複素数平面、式と曲線、整数の性質。この3つは、志望校によって「毎年出る」と「3年間一度も出ない」がはっきり分かれる単元です。この記事は、理系で数学Ⅲ・数学Cまで使う人と数学で受ける文系の人に向けて、この3単元をやるかやらないかを志望校から決める手順をまとめたものです。以下の数字は、EIMEI予備校が大学ごとに自作している入試対策読本の数学編に記録された実測値です。
この3単元は、大学によってここまで違います
- 複素数平面:慶應義塾大学理工学部は3/3。いっぽう法政大学理系は0/9で、63大問を通じて一度も出ていません。学習院大学は12セットすべてゼロ、しかも数学Ⅲを含む理学部4セットを含んでゼロです。
- 式と曲線:早稲田大学理系は5/6。これに対し中央大学理系は0/5、学習院大学は12セットすべてゼロです。
- 整数の性質:慶應義塾大学理工学部は3/3。同じ慶應義塾大学でも医学部は0/3、看護医療学部も0/3です。学習院大学は文系・理学部を含む12セットすべてゼロです。
読本の注意書きを2つ。ひとつめ、「出題実績がない」と「出題範囲に入っていない」は別のことです。東洋大学の文系(数Ⅰ・Ⅱ・A系列)は数列・ベクトルがそもそも範囲外、明治大学農学部と慶應義塾大学看護医療学部は数学Ⅲが範囲外で、これは頻度でなく構造上の違いです。中央大学・法政大学・学習院大学の「ゼロ」は範囲内なのに出ていない状態で、読本も「今ゼロだからといって今後も出ないとは限らない」と書いています。
ふたつめ、大学によってセット数や大問の数え方が違うため、大学をまたいだ数値の単純比較はできません。読み方は「同じ大学の中で単元を比べる」「同じ単元で大学ごとの出る・出ないを比べる」の2つです。単元全体の地図は数学の頻出単元の記事にまとめています。
複素数平面:毎年出る大学と、全セットでゼロの大学
読本は複素数平面を「最も大学差の大きい単元のひとつ」としています。
- 出る:慶應義塾大学理工学部3/3、医学部2/3、看護医療学部2/3、薬学部2/3。文系では環境情報学部だけが2/3で、2025・2026年度の2年連続で独立した大問として出ています。経済学部A方式・商学部A方式・総合政策学部には出題実績がありません。明治大学総合数理学部は3/3(複素数として)。立教大学理系は大問Ⅰで3/6、理学部数学科だけに上乗せされる第Ⅳ問では6回中3回で最頻出のテーマです。
- 中間:早稲田大学理系2/6、中央大学理系2/5(2年に1度ペース)、明治大学理工学部は2024年度が不出題で2025・2026年度が出題(3年で2回)、青山学院大学理工学部1/6でその1回は2025年度A方式に限られます。東京電機大学は過半数の年度・セットで出題、東洋大学は情報連携理系の1セットのみとされています(参考程度の扱い)。
- ゼロ:法政大学理系0/9(63大問を通じてゼロ)、学習院大学12セットすべてゼロ(読本は「理学部でも複素数平面・式と曲線は未出という点が学習院の特徴」と記述)、立教大学文系0/8、慶應義塾大学総合政策学部0/3。
練習の中身は解答形式で変わります。記述式の大学では「複素数平面上の軌跡の証明」が定着した設問として記録され、立教大学数学科の第Ⅳ問は6回のうち4回が証明問題(内訳は複素数平面3回・整数2回・数列や極限2回、重複含む)です。マーク式では論証を要する設問は構造的に出ません。記述式なら軌跡を式にして証明として書ききるところまで、マーク式なら計算の速さと正確さです。設問の細目は読本にないので、自分が受ける方式の過去問で確認してください。書き方は数学の記述と部分点の記事に手順があります。
複素数平面の解き方の手順
- 極形式でいくか、実部・虚部の成分でいくかを決める。何度回すかという角の情報が出てきたら極形式、実部と虚部の関係式が主役なら成分のまま進めます。
- 掛け算・割り算を「回転と拡大」の意味で読む。式のままにせず、何が何度回ってどれだけ伸びたかを言葉にしてから進みます。
- 図をかく。原点、与えられた点、動く点を実際に置きます。条件式だけを変形すると、答えが存在しない位置に出ても気づけません。
- 軌跡なら、条件を式にしてから整理する。動く点をどう文字で置くかを先に決め、条件をその文字の式に翻訳し、最後に図形の名前に戻します。記述式では、この翻訳の一行一行が点になります。
式と曲線:単発で出るのか、定位置なのか
