この記事は、数学で受験するけれど、どの単元から手をつけるか決まっていない高校生・既卒生と、その保護者の方へ向けたものです。志望校がまだ絞れていない人でも、今日から始めて無駄にならない単元があります。場合の数・確率です。
EIMEI予備校では大学ごとに入試対策読本を自作しています。その制作のために過去問冊子を年度別・大問別に読み込んだ分析データを、単元ごとに並べ替えた資料も作りました。そこを見ると、場合の数・確率だけは出題ゼロという事例が見当たりません。
どれだけ出るのか、分母つきの数字で見る
先に注意点です。大学によって分析対象のセット数や大問の数え方(独立大問か、小問集合の1項目か)が違うため、大学をまたいだ数字の単純な比較はできません。以下は序列ではなく個別の事実として読んでください。
- 慶應義塾大学:文系4学部は12セットすべてで出題され12/12。理系4学部(医・理工・看護医療・薬)も各3/3で、8学部12セットすべてで毎年出題されている計算になります。
- 立教大学:理系は大問Ⅰで6/6、毎回必出と記録されています。文系は大問Ⅰで6/8。
- 青山学院大学:社会情報学部C方式が3/3で毎年問題1に固定。社会情報学部B方式3/3、経済学部B方式3/3、理工学部5/6、文系(全学部日程)2/3。分析は4ルートを横断した結論として、この単元を全ルート共通の最頻出単元と位置づけています。
- 中央大学:文系は独立した大問としての出現数が59大問中11で、文系の分野別頻度の中で最多です。理系は20大問中3(15%)。
- 法政大学:文系は45大問中7(16%)、理系は63大問中8(13%)で、理系は9セットすべてに出題。
- 学習院大学:12セット中10。未出は2024年度法学部コアと2024年度理学部プラスの2セットだけで、同じ年度に集中しています。
- 早稲田大学:商学部(文系)2/3、社会科学部(文系)1/3、理系4/6。人間科学部文系方式は2024年度の1年分のみの分析で、その年は出題ありでした。
次の大学は元資料が要約のため参考程度の扱いです。明治大学の文系は商学部3/3、情報コミュニケーション学部3/3、政治経済学部2/3、経営学部2/2とされ、理系は理工・総合数理・農がいずれも3/3。東洋大学は2022年度の分析で「ほぼ全問題セットに出現」、2023〜24年度は文系8セット中5セットとされています。東京電機大学は「問題1の小問として毎回のように登場」とされ、年度別の集計表は原資料にありません。
押さえておきたいのは、理系型でも比重が下がりにくい点です。中央大学の理系では場合の数・確率が20大問中3(15%)である一方、微分積分(Ⅱ)は20大問中1(5%)です。理系だから後回しにしてよい根拠は、原資料のどこにも見当たりません。単元ごとの重さの全体像は数学の頻出単元でも扱っています。
つまずく原因は4つに分けられる
「確率が苦手」の中身は同じではありません。原因を4つに分け、自分がどれかを先に決めてください。混ぜたまま問題数を増やすと、時間の割に伸びません。
①数えるときに重複か漏れが出る
解答を見て、考え方の筋は合っていたのに答えの数字だけがずれているならこれです。正解の2倍や6倍になっているときは同じものを重ねて数えており、少し足りないときは場合分けの1本を書き忘れています。
②順列と組合せの使い分け
読んですぐ手が止まる、または片方で計算して答え合わせで判断している状態です。①との見分け方は解答の式を見た瞬間に納得できるか。納得できるなら判断基準が言葉になっていないだけで、知識の穴ではありません。
③確率の条件の読み違い
場合の数としては正しいのに、確率にすると合わない形で出ます。見分け方は分母に置いたものを言葉で言えるか。「全部で何通りか」を言い直せないまま式を書いているならこれです。「少なくとも1回」「戻す・戻さない」で毎回同じように外すのも特徴です。
④漸化式・期待値などの応用に届かない
基本は解けるのに、確率と数列が組み合わさった問題や期待値で止まるパターンです。見分け方は基本問題の正答率は安定しているのに、大問の後半の小問だけ空欄になること。①〜③が残るうちに④へ伸ばすと両方中途半端になるので、順番は①〜③が先です。
数え方の基本手順を4つに固定する
効くのは公式を増やすことではなく、毎回同じ手順で紙に書き出すことです。易しい問題でも省略しないでください。
- 何を1つの「場合」と数えるかを言葉で書く。「取り出した並び1つ」なのか「取り出した色の組1つ」なのかを、式の前に日本語で決めます。ここを決めないのが原因①の元です。
