この記事は、古文の地の文は読めるのに和歌で手が止まる人、「文学史はどこまで覚えるのか」が決まらない人に向けて書いています。川越・ふじみ野・鶴瀬で私大文系を目指す高校生・既卒生が対象です。和歌は読み飛ばしても筋は追えます。ところが設問は、その飛ばしたところに置かれています。
和歌は「たまに出る飾り」ではありません
EIMEI予備校では大学ごとに入試対策読本を自作しています。古文の分野別読本では、2023〜2026年度の私大入試の古文89題を分析しました。現代文中の引用を除く実出題は86題、出典が特定できた85題をジャンルで分けると、物語文学30題/説話集21題/日記・紀行文学16題/歌論・歌学書8題/近世文学6題/随筆4題です。
押さえたいのは、和歌の比重が高いジャンルが上位に集まっていることです。日記・紀行文学16題は地の文で心情を説明せず、和歌に託します。歌論・歌学書8題は和歌の解釈や優劣そのものが主題です。物語文学30題のうち歌物語は、和歌とその詠まれた事情が中身です。
大学別に「拾う」か「必出」かが分かれます
- 立教大学:全学部日程の国語3年分11冊すべてで大問三が古文、設問数も最多クラスです。出典は日記紀行・説話・物語・近世小説と散っているのに、掛詞・枕詞・縁語と古歌の引用(本歌取り)が繰り返し問われます。2025年度2月8日の『源氏物語』関屋巻では和歌2首が入りました。
- 学習院大学:文学部コアで先に固める3つの2番目が古文の文学史と和歌で、「掛詞・典拠和歌が必出」と整理しています。
- 早稲田大学:学部で変わります。商学部は古文の出典に近世紀行の比率が高く、和歌の修辞(掛詞・序詞・縁語)が直接問われます。教育学部C方式では掛詞の漢字記述が短答で出ます。ただし法・商・人間科学をまとめると、和歌の修辞は「最優先」ではなく「拾う」扱いです。
最優先にすべき人と後回しでいい人が分かれます。大学別の傾向は早稲田の国語、立教の国語でも扱っています。
修辞は「覚える」より「本文で見つける」
名前だけなら1日で覚えられます。それでも解けないのは、本文の和歌の中でどれがそれに当たるのかを見つける手順がないからです。
掛詞の見つけ方
一つの音に二つ以上の意味を重ねる技法です。「あき」に「秋」と「飽き」、「まつ」に「松」と「待つ」を重ねる例が代表で、情景と心情が一語に同居します。手順は3つです。
- ひらがなが続くところを疑う。名詞なのに漢字が当てられていない2〜3音の語が第一候補です。書き手はあえて漢字を確定させません。
- 季節・地名・自然物の語を疑う。情景としては自然なのに、場面の心情とつながらない語です。浮いていると感じたら、もう一つの意味を探します。
- 意味が通らない語を疑う。訳して「ここだけおかしい」語は、情景側の意味しか取れていません。同じ音で別の語を当て、心情側の意味が立つか試します。
出題は踏み込んでいます。学習院大学2024年度の『うつほ物語』では、『後撰和歌集』に載る小野小町姉の和歌を踏まえた掛詞の動詞を活用形で記述させる設問が出ました。早稲田大学2024年度の顕昭『袖中抄』では掛詞にあたる漢字一字を、2025年度の『沙石集』では掛詞を二つの漢字で記述させています。重なる二つの意味を漢字で書き分けられるかが問われる形です。活用形まで聞かれるなら、文法がそのまま和歌の設問に入ります。活用が曖昧な人は古文文法の覚え方を先に片づけてください。
枕詞の見つけ方
特定の語を導くために置かれる五音程度の決まり文句です。探すのは初句に置かれた五音の語で、訳そうとすると意味が浮く語。原則として現代語訳を与えません。「訳せない語だ」と気づいた時点で処理は終わりで、現代語訳の設問でも枕詞は訳さず次の語から訳し始めます。
序詞の見つけ方
枕詞と似ますが、長さが決まっていない点と、比喩や掛詞で次に続く語を引き出す点が違います。手がかりは、前半が情景で終わり、後半で急に心情に切り替わる構造です。二つが「〜のように」でつながると読めたら前半が序詞で、枕詞と違い訳す対象になります。早稲田大学2025年度の『松嶋日記』では掛詞・序詞・縁語という修辞そのものを問う設問が出ており、名称ではなく本文中でどう機能しているかを説明できるかが問われます。
縁語の見つけ方
中心的なイメージに関連する語を散りばめる技法です。手順は中心となる語を一つ決め、その連想圏に入る語を数える。中心が水の語なら、流れ・浮く・沈む・涙が同じ圏内です。一首に同じ圏の語が3語以上あれば偶然ではありません。掛詞と併用されるので、掛詞を見つけたらその連想圏を見渡す順が速いです。