楕円・双曲線などの2次曲線、媒介変数表示、極座標を扱う単元で、読本の表現では「早稲田大学理系だけが突出する単元」です。
- 早稲田大学理系(基幹理工・教育学部理学科B方式)5/6。2次曲線・媒介変数・極座標を含む単元として記録されています。
- 明治大学総合数理学部 2/3(2025年度は楕円・双曲線、2026年度は内サイクロイド)。同じ明治大学でも理工学部は頻出単元の一覧に式と曲線が挙がっておらず、実質的に低頻度です。
- 青山学院大学理工学部 1/6、社会情報学部C方式 1/3(双曲線)、立教大学理系 1/6(軌跡として)。いずれも単発です。
- 中央大学理系 0/5(5セット・20大問を通じてゼロ)、学習院大学 12セットすべてゼロ。
- 法政大学理系は、媒介変数表示だけなら4/9で出題実績があり、楕円・双曲線・極座標はゼロです。単元まるごとではなく一部だけが出ます。
- 慶應義塾大学文系4学部 0/12、早稲田大学の文系型もゼロです。慶應義塾大学の理系4学部は読本の集計表に式と曲線という分類がなく、頻度数値の記載がありません。数値がないことを「出題なし」と読み替えないでください。
- 東京電機大学は楕円・双曲線の法線が単発で確認され、東洋大学は文系ゼロ・理系系列は散発とされています(参考程度)。
定位置に近いのは早稲田大学理系の5/6と明治大学総合数理学部の2/3だけで、1/6・1/3は「出題実績はあるが毎年ではない」水準です。読本も、早稲田大学理系ほど高く置く必要はないが、手をつけないのは避けたほうがよいとしています。理系の全体像は理系の大学別 数学・理科の記事にまとめています。
整数の性質:同じ大学でも学部で正反対になる
- 出る:慶應義塾大学理工学部3/3、早稲田大学社会科学部3/3(3年連続)、明治大学総合数理学部3/3、早稲田大学理系5/6(整数・数と式として集計)、明治大学理工学部2/3、早稲田大学商学部2/3、青山学院大学経済学部B方式2/3(2025年度は出題が3箇所に波及)、中央大学理系2/5、立教大学理系2/6(数学科の第Ⅳ問でも6回中2回、いずれも証明つき)、立教大学文系2/8。明治大学情報コミュニケーション学部は2/3とされています(参考程度)。
- ゼロ・低頻度:慶應義塾大学医学部0/3、看護医療学部0/3、学習院大学0/12、中央大学文系は17セット中1回(商学部会計学科の2024年度のみ)。慶應義塾大学薬学部は1/3で、理系4学部を合わせると理工3件・薬1件の4/12という数え方です。法政大学理系は4/63(6%)です。
- 東京電機大学は「問題1の小問として毎回のように登場」、東洋大学は中頻度とされていますが、どちらも分母つきの数値が原資料にありません。この2大学を志望するなら、過去問を自分の手で確認してください。
注意したいのは単元の境界です。法政大学文系の9/45(20%)は「数と式・整数・複素数」を合算した数字で、単独の集計ではありません。読本の単元区分も読みやすさを優先した整理で、教科書の章立てと一致しない場合があります。過去問集を見るときはどの単位で分野を区切っているかを先に確認してください。
練習の中身として読本から言えるのは、記述式の大学で整数が「示せ」「証明せよ」型として定着していることです。立教大学数学科の第Ⅳ問の整数2回も、いずれも証明つきでした。答えを出して止めず、結論に至る筋道を文章として書ききる練習までが必要です。どんな論法が問われたかは読本にないので、過去問で確認してください。
「やる・やらない」を志望校から決める手順
- 大学ではなく「学部・方式」まで確定させる。慶應義塾大学は整数の性質が理工学部3/3・医学部0/3で同居し、青山学院大学理工学部の複素数平面1/6もその1回は2025年度A方式だけです。
- 過去問を最低3年分、できれば5年分見る。読本の頻度も多くの大学で直近3年が中心です。1年分では判定できません(読本も早稲田大学人間科学部文系方式は1年分のみで3年判定が不能と別記しています)。方式が複数あるなら方式ごとに3年分です。
- 3年分の出題回数で扱いを決める。0回なら後回し、1回なら基本的な解法を通すだけ、2回以上なら主要単元として仕上げる。この線引きを先に決めると迷いません。
- マーク式か記述式かで練習の中身を変える。マーク式なら計算の速さと正確さ、記述式なら証明の書き方まで、と重点が変わります。