- 区別するものと区別しないものを分ける。玉・人・サイコロ・箱・カードのどれが区別の対象かを問題文から拾って書き分けます。書いていない場合の扱いも一言メモします。
- 小さい例を樹形図か表で必ず書く。3個や4個など手で全部書ける大きさに落として書き出します。ここで出た個数が公式の答え合わせになります。
- 規則を見つけてから公式を使う。小さい例で「1つ増えると何倍になるか」「何が固定され何が動くか」を見てから式に載せます。数えた結果に公式を後から当てる順番です。
順列と組合せは、この順番で判断する
まず並べ替えたら別物として数えるかを自分に問う。AとBを選んだ場合とBとAを選んだ場合を別に数えるなら順列、同じ1つとして数えるなら組合せです。役職を決める、席に座らせる、数字を並べて整数を作るは前者。委員を選ぶ、グループを作るは後者です。
次に選んだあとに何かをするかを見る。選ぶだけなら組合せ、順番や役割を与えるなら、組合せで選んでから並べる2段階です。2段階に分けると、選ぶところと並べるところを別々に検算できます。迷ったら手順3に戻り、小さい例で両方計算し、書き出した個数と一致するほうを採るのが確実です。
確率漸化式が出る大学と、その練習
確率と数列が組み合わさった形として原資料に明記されているのは慶應義塾大学医学部です。単独の大問としてだけでなく、確率漸化式という形で3年連続(3/3)出題されており、数列(漸化式)の知識と組み合わせた出題が定着していると記録されています。同学部は極限・微分積分(Ⅲ)も3/3で、他単元と組み合わされた複合問題として出やすい大学です。
独立大問として単発で出るのか、融合した形で毎年出るのかで、組み立ては変わります。練習は3つです。1つ目はn回目とn+1回目の関係を式にする作業。「n回目に状態Aにいる確率をpのnとおく」と自分で文字を置き、n+1回目をpのnで表す書き方を易しい題材で繰り返します。2つ目は状態を図にすること。状態が2つか3つかを決め、どの状態からどの状態へどの確率で移るかを矢印で書きます。3つ目は得た漸化式を解く練習で、等比型に直す、階差をとるといった数列側の処理です。漸化式は数列の単元にもあり、早稲田大学の理系では数列が漸化式中心に4/6と記録されているので、両側から近づけます。
条件付き確率と期待値はどう扱うか
条件付き確率を単独の項目として集計した数字は、読本の分析データにありません。場合の数・確率の枠の中で扱われているためです。つまり条件付き確率は「特定の大学のために備える単元」ではなく、原因③、分母の読み違いを直す作業の一部として練習するのが実態に合います。読んだあとに「全体は何か」「そのうち何に限定されたか」を毎回2行で書き出してください。
期待値には記載のある事実が1つあります。中央大学では統計的推測が3年間・全22セットでゼロである一方、2026年度に期待値が別枠で新規登場したと記録されています。中央大学を受けるなら、定義と基本的な計算は押さえる価値があります。確率と地続きの内容では、立教大学の理系で大問Ⅰの統計的推測が2/6、2026年度は二項分布の正規近似と記録されています。新課程の単元は今ゼロでも今後出ないとは限らないので、志望校の最新の入試要項もあわせて確認してください。
定位置がある大学を受けるなら、優先順位が決まる
頻度の数字だけでは見えないのが、どの大問番号に置かれるかという位置の情報です。
- 中央大学の商学部:会計学科・経営学科とも大問Ⅳに場合の数・確率が置かれ、3年とも固定で4セット中4。
- 青山学院大学の社会情報学部C方式:3/3で、毎年問題1に固定。
- 立教大学:理系は大問Ⅰで6/6の必出、文系も大問Ⅰで6/8。
定位置がある大学なら、優先順位は自動的に決まります。その大問番号だけを年度をまたいで縦に解くのが最短です。中央大学商学部なら大問Ⅳだけを3年分、青山学院大学社会情報学部C方式なら問題1だけを3年分。縦に解くと、その大学が好む出題の型と時間配分が見えてきます。大学ごとの数学の出方の違いはGMARCHの数学比較でも整理しています。
マーク式と記述式で、仕上げの中身が変わる
場合の数・確率は、全問マーク式の大学でも全問記述式の大学でも高い頻度を保っています。計算量の多い設問はマーク式で好まれる一方、この単元は数え上げの過程を記述させる設問としても成立するため、形式を問わず採用されやすいとされています。