本歌取りの見つけ方
有名な古歌の語句や発想を踏まえて詠む技法です。手がかりは、場面の説明には必要以上に特殊な語句が出てくること。学習院大学2026年度の『我が身にたどる姫君』では、「紫のゆかり」という語の典拠が『古今和歌集』雑上の和歌にあることを踏まえた設問が出ました。ただ描写するだけなら要らない語です。こうした語は「何かを踏まえている」と判断し、リード文や注を確認します。
土台は勅撰和歌集です。『万葉集』は勅撰集ではありませんが原点として押さえ、八代集の成立順(『古今和歌集』『後撰和歌集』『拾遺和歌集』『後拾遺和歌集』『金葉和歌集』『詞花和歌集』『千載和歌集』『新古今和歌集』)までが最低ラインです。
歌枕の見つけ方
和歌に詠み込まれてきた名所です。手順は紀行文で地名が出たら立ち止まる、これだけです。旅の記録の系統では、地名は通過点ではなく、先行する和歌や物語がその地に結びつけた情緒を呼び起こすために置かれています。早稲田大学2025年度の『松嶋日記』は、奥州の歌枕をたどる道中に『伊勢物語』の八橋・宇津の山を踏まえた描写を重ねます。
和歌の解釈は、この4手順で固定する
- 誰が誰に詠んだかを確定する。地の文に戻り、詠み手と受け取り手を押さえます。敬語の向きが手がかりです。ここを外すと全部ずれます。
- 場面と心情を地の文から取る。和歌を見る前に「今どういう状況で、誰がどう感じているか」を言葉にします。和歌は地の文の心情の言い換えが多く、答えの方向が先に見えます。
- 修辞を外して素の意味を取る。枕詞は訳さず飛ばす、掛詞は情景側だけで一度通す、序詞は「〜のように」で後半につなぐ。これで骨格が出ます。
- 修辞が何を重ねているかを足す。掛詞の裏の心情、縁語の連想、本歌取りが呼び込む古歌の情緒を足します。設問で問われる心情は、ほぼここに出ます。
3と4を分けるのがコツです。修辞ごと訳そうとすると、意味が二重のまま混乱します。
和歌は地の文とつながっている ― 贈答歌と返歌の型
和歌を独立した詩として読むと解けません。和歌は会話の一部です。頻出なのが贈答歌で、返歌の型は贈られた歌の語句を受け取り、別の意味に転じて返すのが基本です。相手の掛詞を別の意味で使う、相手の情景語を否定の形で使う。だから贈答歌が出たら、二首に共通する語を探すのが最初の作業です。そこがやり取りの焦点になります。
青山学院大学2025年度の『和泉式部日記』は、和泉式部と敦道親王の贈答歌が中心でした。この作品は二人の関係を贈答歌を軸に描くので、地の文より和歌の解釈が読解の中心になります。学習院大学2026年度でも、『発心集』で東宮からの和歌の贈答、『曾我物語』で十郎と遊女虎御前の別れの贈答が出ています。
歌論・歌学書はもう一段複雑で、和歌が引用され、それへの評価や解釈がさらに語られる入れ子になります。引用された和歌の意味と評者の主張を二層に分けてください。立教大学2023年度2月13日は古文が近世の歌論で、この構造と文学史の知識で得点が大きく割れました。つまずく原因が主語と敬語のほうにある場合もあります。心当たりがあれば古文が読めない原因を先に見てください。
文学史は必出の大学と、出ない大学に分かれます
- 学習院大学:3年分9冊の国語すべてで文学史(作者・同時代作品・ジャンル)が最後に必出でした。知識で確実に取れる配点です。
- 早稲田大学 教育学部A方式:出典と文学史の知識問題が毎年出ます。古文は『発心集』『手枕』『今鏡』と説話・擬古物語・歴史物語を回るので、作品名と時代とジャンルの対応が必要です。
- 早稲田大学 文学部:古文の出典が『袖中抄』(中世の歌学書)、『相生の言葉』(近世の家集)のように定番から外れます。作品を知っているかより、ジャンルの型が効きます。
- その他:早稲田大学2026年度の『今鏡』では和歌の作者を問う文学史設問が出ています。
何を覚えるか ― 4項目に絞る
覚えるのは作品名(別表記も。『うつほ物語』は『宇津保物語』とも書きます)、成立時代(平安前期・中期・後期/鎌倉初期・中期・後期/室町/江戸の粒度で十分)、ジャンル、作者(未詳なら「未詳」と覚える)の4つだけ。あらすじの要約は不要です。
特に得点になるのが作者でまとめる整理です。鴨長明は随筆『方丈記』、歌論書『無名抄』、説話集『発心集』を書いています。学習院大学2026年度の『発心集』では、同じ著者の作品(『方丈記』)を選ばせる文学史設問が出ました。