- 自分が受ける年度の募集要項で出題範囲を確認する。読本の数字は過去の実測値で、来年の範囲を保証しません。
過去問を何年分そろえるかは過去問はいつから何年分やるかの記事を参考にしてください。
出題範囲は変わります。今ゼロでも「範囲外」とは限りません
読本には制度変更の告知が記録されている箇所があります。
- 慶應義塾大学医学部の整数の性質は現在0/3ですが、原資料に「2029年度から整数の性質を追加予定」という告知が記されており、今のゼロはこの告知と矛盾しないと読本は書いています。
- 明治大学政治経済学部は統計的推測について2027年度から範囲追加とされ、原資料は「過去問に前例のない完全新規分野」と明記しています(参考程度の扱い)。明治大学総合数理学部も、統計的推測が2027年度から必須化予定とされています。
この2つは別の単元の話も含みますが、示しているのは同じです。今ゼロだからといって、今後も出ないとは限りません。いっぽう範囲外なら時間を割かなくてよく、範囲内で低頻度なら基礎だけ押さえるという判断の差が出ます。どちらなのかは自分が受ける年度の要項で必ず確認してください。
併願で、出る大学と出ない大学が混ざるとき
まずどの併願校でも必要な単元を先に固めます。場合の数・確率と微分積分は、読本の分析でも出題ゼロの記録がほとんど見当たりません。ここが仕上がる前にこの3単元へ時間を移すのは順番が逆です。
そのうえで、この3単元は受ける校数ではなく「第一志望で出るか」で決めます。
- 早稲田大学理系(式と曲線5/6)と中央大学理系(0/5)の併願なら、式と曲線は早稲田大学のためにやり、中央大学の演習時間には混ぜません。
- 慶應義塾大学理工学部(複素数平面3/3・整数3/3)と法政大学理系(0/9)なら、基準は慶應義塾大学理工学部です。
- 慶應義塾大学の中で医学部(整数0/3)と理工学部(整数3/3)を併願するなら、同じ大学でも対策は分かれます。
- 逆に併願校がそろって学習院大学のような「3単元すべてゼロ」なら優先度を下げられます。ただし範囲内なら基礎は残します。
併願校を縦、この3単元を横に並べた表を作り、実測値と自分で数えた回数を書き込むのが早いです。2校以上で出る単元は共通対策、1校だけなら「その1校が第一志望か」で決めます。共通で必要な単元は場合の数・確率の記事と微分積分の記事でも大学別に見ています。
残り3か月で始めるなら、どこまで間に合うか
9月末から数えると私立一般選抜まで約3か月です。新しく始めるかは第一志望の実測値だけで決めてください。3年分で2回以上なら着手する価値があり、0回なら始める理由はありません。
- 典型的な解法を一通り通す(ここは短く。完璧を目指さない)。
- 第一志望の過去問から、その単元の大問だけを抜き出して3年分解く。
- 記述式の大学なら、解答を書いて書き方を直す。
3単元を同時に始めるのは現実的ではありません。実測値が高いものから1つです。3か月で届くのは「その大学の出題の型に対応できる程度」までです。式と曲線は2次曲線・媒介変数・極座標という限られた内容なので的を絞りやすく、複素数平面も図形としての見方に慣れれば形になりやすい単元です。整数は証明として書ききるところに時間がかかります。時間を移したぶん他教科が崩れないかは必ず確認してください。勉強が手につかない状態が続くときは、学校の先生や保護者の方、専門の相談窓口に相談してください。
直前期にこの3単元をどう扱うか
年が明けたら、新しい単元を増やさないことが基本です。
- 手をつけた単元は反復に切り替える。新しい問題より、過去問で出た該当大問を解き直します。
- 実測値がゼロの大学の演習日は、その単元に時間を使わない。法政大学理系(複素数平面0/9)や学習院大学(3単元すべてゼロ)では、この判断がはっきりできます。
- 学習院大学のように全問記述式でありながらこの3単元がゼロの大学では、記述の練習は微分積分や数列など出題実績のある単元でやります。形式と単元は別に考えます。
「出るかもしれない」で新規に手を出すと、仕上がっていた単元の精度が落ちます。判断の根拠は、第一志望の過去問で自分が数えた回数です。読本の数字は直近数年の実測値なので、自分が受ける年度・方式に当てはまるかは必ず最新の要項と自分の手で確認してください。
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