マーク式中心の大学では、証明の書き方より計算のスピードと正確さを優先する時間配分が合理的です。法政大学の理系は全問マークで証明問題は63大問中0、東洋大学も全問マーク(空所補充)で記述式はゼロとされています。
記述式の大学では書くものが増えます。早稲田大学社会科学部は全記述で「途中経過を記述すること」が明記され、学習院大学は12セットすべて全問記述式、東京電機大学は全16本すべて記述式、慶應義塾大学の理系4学部は12セットすべてマークシート不使用です。ここでは、何を1つの場合と数えたのか、なぜその場合分けで全部を尽くしているのかを答案の言葉で示す必要があります。どこまで書くかは数学の記述と部分点で扱っています。
答えが合わないときの検算3つ
- 小さい場合で数え上げて照合する。数字を3や4に落として樹形図か表で全部書き出し、実際の個数と、式に同じ数字を入れた値が一致するかを見ます。
- 全体から引く。「少なくとも1つ」型では、条件を満たさないものを全体から引くほうが速く、別ルートの検算にもなります。
- 対称性を使う。サイコロを2個振る問題なら「1回目が大きい場合」と「2回目が大きい場合」の個数は等しいはずで、片方を数えて照合すれば数え漏れが見つかります。
加えて、確率の答えが0以上1以下か、場合分けした確率の和が1になるかを最後に必ず見ます。ここで引っかかるなら原因③が残っています。計算過程のミスを減らす手順は計算ミスを減らすにまとめています。
1か月で固める練習メニュー
志望校が未定でもそのまま始められる形にしました。
- 第1週は数え方の手順を入れる週。1日3問、教科書の例題から章末問題の前半あたり。4ステップを全部書いてから式に入り、3問のうち1問は樹形図か表を最後まで書き切ります。
- 第2週は順列と組合せの判断を固める週。1日4問。うち2問は「選ぶだけ」、2問は「選んでから並べる」2段階の問題にして交互に解きます。
- 第3週は確率の条件を読む週。1日4問。「戻す・戻さない」「少なくとも1回」「同じものが出る」を毎日1問ずつ入れ、解く前に「全体は何通りか」を1行書きます。
- 第4週は応用に触る週。1日3問で、うち1問は確率と数列の融合問題または期待値。残り2問は復習です。①〜③の間違いが戻るなら、④は置いて前の週に戻します。
記録も決めます。ノートの左に問題の出どころ、右に(a)何を1つの場合と数えたか、(b)どのステップで外したか、(c)原因①〜④のどれかを1行ずつ。週末に(c)を数え、いちばん多い番号を次の週に多めに入れます。学習全体の組み立て方は数学の勉強法も参考にしてください。つらさが続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の窓口に相談してください。
志望校が決まっていない人が、今から始める意味
数学の単元には、大学によって「毎年出る」と「3年間一度も出ない」が極端に分かれるものがあります。複素数平面は慶應義塾大学理工学部が3/3で毎年出題される一方、法政大学理系は0/9、学習院大学は12セットすべて出題がありません。整数の性質も慶應義塾大学理工学部3/3に対し医学部0/3です。
こうした単元は、志望校が決まる前に時間をかけると、あとで使わない可能性があります。だからこそ、志望校が決まっていない段階でやる価値があるのは、大学差が問題にならない単元です。場合の数・確率はまさにそれで、文系・理系、マーク式・記述式、学部の違いを問わず、ほぼすべてのデータで高い頻度が記録されています。
今から固めておけば、志望校がどこに決まっても無駄になりません。決まったあとで加えるのは、大問番号を固定して縦に解く練習と、記述かマークかに応じた仕上げだけです。文系で数学を使うか迷っている人は文系数学で受けるもあわせて読んでみてください。
EIMEI予備校の川越校舎では、こうした単元別の優先順位づけを1対1の面談で一人ずつ決めています。志望校が決まっている人にはその大学のデータを見ながら、決まっていない人には共通して必要な単元から進めます。
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EIMEI予備校について
EIMEI予備校は川越・ふじみ野・鶴瀬の3校舎で、大学受験の1対1個別指導をしています。中高一貫校の中学生から、高校生・既卒生までが対象です。大学ごとに入試対策読本を自作していて、志望校が決まっている人には、その大学の出題に合わせて何をどの順番で進めるかを一緒に決めていきます。
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