目を埋めるほうが点になります。
プレゼン③ スライドと原稿の作り方
枚数の目安は要項の数字から出ます。5〜8分で5〜10枚。1枚あたり30秒から1分。入れるものは評価項目から逆算して、出典/問題意識(何を問題だと考えたか)/自分がやったこと/大学での学習計画/その大学・学部である理由の5つ。講評でも低評価の理由に「問題意識が曖昧で漠然としていたもの」が挙がっています。
作り方の手順は6つです。
- 1枚目に結論と問いを書く。「私は〜を問題だと考え、〜という結論に至りました」
- 1枚1メッセージ。そのスライドで言いたいことを見出しに書く
- 時間を計って通す。下限がある方式は下限も計る
- 原稿を書いてから、捨てる。キーワードだけをメモにする
- 調べたが使わなかったことを手元に残す。質疑はここから聞かれます
- 機材が使えない前提の版も作っておく
4について補足します。原稿を作ること自体は必要で、問題は本番で読むこと。講評でも「事前に準備した資料を読み上げるだけの志願者」は低評価として名指しされています。順序は①全部を文章で書く→②声に出して言いにくい箇所を直す→③1枚あたりキーワードを3語だけ抜く→④原稿を見ずキーワードだけで話す→⑤言い回しが毎回変わってよい。毎回同じ言い回しになるのは、暗記できている証拠ではなく原稿を再生している証拠です。
プレゼン④ 質疑こそ本番。準備の4割を回す
発表練習に9割の時間を使う受験生が多いのですが、時間配分を見るかぎり大学が見たいのは質疑のほうです。14件のうち質疑が発表より長い方式が4件、同じ長さが2件。最も極端な例は発表約10分に対して質疑約30分でした。
講評でも、高評価側に「質問に的確に応答した受験者が高い評価」、低評価側に「質問を理解できない、あるいは理解したけれども適切に受け答えができない志願者」と両方で質疑が名指しされています。だから配分を資料作成4割/発表練習2割/質疑対策4割に変えてください。やることは①スライドを1枚ずつ見て質問を作る(なぜこの数字か、出典は何か、反対の立場は何と言うか)②調べたが使わなかったことをまとめる ③自分の主張のいちばん弱い箇所を自覚する ④人に聞いてもらい答えられなかった質問を記録する ⑤「分からない」の言い方を決めておくの5つ。
30分の質疑に全部答えられる高校生はいません。答えられない質問が来たときの対応が評価されています。
- 黙る → 「そこまでは調べられていません」と言い切る
- 適当に作る → 「調べていませんが、〜という理由で〜だと予想します」と推測だと明示する
- 用意した話に戻る → 「〜というご質問でしょうか」と確認してから答える
- 謝り続ける → 「今後〜を調べたいと思います」と次につなげる
ある大学は評価の視点に「自分の考えで主体的に回答できるかどうか」と書いています。鋭い質問は攻撃ではありません。30分の質疑時間を設計しているのは、時間をかけて聞きたいということです。
事前提出物も同時に進めます。確認できた10件には小論文2,700字以上3,000字以内、スライドを表紙含め5〜10枚、英語100〜150語で参考文献3点以上、黒のボールペンで手書きといった規定がありました。そして実質の締切は試験日ではなく出願締切。出願は9月1日以降なので、夏休みが作業期間です。
推薦入試の英語① 「英語プレゼン=質疑も英語」ではありません
「国際系だから英語面接」という思い込みは、かなりの確率で外れます。使用言語を確認できた13方式(8大学)から分かったことは3つです。
1つめ。発表は英語、質疑は日本語という方式があります。ある大学の要項には「プレゼンテーション10分(英語) 質疑応答10分(日本語)」とあり、別の大学は英語プレゼン→英語質疑→日本語面接(約5分)という順です。英語だけ練習すると日本語のパートで崩れます。言語表記はパートごとに確認してください。
2つめ。英語資格が出願資格でも、面接は日本語のことがあります。ある大学の総合型選抜は3区分すべてで英語資格を求めますが、面接は3区分中2つが日本語でした。
3つめ。逆に一般的な文系学部でも英語になることがあります。ある国立大学は法学部・経済学部について「面接は、必要に応じ、外国語により行う場合があります」と明記。別の大学は「活動報告書の内容により、面接に英語を含む場合があります」。自分が出した書類で言語が変わるということです。
ちなみに「推薦入試では英語のグループディスカッションがある」という話は、要項に明記された例が1件しか確認できませんでした。裏づけがないので、一般的だとは書きません。
推薦入試の英語② 何を話すか、資格はいつ取るか
英語で問われる内容が書かれていた例は4件。「自己紹介と志望理由、国際社会において関心を持っている課題についてを英語でスピーチ」、事前公開テーマDiversity and Inclusionとthe Declining Birthrate and Aging Populationから当日1つ指示、英語動画課題、「自己アピール書等の内容をもとに英語力および勉学への意欲を判断します」。
日常会話ではなく、社会的な争点について意見を述べることが求められています。そして英語面接の素材も、自分が出した書類です(志望理由書の書き方)。
ある大学の英語プレゼンの観点は「内容、構成、話しぶり、英語力、流暢さ・理解しやすさ、説得力」の6つで、英語に直接関わるのは2つだけ。別の大学は観点の第1が「教育内容に対する理解とその専攻で学ぶ意欲の強さ」で、英語運用能力はそのあとです。だから練習は、発音を磨く前に「志望理由と、関心のある社会的争点を、英語で1分版と3分版で言えるようにする」ところから。日本語のプレゼンと同じ手順です。
最後に英語資格の扱い。確認できた21方式の内訳は出願資格13件/得点換算・加点2件/両方の性格1件/任意提出2件/要件なし3件。圧倒的に多い出願資格型は、基準に届かなければその方式を受けられません。当日の頑張りでは取り返せません。
基準は確認できた範囲で英検2級相当が下限、準1級相当が上位の目安。取得時期の条件がある大学もあります。総合型選抜の出願は9月1日以降なので、遅くとも高3の7月までに受験を終えておく逆算が要ります(英検などの外部スコアの使い方)。
今日から本番までの進め方
- 今日…要項を開き、形式(個人か集団か、プレゼンの有無、使用言語)と評価の観点の語を書き出す
- 今週…プレゼンがあるなら10項目を埋める。英語資格が出願資格かを見る
- 高3・7月まで…英語資格を取り終える
- 7〜8月…事前提出物を作る。手書き指定があれば清書時間も確保
- 毎週…志望分野の争点を1つ、賛成側と反対側の理屈を書き出す
- 出願後…書類の棚卸し。準備の4割を質疑対策に
- 2週間前…時間を計って通す。原稿を捨ててキーワードだけで話す練習に切り替える
- 前日…USBの規格、ファイル名、紙資料の部数、持ち込みの可否を潰す
そのうえで一つだけ。一般選抜の準備は止めないでください。推薦の準備を始めた時期に教科の勉強が止まるのが、いちばん多い失敗です。
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