もう一つはまとまりで覚えることです。四鏡(『大鏡』『今鏡』『水鏡』『増鏡』)、三大随筆(『枕草子』『方丈記』『徒然草』)、八代集。学習院大学2024年度の『弁内侍日記』では文学史の設問で『増鏡』との関係が問われました。日記文学の出題でも歴史物語の知識が組み込まれます。混同しやすい『無名抄』(鴨長明の歌論書)と『無名草子』(作者未詳の物語評論)も押さえます。
覚える範囲の線引き
基準は「本文として出るか、文学史の選択肢として出るか」です。『徒然草』と『方丈記』は、89題の分析で古文本文としての単独出題が確認できませんでした(現代文に引用される例はあります)。この2作は名前・作者・時代・ジャンルを言えれば十分。逆に『源氏物語』『更級日記』『沙石集』『今昔物語集』『大鏡』のように本文で繰り返し出る作品は、読む練習までやります。この線引きだけで負担は半分以下になります。
ジャンル別の優先順位
詰める順番は出題数の多い順が素直です。物語文学30題、説話集21題、日記・紀行文学16題、歌論・歌学書8題、近世文学6題、随筆4題。この順に代表作品の作者と時代を埋めます。各ジャンルの読み方の型は古文の頻出ジャンルに整理してあります。
和歌が出ない大学を受ける人はどこまでやるか
和歌の比重が軽い受け方もあります。早稲田大学の人間科学部・国語英語型は大問2題で、古文・漢文の独立大問がなく現代文2本でした。学習院大学の法学部コア系・経済学部コア系の6冊は、先に固めるのが古文文法と字数指定の抜き出しです。
こうした受け方なら、和歌は3つだけでかまいません。枕詞は訳さない、掛詞の3つの探し方、贈答歌は共通語を探す。序詞・縁語の説明、勅撰集の細かい成立年、歌人の系譜は後回しでいいです。
ただし文学史は別扱いです。学習院大学のように、和歌が重くない方式でも文学史は9冊すべてで必出という大学があります。独立した得点源として扱ってください。古文・漢文がどこまで必要かを決めていない人は、古文漢文は必要かから確認するのが先です。
1か月の練習メニュー
- 第1週:和歌を含む古文を1日1題、15分。設問は解かず、掛詞の3つの探し方だけを当てます。見つけた掛詞は二つの意味を漢字で書き分けてノートに残す。早稲田大学の出題がこの形でした。
- 第2週:1日1題、20分。解釈の4手順を紙に書きながら通し、3と4を分けて書くのを守ります。
- 第3週:文学史をノート2ページに。1ページ目はジャンル×時代のマトリクス、2ページ目は作者ごとの一覧。四鏡・三大随筆・八代集も書き添えます。作るのに2日、残り5日は1日10分見返すだけ。
- 第4週:過去問から和歌と文学史の設問だけを抜き出して連続で解きます。学習院大学志望なら最後の文学史設問を3年分、早稲田大学商学部志望なら和歌の修辞。その大学が何を聞きたいかが見えます。
川越校舎の自習室は朝7時から使えます。第1週・第2週は15〜20分なので、学校前の時間に入れるのが続けやすいです。
残り3か月なら、この順番で
- 古文文法(助動詞の識別・敬語の種類と対象)。掛詞が活用形で問われ、主語が敬語で決まるので土台です。立教大学の読本でも、先に固める分野の1番目が「助動詞の意味と活用、敬語による主語判定」でした。
- 文学史の4項目。学習院大学のように必出の大学なら最優先に繰り上げます。
- 掛詞の見つけ方と解釈の4手順。和歌の修辞が直接問われる方式なら2番と入れ替えます。
- 序詞・縁語の説明、本歌取りの典拠、歌枕。修辞そのものが問われる方式なら必要、そうでなければ後回し。
- 勅撰集の細部、歌人の系譜。出ても1問です。ほかが仕上がってから。
和歌と文学史に限れば3か月は十分です。範囲が有限で、設問の形が大学ごとにほぼ固定されているからです。逆に、何がどう問われるかを知らないまま進めると、出ないところに時間を使います。過去問を3年分並べ、和歌と文学史の設問に印をつけるところから始めてください。
負担が重く感じる時期が続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口にも相談しながら進めてください。
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EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
- 川越校舎(2026年6月開校)川越駅から徒歩5分、本川越駅から徒歩8分。自習室は朝7時から使えます。
- ふじみ野校舎 ふじみ野駅東口から徒歩1分。
- 鶴瀬校舎 鶴瀬駅西口から徒歩3分。
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